業苦 ◆10fcvoEbko



このバカ無茶やった上に味方撃ってどうすんだ、そう叱られたのは、あれは忘れもしないホテルの護衛任務のときだった。
そのときの私は隊の中で唯一特別な能力を持たない自分を卑下し、焦っていた。
そして、このままでは隊にいられなくなると、半ば本気で考えた私は、自分の実力を示そうと実戦中に無茶をやった。
その結果、流れ弾の一つがあわや味方を直撃、という事態になった。

撃たれた同僚のスバルは自分は大丈夫だったからいいと言ってくれたのだが、
もちろんそれで済むはずもなくヴィータ副隊長にはその場でこっぴどく怒られた。
高町教導官は優しく諭してくれたのだけど、
馬鹿だった私は結局その後もう一度同じような失敗をするまで、何がいけなかったのかに気付くことができなかった。
それからはさすがの私も間違いに気付いた。
まず、自分達は一つのチームであること。
そしてチームのメンバ-にはそれぞれ果たすべき役割があるということだ。
チームの頭脳としての的確な状況判断と後方支援、さらにはスタンドアロンでの射撃戦もこなす。
それが私の役割だと分かったのだ。

その後は、それなりにきちんとやれていたように思う。
ミッド地上本部襲撃事件などイレギュラーな事態もあったが、私は以前のように一人で突っ走ろうとせず、
仲間と協力してそのときの自分にできる精一杯のことをやろうとしていた。
その考えは機動六課全員に共通するものだったに違いない。
最終的にJS事件を解決に導けたのも、隊のみんなが各々の役割を忠実に果たしたからだと思っている。
チームワークとは結局、個人がそれぞれの役割を果たしきったときに、結果として生まれるものなのだろう。
ならばチームワークというのはスタンドプレーの集合体でしかなく、
個人はどのような状況であれ、自分の役割を正しく認識し遂行するのが第一、ということになる。

それは、たとえチームがばらばらになった状況であったとしても変わらないはずだった。
名簿で仲間の存在は確認していたのだから、私は彼女達と合流を目指すなり、情報の収集に努めるなり、自分で何かしら考え行動を起こすべきではなかったのか。
いや、なかったのかどころではない。当然そうするべきだったのだ。
たとえこの場にいるのが自分一人だけだったとしても、これだけの規模の次元犯罪に巻き込まれて何もしないなどというのは、機動六課以前に時空管理局の職員として、決して許されることではない。

ところがさっきまでの私といったらなんだ。
状況を把握しようともせずただ恐い恐いと、犬のように震えていただけではないか。
六課としての役割を完全に放棄し、以前と同じく誤った行動をとってしまっている。
チームワークも何もあったものではない。
人間は失敗から学ぶ生き物であるとの言葉をよく耳にする。
それは逆に、失敗から学んでこそ人間たり得るということでもあるだろう。
なるほど、過去の経験を生かせず同じ失敗を繰り返す私は、真実犬と呼ばれても仕方ないのかもしれない。
ああ、キャロはこんな私に殺されたんだ。
ひどく可哀想に思えた。

私は走る気力も無くし、夢遊病者みたいにぼんやりと、廃墟同然に静まり返った街の中を歩いていた。
どこをどう走ったのかは覚えていない。
たださっきよりは空がうす明るくなっているところを見ると、それなりの時間がたってはいるのだろう。
体に付着したキャロの血は、とっくに乾いている。
だが、衣服の奥底に染み込んだそれは、湿り気を帯びていたときよりも一層べっとりと全身にとまとわり付いてくるように感じられた。

キャロは良い子だった。隊の仲間としても。友人としても。
生まれ付き竜召喚などというレアスキルを持ち、それによって辛い経験を数多くしてきたにも関わらず、明るさと優しさを失っていなかった。
最初はそれでもぎこちなかったものの、寝食を共にし、任務をこなしていく内に私達の仲はより深くなっていった。
スバルなんかはかなりの可愛がりようで、シャワーのときには髪を洗ってあげていたほどだ。

私はさすがにそこまではしなかったが、年長者として色々と気に掛けていた。
あるとき六課に休課が出た。キャロはエリオと二人で遊びにでかけた。
私はスバルと一緒に街を回っていたのだが、合い間に通信で二人の様子を伺ってみた。
シャーリーさんの作ったプランの意味も分からずそのまま従う二人の姿は微笑ましく、
その健全さは逆にこちらが照れる思いだった。
六課解散後は、元いた辺境自然保護隊に復帰すると言っていた。エリオもそこへの転属を希望しているという。
二人ならきっとそこでも良いコンビになっていただろう。

死んでしまったのだが。私の手で。

右手の血は取れそうにない。



「うごか、ないで」
シアターらしき建物から出てきた男に向かって、私は銃を向けた。
いきなり銃を向けなくても良かったのかもしれないが、相手が凶悪な人物であった場合今の私では対処しきる自信がなかった。
ただ、そのときの私がそのような冷静な判断の下で行動できていたとは考えづらいように思う。
自分以外の人間に出会ったことが無性に恐くなってなんとなく銃を向けた、というのが正直なところかもしれない。
男は静かにデイパックを地面に置いて両手を頭の後ろに組んだ。

「あ、あなたは、この」
声がでない。
「俺はこんな殺し合いなんかに乗っちゃあいない。ついでにいっておくが、そんなに震えてたんじゃこの距離でも弾は当たらんぞ」
私の両手は、銃を構えたときからかたかたと震えていた。
「俺はジェット・ブラック。何があったかは知らないが、お前さんが戦う気がねぇっていうなら、その銃を下ろしてくれ」
腕が震える。止めようと力を込めたら、震えはさらに大きくなった。
「おい、どうした?」
こちらの尋常でない様子に気付いたのか、男が声を出す。
それはそうだろう。だって私の腕は壊れたオモチャみたいに震え、銃には威圧感なんてまるで無くなっている。
腕の震えは意識すればするほど大きくなり、両足にも感染したそれは最早自分の意志ではどうにもならないもので。


そこで私は男に押し倒された。
「落ち着けっ!暴発するぞ!」
私の銃を掴んで叫ぶ。
私はその顔を、それこそ馬鹿みたいにぼうっと見つめていた。
「とにかく、手を放せ」
男が私から銃をむしりとろうとし、私は反射的にそれに抵抗する。
そのときの私の暴れ様は滑稽な程で、いつ弾が発射されてもおかしく無かったはずなのだが、男の銃の掴み方にコツがあるのかそうはならなかった。
「完全なパニックか。くそっ」
男の力が増し、私は銃を奪われそうになる。
必死で抵抗した。
やめて、それが無いと私、何もできなくて、隊にもいられなくなって、
証明しないと、だって私は、その銃は。
キャロを殺した銃だから。
「いやぁ!」
私はひっくり返った声で叫ぶと銃を振り捨てた。
さっきまで後生大事に持っていた銃が、急に、とんでもなくおぞましい物のように感じられた。
私の手を離れた銃は、そのまま男の手に握られた。
「こいつは俺が預かる。まるっきりの素人って訳でもねぇようだが、今のお前さんが扱うには危険すぎる」
男が宣言するように告げる。
しかし、その言葉の意味を私はほとんど理解していなかった。


瞳孔の開ききった目で男の掲げる銃を見つめる。
私の銃。

歯ががちがち鳴る。
キャロを殺した銃。

涙が頬を伝わり落ちる。
キャロを殺した私の銃。

血塗れの手を見る。
虚ろなキャロの顔。

嗚咽がこみ上げてくる。
優しく笑うキャロの顔。

私は絶叫した。
そのときから、私は銃が持てなくなった。


【C-5 映画館 一日目 黎明】
【ジェット・ブラック@カウボーイビバップ】
[状態]:健康
[装備]:コルトガバメント(残弾6発)
[道具]:支給品一式(ランダムアイテム0~1つ 本人確認済み)
    テッカマンブレードのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
    アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION
[思考] 基本: 情報を集め、この場から脱出する
0:目の前の少女に対処
 1:種々の情報を得るため、図書館or博物館or警察署に向かう
 2:スパイクとエドが心配
 3:初対面の人間には用心する・・・ってもさすがにこいつは
※テッカマンのことをパワードスーツだと思い込んでいます

【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:自失 血まみれ 銃器にトラウマ
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]0:キャロ…
※参戦時期はゆりかご事件で戦闘機人三人と戦って以降のどこかです


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016:鮮血の結末 ティアナ・ランスター 088:阿修羅姫(後編)
029:ディシプリン・コンチェルト ジェット・ブラック 088:阿修羅姫(後編)





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