ひとつ屋根の下 ◆AZWNjKqIBQ



昇り始めた朝日から放たれる光を、一様に東側の壁で受け止める住宅の群れ。
その中の一つ。特に他とは変わりのない一軒の民家の中に彼らはいた。

それは、スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、マース・ヒューズ、泉こなた――の四人だ。

先程までは、そこより西にあった大きな橋の下に潜んでいたが、
陽が昇り始めたことで明るくなってきた事と、海から吹き始めた風が思いのほか冷たかったために、
これでは休むに適さないと隠れる場所を屋内へと移したのだった。
無断で場所を借りたその家は、大きな通りから二つの小さな通りを隔てた場所にある、庭付き二階建ての一軒屋である。
別に金持ちの家と言うわけではなく、安く余った土地にそこそこの家が建てられているといった感じで、
その周りに立ち並ぶ住宅も似たような感じだった。
適度に見通しがよく、他者を警戒しながら潜むには都合がよい場所であった。
もちろん、この選択は要人警護などに精通したマース・ヒューズ中佐によるものである。


 ◆ ◆ ◆


「そっちはどうだ?」
ヒューズのその問いかけに、二階より降りてきたスバルは、
「はい。誰かが入ってきていたり、隠れているということはないと思います」
と答えた。それに満足すると、ヒューズは彼女に向って頷き、二人揃ってリビングへと戻る。
そこには、ソファに横になったこなたと、彼女を抱えて運んできたアルの姿がある。
「大丈夫かい? こなたちゃん」
リビングへと戻って開口一番に放たれたヒューズのやさしい言葉に、小さな彼女は、
「ん。もうほとんど平気です」
と、横になったままの姿勢で答えた。その身体の上にはこの家で調達した毛布がかけられている。


「じゃあ、そろそろ俺は駅の方へ偵察に行ってくる。」
潜伏している家の調査をあらかた終わらせた後、リビングでお茶を一口飲むと、そう言ってヒューズは立ち上がった。
そして、部屋の端に固めて置かれているバックの内、アルの物であった所から二つの物を取り出す。
こいつを借りていくぞと、片手に見せたのは軍隊の中でも使用される単眼鏡だ。
そしてこいつもと、もう片方に持った物を慎重にテーブルの上へと置くと、その包みを解いた。

「鋏……ですか」
「ああ。しかしこのままじゃ、無用の長物だろう?」

ヒューズが取り出したアルに支給された最後の品。それは12挺の、銀色の鋏だった。
これをそのまま武器とするには、やや使い勝手が悪いと言わざるを得ない。
なので、これをアルの錬金術で他の物へと練成してくれないか――と言うのが、ヒューズの頼みごとだった。
もちろん、これはそもそもアルの所有物であるため、その最終決定権は彼にある。

「いいですよ。ナイフで構いませんか?」

間を置かずしてアルはそれを快く承諾した。鋏は彼にとっても不用品で、これを断る理由はない。
そして、ヒューズの肯定を受けると、アルはバックからペンとメモを取り出して手早く練成陣を作り、
銀色に輝く12挺の鋏をその中央に置いた。
初めて見る錬金術に、スバルとこなたの二人は興味深げに注目する。

一瞬の後、練成陣の上に細い稲光と薄い煙が立ち上がり、12挺の鋏は12本の短剣へと姿を変えた。
目の前で起こった奇跡に、こなたとスバルの二人は小さな歓声と拍手をアルに贈る。

「兄さんほどじゃないから、強度と切れ味は保証できないけど……」
「謙遜だぜ、アル。じゃ、これはありがたく使わせてもらうよ」

言いながらヒューズはそれを懐に仕舞うと、改めて外へと向った。そして見送る三人に、

「アル。こなたちゃんを護るのはお前の役割だ。いざとなったら、その身体を盾にして護ってやるんだぞ」
「スバル。警戒と言っても緊張しすぎるのはだめだ。自分の中で適度な緊張感を保つよう意識しろ」
「こなたちゃん。君は今のうちによく休んでおくんだ。二人は頼りになる。心配することはないよ」

とそれぞれ言葉を残すと、扉を潜りその家を後にした。


 ◆ ◆ ◆


「(……期待が外れちまったな)」

駅へと向う道すがら、ヒューズは先程の家の中で集めた情報を、頭の中で整理しながら進んでいた。
民家に入ることを提案したのは彼自身だったが、それは何も休むためだけということではない。
目的は三つ。その内の一つは休息することだが、残りの二つは――監視体制の調査と、この世界の住民の行方である。

監視体制。つまりは、盗聴や盗撮。
狭い屋内に入り込めば、家捜しや外敵の侵入をチェックする振りをしてそれらを見つけることも容易いかと思ったが、
結果は芳しくなかった。残したスバルにも引き続き調査するよう指示してはいたが、期待薄だ。
ここから導き出される可能性はいくつもあるが、
まずポジティブに考えるとしたら――最低でも民家などの中は監視されていないという可能性がある。
しかしこれは前向きすぎるだろう。後に足元を掬われかねない。
最悪の可能性を考えるとしたら――自分達には思いもつかない方法や技術で監視されているという可能性。
やはり、こちらの線が強いと今は認識しておくべきだろう。魔法があるのだ。それ以上があっても不思議ではない。

そして、あそこで得られたもう一つの情報。
民家の中に入るそれまでは、姿を消した住民の行方を追えば、あるいは脱出の手がかりになるかと思っていた。
だがあの中で調べた限りは、元の住民達は忽然と姿を消されたとしか思えない。自分達がここに来た時同様に。
拉致や、避難させられた痕跡がないのはもちろん。日常生活の跡がまるで突然途切れたかのように残されていた。
これは、やはり自分達同様に何らかの不可思議な力で転移させられたとしか考えようがない。
何万人と居たであろう住人全てが――恐らくは一度に!

螺旋王が持つ力の強大さ、その空恐ろしさにヒューズの身体がわずかに身震いする。

だが、それはまだ始まったばかりだとヒューズは思考を切り替え震いを払った。
まずは仲間を探す事。自分達の顔見知りと合流することも大切だが、全く別世界の仲間も欲しい。
そうすれば、また情報も増える。圧倒的な力に対し、情報戦で切り込んでいくのは自分の領分である。

そのためにもと、ヒューズは駅の方へと向ける足を早め、その蒼い姿を目立たぬ路地の中へと滑り込ませた。


 ◆ ◆ ◆


「……ここも、OKと」

外に繋がる戸や窓を一つ一つ指差し確認しながら、スバルは家の中を一部屋ずつ回っていた。
ヒューズに言われた通りに、外敵の侵入に警戒するだけでなく、家の中に監視装置がないかも探しながら。

扉を閉め部屋の中から廊下に出たスバルの顔に、僅かながら笑みが浮かぶ。
同行するヒューズとは同じ軍属の身ではあるが、彼女は前線に出て戦う魔導師。つまりは兵士だ。
逆に、彼女に指示を与えたヒューズは後方支援。その中でも特に裏方に当たるエージェント。
彼から与えられた、まるで映画の中のスパイのような指示に、スバルの心は不謹慎ながらも浮き立っていた。

「(……~♪)」

エージェント・スバルが大活躍し、みんなを助けて大団円。そんな未来を夢想しながらスバルは捜索を続ける。
広い家の中を端から端へと進み、そして彼女はついにその扉を開いた。

そこは家の大きさに相当する、広い台所だった。
怪しい人影などはない。だが、入った途端に、それまでスバルの顔に浮かんでいた余裕は消し飛んだ。
そしてそれと入れ代わりに聞こえてくるのは――……、獣が発する唸り声の様な低い音。


 ◆ ◆ ◆


「(……暇だなぁ)」

ヒューズが家を出る際、君はできるだけ動かないようにとこなたは釘を刺されていたのだが、
体力も回復し、周りにも安全な人間しかいないと解ると、あれだけ高まっていた緊張感も次第に緩くなってきていた。
ソファの上から部屋の中を見渡しても、こなたの興味を引くような物は発見できない。
ゲーム機は勿論なかったし、DVDラックに収められているのも見知らぬ時代劇ものばかり……と、

「そういえばさ。あたしの支給品って、他はなんだったんだろう?」

最初に一つ拳銃を取り出したところでアルと出会った為に、他の支給品はまだ未確認だったことをこなたは思い出す。

「そうだね。じゃあ今のうちに確認しておこうか」

言いながら立ち上がると、アルはこなたのバックへと手を伸ばす。
そして、そこからゆっくりと取り出されたのは……、一本の大きな山刀――マチェットだった。
巨躯であるアルが持って、丁度釣合いが取れるぐらいの大きさで、鞘から抜くとその刃がギラリと光を反射した。
刃の背に当たる部分にはギザギザの鋸が刻まれており、その大きさと相まってまさに凶器といった様相を醸し出している。

「……う~ん。これはあたしには装備できません。って感じだなぁ。」
「……そ、そうだね。じゃあ、他にもないか見てみるね」

再びアルがバックの中に手を入れて引き抜くと、次に出てきたものは先程よりもさらに凶悪なものだった。

「(か、神殺し……!)」

こなたが胸中でそう思ったソレは、――巨大なチェーンソーだった。
今度の物は、アルが持ってもなお大きいと思わせるサイズがある。
こなたの胴回り以上もの太さのエンジン部分に、2メートルもの長さのチェーンを通すバー。
重さはゆうに20kg.程もあり、さらにこれを稼動させて振り回すとなると、相当の筋力が要求されると想像できる。

「……はは。これは絶対に無理。”こなたは装備できません”だ」
「……ハハ。ボクでもギリギリかも」

と、これでこなたに支給された物は出揃った。最初の拳銃も合わせて考えれば、これは当たりの部類に入ったろう。
もっとも、後の二つは威力はあるが、とても彼女に扱いこなせるような物ではなかったが。
アルが取り出した武器を改めてバックの中に仕舞って、ついでにと切れたストラップを修復していると、
そこに家の中を再チェックしていたスバルがふらりと帰ってきた。
彼女の顔色は先程よりも心なしか悪い様に見える。それをいぶかしむ二人に、彼女は――……。


 ◆ ◆ ◆


「……30分から、1時間ってところか」

先を焦がした枯れ草。土に刻み込まれた足跡。コンクリートの床に残った黒い煤。そして、壁にかかった乾いた血。
駅の隣りに開けた空き地に残っていた戦闘の痕跡を検分したヒューズは、それがあったであろう時間を推測する。

「(痛み分けだったみたいだな……)」

焦げた床から炭と化した繊維質を取り上げ、ヒューズはそう推測する。
土の上に残った足跡から推測するに、ここで戦闘を繰り広げたのはおそらく三人。そして最低でも内二人が大きく負傷。
壁際に残された血溜りの跡からは真っ赤な足跡が、焦げた地面の上からも黒い煤の足跡が伸びている事から、
お互いにどちらも死には至っていないらしい……。
足跡はどちらもすぐに途切れてしまっているために追うことはできないが、どちらも北東方向へと向っている様に見えた。
派手で特徴的な戦闘痕は様々な情報を、それを観察する者に伝える。
そして、それによりヒューズが確信したのが――、

「……何やってるんだ。アイツは」

此処に、さっきまで彼の親友であるロイ・マスタングがいたと言う事だ。
ヒューズは親友の愚行に、ポケットの中の発火布でできた手袋を握り締める。
燃料を使用せずに対象を直接燃焼させ、爆炎を起こす彼の能力の痕跡は、非常に特徴的で解りやすい。
もちろん、直接見た訳ではないからそれだけでは断言できない。他にも同等の能力者がいるとも考えられる。
だが、そんな可能性は床に転がった銀色のボタンが決定的な証拠となって否定していた。

「いつもいつも、勝手にでしゃばって来やがって……。ケツを持つ方の気持ちも考えろってんだ」

恐らくは斬撃を受けた時に落ちたのであろう、彼の胸にある物と同種のボタンを拾いながら、ヒューズはひとりごちる。
彼の親友であるロイの目的は組織の中でトップを目指す事であり、ヒューズの目的は彼をその位置まで持ち上げることだ。
だが、上に立つ者は怠慢なぐらいが丁度よい……と言うのに、正義感と責任感が人一倍強い彼の親友は、
度々勝手に現場に出てきては、自分で直接物事を解決しようとしてしまうのだ。
今回のコレも、その結果であろうことが容易に想像できる。

溜息を一つつくと、ヒューズは壁際に放られたままのデイバックを拾った。
ここに落ちているということは、おそらく親友の持ち物だったのであろう。
そして、これは彼が荷物を拾う余裕すらなくここから離れたことを意味している。

「……銃が二挺、か」

置き去りにされたバックの中から出てきたのは二挺の拳銃だ。しかしどちらも偽物で、実弾が出るものではない。
どちらも見た目はリアルな拳銃そのものなのだが、片方は水鉄砲。もう片方は銀玉鉄砲だった。
ランタンが抜き出されていた事から、やはりこのバックが親友の物だったということと、
そして、やはり彼は不運な男だったということを確認すると、もう一つ溜息をついてヒューズは立ち上がる。

「……お前の方が死んじゃあ、元も子もないだろうが」

壁に残された血痕や、付近の地面を穿つ金属片を見やれば、親友がどういった状態に陥っているか察するのは容易い。
だが、ヒューズは親友を追おうとはしなかった。追うとなれば、それこそ愚の骨頂だ。
彼は護るべき人間を多数待たせているのである。それを無責任に放っていくことはできない。

「死ぬなよ……」

最後にそれだけを言い残すと、ヒューズはその場所を後にして駅の構内へと向った。


 ◆ ◆ ◆


無人の駅構内で、列車のダイヤを手持ちのメモに書き写すと、ヒューズは調査も程々に仲間が待つ民家へと戻った。
螺旋王が実験と称するコレが始まって五時間足らず。夜も明けきれぬというのにもう殺し合いが始まっている。
しかも、錬金術師をはじめとしたビックリ人間達によってだ。
あんなものに襲われては、彼もその仲間達もひとたまりもないだろう。
それが、目を放していた内に仲間が死んでいたとなれば、なお最悪だ。

ヒューズは蒼い制服の裾を翻して走る。もうあの民家は近い。後一つ通りを超えればそこに辿り着く。
――と、ヒューズはある「匂い」に気付いた。

「……あ、あいつら。……まさか」

それは……、その匂いは……、その匂いが意味するものは。それが何を意味するのか彼はよく知っていた。
今までは至極冷静だったヒューズの顔色が変わる。最初は青褪め、次に赤く――。

「クソッ!」

一つ毒づくと、ヒューズは走る速度を上げて仲間の元へと急いだ。
近づくにつれ、その匂いもはっきりとしたものになる。そして……、やはりその匂いはそこから零れているものだった。



 ☆ ☆ ☆


「「「 おかえりなさーい 」」」

それが、息巻いて戻ってきたヒューズにかけられた三人の言葉だった。
三人の内の一人であるこなたは、頭巾にエプロン、片手にお玉。その姿を見れば、彼女たちが何をしていたかは明白だった。

「おかえりなさいじゃないだろうっ!」

カウンターで浴びせられたヒューズの剣幕に、三人は思わずたじろぎ、廊下を後退してしまう。
何で彼がこんなにも怒っているのか? それが三人には解らない。

「お前達、状況を考えろよ。俺達は隠れているんだろうが!
 それなのに、こんなに美味そうな匂いをプンプンと外に漏らしてちゃあ――バレバレだろうがっ!」

その言葉に三人の表情が「あー……」という感じになる。
言われてみればその通りで、隠れ家から朝餉の匂いを漂わせている潜伏者など聞いたこともない。
あまりにも素直なその反応を見て、潜伏時の心得をきっちりと叩き込み直そうと考えていたヒューズの肩が落ちた。

「……まぁ、仕方ないか。
 じゃあ、せっかくだしお呼ばれするか。腹も減ってるしな――飯にしよう」

その言葉に、三人の――特にスバルの顔が明るくなった。


 ☆ ☆ ☆


今朝の四人の朝食はこなた特製ジャガイモカレーだった。
最初に腹が減ったと言い出したのはスバルで、彼女はバックの中から大量のジャガイモを取り出して二人に見せた。
なんでも、それが彼女に支給された食料だったらしい。
でもそのままじゃ食べられないので、こなたがこの家の台所を使って調理するということになったのだ。

こなたはジャガイモの皮むきをアルに任せると、自分は台所を漁り使えるものがないか探し始めた。
その家はあまり無駄な物を溜め込まないらしく冷蔵庫はほとんど空だったが、いくつかの玉葱とカレー粉があったので
こなたはその時点で、メニューをジャガイモカレーと定めた。
皮を剥いた玉葱を手早く微塵切りにして、深い鍋の底で炒め始める。
本来ならここは時間を掛けたい所だが、そうも言ってられないので適当なところで水と調味料を加えて煮始める。
アルがジャガイモを剥き終わると、水を足して大まかにカットしたそれを加え、さらに煮込む。
そして、ジャガイモが煮えたら、アクを掬い取って後にカレー粉を放り込み、最後の一煮立ち。

あっと言う間に……ではないが、これでこなた特製ジャガイモカレー(ライスはないよ)の出来上がりである。


 ☆ ☆ ☆


「――おいしい。おいしいよ、こなたちゃん。――おかわり!」
四人の中でも特にたくさん。しかもバクバクと音を立ててジャガイモを貪っているのはスバルだ。
食べていると言うよりも、むしろ蹂躙されているといった表現が適切かもしれない。
大量に作られたジャガイモカレーは、昼にもとこなたが用意したものだったのだが、朝の内に完食されそうな勢いである。

「はい。慌てて喉を詰まらせないようにね」
言いながらお茶を差し出すのは、彼女とは対照的に一切食事を採らず、給仕に専念しているアルだ。
彼の身体は事情によりただの金属の鎧であるため、彼は食事をすることを必要とはしない。

「こなたちゃんもよく食べるんだぞ。じゃなきゃ大きくなれないからな」
帰ってきた時は不機嫌だったヒューズも何時の間にか上機嫌へと変わっていた。
子煩悩で、さらに家族思いであるため、この様なアットホームな食卓に心解されたのかもしれない。

「……いや、あたしもう成長期すぎてるし。てか、18歳だし」
ジャガイモを冷ましながらゆっくりと食べていたこなたが、ヒューズにそう答える。
そう。この中で一番小さく、下手をすれば小学生にも間違われかねない彼女だが、実はもう18歳である。
ある意味においては、もう大人と認められる年齢だ。

「――えぇっ! あたしより年上!?」(スバル・ナカジマ 15歳)
「……お姉ちゃんだったんだ」(アルフォンス・エルリック 14歳)
「……………………」(マース・ヒューズ 29歳)
三者三様の大げさなリアクションに、当のこなたは涼しい顔だ。
むしろ、最近はこういう反応も彼女は楽しめるようになってきている。


 ☆ ☆ ☆


「あのさ。ヒューズさんって、ウチのお父さんに似ている感じがする」
食事も終わりに近づいた頃、唐突にこなたがこんなことを口にした。言われたヒューズも敏感に反応する。

「へぇ、どんなところだ。格好よくて頼りになって、娘思いで最高のお父さんってところか?」
「ううん。女の子と食事してる時に、ニヤニヤしてるところ」

う……と、硬直。否定できない部分ではある。
「そ、それは……誰だってそうだろう。――って、アル。なんだその解るなぁって顔は!」
顔を真っ赤にするヒューズに対し、残りの三人はニヤニヤ顔だ。
まだ短い時間しか経っていないが、何時の間にかに四人は家族の様に仲良くなっていた。

真っ赤な顔の下で、ヒューズは一人安堵する。そして同時に、この三人を護ってやらなければと誓うのであった。


 ☆ ☆ ☆


……そう言えば、家族の写真をこいつらにはまだ見せていない。
それに気付いてヒューズは持っていたスプーンを置いて、手を懐に忍ばせるが……そこに写真はなかった。
何故かは解らないが、螺旋王に没収されたか何処かで失くしたらしい。そして、また別の事にも気付いてしまった。

「……アル。あいつらは、俺がいなくなった後も幸せに暮らしているか?」

それは、アルが連れて来られた時間では、すでに自分は死者となっているらしいということだ。
ならば気がかりなのは、そこで残された家族――妻と幼い娘の事だった。

「ヒューズさん…………」
ヒューズが死亡した時、アルと彼の兄はその近くにはいなかった。だからその時の詳しい事は知らない。
だが、その後に伝え聞いたことをアルは正直に彼へと伝えた。

「……そうか。あいつらが元気だったんならそれでいいんだ。
 にしても、二階級特進とはな。アイツよりも先に偉くなって俺はどうするんだ。ハハハ……」

せっかくの朝食だったのに、暗くしてスマン。とヒューズは神妙な顔をした三人に謝った。
そして、気持ちを振り払うかのようにジャガイモをかきこむ始めた彼に、こなたが静かに声をかけた。


「……こういう言い方がいいのかはわかんないけど。
 あたし、お母さんのことずっと好きだよ。
 あたしが小さい頃に死んじゃったけど、あたしも、あたしのお父さんもお母さんをずっと愛してる。
 だから、ヒューズさんの奥さんも。その娘さんも……」

こなたの言葉にヒューズの心が潤む。また、こんな素直な娘を持った彼女の父親を羨ましくも思った。
ありがとう。ただ、ありがとうとだけ、ヒューズはこなたに言葉を返した。
それ以上口を開けば、また別のものも一緒に零れてしまうと、そう思ったから……。


 ◆ ◆ ◆


和気藹々とした朝食が終わると、四人は気を引き締めなおして出立の準備を整えていた。
元々長く居座る予定でもなかったし、ヒューズが偵察によって持ち帰ってきた情報を聞くと仲間の安否が気になった。

「……じゃあ、まずはデパートへと向うんですか?」
スバルの確認に、ヒューズは頷く。当初は駅と列車を利用する事を考えていたが、駅で時刻表を見てその考えは覆った。
「ああ。さっきも言ったとおり、停車時間が20分もあるんじゃ待ち伏せが怖い。
 実際に駅周辺で戦闘が行われた形跡もあったしな。俺達四人じゃ、少しリスキーすぎる」

停車時間が20分あるということは、逆に言えば待ち伏せを受けた際に20分間は車中に釘付けにされるということだ。
すでに駅周辺での戦闘を確認している以上、他の駅でもそれが起こるという可能性は決して低くないだろう。

「ヒューズさん。大佐は……」
アルの言葉にヒューズは唸る。最優先で見つけ出したいが、それには手がかりが少なすぎた。
「怪我をしているなら、おそらくは病院。またはより近いデパートへとアイツは向うだろう。
 会えるかどうかは、アイツと俺達のどちらかに運があることを祈るしかないな」

「ハイお昼。残り物だけど」
キッチンから小走りで戻ってきたのはこなただ。
その腕に、人数分のジャガイモカレーが詰められたタッパを抱えている。
こなたの分は小さく、ヒューズの分は中くらい、スバルの分は特大で、残念ながらアルの分はない。

「忘れ物はないか、みんな?」
言いながら、ヒューズは腕時計で時間を確認する。手にはメモとペンを持っていた。
同様に、他の三人もその手にメモとペンを持っている。


――時間は5時59分。予定されている螺旋王よりの放送。その1分前であった。
その緊張の1分を、彼らは穏やかな朝を過ごした家の中で待つ。



 【F-4/民家/1日目-早朝(放送直前)】

 【チーム:引率の軍人と子供たち】
 [共通思考]
  1.主催者の打倒。またはゲームからの脱出
  2.首輪の解析、解除が可能な人物、技術、物を探す
  3.互いの知り合いや、ゲームに乗っていない者を探し仲間とする
  4.殺し合いはしない

 ※首輪から、会話が盗聴されている可能性に気づきました
 ※盗撮に関してはあくまで推測の域なので、確定ではありません
 ※螺旋王には少なからず仲間や部下がいると考えています
 ※それぞれの作品からの参加者の情報を共有しました


 【マース・ヒューズ@鋼の錬金術師】
 [状態]:健康、腹一杯
 [装備]:S&W M38(弾数5/5)
 [道具]:デイバック(×2)、支給品一式(×2、-ランタン×1)、ロイの発火布の手袋@鋼の錬金術師
      S&W M38の予備弾数20発、エンフィールドNO.2(弾数5/6)、短剣×12本
      制服のボタン(ロイ)、単眼鏡、水鉄砲、銀玉鉄砲(銀玉×60発)、ジャガイモカレー(中)
 [思考]:
  基本:主催の打倒。または脱出を目指して行動。仲間を集める
  1.デパートや病院等、人が集まりそうな場所を目指す
  2.ロイ・マスタングを探す
  3.首輪や脱出に関する考察を続ける


 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
 [状態]:健康、腹一杯
 [装備]:リボルバー・ナックル(左手)(カートリッジ:6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
 [道具]:デイバック、支給品一式(食料-[大量のじゃがいも、2/3][水])、ジャガイモカレー(特大)
      ランダムアイテム不明(本人確認済み)、予備カートリッジ(×12発)
 [思考]:
  基本:仲間を集めて事態の解決を目指す
  1.ヒューズに従って行動する


 【アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師】
 [状態]:健康
 [装備]:なし
 [道具]:デイパッグ、支給品一式
 [思考]
  基本:仲間を集めて事態の解決を目指す
  1.ヒューズに従って行動する
  2.兄やロイ・マスタングを探す
  3.こなたを護る

 ※アルの参戦時期はヒューズ死亡後のいずれか


 【泉こなた@らき☆すた】
 [状態]:右頬に銃創、疲労・小、腹一杯
 [装備]:
 [道具]:デイバック、支給品一式、マチェット、チェーンソー、ジャガイモカレー(小)
 [思考]
  基本:死にたくないので助かるよう行動する。みんなと再会したい
  1.ヒューズに従って行動
  2.柊かがみ、柊つかさ、小早川ゆたかを探す

 ※こなたの参戦時期は原作終了後



 【単眼鏡@現実】
 片目に当てて使用する望遠鏡。
 集光機能付きで、暗い場所でも僅かな光さえあればクリアに見ることができる。

 【チックの鋏@BACCANO バッカーノ!】
 ガンドールの拷問係であるチック・ジェファーソンが拷問の際に使用している鋏。
 特に何の変哲もない既製品。

 【大型マチェット@現実】
 刃渡り50センチ程の大きな山刀。主に山中でのサバイバル用具として使われる。
 グリップにナックルガード付き。

 【大型チェーンソー@現実】
 重さは20kg.を超え、バーの長さも2m.を超える大型のチェーンソー。

 【水鉄砲@現実】
 見た目は拳銃そのもの。だけど中身は水鉄砲。子供用の玩具で威力はない。

 【銀玉鉄砲@現実】
 見た目は拳銃そのもの。だけど中身は、バネの力で銀玉を飛ばす玩具。
 銀玉は粘土製で当たっても痛くない。弾は全部入っており、振ればジャラジャラと音がする。


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076:美少女と甲冑、他 スバル・ナカジマ 108:ちぎれた翼で繋いだ未来へ
076:美少女と甲冑、他 マース・ヒューズ 108:ちぎれた翼で繋いだ未来へ
076:美少女と甲冑、他 泉こなた 108:ちぎれた翼で繋いだ未来へ
076:美少女と甲冑、他 アルフォンス・エルリック 108:ちぎれた翼で繋いだ未来へ





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