闇夜のMary Had a Little Lamb ◆hNG3vL8qjA



「ん~ふふっふっふっふっふ~ん、ふっふっふ~ん、ふっふっふ~ん……」

  B-6にある学校の職員室の椅子の座りながら、ロイド・アスプルンドは童歌を口ずさむ。
  職員室は綺麗に整ってはいるが、夜にも関わらず真っ暗だ。唯一の灯りは、彼の支給品である携帯電話の液晶画面のみ。

(うんうん……見れば見るほど面白いねぇこの支給品。ただの携帯電話かと思いきや幾重にも趣向がこらしてある)

  ロイドに与えられた支給品、携帯電話には様々な機能があった。
  その一つが参加者全員の写真である。80個もある人物データは彼の脳髄を刺激させた。
  とても本名とは思えない名前がのっていることや、名前に並び……何もかもが矛盾だらけだったからだ。

(この名前の並び方、イレブンの言語で使われている『50音順』がベースなのかな。
 だとしても……変だ。この携帯電話の文字、参加者全員は読めないんじゃないの?
 僕はスザクくんとも普通に話せるし、イレブン言語も少々かじってる。でもそれは例外。
 ブリタニア人が皆イレブンの言葉を話せるわけじゃないのになぁー。
 しかし僕に支給されたあの本の文字は、読めなかったし……そうゆうことなんだろうね。
 それに名前の順番も気になる。
 この『スバル・ナカジマ』って子、髪の色は変わってるけど名前から判断すればどうみてもイレブンだ。
 でも『ナ』ではなく『ス』でのってるんだよねー。なんで姓名がひっくりかえってるんだろ?
 この『素晴らしきヒィッツカラルド』ってのが『ヒ』じゃなくて同じく『ス』なのを考えれば、
 この子の名前が通称名、もしくは『スバル』が苗字で『ナカジマ』が名前……ああそうか、『同じ』とは限らないか)

  ロイドはこの世界に招かれてからのことを振り返る。
  螺旋王ロージェノムにあっけなく殺されたランスロットのような機体に変身する男。
  紙使いのアニタ、得体の知れぬ力を秘めていた相羽シンヤ。
  自分の生きていた世界では想像はしても、決して現実には出来ないような力を彼らは持っていた。
  あれほどの技術を彼はこれまで噂でも聞いたことはなかったし、概念すら知らなかった。
  彼はまだこの世界に言語の垣根が存在していないことを知らなかったが、
  ここまで自分が流暢に日本語がわかる違和感に、薄々は感じていた。つまり――

(自分の『常識』の範疇で考えるのは危険かもねぇ……他の誰かに会ったら何か情報が聞けるかもしれないし。
 相羽君たちが戻ってきたら色々と聞いてみよう。んーやっぱり『電話番号』くらいは教えておけばよかったかなぁ)

  ロイドは携帯電話の電話帳をチェックする。
  そこにはこの町の地図に書かれた特定の施設の電話番号が登録されていた。
  これを使えばそれらの施設内のどこかにある電話に繋がるのだが、
  彼は名簿の存在のほうが気になっていたので、アニタたちの話す機会を逃してしまっていたのだ。

(電話しても誰もいなかったら意味ないし……学校は大体調べちゃったから、ちょっと暇なんだけどねぇ)

  今から数時間前、アニタ・キングと別れた後、ロイドはすぐに学校の内部を調査した。
 「王立螺旋北高校」と表札に書かれていたこの施設は一階建てで教室も指で数える程しかなく、時間はかからなかった。
  内装もいたって普通の作りで、どこにでもある学校の机と椅子が並べられているだけ。
  この時のロイドはあまりにも何の変哲もないこの事実に落胆して、速やかに携帯電話の調査に移項したのだった。
  ただ、あの時は気にもとめなかったが、一つだけ奇妙なことがあった。
  それはどの教室の黒板にも……大量の落書きがなされていたのことだ。
  その量は黒板を埋め尽くすほどの数で、書かれていた文字は『7年空気ヨマコ先生!』や
 『原作では出ないのに主役ってどうよ!?』など意味のわからないものばかり。
  誰かのイタズラにしては手が込んでいることから、ロイドは消すことをしなかったのだが。

(やっぱり後回しにはせず、今やっとこうか)

  電話帳から名簿に切り替え、更にボタンを操作し……ロイドは携帯をある画面に変更させた。
  それは『現在位置座標』という名の機能。ロイドはその中から、自分の項目をクリックする。
  表れたのは無機質なスペースと『パスワードを入力してください』というメッセージ。
  これを看破しなければ、先に進めないというわけだ。
  ロイドは一度は断念したパスワード解析を暇な時間を利用して解析してやろうと考えたのだった。

(僕の生年月日、血液型、出身、プライベート、交友関係、好きな言葉……さっきは思いつくままやってみたけどダメ。
 これはイレブンの言語しか入力出来ないみたいだからスペルミスもチェックしたけどやっぱり全部アウトだった。
 んー……これを支給した螺旋王の気持ちになって考えてみようかなぁ? 支給した僕は軍人であり学者。
 この現在位置座標を使いこなせば間違いなく僕にとって有利になる。パスワード解析も得意だから無駄にはならない。
 ただし奇襲、撤退がいつでも思いのままなんだよね。誰にも会わずに一人勝ちする事だって可能だよね。銃はあるんだし。
 ということは、パスワードは誰もが知りえるものであり、かつ誰かに接触しなければわからない情報かな? 
 それならば僕の独走は防げるだろうし。ま、さ、か、『支給品』ってことはないよね……ってあらぁー!? )

  『ラセーン』という効果音と共に表れるロック解除のメッセージ。携帯電話のモニターが目まぐるしく情報を出す。
  そこには確かにロイドの現在位置と周辺地図が表示されていた。
  そう、現在位置座標開示のパスワードはまさに支給品の正確な名前を入力することであり、
  即ちロイドのパスワードは『携帯電話』だったのだ。

(なるほど……情報が欲しければ誰かに接触するしかない、か。
 今回はたまたま『携帯電話』だったからよかったけど、場合によっちゃ当事者も知らない支給品もあるかもしれない。
 でもパスワードが用意されているという事は……80人全員に聞いて回れば全部解読できるということかな?
 うーん、主催者側が用意した道具なんだから、みんなの顔を覚えたらこいつを分解して技術を知る。
 あわよくば首輪分解の為の資料に使えないか考えていたんだけど、いい抑止力になってるねぇ……んん!? )

  ロイドは勢いよく立ち上がり、職員室から飛び出す。
  そしてそのまま数メートル先にある一つ教室の扉を勢いよく開け、そのまま黒板に書かれている文字をなめ回すように見る。
  そしてある一つのワンフレーズを見つけると、左右の口端を吊り上げた。

(ざぁーんねぇーんでした! この黒板の文字、やっぱり重要なメッセージだったんだね……螺旋王直々の。
『携帯電話をスペース内に向かって打ち込めってさー!』……この落書きの、ワンフレーズ。
 まさか携帯電話という文字の事をだったとはねぇ~。
 ということは他にも何か手がかりになるヒントがこの中に隠されてるかもしれないんだなぁ。
 でも黒板はこれ一つじゃないし、黒板一つあたりに書かれている落書きの量の半端じゃない。骨が折れそうだ。
 あーなるほどぉ、これは参加者に直接会ったほうが手っ取り早いぞっていうメッセージでもあるのか。
 そうだよね。持ち主である僕のパスワードのヒントなんて書いても損はないもんねぇ。
 ま、相羽くんがここに来るまで僕は動けないんだし、しばらくは重要な『パーツ』探しでもしてみようか。
 この携帯電話にも、まだまだ他の機能が隠されてるかもしれないしね……のってきたぁ~! )

「ん~ふふっふぅ、ふっふっふぅ~ん、ふっふっふぅ~ん、ふっふっふぅ~ん♪
 ん~ふふっふぅ、ふっふっふぅ~ん、ふっふっふぅ~んふふぅ~ん、そぉれ! ん~ふふっふぅ……」

学校内に上機嫌な1人の男の鼻歌が流れる。
彼の研究者としての暴走は、しばらくは止みそうにない。
たとえ、もう少しで放送が流れる時間であることを思い出したとしても。


【B-6・学校のとある教室内/一日目/早朝】
【ロイド・アスプルンド@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[装備]:ニードルガン(残弾10/10)@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:支給品一式、携帯電話
[思考]
1:シンヤが戻ってくるまで校舎内を探索。
2:携帯電話と黒板に書かれた落書きをもっと詳しく調べてみる。
3:シンヤが持ってくる首輪を分解してみる。
4:スザクとの合流。

【携帯電話】
①全参加者の画像データ閲覧可能。
②地図にのっている特定の場所への電話番号が記録されている(どの施設の番号が登録されているのかは不明)。
全参加者の現在位置表示システム搭載。ただしパスワード解除必須。現在判明したのはロイドの位置のみ。
パスワードは参加者に最初に支給されていたランダムアイテムの『正式名称』。複数回答の可能性あり?
それ以外の機能に関しては詳細不明。

【教室の黒板】
全ての教室にこれでもかというくらい落書きでびっしり埋め尽くされている。
そのほとんどが意味不明な文章ばかりで、役に立たない情報が書かれている。
ただし、人によっては重要な情報、ヒントが書かれている可能性はある。


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040:紙は舞い降りた ロイド・アスプルンド 137:くずれゆく……





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