いろいろな人たち ◆s1y9vYGV9k
「あのマフィア達全然来ないけど、テキサスの荒野で鍛えた俺の足には流石に付いてこれなかったかな。
いやいやいや。もし追ってきても俺の百丁拳銃が火を噴くけどね!」
いやいやいや。もし追ってきても俺の百丁拳銃が火を噴くけどね!」
百丁どころか一丁の拳銃もない。あるのはパンツだけの一見変質者。
彼の名はアイザック・ディアン。
一年前に不死者となりながら未だ不死者であることに気付いていないホームラン級の馬鹿である。
彼の名はアイザック・ディアン。
一年前に不死者となりながら未だ不死者であることに気付いていないホームラン級の馬鹿である。
「何処にいるんだよミリアー! お前の保安官が迎えに来たぞぉー!」
仮装強盗のパートナーにして最愛の恋人ミリア・ハーヴェント。
マフィアと思しき二人組みの脅威から逃れた今、アイザックの頭には彼女のことしかなかった。
当然、大声を出すことの危険性など意識していない。
マフィアと思しき二人組みの脅威から逃れた今、アイザックの頭には彼女のことしかなかった。
当然、大声を出すことの危険性など意識していない。
「おーい! ミリアいないのかーい!」
彼にとって運が良いのか悪いのか。とにかく返事はこなかった。
アイザックは再び走りはじめる。
逃げるためではなく、迷子になって寂しがっているであろうミリアを探すために。
アイザックは再び走りはじめる。
逃げるためではなく、迷子になって寂しがっているであろうミリアを探すために。
等間隔で並んでいる街灯は申し訳程度にアスファルトを照らすのが精一杯の明るさを保ち、
川への転落を防止する壁は平均的な男性身長の半分にも満たない高さ。
中央分離帯として細い一筋の白線が一応引かれてはいるが、車道と歩道の区別もない。
誰が見ても安全管理が杜撰すぎると思われるであろう設計だが、強度だけは確かなもの。
B-3を斜めに横切る川の上に建造された橋はそんな特徴を持っている橋だ。
その橋の前に柊かがみはいた。
左手に持った円形状の形をした掌サイズの機械を確認しつつ、時折右手で額を拭いながらかがみは走り続けている。
短距離走に近いペースの速度を出しているために息は荒く、足は何度も縺れて転びそうになるぐらい消耗し、
おまけに汗で肌に纏わり付いた制服は残り少ない体力を奪うのに一役買っていた。
不死者になったからといって筋力が増強されたり体力が無尽蔵になる訳ではない。
身体が痛みを感じるのと同様に疲労は蓄積されていく。
一度も休憩することなくオーバーワークを強いられ続けた肉体は、とうに限界を迎えていた。
それでも立ち止まらないのは、妹の仇を討つという確固たる意思が肉体を突き動かしているからだ。
川への転落を防止する壁は平均的な男性身長の半分にも満たない高さ。
中央分離帯として細い一筋の白線が一応引かれてはいるが、車道と歩道の区別もない。
誰が見ても安全管理が杜撰すぎると思われるであろう設計だが、強度だけは確かなもの。
B-3を斜めに横切る川の上に建造された橋はそんな特徴を持っている橋だ。
その橋の前に柊かがみはいた。
左手に持った円形状の形をした掌サイズの機械を確認しつつ、時折右手で額を拭いながらかがみは走り続けている。
短距離走に近いペースの速度を出しているために息は荒く、足は何度も縺れて転びそうになるぐらい消耗し、
おまけに汗で肌に纏わり付いた制服は残り少ない体力を奪うのに一役買っていた。
不死者になったからといって筋力が増強されたり体力が無尽蔵になる訳ではない。
身体が痛みを感じるのと同様に疲労は蓄積されていく。
一度も休憩することなくオーバーワークを強いられ続けた肉体は、とうに限界を迎えていた。
それでも立ち止まらないのは、妹の仇を討つという確固たる意思が肉体を突き動かしているからだ。
そんな彼女の足を止めたのは、新たにレーダーに表示された三つ目の光点。
アイザック・ディアンと表示されたそれは、北西から道路沿いにかがみを示す光点へと向かってきている。
犯人は現場に戻るという法則もあるが、つかさを殺した犯人とは別の人間である可能性の方が高い。
だがそれは皆無ということでもない。
アイザック・ディアンと表示されたそれは、北西から道路沿いにかがみを示す光点へと向かってきている。
犯人は現場に戻るという法則もあるが、つかさを殺した犯人とは別の人間である可能性の方が高い。
だがそれは皆無ということでもない。
迷った末に、かがみは迎え撃つことを決定する。
B-3エリア進入直後に自身を除けば唯一灯っていた光点。
元々の標的である風浦可符香を示す光点の近くに、二つ光点が増えていたのを確認したためだ。
B-3エリア進入直後に自身を除けば唯一灯っていた光点。
元々の標的である風浦可符香を示す光点の近くに、二つ光点が増えていたのを確認したためだ。
しかし何処もかしこも陰気な場所だった。
仮装強盗をしながら沢山の都市を渡り歩いたが、ここは別格といっていい。
最悪のスラム街だってここと較べれば活気に満ち溢れた極上の酒場みたいなものだ。
陰鬱な気分を吹き飛ばすような歌の一つでも口ずさんでみたいところだが、
肝心な合いの手を入れてくれるミリアが隣にいない。
アイザックはなんとも埋めがたい喪失感を感じていた。
……が、それも束の間。
仮装強盗をしながら沢山の都市を渡り歩いたが、ここは別格といっていい。
最悪のスラム街だってここと較べれば活気に満ち溢れた極上の酒場みたいなものだ。
陰鬱な気分を吹き飛ばすような歌の一つでも口ずさんでみたいところだが、
肝心な合いの手を入れてくれるミリアが隣にいない。
アイザックはなんとも埋めがたい喪失感を感じていた。
……が、それも束の間。
これは愛があれば障害も飛び込んでくるっていうアレだな!
よし来い! ワイアット・アープもびっくりのロープ飛びで見事勝ってやる!
ん……誰に勝つんだ? ま、いいさ。勝てば俺の勝ちだもんな!
よし来い! ワイアット・アープもびっくりのロープ飛びで見事勝ってやる!
ん……誰に勝つんだ? ま、いいさ。勝てば俺の勝ちだもんな!
常人には理解不能の思考回路をフル稼働させ先を進むアイザック。
その瞳は爛々と輝き、足取りは力強い。
彼は今、マフィアのような怖い連中からミリアを守る流離いのヒーロー。
怖いものなど何もない……はずだった。
その瞳は爛々と輝き、足取りは力強い。
彼は今、マフィアのような怖い連中からミリアを守る流離いのヒーロー。
怖いものなど何もない……はずだった。
「ひぃあっ!?」
突然甲高い音が響いたのは、アイザックが橋に差し掛かる寸前のこと。
驚きながら声がした方を振り返るとそこには――
驚きながら声がした方を振り返るとそこには――
かがみは待ち伏せするにあたり、大まかな作戦を立てていた。
街灯の光でバレないよう道路脇の茂みに潜み、アイザックの姿を確認。
刺殺できるような武器を持っていれば即座に背後から襲撃する。
つかさを殺した相手は一目で強力な武器であるとわかるマシンガンを置いていったのだ。
真相を知るため話は聞き出したいが、不意を打っても殺せないかもしれない相手にそんな余裕はない。
だから殺すことしか考えなかった。
無手、もしくはそれ以外の武器を所持していれば殺し合いに怯える少女を演じて反応を見る。
どちらにしても結局は殺すのだが、望めるなら心配を装って騙し討ちを仕掛けてくるような奴が良かった。
騙し討ちを『仕掛けようとする側』の気持ちとしては、その方が迷わず思いっきりやれるから。
不安要素もいくらか抱えていたが、どう転んでも不死の肉体がある限り勝算は高いとかがみは踏んでいる。
後は実行できるかどうか。いや、するかしないか……それだけの筈だったのだ。
街灯の光でバレないよう道路脇の茂みに潜み、アイザックの姿を確認。
刺殺できるような武器を持っていれば即座に背後から襲撃する。
つかさを殺した相手は一目で強力な武器であるとわかるマシンガンを置いていったのだ。
真相を知るため話は聞き出したいが、不意を打っても殺せないかもしれない相手にそんな余裕はない。
だから殺すことしか考えなかった。
無手、もしくはそれ以外の武器を所持していれば殺し合いに怯える少女を演じて反応を見る。
どちらにしても結局は殺すのだが、望めるなら心配を装って騙し討ちを仕掛けてくるような奴が良かった。
騙し討ちを『仕掛けようとする側』の気持ちとしては、その方が迷わず思いっきりやれるから。
不安要素もいくらか抱えていたが、どう転んでも不死の肉体がある限り勝算は高いとかがみは踏んでいる。
後は実行できるかどうか。いや、するかしないか……それだけの筈だったのだ。
頭では理解しているはずが、動けないということもある。
アイザックの姿を見た時の彼女がまさにそれだった。
かがみはアイザックが、ロージェノムに呼び寄せられた広間で見た男であることも覚悟していた。
それでも、やり遂げてみせるつもりでいたのだ。
だが、これは完全な想定外であり不意打ち。
こともあろうにこの殺し合いの場を、裸で闊歩するような人間がいるなんてすぐには信じられなかった。
見間違いではないと確信した瞬間、元々不安定だったかがみの精神状態は急速に悪化の一途を辿り、
無意識の内に立ち上がって悲鳴を上げていた。
アイザックの姿を見た時の彼女がまさにそれだった。
かがみはアイザックが、ロージェノムに呼び寄せられた広間で見た男であることも覚悟していた。
それでも、やり遂げてみせるつもりでいたのだ。
だが、これは完全な想定外であり不意打ち。
こともあろうにこの殺し合いの場を、裸で闊歩するような人間がいるなんてすぐには信じられなかった。
見間違いではないと確信した瞬間、元々不安定だったかがみの精神状態は急速に悪化の一途を辿り、
無意識の内に立ち上がって悲鳴を上げていた。
そこには声で予想できた通り、女の姿があった。
街灯が頼りないせいでハッキリとは確認できないが、見た目から判断するとミリアと同じか
それよりすこしだけ年齢が低そうだ。少なくともマフィアには見えない。
ほっと安堵の息をつくと、アイザックはどうやら怯えているらしい彼女に底抜けの明るさで呼びかける。
街灯が頼りないせいでハッキリとは確認できないが、見た目から判断するとミリアと同じか
それよりすこしだけ年齢が低そうだ。少なくともマフィアには見えない。
ほっと安堵の息をつくと、アイザックはどうやら怯えているらしい彼女に底抜けの明るさで呼びかける。
「いや、もう! 俺ってば怪しいもんじゃないからさ!
そりゃ怖いマフィアもいるけど! 俺はあいつらとは違うからさ!」
そりゃ怖いマフィアもいるけど! 俺はあいつらとは違うからさ!」
……なに? なんなの……これ……?
なにいってるの……こわい? ……ちがう?
「……ら……いで…………ほ……おぅ……て……」
口が震えて言葉が発音できない。
「……………ぃ…」
拒絶の意思が伝えられない。
もどかしい。もどかしい。
なにいってるの……こわい? ……ちがう?
「……ら……いで…………ほ……おぅ……て……」
口が震えて言葉が発音できない。
「……………ぃ…」
拒絶の意思が伝えられない。
もどかしい。もどかしい。
アイザックもまた戸惑っていた。彼女の言っている言葉の意味が全くわからない。
だが彼女の警戒を解くにはこの暗号を解く必要がある。
間違えてはいけない。困ってる女性を泣かせるようなサイテーな男になるのは御免だ。
しっかしデホーテ? デホーテって何だ?
そんな知り合いいたかなぁ、俺。いないよなぁ。
デホオテ? デホオゥテ? で、掘って? 掘って。
単語になってきた。アイザックは正解が近いことを確信する。
掘って……ホーテ……掘って……ホオゥテ……ほおって……ほうって……放って。放って!
頭の中で壮大なファンファーレが鳴り響いた。これだ!
肩に担いだデイバックを地面に落とし、その上に右脇で抱えていた服を置く。
そうしてから彼は、昔見た西部劇の主役のようにニヒルな笑みを浮かべ、彼女の元に歩いていった。
だが彼女の警戒を解くにはこの暗号を解く必要がある。
間違えてはいけない。困ってる女性を泣かせるようなサイテーな男になるのは御免だ。
しっかしデホーテ? デホーテって何だ?
そんな知り合いいたかなぁ、俺。いないよなぁ。
デホオテ? デホオゥテ? で、掘って? 掘って。
単語になってきた。アイザックは正解が近いことを確信する。
掘って……ホーテ……掘って……ホオゥテ……ほおって……ほうって……放って。放って!
頭の中で壮大なファンファーレが鳴り響いた。これだ!
肩に担いだデイバックを地面に落とし、その上に右脇で抱えていた服を置く。
そうしてから彼は、昔見た西部劇の主役のようにニヒルな笑みを浮かべ、彼女の元に歩いていった。
「どうだい、これで安心だろう?
心配することはないさ。どんな悪党が来たって俺には百丁――――」
心配することはないさ。どんな悪党が来たって俺には百丁――――」
アイザックの口舌はもうかがみに届いてはいない。
彼女が理解しているのは正体不明の男が裸で近づいてくる。それだけだ。
それだけで彼女には……充分すぎた。
彼女が理解しているのは正体不明の男が裸で近づいてくる。それだけだ。
それだけで彼女には……充分すぎた。
柊かがみの頭には今まで逡巡してきた内容など何一つ残されていなかった。
たったひとつ――目前の敵を殺す以外に。
背中に隠していた銃を右手で引き出し前方に構える。
突然向けられた銃口を理解できないアイザックが発した「へ?」という間の抜けた声を合図に
かがみは躊躇無く人差し指に力を込め、引き金を絞った。
たったひとつ――目前の敵を殺す以外に。
背中に隠していた銃を右手で引き出し前方に構える。
突然向けられた銃口を理解できないアイザックが発した「へ?」という間の抜けた声を合図に
かがみは躊躇無く人差し指に力を込め、引き金を絞った。
「う……あああああああああああああああああああああ!」
絶叫を掻き消す轟音とマズルフラッシュとが周囲を満たすステージで、アイザックは踊る。
本来ならば例え数十トンのローラーでひき潰されようが、二千度の溶鉱炉に放り込まれようが
コンクリート詰めのドラム缶で海中に沈められようが、はたまた一億年生きようとも
“食われる”以外に決して死ぬことはない。それが不死者だ。
だがその能力は何らかの制限により著しく劣化している。
そう――まともにウージーの掃射を受ければ一たまりもなくなってしまう程度には。
絶叫を掻き消す轟音とマズルフラッシュとが周囲を満たすステージで、アイザックは踊る。
本来ならば例え数十トンのローラーでひき潰されようが、二千度の溶鉱炉に放り込まれようが
コンクリート詰めのドラム缶で海中に沈められようが、はたまた一億年生きようとも
“食われる”以外に決して死ぬことはない。それが不死者だ。
だがその能力は何らかの制限により著しく劣化している。
そう――まともにウージーの掃射を受ければ一たまりもなくなってしまう程度には。
倒れこんだアイザックはアスファルトに一面の赤い水溜りを拡げていく。
その身体はもう、ピクリともしていない。
いつまで引き金を握り続けていたのだろうか。
手にしているのは分速600発を超える早さで弾丸を放つウージーだ。
弾倉の残弾などとうに無くなっていることにようやくかがみは気づいた。
全身から力が失われていき、膝からゆっくりと崩れていく。
一時的な恐慌状態から脱したかがみが最初に見たものは、死体になったばかりの男。
その瞬間に生まれた強烈なストレスが彼女の身体に変調をきたす。
苦く酸っぱい息が漏れたのを皮切りに、腹の奥底から不快感がこみ上げてくる。
それがようやく治まったのは、胃の内容物を全て押し出した後のことだ。
その身体はもう、ピクリともしていない。
いつまで引き金を握り続けていたのだろうか。
手にしているのは分速600発を超える早さで弾丸を放つウージーだ。
弾倉の残弾などとうに無くなっていることにようやくかがみは気づいた。
全身から力が失われていき、膝からゆっくりと崩れていく。
一時的な恐慌状態から脱したかがみが最初に見たものは、死体になったばかりの男。
その瞬間に生まれた強烈なストレスが彼女の身体に変調をきたす。
苦く酸っぱい息が漏れたのを皮切りに、腹の奥底から不快感がこみ上げてくる。
それがようやく治まったのは、胃の内容物を全て押し出した後のことだ。
落ち着いたかがみは、アイザックの死体を迂回するようにして彼のデイパックに近づいた。
服を掻き抱いて調べてみたが、なぜか濡れていること以外は特に変わったものはない。
ならばと思いデイパックを漁っても武器らしきものは出てこなかった。
入っていたのは基本支給品を除けば赤い綺麗な石と、ローラーの付いた靴が一足だけ。
服を掻き抱いて調べてみたが、なぜか濡れていること以外は特に変わったものはない。
ならばと思いデイパックを漁っても武器らしきものは出てこなかった。
入っていたのは基本支給品を除けば赤い綺麗な石と、ローラーの付いた靴が一足だけ。
予測していた通りだった。
今のかがみにはアイザックが裸だった理由も、彼が喋っていた内容も冷静に受け取ることができている。
おそらく彼は『良い人』だったのだろう。
それを……それを私……は……わた…し……は…………
今のかがみにはアイザックが裸だった理由も、彼が喋っていた内容も冷静に受け取ることができている。
おそらく彼は『良い人』だったのだろう。
それを……それを私……は……わた…し……は…………
「つかっ……ぁっ………ぅ……ぅ…ぁ……つかさぁ……」
誰かに頼まれてやったのではなく、全て自分が決めた行動の結果だ。
ここでつかさに頼るのは、つかさに罪を擦り付けるということに他ならない。
それを理解しているというのに、かがみは泣きながら失った妹の名前を一度だけ呼んだ。
どうしても誰かに縋りたくて。
ここでつかさに頼るのは、つかさに罪を擦り付けるということに他ならない。
それを理解しているというのに、かがみは泣きながら失った妹の名前を一度だけ呼んだ。
どうしても誰かに縋りたくて。
かがみは悩んでいた。
思わぬ時間を費やしてしまった以上、つかさを殺した仇は遠くへ行っている可能性が高い。
追いつけないかもしれない相手を探すよりも、つかさを埋葬してあげる方が先ではないかと。
特におかしくはない考え方。冷静に見ても及第点は取れる答えだろう。
結局、かがみは戻る道を選ばなかった。それが言い訳だと気付いてしまったから。
思わぬ時間を費やしてしまった以上、つかさを殺した仇は遠くへ行っている可能性が高い。
追いつけないかもしれない相手を探すよりも、つかさを埋葬してあげる方が先ではないかと。
特におかしくはない考え方。冷静に見ても及第点は取れる答えだろう。
結局、かがみは戻る道を選ばなかった。それが言い訳だと気付いてしまったから。
きっと私はつかさを理由に逃げようとしているだけ。
人を殺した現実も、これから殺し続けるという未来からも。
人を殺した現実も、これから殺し続けるという未来からも。
弱い自分が恨めしかった。
いくら決意を固めても、すぐにボロボロと崩していく自分が許せなかった。
いくら決意を固めても、すぐにボロボロと崩していく自分が許せなかった。
もうアイザックのことを気にするのはやめていた。一瞥すらしていない。
つかさを殺した者も、そうでない人も。
……大事な友達も。
どうせ最後にはみんな殺してしまう。殺さなくてはいけないのだから。
つかさを殺した者も、そうでない人も。
……大事な友達も。
どうせ最後にはみんな殺してしまう。殺さなくてはいけないのだから。
アイザックのデイバッグから手に入れたローラースケートに履き替えながら、かがみはレーダーを確認した。
B-3には風浦可符香を示す光点が依然存在しており、そこからやや離れた位置にドモン・カッシュを示す光点がある。
エドワード……という覚えられないぐらい長い名前を示す光点は消えていたが、それは別に構わない。
風浦可符香がまだ居てくれた。それだけでかがみには満足で、逃げなくて良かったと心の底から思えた。
彼女は再び決断を下す。
この二人を殺せたならば、目的を果たせても果たせなくてもそれからつかさの元に戻ろうと。
B-3には風浦可符香を示す光点が依然存在しており、そこからやや離れた位置にドモン・カッシュを示す光点がある。
エドワード……という覚えられないぐらい長い名前を示す光点は消えていたが、それは別に構わない。
風浦可符香がまだ居てくれた。それだけでかがみには満足で、逃げなくて良かったと心の底から思えた。
彼女は再び決断を下す。
この二人を殺せたならば、目的を果たせても果たせなくてもそれからつかさの元に戻ろうと。
銃弾を撃ち尽くしてしまったのは失敗だったが、弾丸の無い銃とて利用法がない訳ではない。
脅しにも牽制にも……相手の油断を引き出すことだって使い方次第で可能だ。
そして何より彼女の身体は不死。
『肉を切らせて骨を断つ』という言葉があるが、必要であれば肉も骨もくれてやればいい。
どれだけ傷つこうが、最終的にこのナイフを突き立ててやればそれで終わりなのだ。
脅しにも牽制にも……相手の油断を引き出すことだって使い方次第で可能だ。
そして何より彼女の身体は不死。
『肉を切らせて骨を断つ』という言葉があるが、必要であれば肉も骨もくれてやればいい。
どれだけ傷つこうが、最終的にこのナイフを突き立ててやればそれで終わりなのだ。
ペットボトルの水でまずは口を濯ぎ、それから疲れた体を癒すため少しずつ胃に流し込む。
こうして一本分の水を消費した後、彼女は疾走を開始した。
まずはつかさを奪った犯人である可能性の高い、風浦可符香を示す光点へと一直線に。
こうして一本分の水を消費した後、彼女は疾走を開始した。
まずはつかさを奪った犯人である可能性の高い、風浦可符香を示す光点へと一直線に。
希望は呪いとなり、思い出は鎖となって絡みついている。
求めれば求めるほど。足掻けば足掻くほどに自らの体を抉り、心は蝕まれてゆく。
それでも彼女は進み続ける。
足を止めるということは、大切な妹を諦めることと同義だと知っているから。
求めれば求めるほど。足掻けば足掻くほどに自らの体を抉り、心は蝕まれてゆく。
それでも彼女は進み続ける。
足を止めるということは、大切な妹を諦めることと同義だと知っているから。
【B-3/中央寄りの橋中心部/一日目/黎明】
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死(仮)
[装備]:防弾チョッキ、軍用ナイフ、UZI 0/50(サブマシンガン)、ローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:デイバッグ、レーダー、支給品一式(水入りペットボトル×1消費)、かがみの靴
[思考]
1.つかさの仇をとるためB-3にいる二人を殺す(風浦可符香を最優先で狙います)
2.戻ってきてつかさを埋葬する
3.つかさのために優勝する
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死(仮)
[装備]:防弾チョッキ、軍用ナイフ、UZI 0/50(サブマシンガン)、ローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:デイバッグ、レーダー、支給品一式(水入りペットボトル×1消費)、かがみの靴
[思考]
1.つかさの仇をとるためB-3にいる二人を殺す(風浦可符香を最優先で狙います)
2.戻ってきてつかさを埋葬する
3.つかさのために優勝する
※つかさを殺したのは武器を必要としないくらいの強者だと思っています。
※かがみの不死はBACCANOのアイザック、ミリア等と同じものです。
※かがみに支給されたレーダーは同エリア内のキャラ名と位置が表示されます。
※かがみの不死はBACCANOのアイザック、ミリア等と同じものです。
※かがみに支給されたレーダーは同エリア内のキャラ名と位置が表示されます。
【ローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
一般人にはただのローラースケート。魔力があれば更に速度が出せるらしい。
一般人にはただのローラースケート。魔力があれば更に速度が出せるらしい。
【アイザック・ディアン@BACCANO バッカーノ! 死七】
誰もいなくなったはずの道路に立つ人影があった。
影はまるで長い睡眠を取ったあとのように伸びをして、首を回している。
ポキポキと鳴る軽い音を堪能し終えると、そいつは盛大に騒ぎ始めた。
影はまるで長い睡眠を取ったあとのように伸びをして、首を回している。
ポキポキと鳴る軽い音を堪能し終えると、そいつは盛大に騒ぎ始めた。
「あー痛かった! いやあ、まっさかあんな嬢ちゃんにまで騙されちまうなんてなあ。
さっきのマフィアも上手かったけど、今回のも相当だよな! 演技派だったし!
もしかしてムービースターだったりするのか彼女。いやきっとそうだ!
クッソー! さっさとサイン貰っとけば良かったな。ミリアの分も!」
さっきのマフィアも上手かったけど、今回のも相当だよな! 演技派だったし!
もしかしてムービースターだったりするのか彼女。いやきっとそうだ!
クッソー! さっさとサイン貰っとけば良かったな。ミリアの分も!」
人影の正体は言わずとしれたアイザック・ディアン。
彼がまだ生きているのはもちろん不死者であるという事実が大きい。
ただ、それだけでは決して生き残ることは叶わなかった。
対した相手は柊かがみ。不死者にして不死者の天敵たる完全な存在だ。
幸運が彼に味方していればこその生存だった。
彼がまだ生きているのはもちろん不死者であるという事実が大きい。
ただ、それだけでは決して生き残ることは叶わなかった。
対した相手は柊かがみ。不死者にして不死者の天敵たる完全な存在だ。
幸運が彼に味方していればこその生存だった。
今が夜でなければどうなったか?
溢れた血溜りが少しずつその外周を狭め、青みがかった肌が徐々に本来の色を取り戻していったことに気付かれていたかもしれない。
柊かがみが錯乱していなければどうなったか?
大なり小なり彼女はアイザックに傷を負わせただろう。
溢れた血溜りが少しずつその外周を狭め、青みがかった肌が徐々に本来の色を取り戻していったことに気付かれていたかもしれない。
柊かがみが錯乱していなければどうなったか?
大なり小なり彼女はアイザックに傷を負わせただろう。
その結果の延長として、アイザックが“試し”に食われたであろうことは想像に難くない。
そして、アイザックを撃ったウージー。
これは本当にアイザックを殺すだけの力を持っていた。使い手次第という条件付きだが。
ウージーは命中精度に欠けるという弱点を弾数で補っている銃。
熟練者ならばともかく初めて銃を手にした者が、それも錯乱した状態で撃ったところで
たかが10メートル先の目標ですらそうそう当たりはしない。
実際、放たれた弾丸の大半が地面を抉るか明後日の方向に飛び去ってしまっており、
普通の人間ならばともかく、不死者を殺すには物足りない着弾量でしかなかった。
これは本当にアイザックを殺すだけの力を持っていた。使い手次第という条件付きだが。
ウージーは命中精度に欠けるという弱点を弾数で補っている銃。
熟練者ならばともかく初めて銃を手にした者が、それも錯乱した状態で撃ったところで
たかが10メートル先の目標ですらそうそう当たりはしない。
実際、放たれた弾丸の大半が地面を抉るか明後日の方向に飛び去ってしまっており、
普通の人間ならばともかく、不死者を殺すには物足りない着弾量でしかなかった。
これら全ての要因が世の理を正常に捻じ曲げることに成功していた。
彼が生きているのは偶然でもあり、必然でもあったということだ。
彼が生きているのは偶然でもあり、必然でもあったということだ。
そんなことにも当然の如く気付いていないアイザックは、別の案件で頭を悩ましていた。
彼にしては珍しいひどく神妙な顔つきで。
彼にしては珍しいひどく神妙な顔つきで。
「最後の一人になるまで殺し合う。殺しってのは殺す人で殺し屋ってことだろ。
でも殺し屋が手品なんて使う必要ないしなぁ……うーん……
それに最初の二人ならともかく、さっきの嬢ちゃんが殺し屋には見えないよなぁ。
……ん、さっきの嬢ちゃん? 待てよ待てよ!」
でも殺し屋が手品なんて使う必要ないしなぁ……うーん……
それに最初の二人ならともかく、さっきの嬢ちゃんが殺し屋には見えないよなぁ。
……ん、さっきの嬢ちゃん? 待てよ待てよ!」
しばらくは首を傾げて唸っているだけだったが、何か思い当たることがあったらしい。
左の掌を右の握り拳でポンッと軽く叩いている。
左の掌を右の握り拳でポンッと軽く叩いている。
「そういえばマフィアみたいな人に怒られたのって……俺のせい?
よくよく考えてみれば二人でなんかやってたみたいだったよな。
あれも嬢ちゃんみたいな芝居だとするとやっぱり邪魔しちゃってたんだよなぁ。ミリア探した後に謝りにいかないと!」
よくよく考えてみれば二人でなんかやってたみたいだったよな。
あれも嬢ちゃんみたいな芝居だとするとやっぱり邪魔しちゃってたんだよなぁ。ミリア探した後に謝りにいかないと!」
アイザックはあの二人がいるであろう方向に向き直り、手を合わせて拝んでいる。
これは彼の間違った東洋の知識から得た謝罪方法なのだが、とりあえず彼なりに誠意を見せているのだろう。
全く意味はないが。
これは彼の間違った東洋の知識から得た謝罪方法なのだが、とりあえず彼なりに誠意を見せているのだろう。
全く意味はないが。
「んー、でも殺し合いって何だろうな。手品で殺されたら終わりなのか?
だとするとちゃんと死んだフリしないと駄目じゃないか。悪いことしたかなぁ。
……でもそれなら審判が出てきて『アウトッ!』って言うか。インチキだもんな!」
だとするとちゃんと死んだフリしないと駄目じゃないか。悪いことしたかなぁ。
……でもそれなら審判が出てきて『アウトッ!』って言うか。インチキだもんな!」
何かを納得したらしい。
自分が悪くないと知ってどことなく嬉しそうだ。
自分が悪くないと知ってどことなく嬉しそうだ。
「要は何度殺されても大丈夫ってことだよな。
よし! こうなったら答えはもうわかったぞ!」
よし! こうなったら答えはもうわかったぞ!」
アイザックは腕を組んでうんうんと満足げに頷き、程なくして右手をビシッと前に突き出した。
その表情は百万ドルの笑顔で満ち溢れている。
その表情は百万ドルの笑顔で満ち溢れている。
「つまりこれは最後の一人のネタを見るまで続く、手品殺し屋達による出会いの仲良し交流パーティーって訳なのさ。
俺達ってば間違えて連れてこられちゃったみたいだけどね。だーはっはっはっはっはっはっは!」
俺達ってば間違えて連れてこられちゃったみたいだけどね。だーはっはっはっはっはっはっは!」
……アイザック・ディアン。彼は馬鹿だった。
【B-3/中央寄りの橋上部付近/一日目/黎明】
【アイザック・ディアン@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:健康
[装備]:ボロボロになったパンツ一丁
[道具]:支給品一式
ずぶ濡れのカウボーイ風の服とハット(本来アイザックが着ていたもの)
賢者の石@鋼の錬金術師
[思考]
基本:ミリアと合流
1:ミリアにこの宝石をプレゼントする。
2:面白いけどこんな痛いこと何回も体験すんのかぁ。
※アイザックの参戦時期は1931年のフライング・プッシーフット号事件直後です。
※殺し合いの意味を完全に勘違いし、終了条件は全員に(手品で)殺される事だと思っている。
※アイザックの不明支給品は無くなりました。
【アイザック・ディアン@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:健康
[装備]:ボロボロになったパンツ一丁
[道具]:支給品一式
ずぶ濡れのカウボーイ風の服とハット(本来アイザックが着ていたもの)
賢者の石@鋼の錬金術師
[思考]
基本:ミリアと合流
1:ミリアにこの宝石をプレゼントする。
2:面白いけどこんな痛いこと何回も体験すんのかぁ。
※アイザックの参戦時期は1931年のフライング・プッシーフット号事件直後です。
※殺し合いの意味を完全に勘違いし、終了条件は全員に(手品で)殺される事だと思っている。
※アイザックの不明支給品は無くなりました。
時系列順で読む
Back:紙のみぞ知る Next:この手に堕ちた腐りかけの肉塊
投下順で読む
010:ブレブレブレブレ | 柊かがみ | 083:新しい朝が来た |
018:破壊者二人と仮装強盗 | アイザック・ディアン | 083:新しい朝が来た |