あの馬鹿は荒野を目指す ◆1sC7CjNPu2



 ドモンは喜んでいた。
 戦いが始まってすぐに、ドモンは双剣の男の技量が自分を下回るものだと気がついた。
 瞬時に勝敗を決めることもできそうであったが、ドモンは様子を見ることにした。
 男が双剣を手にした時の、目にも留まらぬ早業。ドモンはそれを警戒することにしたのだ。
 そして、その判断がドモンを喜ばせることになった。

 ――なるほど、弱者と戦うという事はこういう意味だったのか!

 既に戦闘が始まって数十分が立った。その数十分の分だけ、双剣の男は少しずつであるが確実に強くなっていた。
 もちろん劇的な変化ではない。しかし、成長したというのは確かな事実として目の前にあった。

 ――そうだ、師匠や兄さんが俺にしたことだ。こういう意味だったんだ!

 ドモンは、かつての師や兄の姿を思い出していた。彼らはドモンの前に立ちふさがる壁となり、ドモンをその壁を乗り越えるたびに強くなった
 師と兄の姿が自分に、かつての己の姿が双剣の男に重なった。
 弱者と戦うことは、ただ俺のを高めるだけのものではない。戦って、高みへと導くことなのだ。
 風浦可符香の言葉は正しかった。ドモンはそう、確信した。

 ■

 戦闘は、いつの間にか稽古にすり替わっていた。
 士郎は当初、遊ばれていると思った。
 初見からの予想通り、襲撃者はこちらを圧倒的に上回る実力の持ち主だった。
 しかし、襲撃者は士郎を倒そうとしない。

 ――遊ばれているならけっこう。その分だけ、玖我が子供を探す時間が稼げる。

 そう士郎は考えて襲撃者の遊びに乗り……次第に自分が稽古を受けているのだと気づいた。
 セイバーとの稽古ほど苛烈なものではない。しかし襲撃者はこちらの一手を丁寧にいなし、こちらが防げるぎりぎりのタイミングで反撃をしかけてくる。
 上手くいった。そう思う一撃を受けるたびに、襲撃者の口元が歪む。嘲笑ではなく、よくやったという感じの清々しい印象を受ける笑みだ。
 士郎には、襲撃者の意図が読めなかった。
 急に現れ襲い掛かかってきたのは、この稽古のためだと推測は出来る。しかし、士郎を鍛える理由はまるで分からなかった。

 ――少なくとも、殺し合いには乗っていないとは思うけど。

 士郎は段々と苛立っていた。
 いきなり稽古をつけられる理由が分からないのもそうだが、この稽古の時間が『もったいない』と感じてきたのだ。
 玖我が探しに行った少年は、今どうしているのか?
 それだけではない。今、この瞬間にも助けを求めている人がいるかもしれない。弱者に襲い掛かろうとする人間がいるかもしれない。
 士郎も想定の話だとは分かっている。しかし、可能性がないわけではないのだ。
 故に、この時間は士郎にとって浪費でしかない。

 ――これ以上、ここで無駄な時間を食ってられない。

 そう決心してからの士郎の行動は、迅速であり自殺行為であった。
 この稽古を終わらせる条件は実に簡単だった。どちらか一方が戦えなくなれば、それで終わる。

 だから、士郎は争いの渦中において干将と莫耶を手放した。

 眼前には襲撃者の拳が迫っている。その拳は、士郎の頭をザクロにように吹き飛ばすかもしれない。
 それでも、士郎は動かなかった。
 ■

 ドモンの繰り出した拳は、まさに目と鼻の先で止まっていた。
 無論、ドモンが寸止めしたのだ。
 双剣を捨てた時は何かの布石かと思ったが、どうやら違ったようだ。

 「……お前の度胸は認めてやろう。だが、敵を目の前にして武器を捨てるとは殺してくれと言っているようなものだぞ」
 「お前は殺し合いに乗っていないんだろ。なら、問題はない」

 男のまっすぐな眼光を受け、ドモンはゆっくりと拳を下ろした。
 気づかれないように、こっそりため息をつく。

 ――やはり、俺はまだまだ未熟だ。

 ドモンが未熟としたのは、殺し合いに乗っていないことを見抜かれたことだ。もう少し鍛えてやろうと思っていたため、よけいにくやしく感じる。
 途中から男に苛立ちが生じたのは、鍛えようとする意図に気づいたからだろう。
 相手からすれば、余計なお世話でしかないのだから。

 「まあいい、自分の未熟さはよく分かっただろう。ならば今度から無闇に挑発するのは止めておけ」
 「挑発って、なんのことだ」

 男が軽く首をかしげる。
 ドモンは多少ムッとし、不機嫌さを含んだ声で言った。

 「『ドモン君を置いて俺を追っかけて来たのかよこんな危険な場所で無力な子供を1人きりにするなんてすぐ戻って守らないと』、と言ってたような気がするが?」
 「え、ああ確かに言ったけど」
 「このネオ・ジャパンのガンダムファイター、ドモン・カッシュを捕まえて無力な子供だと?それが挑発以外の何だというんだ!」


 何を言っているのか分からない。男はそんな表情をした後、急に焦りだした。

 「ちょっと待ってくれ、あんたドモン・カッシュっていうのか!?」
 「ああそうだ。……俺はガンダムファイト第13回大会の優勝者だぞ、本当に知らないのか?」

 男は考え込んでいるようで、ドモンの言葉を聞いてはいないようだった。

 ――かなり知られているかと思ったが、自意識過剰だったか。

 ふと思い出せば、エドも可符香も自分を知っているようではなかった。
 ドモンは急に恥ずかしくなってきた。なんというか、自称有名人が実はそんなに有名人じゃないと気づいた時のような感覚だろうか。
 微妙な気まずさを感じ、ドモンは早々に立ち去ることにした。

 ――まあ、かなり恥ずかしい告白が知れ渡っていないのは幸いか

 ■

 「このネオ・ジャパンのガンダムファイター、ドモン・カッシュを捕まえて無力な子供だと?それが挑発以外の何だというんだ!」

 士郎は襲撃者――ドモンの言葉を聞いて呆然としていた。
 聞き間違いではないかともう一度確認したところ、ドモンの答えは同じだった。
 この男が嘘をついていることも考えられるが、とてもそうには見えなかった。

 ――玖我が一緒にいた子供が、玖我に偽名を名乗っていたのか?

 もしそうだとしたら、何のためだ?その子供には名前が知られて困る理由でもあったのか?
 士郎は思考の海に溺れていた。助けようとする対象だったまだ見ぬ少年が、急に不穏なものに変わったからだ。
 もっとも、士郎は早々に救助されることになった。
 考え込んでいる士郎に、ドモンがデコピンを打ち込んだのだ。

 「……っ!!」
 「隙だらけだぞ」

 星が見える、スターだ。かなり痛い。
 悶絶している士郎を尻目に、ドモンが告げる。

 「俺はこれからこの会場を戦って回る。お前はさっきの女と合流しておけ」
 「な、に?」

 士郎がその意味を聞こうとする前に、ドモンは高く飛び上がっていた。そして、そのまま高速道路の上に消えた。
 おそらく士郎に告げたように、戦って回るつもりなのだろう。

 「何考えてんだ、あいつは」

 急に現れて襲い掛かり、勝手に指南して風のように立ち去っていった。
 ふと、ゲームの開始直後に出会ったシュバルツという覆面を思い出した。
 ひょっとしたらドモンの知り合いかとも思ったが、確認するにも相手はもういない。

 「戦って回る、か」

 士郎には、ドモンのその言葉が引っかかっていた。
 つい先ほど士郎にしたように、襲い掛かって指導して回るということだろうか?
 あれほどの実力を持つなら、多少の敵と出会っても問題はなさそうであるが。

 「言峰とか人間ならまだどうにかなるけど、ギルガメッシュやランサー相手じゃ無傷ですまないぞ」

 最悪、ドモンが返り討ちになる可能性だってある。
 止めなければいけない。もっと慎重に行動しなければ、彼が危ない。
 士郎はドモンを追いかけようと足を踏み出し――玖我なつきとの約束を思い出した。

 ――玖我が『ドモン』だと思っている少年はどうする?

 名簿にはドモンという名前は一つしかなく、先ほどの男は嘘を言っているようには見えなかった。
 それだけで怪しいと決めつけるのは早計だ。こんな状況に放り込まれて混乱して、偽名を名乗った可能性もある。
 けれども、もしその少年が殺し合いに乗っているのなら玖我が危ない。
 手っ取り早く確認するには、直接会って聞いてみればいい。
 しかし、そうしたらドモンを追うことは難しくなる。

 ――俺は、どうすればいい?

 少し考え、士郎は高速道路に登ることにした。
 ドモンがどの方向へ走っていったのか。それを確認しなければ話にならないからだ。

 ■


 ドモンは高速道路を駆けていた。
 先ほどの男女と出会う前と同様に、目立つように移動しているのだ。
 男と鍛錬したことで少々疲労してはいたが、ドモンにはたいした問題ではなかった。

 ――しかし、いつもより疲れている感じがするな。

 多少違和感のある疲れであったが、鍛錬の後の疲れと考えれば気持ちいいものである。
 ドモンは双剣の男との稽古を思い出し――急に立ち止まった。
 慣性の法則に従い、靴が道路と摩擦しながら滑る。完全に止まると、ドモンはバッと振り返る。

 「名前を聞いていなかったな……」

 誤魔化すように、呟く。
 それからドモンは頭を抱えてしゃがみ込んだ。名前を聞く以外に、色々と馬鹿をやっていたと気づいたのだ。
 自分は仲間を集めるのではなかったのか?
 ある程度の力量があるとはいえ、あの男を放っておくのは違うだろう。それに、情報の交換も何もしていない。

 「……今から戻るのもな」

 どうにも気まずい。流石に情けないのでドモンは口にしなかった。
 とりあえず、ドモンはポジティブに考えることにした。
 双剣の男は、あの銃使いの女と合流するはずだ。そうそうやられはしないだろう。
 一通り回って、また会えばいいのだ。

 ――人間、誰しも間違いはある。次で正せばいいのだ。

 そう自分を誤魔化し、ドモンは再び走り出した。

【A-4 川岸 一日目 早朝】

【ドモン・カッシュ@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:己を鍛え上げつつ他の参加者と共にバトルロワイアルを阻止し、螺旋王をヒートエンド
1:積極的に、他の参加者にファイトを申し込む (ある程度力を持った者には全力、ある程度以下の者には稽古をつける)
2:ゲームに乗っている人間は(基本的に拳で)説き伏せ、弱者は保護する
3:一通り会場を回って双剣の男(士郎)と銃使いの女(なつき)と合流する
※本編終了後からの参戦。
※参加者名簿に目を通していません
※地図にも目を通していません。フィーリングで会場を回っています
※正々堂々と戦闘することは悪いことだとは考えていません
※なつきはかなりの腕前だと思い込んでいます。
※高速道路上を走っています。方向は次の書き手にお任せします。

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(大)
[装備]:デリンジャー(2/2)@トライガン
[道具]:支給品一式、暗視ゴーグル、デリンジャーの予備弾20
[思考]
1:ドモンがどこに行ったのか確認
2:1が確認できた場合の対応は決めていません
3:1が確認できなかった場合、なつきとの約束の場所に向かう
4:イリヤの保護。
5:できる限り悪人でも救いたい(改心させたい)が、やむを得ない場合は――
※投影した剣は放っておいても30分ほどで消えます。
真名解放などをした場合は、その瞬間に消えます。
※本編終了後から参戦。
※士郎はなつきが凄まじい銃の腕を持っていると思い込んでいます。
※ドモンと名乗った少年(チェス)に軽度の不信感を持っています
※ドモンが弱者にも戦いを挑むつもりだとは気づいていません。


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074:片道きゃっちぼーる 衛宮士郎 103:片道きゃっちぼーる2・伝言編
074:片道きゃっちぼーる ドモン・カッシュ 124:来るなら来い!  復讐のイシュヴァール人!





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