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美少女と甲冑、他 ◆1sC7CjNPu2



 「嫌ぁ!来ないでぇ!」

 こなたは逃げていた。
 すぐ後に迫ってくる、中身が空っぽの甲冑からだ。
 甲冑はどれだけこなたが逃げようと、ぴったりと追いかけてくる。
 こなたには分からなかった。あの甲冑は何がしたいのだろう、何を言ってるんだろう、こなたに追いついたら何をするんだろう?
 どうしても、恐ろしい方に想像が行ってしまう。

 ――下手なホラーなんかより、ずっと怖いよ!

 こなたは既にかれこれ小一時間ほど走り詰めていた。それだけ同じ時間恐怖に晒され、肉体も精神も疲弊している。
 限界は、近かった。


 「待ってってば!そんな大声出しながら走り回ったら目立って危ないって!」

 アルフォンスは追いかけていた。
 結局、自分から走って逃げた少女を放っておくことは出来なかったのだ。
 アルフォンスは、少女が錯乱した原因は自分にもあると思ったのだ。
 そもそも全身甲冑だし、極めつけに中身が無いことまで見せてしまった。
 少女の反応はいささか過剰だとは思ったが、アルフォンスは当然の反応だと思ったのだ。

 ――とにかく、このままだとあの女の子が危ない。

 兜とデイパックを拾ってから追いかけたため、そして錯乱した少女の想像以上の健脚とアグレッシブな行動のため思った以上に時間がかかった。
 しかしアルフォンスの体力には限界が無く、少女には限界があった。
 少女はもう、目の前だった。


 「何、あんた、何!」
 「ええと僕は……ちょっぴり鎧が不思議な錬金術師さ!」
 「嫌ぁ!来ないで!憑き殺される!解剖されるぅ!」
 「なんかグレードアップしたー!」

 ……二人の鬼ごっこはまだまだ続いた。

 ■

 そして、ついにこなたは崩れ落ちるように倒れた。
 限界を超えて酷使した足は痙攣し、息は驚くほど荒い。そんな身体に反して、心は驚くほど静かだった。
 諦め、といった方が早いかもしれない。

 ――私、ここで死ぬんだ。

 話に聞いていた走馬灯は流れなかった。
 ただ薄暗い空を見つめながら、ガッシャンガッシャンと鎧が近づいてくる音を聞いていた。
 そして、甲冑はとうとうこなたに追いついた。
 お願いだから、苦しくないように殺して。そう言おうとしたが、荒い呼吸の音しか出なかった。
 甲冑はこなたを覗き込むように膝を着き、告げた。

 「水、飲める?」

 こなたは思った。怪談のオチってこんな感じだっけ?

 アルフォンスは水の入ったボトルを差し出しながら、少女を観察していた。
 こちらを警戒しているものの、やっと落ち着いてくれたようだ。

 「……殺さないの」
 「殺さないよ、僕はこんなゲームなんかに乗ってない」

 呼吸が落ち着いてくるのを待って、少女の口元にボトルを持っていく。
 少しの逡巡の後に少女は水を含み、咳き込んだ。

 「まずはうがいをして、食道が開いて飲みやすくなるから」

 もう一度ボトルを持っていくと、今度はうがいをしてから水を飲んだ。
 アルフォンスは、ひとまず安心した。
 とりあえず暴れて逃げようとはしないので、少しは信用してくれたと思っていいだろう。
 後はある程度は隠れられる場所に移動して、話し合おう。
 ふと、アルフォンスは少女が虚ろな瞳でこちらを見ていることに気がついた。

 「……何かな?」
 「本当に、殺さない?」
 「うん、何にもしないよ」
 「本当に」
 「うん」
 「……ひっく、うぁ、うぁぁぁぁぁぁぁん」
 「わっ!」

 突然泣き出した少女に、アルフォンスは戸惑った。
 泣き出した理由が分からないし、泣いた女の子をうまくなだめる方法などアルフォンスはよく知らない。
 しかし、この状況はあまりよろしくない。
 現在地は走り回ったせいでよく分からないが道路の真ん中で、見つけてくれと言わんばかりの場所である。しかも、泣き声という音源つきだ。
 焦るアルフォンスを尻目に、少女が泣き止む気配はない。
 アルフォンスが混乱した頭でオロオロとしていると、呆れたような声をかけられた。

 「おいおい、お前さんいつからロイのやつと同類になった?」

 どこかで聞いたような声だと、アルフォンスは思った。
 弾かれたように振り返り、アルフォンスは自分の正気を疑った。

 「いやまだロイの方がマシか?少なくともここまで泣かせはしないしな」
 「ギャー!お化けー!」
 「何言ってんだお前?」

 声と同様に呆れたような、それでいてどことなく嬉しそうな表情でマーズ・ヒューズ中佐はそこにいた。
 すぐ後でぺこりと頭を下げ少女もいたが、驚いているアルフォンスの目には入っていなかった。

 ■

 腰を据えて話し合うには見晴らしが良すぎて危険だったし、こなたを休ませたかったため四人はF―4の東側の橋の下へ移動した。
 こなたは歩くほどの体力も残っていなかったので、アルフォンスが抱きかかえて運んだ。
 軽い自己紹介とスバルの簡単な時空世界のガイダンスを聞き、アルフォンスは再会してから疑問に思っていたことをヒューズに尋ねた。
 その答えは、予想外のものだった。

 「はぁ?俺が死んだはず?」

 積み重ねられたテトラポットの上に座り、マーズ・ヒューズは疑問の声を上げた。
 自分が死んだはずだと聞かされれば、当然とも言える。
 アルフォンスだって訳がわからない。死んだはずの人物が、目の前でピンピンとしているのだ。
 死んだということにして実は生きていました、という事情かとも思ったがヒューズの口調からそんな気配は微塵も無い。
 しかもヒューズにゲームに呼ばれる直前の日時を聞いたところ、それはアルフォンスにとってはもはや過去の時間だった。

 「どういうこった、これは?」
 「一つだけ、心当たりがあります」
 「……なんだ」
 「……完璧な、人体練成」

 アルフォンスの言葉に、ヒューズは深く溜息をついた。
 なるほど、確かに死んだはずの人間が歩き回っていることの説明にはなる。
 しかし、ヒューズには死んだときの記憶は無い。死者を蘇生させた時に何か細工をしたのか、それともアルフォンスの記憶が違っているのか。
 そこで、ヒューズはスバルのことを思い出した。彼女は自分たちとは別の、おそらく技術的には先を行っている世界の出身だ。

 「スバルちゃん、君のところの技術で人間一人を完璧にコピーすることはできるか?」
 「え、え~と、私も詳しいことは知らないんですけど」
 「有るか無いかだけでいい。詳細なんてどうせ分からん」
 「……完璧ってわけじゃないですけど、人の複製を作って記憶を植え付ける技術なら有ります」

 スバルの答えに、ヒューズは頭を抱えた。
 自分が既に死亡していて、しかも今の自分が複製かもしれない可能性が現実味を帯びてきたのだ。
 それだけではない。あのロージェノムという男の持つ技術が想像以上だということなのだ。
 ひょっとしたら、このゲームは何回も繰り返されたものかもしれない。正直あまり考えたいことではなかった。

 「パラレルワールド説ってのはどうかな?」

 今まで黙っていたこなたが、口を開いた。
 三人の視線が集中し、こなたは居心地が悪そうに頬を掻く。

 「あ、それならあたしも知ってます」
 「手短に頼む」

 あれ、説明バトンタッチした?
 スバルが言い出しっぺをみると、こなたはどうぞどうぞといった感じで手を差し出している。
 自分の発言を後悔しながら、スバルは軽く内容をまとめて話し出した。

 「……簡単に言っちゃえば『もしも』の世界ってやつです」

 指をぴッと立て、説明する。
 例えば一つの世界で、その世界を揺るがすほどの事件が起きたとする。
 そこで『もしも』、世界を揺るがすほどの事件が起きなかったらどうなったのか。
 事件が起きた世界の場合と、事件が起きなかった世界の場合と二つの可能性が出てくる。
 そういった大きいことに限らず、遅刻した遅刻しなかった、指を鳴らしたときにうまく鳴った鳴らなかった、そんな感じに世界は常に分岐している。
 だいぶ大味ではあったが、そんな説明だった。

 「つまり、アル君はヒューズさんがこのゲームに呼ばれなかった場合の世界から呼ばれたんじゃないかってことです」
 「……つまり俺が呼ばれた呼ばれてない辺りで世界が分岐したかもしれないってことか」
 「いやまあ全部推論なんだけどね。これだ、ていう証拠はないんだし」

 最後にこなたが話を締める。確かに、あくまで可能性の話で確証は無いに等しい。結局は情報が足りないということだ。
 とりあえず、ヒューズの精神を大なり小なり揺さぶった話はここまでとなった。

 ■

 「とりあえず、こなたちゃんが回復するまでここで待機だな」
 「あの、私のことならお気にならさずに……」
 「少なくとも走れるぐらいには休んどけ、いざって時に走れないんじゃ危ないしな」

 互いの知り合いなどの情報交換の後にそんな会話があり、四人はしばらく橋の下に留まることになった。
 テトラポットで入り組んでいるため居心地は多少悪そうであったが、アルフォンスの錬金術ですぐに改善された。
 スバルとヒューズが交代で見張り番を担当し、こなたは思い切って眠らせることになった。
 アルフォンスは見張りをさせると逆に目立つので、こなたの近くで座っている。

 「……いや、やっぱり眠るのは無理があると思う」
 「横になるだけでいいよ。こんな状況じゃ仕方ないし」

 独り言のつもりだったこなたの言葉にに、アルフォンスが答えた。
 アルフォンスは暇だったので、眠るまでの間の話し相手になろうと思ったのだ。

 「……そういえば、初めて会ったときとは感じが違うね」
 「あ~あれは、そのごめん」

 アルフォンスは初め何のことかと思ったが、それが撃たれたときのことだと思い出した。

 「別に責めてるわけじゃないよ。まあ甲冑着て歩き回ってるなんて不審者だし」
 「……違うんだ。私さ、銃を撃ってみるまで本当に、ただのお遊びだと思ってたんだ」

 こなたの目に、また涙がにじんで来た。
 引き金の重さが、銃を撃った反動がまだ手の中に残っているようだった。

 「アル君じゃなかったらさ、私、人殺しになってたかな?」

 甲冑だけのアルフォンスだったからこそ、こなたは人殺しにならずにすんだ。
 もしアルフォンスじゃなかったら、こなたは人を撃ち殺してたかもしれない。

 「私さ、怖いよ。アル君を撃っちゃったよ。殺し合いなんかしたことないよ。ただの女子高生だよ」

 段々と、こなたの語気が荒くなってきた。
 一歩間違っていれば人殺しになっていたという忘れていた事実を、こなたは痛烈に思い出していた。
 怖い、怖い、生きたい。人殺しなんかしたくない、殺されたくなんかない。
 また、こなたの心は壊れ始めた。思考がまとまらない、身体が震えて止まらない。

 「やだよ、死にたくないよ、生きたいよ、かがみとつかさとゆーちゃんと会いたいよ」
 「僕も、兄さんと早く会いたい」

 アルの静かな言葉と、頭に置かれた手がこなたを止めた。
 こなたはアルの顔を見たが、兜でしかないアルの表情はこなたには読み取れなかった。

 「一緒に探そう。僕も生きたいし、怖いし、兄さんに会いたい」

 自分だけが、怖いわけじゃない。死にたくないわけじゃない。
 こなたはそんな当たり前のことを、やっと思い出したのだ。

 「今はちょっと休んで、それからみんなを探しに行こう」
 「……うん」

 一人じゃないということは、思った以上にこなたを落ち着けた。
 不安はある、恐怖もある、けれども今度はこなたの心を壊すまでにはいかなかった。
 こなたは目を閉じ、横になった。頭に置かれた手がひんやりとして気持ちよかった。


 そして、隅っこでアルフォンスとこなたの分の支給品を確認しているヒューズはずいぶんと居心地が悪かった。
 途中でこなたの様子がおかしくなったが、アルフォンスのおかげで手荒なことにならずホッとしたりもしたが。
 まあ、若いってことはいいことで。そう思うことにした。

 ――まだ話し合わなけりゃならんことは沢山あるんだがな。

 首輪のこと、螺旋王のこと、個人的には一番気になる自分の死亡した状況、ざっと考えただけでもこれだけはある。
 焦ってもしょうがない。そのことはヒューズも承知しているが、どうしても焦ってしまう。

 ――俺も、少し落ち着くか。

 タバコが欲しいとは思ったが、残念なことに支給品の中にタバコは見つからなかった。


【F-4/東側の橋の下/一日目/黎明】
【チーム:前線局員とデスクワーク軍人改め、引率の軍人と子供たち】
[共通思考]1:殺し合いには乗らない。互いの仲間や殺し合いをしたくない者と合流、彼等を守る。
     2:首輪の解析・解除が可能な者を探す
     3:主催者の打倒・ゲームからの脱出
※首輪から、会話が盗聴されている可能性に気づきました。
※盗撮に関してはあくまで推測の域なので、確定ではありません。
※螺旋王には少なからず仲間・部下がいると考えています。

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:リボルバー・ナックル(左手)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ6/6)
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム不明(本人確認済み)、予備カートリッジ数12発
[思考]:
基本:殺し合いには乗らない。仲間や殺し合いをしたくない者を守る。ヒューズ、アル、こなたと行動。
1:あれ、あたし空気?
2:こなたが回復してから行動
3: 共通思考1と2の達成の為、人が集まりそうな駅を目指す

【マース・ヒューズ@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:S&W M38(弾数5/5)
[道具]:支給品一式、ロイの発火布の手袋@鋼の錬金術師、S&W M38の予備弾数20発
エンフィールドNO.2(弾数5/6)、アルとこなたの不明支給品2~5個
[思考]:
基本:殺し合いには乗らない。スバル、アル、こなたと行動。
1:首輪に関する考察を続ける
2:こなたが回復してから行動
3:共通思考1と2の達成の為、人が集まりそうな駅を目指す

【アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師】
[状態]:錬金術を使用したため疲労小
[装備]:なし
[道具]:デイパッグと支給品一式
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。スバル、ヒューズ、こなたと行動。
1:兄を探す
2:こなたの友人を探す
3:共通思考1と2の達成の為、人が集まりそうな駅を目指す

【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:右頬に銃創、疲労大、精神は安定はしてないが安静
[装備]:デイパックのストラップ
[道具]:なし
[思考]
基本:死にたくない。柊かがみ、柊つかさ、小早川ゆたかに会いたい。
   スバル、ヒューズ、アルと行動。
1:今は休んで体力を回復
2:怖いのは私だけじゃない

※支給品は次の書き手の方にお任せします。(タバコの類はありません)
※こなたの体力が回復するには最低2時間ほど必要です。
※それぞれの作品からの参加者の情報を共有しました。
※アルの参戦時期はヒューズ死亡後のいずれか。
※こなたの参戦時期は原作終了後。


時系列順で読む


投下順で読む


057:得意分野 スバル・ナカジマ 091:ひとつ屋根の下
057:得意分野 マース・ヒューズ 091:ひとつ屋根の下
049:今 そこにいる私 泉こなた 091:ひとつ屋根の下
049:今 そこにいる私 アルフォンス・エルリック 091:ひとつ屋根の下




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