希望の船、絶望の城 ◆tu4bghlMIw



「ジャグジーはん、船のエンジンってどうやって入れればええんかなぁ?」
「ふ、ふふふ藤乃さん!! 止めましょうよ、無理ですって!!」


隣でジャグジーが情けない声を出してうろたえている。静留は艶やかな笑顔の裏で彼について考えていた。
ジャグジーと出会って数時間、ある程度の人柄は掴めて来た。
彼は凄く純真で、そして臆病な人間。
だけど――強い。涙と震える声の裏側にあるのは紛れもなく、いくつもの修羅場を潜って来た強者の証。

ただ彼の腕っ節に関しては、正直心もとない。
自分がその気になれば三秒と掛けずに切り刻んでナマスにする事も可能である。
とはいえ、強さなんて曖昧な基準。
腕力や様々な特殊能力にしても最大の武器が最大の弱点になる事もある。
力が強いだけの者なんていくらでもいるのだ。

だけど、心が強い者は少ない。
初対面の人間に弱い人間を守るためならば、自分は人殺しだってする、などと告白出来る人間がどれだけいるだろう。
普通そういう事は思っていても言わないもの。
とんでもないお人よし……こういう状況では長生きしそうに無いタイプだ。

しかし山がそこにあるから登るのだ、と言ったのはどこの登山家だっただろう。
船がそこにあれば動かしてみたい、と思うのはある種の道理。
うちの考えはソレほど突飛だったのか、静留は少しだけ不思議に思った。



静留とジャグジーはクルーズ客船の中心、メインブリッジに来ていた。
浮かぶ絶景、様々な機器。もちろん静留に船の構造など分からない。故に総動員するのは勘。
手当たり次第触ってみて反応を見る。

「だ、駄目ですよ!! 勝手に触ったら怒られちゃいます!!」
「怒られるって……こないところに放置するほうが悪いと違うん?」

ジャグジーの言葉を話半分で受け流し、静留の探索は続く。
このガラスに覆われたメーターはなんだろう。そもそもこの規模の客船は何を燃料に動くのか。
根本的な知識が足りない。だから触れて確かめる。
別にスイッチを押したらミサイルが発射されたり、いきなり船が自爆したりする訳も無い。彼は心配し過ぎなのである。
人が造り出した機械だ。ある程度の簡略化はされているだろうが、素人でも分かる部分は必ずあるはずなのだ。

「ん……」

自らのデータベースでは覚束ない計器類が立ち並ぶ中、操舵用のアレ(よく映画などで船長が握っているハンドルのようなもの)の近くに明らかに妙な一角があった。
例えるならそこだけ車のキーを刺す部分を移植して来たような感じ。
もっと言えばデパートの屋上にある、百円を入れると動く変な機械の硬貨入れの部分だけ鍵穴に挿げ替えたような感じだ。
ソレはシックなデザインの室内において、分かり易いくらい異様な雰囲気を放っている。
なぜなら――


「なぁ、ジャグジーはん」
「は、はい」

静留とジャグジーはその明らかに後から付け足した感に溢れた物体を見下ろしながら顔を見合わせる。

「これ、なんだと思います?」
「……鍵……穴、じゃないですかね」
「やよねぇ……」

もう一度その"鍵穴"のような物が付いた物体に視線を移動。若干、形自体は歪ではあるが確かに鍵を刺すべき場所なのだろう。
そして考える。
おそらく自分達の頭に浮かんだ疑問は全く同じ筈。
だって、これはあまりにも……ちょっと、なぁ。

仕方なく静留は切り出す。考えている事は同じ。ならば、いつまでもモヤモヤしたままでいる意味も無い。
というか、とりあえず口に出してしまいたい。このままスルーし続けるのはどうにも困難だ。


「なぁ」
「はい」
「なんで渦巻きみたいな模様がついてるん?」
「…………それは、ちょっと……分からないですね」


二人は鍵穴を中心に右回りの螺旋を描く計器を眺める。そして、小さく溜息をついた。
沈黙が場を支配した。




だが、その時。
背後から紙束をグシャグシャにしたような音が響いた。
ノイズ。それは人の声を真空管、アンプを通して増幅する際に流れる独特の空震。

ブリッジの上部設置されたスピーカーを通して行われる船内放送の合図。
静留とジャグジーはすぐさま反応した。突然の襲撃者を迎え撃つが如く、音の方向へと向き直る。
数秒後、放送が始まった。



"船内におられます、お客様方各位に申し上げます。
 本日はご乗船頂きまして、真にありがとうございます。
 私――案内役を勤めさせて頂く、高遠遙一と申します……"




 ■


「……おい、デイパックの口ちゃんと閉めてあるか? 大丈夫か? ピッタリと密封してあるか?」
「なんでよーあんな所に閉じ込めるなんて、ポルヴォーラが可哀想じゃない」


アレンビーがぷうと頬を膨らませて反論する。
ご機嫌ナナメ、女性の心の動向には誰よりも敏感な事を自負しているキールでなくても、十分に分かる露骨な不機嫌のサイン。
確かに俺としてもレディにそんな顔はさせたくは無い。
だけど状況が状況だ。何しろ争点になってるのがポルヴォーラ。命に関わるなんてレベルを三段階ほど突き抜けている。
ここに居合わせたのが俺だった奇跡に感謝して貰いたいくらいだ。

「まったくよぉ、アレンビー。何度言やぁ分かるんだい? アイツは爆弾。それ以上でもそれ以下でも無いんだっつーの。
 見た目に騙されてギューッと抱きしめでもしたら、その瞬間『ドカン!!』だ。
 爆死するにしても一回じゃ足りねぇ、三回も四回も十回だって死ねるクラスの爆発さ!」
「爆発させなければいい話でしょ、キール。それにあなたも同じ動物同士、きっと良いお友達になれるわ」


未だ不満タラタラな表情のままぶー垂れるアレンビー。
背中に背負っているガッシュの深刻そうな表情とはあまりにも対照的。

彼女の機嫌が悪いのにはもちろん訳がある。
数分前、デイパックにポルヴォーラをしまうか否かで大論争を繰り広げられたのだ。
頭の上に爆発物を乗っけたまま、スキップしながら歩を進めるアレンビーにキールが忠告を促す、という形で。
結局、最終的にはアレンビーが折れた。
俺が無理やりに、それでも極めて慎重にデイパックにポルヴォーラを突っ込んだ時の彼女が見せた極めて嫌そうな表情は印象深い。
いや、まぁそういう所こそ可愛いと言えるんだが。もっとも、今の発言だけは頂けないけどな。


「分かってない、分かってないねぇアレンビー!! あんな爆弾生物と高貴なる生き物の俺様を同一視するなんて!!
 レディにあるまじき失態だぜ?」
「どっちも愛玩動物じゃない。……それにポルヴォーラの方がそんな事言うキールよりよっぽど可愛いわ!」
「おい、おぬしら――」
「聞き捨てならねぇなぁ、アレンビー!!」
「何よカラスの癖に!!」


注意の喚起は文句の言い合いに、そして口論というか口喧嘩のレベルにまで発展する。
ギャアギャアと互いを罵り合う両者。
黒羽の鳥と青髪の美少女が取っ組み合いの喧嘩をする異様な光景へのカウントダウン。
改めて見なくても非常識な集団である。

個々人の主観に文句を付けても所詮議論は平行線に過ぎない。
もしこの場にアレンビーとキールの二人しか居なかったならば、おそらくこの醜い言い争いは放送が始まるその時まで続いただろう。
両者共に熱くなったら止まらない、分かり易く言えば熱血バカな側面を持ち合わせている。
ただ一つ違ったのは――彼女達は二人?組では無くて"三人?組"だった事である。


「いい加減にするのだ、おぬしら!!」
「あ……」


その呟きはどちらのものであったのだろう。
母音一つによって表現されたその言葉から二人の心情を抜き出すとすれば、おそらくソレは――忘却、の一言で言い表す事が出来るのではないか。

陽が、昇る。もう朝だ。
暗闇は姿を消し、存分に光を浴びあらゆる物体が元の色彩を取り戻す。
そう、だから二人の眼にも声の主の表情がよく見えた。
アレンビーの背中、凄まじい形相で両者を睨み付ける――ガッシュの姿が。




数分後。
アレンビーとキールはガッシュから説教を受けていた。
怒髪天。ガッシュは金色の髪を震わせて二人の前に腕を組み仁王立ちしている。
一方で、怒られる立場にいる二人の心境は同じ。

つまり――

『どうして"私(俺)"が怒られなきゃならないんだ。悪いのはあっちなのに』


両者のぶすっとした態度は変わらない。
ガッシュは小さく一回溜息を付くと、二人に向けてもう一度状況の確認を求めた。

「全く……おぬしらは事の重大さが分かっていないのか」
「まぁ、一応は……」
「私達は一刻も早く清麿やドモン、ジンを探さなければならないのだ。それに――」
「……ああ、さっきの男の人の言っていた事でしょ?」

地面に座らされていたアレンビーが呟く。
ポルヴォーラを巡ってアレンビーとキールが大立ち回りを披露したこれまた数十分前。
アレンビー一行はクルーズ客船の入り口付近で『高遠遙一』と名乗る男性と出会っていた。
彼は三人にある"重大な情報"を提供して来たのだ。

「ああ、"希望の船"とか言う奴だろ。人を探して歩き回るなら一緒にソレも宣伝してくれって言ってたねぇ。
 にしてもあんな気が弱そうで貧弱な男にしちゃあ大胆な事を考えるもんだ」
「でも悪人には見えなかったし、凄い考えじゃないかな。礼儀正しくて良い人そうだったし」

出会った直後、彼は三人を船内へと誘った。
この船をベースに人を集め、大きな力を持ったグループを作りたい、彼はそう語った。
だが探し人がいるためその提案には乗れないと断ると、それではこの船の事を宣伝してくれないか、と頼まれたという訳。

「うむ。この状況にも関わらず誰よりも先に他の人間を率いて行こうとするリーダーシップ、中々大したものなのだ」
「うん、立派。あと……何だっけ。何か変な事も言ってたよね、"個人的なメッセージ"だっけ」
「あー言ってたな。確か……」

キールは思案する。記憶の扉をこじ開ける。
大体どんなニュアンスの言葉を言われたかならば、パッと思い出す事が出来る。
ただ完璧にその内容を再生するとなると別だ。
男が自分達との会話のラスト、"必ず"一緒に伝えて欲しいと念押しまでして来た事項。
それは――

「『金田一君、明智君、剣持君、一時休戦と行きましょう。君達との勝負はここから脱出してからと言う事で』だったか」






【F-3/都市高速道路上/1日目/早朝】

【アレンビー・ビアズリー@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:健康
[装備]:背中にガッシュ、右手にブリ、左手にランタン
[道具]:支給品一式、ブリ@金色のガッシュベル!!(鮮度:生きてる)
     爆弾生物ポルヴォーラ@王ドロボウJING
     不明支給品1~3(本人確認済み、少なくともブリよりリーチの長い近接武器は入っていない)
[思考]
基本思考:螺旋王にドモンとダブルゴッドフィンガー!
1:高嶺清麿を最優先で捜索!
2:ドモン及びジンを捜索!
3:豪華客船にゲームに乗っていない人間を集める
4:悪いヤツにはビームブリをブチかます!
5:強い人が居たら、ファイトしてみたいと心の片隅では思ってたり……
[備考]
※いきなりキールに口説かれてから今までノンストップなので、名簿の確認はまだ。
※シュバルツと東方不敗は死人と認識。
※キール、ガッシュと情報交換済み
※高遠を信用できそうな人物と認識。

【キール@王ドロボウJING】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、ジンの仕込みナイフ@王ドロボウJING
[思考]
基本思考:とりあえず、さっさと会場から逃げ出す
1:仕方ないので高嶺清麿を探してやる
2:豪華客船にゲームに乗っていない人間を集める
3:アレンビーと二人でウエディングブリに入刀したい
4:ジンも探さしてやるか
5:他にも女性が居たら口説くつもり、野郎には興味なし

[備考]
※いきなりアレンビーを口説いてから今までノンストップなので、名簿の確認はまだ。
※アレンビー、ガッシュと情報交換済み
※高遠を信用できそうな人物と認識。


【ガッシュ・ベル@金色のガッシュベル!!】
[状態]:健康、おでこに少々擦り傷
[装備]:赤い魔本@金色のガッシュベル!!
[道具]:支給品一式、ウォンのチョコ詰め合わせ@機動武闘伝Gガンダム
[思考]
基本思考:螺旋王を見つけ出してバオウ・ザケルガ!
1:なんとしてでも高嶺清麿と再開する
2:豪華客船にゲームに乗っていない人間を集める
3:ジンとドモンを探す

[備考]
※高遠を信用できそうな人物と認識。



 ■


「なぁ」
「はい」
「……どう思う?」
「正直……信用できるか、難しい所だと思います」
「……私もやわ」


高遠遙一と名乗った男の放送が終わってから数分、静留とジャグジーは未だ船のブリッジにいた。

放送の内容は大雑把に説明するとこうだ。
まず彼、高遠洋一はゲームに乗っていない事を明示した上でこの船を主催者側に対する一大拠点にするつもりだと宣言した。
確かに移動可能であり、なおかつ数々の設備を備えたこのクルーズ客船は人が立て篭もるには絶好の場所だろう。
だが同時にそんな堂々と螺旋王に対して反旗を翻すような行動を取って大丈夫なのか、そんな疑問も当然ながら湧き上がる。

しかし彼は続けて「おそらくこの船は動かされる事を前提に設計されている。
その証拠としてブリッジの舵の隣に分かり易い鍵穴があった。そしてその鍵はどうも他の参加者に支給されているらしい」とも言っていた。
つまり彼の望みは『出来るだけ多くの参加者にこの船の事を宣伝し、ここを脱出を目指すものの本拠地にしたい』という物だった。
平行して豪華客船の起動キーの捜索も頼みたい、との事。加えて既に何人か他の参加者にも協力を要請したらしい。


「難儀やなぁ。この放送、どう考えてもうちら当てやろ?」
「……ですね」

静留は逡巡する。それは明らかに自分達に対するメッセージである。
高遠遙一という人間がどんな人物かは分からない。
名前、そして先程の放送を聞く限りで判明する情報は精々日本人である事ぐらい。
元の世界で何をしていた人間なのかは一切不明だ。

そう、精確な身元は分からない。
元の環境でどんな人間だったかなど自由に偽れる。
英雄だった人間が"生き残る"為に殺人鬼に身を窶す可能性も、凶悪な殺人犯だった人間が"生き残る"為に先頭を切って脱出を目標に動く可能性も共に孕んでいる訳だ。
とはいえ――
うちにとって多くの参加者がこの場所を目指して集まって来るのは非常に好都合。


「まぁいいわ。行きましょか」
「へ……それって」

ジャグジーが間抜けた表情を浮かべる。
予想外。その三文字を体現したような声色で奏でる。

「どちらにしろ、ここには仰山人間が集まるんやろ? とりあえず適当な所で戻って来るのは悪くないやろ。
 案外、ジャグジーはんの探し人やなつきもやって来るかもしれんしなぁ」
「なるほど! ……で、でででも! 逆にゲームに乗った人間ばかりがやって来る可能性もありますよ!!」

ジャグジーの不安、いやどちらかと言えば男の頼みを聞くことに対する拒否感か。どちらにしろ的を射ていると静留は思った。
このゲームには明らかに常人とはかけ離れた能力を持つ参加者が多数参加している。
希望を掻き集めたはずの船が殺戮パーティの会場となる可能性もある。
とはいえ、情報が伝達されるのはある程度信用に足る人物が主なはず。

彼のこの言い分も臆病風に吹かれた訳ではなく、信用がいかないかもしれない情報を流した場合の危険性を考慮した発言に思えた。
ただ、ゲームに乗っていない人間が主に集まる場所、というのは非常に魅力的ではある。
自分達が流した情報のおかげでなつきと再会出来る可能性が高まるかもしれない。

仕方ない。静留は若干の罪悪感を覚えながら決心した。
少しだけ卑怯なやり方だろうが、今回だけは彼の"心の強さ"を利用させて貰うとするか。


「そん時はほら――ジャグジーはんがうちを守ってくれるんやろ?」


予想通りジャグジーはうろたえる。クリティカルヒット、まさにぐうの音も出ない、という感じ。
そ先程自らが強く言い切った言葉をそのままオウム返しされては彼が取れる行動はもはや限られてくる。
あとは最後の一押しで――


「まさか口からでまか――」
「そ、そんな事はないです!! 何があっても静留さんは私が守ります!!」


瞳を涙で塗らしてジャグジーが大声で言い切る。
頬は赤らみ、瞼から流れ落ちた液体が顎まで伝い流れる。
ここまで面と向かって言われるとさすがに確信犯気味だった静留も嬉しくなった。
最初はどうなるかと思ったが、十分に頼もしいではないか。

「ほな、決定やな」
「は、はい……あの……そういえば静留さん。ずっと気になっていたんですけど、"ソレ"なんですか?」
「ん……ああ、これな。これは――」

ぽんと手を叩き、ブリッジを出て行こうとする静留。
だがここでジャグジーがとある事に気付いた。いや、ようやく突っ込んだと言った方が正しいか。
静留は部屋でシャワーを浴びてからずっと妙な物体を首からぶら下げ、妙な靴を履いていたのだ。

「こっちは元居た場所を思い出させる、懐かしい人の声が入ったものやね……さすがにボリュームは切ってあるんやけど。
 んでこっちがローラースケート。物凄いスピードで移動が可能、とか何とか」

そう呟くと静留は掛けてあったヘッドホンを掴むと名残惜しそうにソレをデイパックにしまった。
ジャグジーは静留の見せた物憂げな表情に一瞬、違う人間を見ているような気分になった。

「はぁ……そうですか」
「ジャグジーはんも支給品の確認はしたんやろ? 自分の身を守る武器ぐらいは準備しておいた方がいいんやないか?」
「……いや、それが……ですね」

支給品、と言う言葉を聞いた瞬間ジャグジーは気まずそうな表情を浮かべる。
静留は疑問に思う。それほどハズレの道具を引いたのだろうか。
ただ、自分に支給されたヘッドホンも大して役に立つ道具ではないし、もう一つの支給品も力はあるものの使用状況は激しく限定される。
大当たり、と手放しで喜べる引きでは無かった。ジャグジーのソレもまさか何もかもがハズレ、という訳でもあるまいに。

「重いんですよ」
「?」
「ちょっと在り得ないくらい重い銃とか……料理酢とか……」

そう呟きながらジャグジーがデイパックから取り出したのは、よくぞまぁここまで無骨な一品を造り上げたと感心したくなるような大型の銃だった。
説明書によると『ワルサーWA2000』と言う名前の銃らしい。とりあえず、手に持ってガン・ファイトに興じる武器としては不便と言わざるを得ない。
台座やスコープが付いているからにはおそらく狙撃銃なのだろうが……。

「……ジャグジーはん、やっぱりうちが前に出て戦おうか?」
「いえ、が、頑張ります」
「…………泣いたらあきまへんで」

訂正。
やっぱり「泣いてない、泣いてないよぉ」と泣きながら愚図つく彼を見ていると、うちがある程度は頑張らないといかんなぁ、と思えてくる。
まぁ、何よりもなつきが最優先であるという事は確定事項なのだけれど。



【F-3/道路/1日目/早朝】

【藤乃静留@舞-HiME】
[状態]:健康
[装備]:船で調達した洋服、雷泥のローラースケート@トライガン
[道具]:支給品一式、風花学園高等部三年女子制服@舞-HiME、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ、ランダムアイテム1(本人確認済み)
[思考]:
基本思考:なつきを守る。襲ってくる相手には容赦はしない。
1:なつきを探す事を最優先する。
2:なつきの事を知っている人間を探す。
3:豪華客船にゲームに乗っていない人間を集める。

【備考】
※「堪忍な~」の直後辺りから参戦。
※マオのヘッドホンから流れてくる声は風花真白、もしくは姫野二三の声であると認識。
(どちらもC.C.の声優と同じ CV:ゆかな)

【補足】
【マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
マオがいつでも付けているヘッドホン。C.C.(ロワ未参加、CV:ゆかな)の様々な声がエンドレスで流れ続けている。
C.C.に対する狂気じみた愛情によるものなのか、人の思考を読む能力で精神が崩壊しないようにするための措置なのか。

【雷泥のローラースケート@トライガン】
GUNG-HO-GUNSの一人、雷泥・ザ・ブレードが愛用する特殊ローラースケート。
雷泥の脚力が凄いのかローラースケートの性能が良いのか、数メートル程度の距離なら瞬時に相手の背後に回れるスピードを誇る。
直線以外にも円の動きを得意とする。ゴツゴツした荒野でも大丈夫。


【ジャグジー・スプロット@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:健康、涙
[装備]:ワルサーWA2000(6/6)@現実
[道具]:支給品一式、バルサミコ酢の大瓶@らき☆すた、ワルサーWA2000用箱型弾倉x4、ランダムアイテム1(本人確認済み・重いもの)
[思考]:
基本思考:主催者に抗う。
1:静留と一緒に行動する。
2:豪華客船にゲームに乗っていない人間を集める
3:アイザック、ミリア、なつきを探す
4:できるだけ殺したくない。
5:4が無理の場合、自分が戦う。
[備考]
※参戦時期はフライング・プッシーフット号事件の最中、ラッド・ルッソと出会った直後あたりで

【ワルサーWA2000@現実】
ドイツワルサー社のオートマチック式狙撃銃。
ボルトアクションの狙撃銃並みの命中精度をもち、H&K社のPSG-1と同様に高性能な狙撃銃として知られている。フラッシュハイダー(スコープ)付き。
総重量は8kg近くありながら、全長90cmと狙撃銃としては小さめ。
Fate/Zeroにて衛宮切嗣が使用。

【バルサミコ酢の大瓶@らき☆すた】
バルサミコスーでお馴染みのアレ。ブドウを原料とし、熟成して作られる調味料。1リットルのガラスの大瓶(中身入り)
独特の甘み、芳香は洋風料理に重宝する。魚介ベースのパスタなどに良く合う。



 ■


男女の二人組が客船から出て行く姿を監視カメラ越しに見送ると、高遠遙一は小さく溜息を付いた。

ここまで、計画は順調である。
参加者の中にあんな小さな子供や言葉を喋る鳥が存在している辺りが精々のイレギュラーか。
だがロージェノムの目の前で起こった非現実的なアクションと比べれば取るに足らない事象ではあるのだが。

私はアレンビー・ビアズリーの一行と接触し、とある協力を願い出た。
この豪華客船に信用出来る人物を集めて欲しい、建前上はゲームに乗っていない人間の一大本拠地を築くという計画だ。

【希望の船】

自分でも陳腐な名前だと思ったがこれが何よりも適している、そんな気がした。
もちろん真意は芸術的な殺人を行うための役者集めに他ならない訳だが。


だが、この行動にはいくつかの反論が挙がる。
一例として普段の自分であったなら素顔を見せたまま他の人間と接触するなど在り得ない行動である点。
加えて愛用の変装道具も所持していない。
つまり完全な"生の"高遠遙一として他の参加者との会話を行ったわけだ。
目も鼻も耳も何一つとして偽る事は出来ない。
しかもここは八十二人の人間が"確実に居る"という事が明示されている箱庭。
他人と接触し、提供した情報が鼠算的に拡散していく可能性を大いに秘めた状況である。

しかし静留とジャグジーという名前の二人組に対しては顔を出さず、声だけで計画の説明をした。
(ちなみにブリッジ内での会話は予め放送管を操作しておいたので、管制室には筒抜けだった)
では何故あの三人?組の前には姿を現したのか。


それは現実味を持たせるため、である。
例えばこの極めて限定された環境において最もやってはならないミスとは何だろうか。
簡単に思いつくのが『偽名を使う』事である。

まず空間に存在する人間が限られている以上、名簿という前提条件によって参加者以外の名前を名乗るというやり方は封じられている。
なぜならある程度頭の切れる人間ならば、このリストを発見した時点で全参加者の名前を頭に叩き込んでいる筈だからだ。
愚図を発見する為の踏み絵にも使えなくは無いが、逆に相手がある程度洞察力に長けた人間であった場合のフィードバックが怖い。
第一印象は他者との関係を築く上において何よりも重視すべき事項。
相手に"胡散臭い"というイメージを持たれてしまっては元も子もない。


ではいっそ『リストに存在する他人の名前を名乗る』という手段はどうか。
名簿に乗っている人間――例えば一番上にある日本人の男性名『相羽シンヤ』を使うとしよう。
つまりこれ以後、私は全ての人間に『相羽シンヤ』として認識される事となる。
犯罪者としての高遠遙一は消え去る。金田一達が流布するであろう私の本性も、高遠遙一ではなく相羽シンヤとなった私には関係ない。
全ては丸く収まる…………訳が無い。

コレは正直な話、相当に頭の悪い御粗末な偽装だ。
まずこのゲームの参加者は完全にランダムな母体から、個々人を抜き出して選出されたものでは無い。
おそらくコレは私ならば金田一や剣持、明智と言った知り合い関係を含むグループ単位でのノミネートなのだ。
そしてこの選出基準は他の郡体にも当て嵌まる筈。


例えば、
柊つかさと柊かがみ――同じ苗字、漢字を使用しない名前。おそらく血縁関係があると思われる。
エドワード・エルリックとアルフォンス・エルリック――こちらも同じ。エルリックはそれほど一般的な性では無い。
クロとミーとマタタビ――日本式の猫の名前、おそらく何らかの組織におけるコードネームだと思われる。


軽くほぼ確定なものを挙げてみてコレだ。
つまり参加者の大半には"自らの知り合い"が存在する事となる。
そう……もしも『相羽シンヤ』として行動していた私が彼の知り合いに遭遇した場合は?
最悪、もはや喜劇のレベルだが本人と出会ってしまった場合はどうなるだろうか?
そこでチェックメイトだ。まるで先見性が無い。
当座を凌ぐための嘘だとしてもあまりにも愚か。
目的を最期まで生き残る、事ではなくて当分生き残るに設定しているのならばまだしもだが。



現実味を持たせる。つまりそれは『高遠遙一は信頼出来る』と思わせる事に他ならない。
だが、その為には三名ほどお邪魔虫がこのゲームには紛れ込んでいる。

奴らへの対策は主に二つ。
一つは対抗して『こちらも奴らの悪評を流す』というやり方。
これは悪くない。最終的に金田一とのイーブンゲームに持ち込めれば悪くない。
だがもう一つの方法、つまり『奴らに貶められる人間を演じる』というやり方も中々の物である。


他の人間を先導し、計画を立てる気弱ながら意志の強い男。
もしも私がそんな人間を演じ切る事が出来れば、自然と『金田一達が追い込まれる立場になる』のでは無いだろうか。
この【希望の船】計画は私自身が他の人間から信頼される、という目的も多分に含まれる。

参加者達が持つ最も普遍的な望み。ソレはずばり脱出。
無事にゲームから帰還する事が可能だとすれば大半の者が強い興味を示す筈。
だがそこまで大きく出るつもりは無い。精々主催者側に抵抗するため結集しましょう、程度だ。
とはいえそれでさえ十分な餌にはなる。
弱者、人探し、仲間探し……どちらにしても建前上ゲームに乗っていない物が集まる空間とは非常に貴重なのだ。
それに私のような、一見人畜無害を装いつつもその心は殺意に満ちた連中がやって来るかもしれないのは面白い。


故に私はこれから自らを『ゲームを打破する為、脱出する為、動いている正義感に溢れる人間』と見せ掛ける事とする。
勿論、心の弱い者の後押しをする事も忘れない。
だが、目指すは極上の殺人空間の構成。

どこかでお人よしの馬鹿、加えて高い戦闘能力を持つものを懐柔し私個人が殺して回るのも悪くは無いが、非効率的だ。
なぜならこの空間に存在する人間は誰もが警戒状態にあり、いつ戦いが起こっても可笑しくない。
もしも異能力者の戦闘に巻き込まれてしまった場合は?
8x8四方の正方形において、バラバラに散った参加者を探して回るのも一苦労だ。


そう、だから――集めるのだ。
このために用意したのが豪華客船の案内役としての高遠遙一と言うフェイス。
だが『凶悪な殺人犯らしい高遠遙一が客船に人を集めている』と判断するものも出てくるはず。
ここで最後のメッセージが生きて来る。
例え元の世界で殺人犯であってもこの空間で"必ず"ゲームに乗るとは限らない。

だが、会場には自らの手を汚す事を好む殺人狂も多く存在するはず。
そんな連中に比べれば私の存在など可愛いものだろう。
なぜなら所詮、私自身は特別な能力を持たない一介の奇術師に過ぎないのだから。
餌に釣られた人間は必ず――ここにやって来る。


それに姿を隠そうとしても限界があるのではないか、そんな気もしないではない。
私の支給品は訳の分からない人形と客船のメインキーに船内資料。そして暗殺用のナイフだった。
ここで注目すべきは"船内資料"について。
船の資料が支給されるのならば例えば更に詳しい情報が記述された地図や参加者の個人データを集めたものなどが支給されている可能性もある。
つまり初めから私の情報を握っている人間が金田一達だけ、と断定するのさえ危険なのである。



「まぁ……しばらくは出歩くのは止めておきましょう」


ここで待っていれば直におそらく金田一一行の誰かがやって来るだろう。
幸い船内には案内図などは一切無く、食堂から脱出ボート置き場まで地図を持たない人間は適当に歩いて探し回るしかない。
立て篭もるには絶好の場所。

まぁ、慌てる必要も無い。
ゆっくりと待てば良い、この絶望の城の奥で。獲物が餌に掛かる時を。




【E-3/豪華客船内・情報管制室/1日目/早朝】

【高遠遙一@金田一少年の事件簿】
[状態]:健康
[装備]:スペツナズナイフ@現実x6
[道具]:デイバッグ、支給品一式、バルカン300@金色のガッシュベル!! 豪華客船のメインキーと船に関する資料 
[思考]
基本行動方針:心の弱いものを殺人者に仕立て上げる。
0:善良な高遠遙一を装う。
1:しばらくは客船に近寄ってくる人間に"希望の船"の情報を流し、船へ誘う。状況によって事件を起こす。
2:殺人教唆。自らの手による殺人は足がつかない事を前提。
3:剣持と明智は優先的に死んでもらう。
4:ただし3に拘泥する気はなく、もっと面白そうなことを思いついたらそちらを優先

[備考]

【希望の船】

高遠が豪華客船に人を集める為に作り上げた嘘。
主な内容としては

  • 対主催グループの拠点を築く
  • 船の鍵を探す(実際には高遠が所持)
  • 金田一達へのメッセージ

で構成されています。

※船の起動に螺旋力が関わっている可能性あり。また他の道具を使って起動できる可能性も。

【スペツナズナイフ@現実】
説明不要のパロロワにおけるレギュラー支給品。
スイッチを押すことで刃が10mほど発射されるロシア軍愛用の特殊ナイフ。
その速度は弾丸並みで、死角から扱えばほとんど見切られる事は無い。
普通のナイフとしての能力も十分に備える。



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061:睡蓮-あまねく花 ジャグジー・スプロット 105:蛇姫は泣き虫の懇願に黙って首を縦に振る
061:睡蓮-あまねく花 藤乃静留 105:蛇姫は泣き虫の懇願に黙って首を縦に振る
061:睡蓮-あまねく花 高遠遙一 123:カサブタだらけの情熱を忘れたくない
061:睡蓮-あまねく花 アレンビー・ビアズリー 107:剣持警部は忠実に職務を遂行する
061:睡蓮-あまねく花 キール 107:剣持警部は忠実に職務を遂行する
061:睡蓮-あまねく花 ガッシュ・ベル 107:剣持警部は忠実に職務を遂行する





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