王の視察 ◆0BwdWOApVI



「おい、蜘蛛女」

「なによ金ぴか」

 唐突に声をかけられ振り返れば、目に入るのは痛いほど金ぴかな、自称王様ギルガメッシュの姿だった。
 金ぴかに輝くその様は夜道でも灯りがいらず、結構なことだ。

「あれは何だ?」

 言われて、金ぴかが指差す方向を見つめるが、夜の暗さに加え誰かさんのせいで片目が塞がっててよく見ないっての。
 仕方ないので、眼帯を僅かにずらして両目を凝らす。

「なにって…………ただの学校じゃない。
 なに、あんたひょっとして学校も知らないの?」

「識ってはいる。だがあくまで知識として過ぎん、内部を直接この目で見たことはない。
 蜘蛛女、その口ぶりだと貴様は学校を知っているようだな?」

「当たり前じゃない。このかっこ見りゃわかんでしょ?」

 そう言って、セーラー服の端をちらつかせる。
 まぁ、学校なんて好きじゃないし、正直サボりがちだけど、それでもこちとら現役の女子中学生だ。
 その答えを聞いた金ぴかは一人頷く。

「ふむ……では、よい機会だ『学校』に向かうぞ蜘蛛女。案内を許す」

「はぁ?」

 無駄に偉そうな態度で、いきなり何を言い出すのかこの男は。
 何がいい機会のかサッパリ理解できない。

「学校なんかに行って何の意味があるわけ?」

 正直、学校に立ち寄ってもメリットがあるとは思えない。
 というか、できれば人の集まりそうなところは避けたいし、何より『学校にいく』というのが気が進まない。

「なに。現世の民の学び舎を視察し、見聞を広めるのもまた王の勤めよ。
 何より、導き手たるこの我に知らぬ場所があれば世が迷おう?」

 すげぇいいこと言ってる風に金ぴかは喋っているが、何を言っているのか本気で理解できない。
 ひょっとしてこいつ、バカ?
 ひょっとしなくてもバカ?
 行きたきゃ一人で勝手に行けつぅの。
 案内なんて誰がするか。

 …………――結局、来てしまった。
 こいつの強引さにはマジで頭が下がる。
 その上、なまじ力もあるから最悪だ。
 ため息をつきながら見上げれば、目の前には薄暗い校舎が聳え立っている。
 独特ともいえる不気味な雰囲気に恐怖を覚えるヤツもいるのだろうが、私もこいつも今更そんなものを感じるタマじゃない。
 校門は開いていたのでとっとと校内に進入する。
 夜の学校は静寂に包まれていた。
 廊下を歩きながら、横に目をやれば、全身金ぴかの甲冑に身を包んだバカが、カチャカチャという甲冑音を響かせながら歩いている。
 その格好は学校に不釣合いもいいとこだ。
 夜の学校に男と女が二人きり。
 言葉にすれば、なんとも美味しいシチュエーションだけど、相手がこれじゃ色気もクソもあったもんじゃない。

「何をしている蜘蛛女。黙っていては無礼であろう、さっさと案内をせぬか」

 こちらの気持ちなんて察する気すらないのか、金ぴかは相変わらずの調子だ。
 こいつのいちいち偉そうな態度に腹を立てていてはキリがないのはもう十分わかった。
 こうなりゃもう半分自棄だ。

「…………はいはい。こちらが職員室でございますよ、っと」

 そう言って、ガラガラと職員室の扉を開き、入り口近くのスイッチをつける。
 蛍光灯が点滅しながら職員室を灯してゆく。

「……ほう。ショクインシツとは随分小汚いモノなのだな」

 職員室を見た金ぴかの第一声がそれだった。
 だけど、今回ばかりはこいつの意見に同意する。
 事実、職員室は見事なまでに荒らされていた。
 それはまるで嵐が通り過ぎた、ってのは言いすぎか。
 どちらかというと子供が癇癪を起こした後のように、職員室は荒れ散らかっていた。
 いったい誰が……なんて馬鹿なことは言わない。
 ここで暴れたのは、私たち以外のほかの参加者に決まっている。
 この会場に来て、まだたいした時間はたっていない。
 まだ、この学校に”誰か”が潜んでいる可能性は高いだろう。
 それどころか、その誰かはこの職員室で息を潜めて待ち伏せているかもしれない。
 そう思い、警戒のためエレメントを出現させようとしたが、それを金ぴかに片手で制された。

「よい。駄犬の一匹や二匹捨てておけ」

 そう言って、堂々と金ぴかは職員室を進む。
 その姿には警戒の欠片も見られない。
 不意を付かれ襲われても、返り討つ自身があるのだろうか?
 ……いや、それもあるだろうが、多分そうじゃない。
 単純に興味がないんだ。
 短い付き合いながら、こいつについてわかったことがある。
 こいつは興味がないものには、本当に見向きもしない。
 身を隠し不意を打とうなどと小物よりも、今こいつの興味を引いているのモノは別のものだった。

「蜘蛛女。ショクインシツには面白いモノがあるのだな」

 そう言って、自分と同じ位の大きさをしたそれを、金ぴかはヒョイと掴みあげ地に立たせた。
 それは、巨大な十字架だった。
 当然ながら、それは職員室に備え付けられているものじゃない。
 おそらくここで暴れた”誰か”の置き土産だろう。

「なにこれ………墓?」

 人一人軽く磔られそうな巨大な十字架は墓標のようだ。
 それが職員室に突っ立つ光景はなかなかにシュールだ。
 金ぴかは十字架をまじまじと見つめ、少しだけ忌々しそうに眉をひそめて鼻で笑った。

「ふん。大方、聖堂教会あたりが作り上げた武装の一種であろう」

「…………武装って、武器なのこれ?」

 この馬鹿でかい十字架が武器と言われても鈍器として使うくらいしか使い道が思い浮かばない。
 いや、それでもこの大きさだ、並の人間じゃ振り回すのは無理だろうけど。

「いつの世もこのようなモノが必要になるあたり、人間とは嘆かわしい獣よな。
 ……まぁよい。このような完成物は我には必要ない。
 蜘蛛女、遠慮はいらん、それを自分のバックに仕舞っておくがいい」

「はぁ? こんなでかいもんがこんなバックに入るわけないでしょ?」

 常識的に考えなくても、人一人分はあろうかという十字架がこんなバックに入る訳がない。

「たわけ。これに入らぬものなどないわ。
 入れ物と内容物の次元のズレもわからぬか?」

 いやいや、当たり前のことのように金ぴかは言ってるけど、そんなのわかるわけないって。
 そもそも、なに言ってるのかがわからない。
 そんなこちらの様子を見て取ったのか、金ぴかは呆れたようにため息をついた。

「考えてみろ、あの大剣も元はこれに入っていたのだぞ?
 よいから、恐れずに試してみよ、入れてしまえば質量はなくなる」

 言われてみれば確かにそうだ。
 子供を諭すような言い方がムカつくが、ミロクも多分こいつの金ぴか鎧もこのバックに入っていたんだ。
 少し癪だが、試してみることにする。
 十字架を移動させるのは私の力では無理なので、十字架に向けてバックを近づけてみる。
 すると、十字架は気持ち悪いくらい自然にスルスルとバックに入っていた。

「うわ……マジで入った」

 若干引きつつも、十字架を仕舞ったバックを背負いなおして、金ぴかを振り返る。
 金ぴかはどこを見ているのか、全体を見るように職員室を見渡し、ある一点で一瞬視線をとどめた。

「どうしたの?」

「なに、気にするな。紛れた小石に目が触れただけだ。
 汚れもせんが、洗われもせん。たいした意味はないだろうよ」

「はぁ?」

 言わんとする意味がつかめず、疑問符を上げるこちらを無視して金ぴかは踵を返す。

「解からぬならよい。それよりもショクインシツはもうよい。次へ向かうぞ」

「って……あんた、まだ学校見学続ける気?」

「当然だ」

 本当に当然のことのように言い切るこいつは、ある意味清々しい。
 そう思えてしまうあたり、だいぶあたしも慣れてきた。
 もう、付き合うしかないのなら、できるだけ早めに済まそう。
 そう心に誓いながら、明かりを消して職員室を後にした。


【H-2 学校内 一日目 黎明】
【結城奈緒@舞-HiME】
[状態]:健康、眼帯を外したい
[装備]:衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日
[道具]:支給品一式、パニッシャー@トライガン、ランダム不明支給品x1
[思考]
基本思考:面倒なのであまり戦いたくない。ヤバくなったら真面目にやる。
1:学校見学をさっさと終わらす。
2:とりあえず金ぴかと一緒に行動する
3:攻撃してくる人間を殺すのに躊躇いは無い
4:藤乃にはあまり会いたくない

【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:巳六@舞-HiME 黄金の鎧@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、ランダム不明支給品x1
[思考]
基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】【王の財宝】の入手。
1:学校を視察する。
2:宝具、それに順ずる道具を集める
3:目障りな雑種は叩き切る
4:エレメントに興味



(畜生ッ! 何なんだ!? 何なんだよあいつはッ!?)

 二人が立ち去った後も、間桐慎二は職員室の片隅にあるロッカーの中で、一人身を震わせていた。

 暗闇を恐れ職員室に戻ったものの、明かりを点けたままでは自分の場所を知らせているようなものだと気づき、すぐさま明かりを消した。
 そして、一人静かに職員室の隅で膝を抱える。
 一人は静かで寂しい。
 暗いのは怖い。
 けど、死ぬのはもっと怖い。
 だから誰にも見つからないよう息を潜めて引きこもっている事しか、彼にはできない。
 暗闇を進むことを恐れその場に留まりはしたものの、結局彼は暗闇から逃れられないのか。

 だが、果たして彼は気づいているだろうか?
 誰にも見つからないよう隠れれば隠れるほど、探し人である衛宮士郎がここを訪れる可能性が少なくなってることに。

 唐突に、遠くで物音が響いた。
 本質が臆病者であるが故に、危機に関しては人一倍敏感だ。
 足音が此方に近づいていることを即座に感じた慎二は、慌てて近くのロッカーの戸を開き、その中に身を潜めた。
 男と女の話し声とともに職員室の戸が開かれ、蛍光灯に明かりが灯ったのはそれから間もなくの事。
 話し声は聞こえるものの、どちらも知った声ではない。
 このまま、気づかれないようやり過ごそうとしていたが、聞き捨てならない言葉が慎二の耳に入ってきた。
 男の声は自分が放置した十字架が教会が生み出した武器だという、しかもそれを持って行くと言うではないか。
 知識として、教会がどういうものかは知っている。
 それの作った武器が、今奪われようとしている。
 焦燥に駆られ、思わず慎二はロッカーの隙間から外の様子を伺ってしまった。

 そこで、黄金の騎士と目が合った。

 それだけで、間桐慎二の心は引き裂かれた。
 どうしようもなく冷たい赤い瞳。
 圧倒的な威圧感。
 それは、ここに至る直前に遭遇した黒い巨人、バーサーカー以上の死の塊だった。
 魔術師じゃなくともわかる。
 あれが、人間であるはずがない。
 あれは間違いなくそれを超えた存在、サーヴァントに他ならない。
 ならば横の女はそのマスターだろうか。

 赤い瞳に囚われた永遠とも思える一瞬の中、慎二の脳裏を駆け巡るのはどう命乞いをするかということばかり。
 だが、慎二の心中に反して、黄金のサーヴァントはあっけなく目をそらし、踵を返した。
 慎二の存在に気づかなかったはずがない。
 ”敵”を見逃すような甘い相手でもないだろう。
 ならば、見逃した理由は簡単だった。
 何より、その目が語っていた。
 慎二を捕らえたあの瞳は、道端に転がる小石を見るもののと同じだった。
 小石扱いされ、言いようのない屈辱を慎二は味わう。
 だがそれでも、間桐慎二は動けずにいた。
 当然だ。動けば死ぬ。
 間桐慎二にできることといえば、心の中で毒づくことだけだった。

(クソ、クソ、クソッ! 馬鹿にしやがってッ!
 大体あの十字架は僕のじゃないか、勝手に持っていくなんて泥棒だ!)

 武器だと知らず破棄したのは誰だったか、そんなことはもはや慎二の頭にはない。

(クソッ! いったい衛宮のヤツはどこでなにをやってるんだ!?
 こんなところに僕を一人で待たせるだなんて何様のつもりだ!?)

 一人、心の中で毒づいても返るものなどありはしない。
 募るのは不安と焦燥と寂しさばかり。

(クソッ…………クソッ。
 早く来いよぉ……衛宮……)

 祈りにも似た泣き言は声にすらならず、ロッカーの中で消えていった。


【H-2 職員室、ロッカー内 一日目 黎明】
【間桐慎二@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ/支給品一式(食料:缶詰)/テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
[思考]
1:とりあえず学校に居座る
2:衛宮、早く来ないかな
3:死にたくない、絶対生き延びる
[備考]:
※参戦時期はアニメ12話直後、バーサーカーと遭遇した瞬間。
※名簿も地図も確認していません。
※士郎と一緒にセイバーがいると思っています。
※クリスタルをただの観賞用の水晶だと思っています。
※十字架が武器であることに気付きました、ですが手遅れです。
※ギルガメッシュの横にいた女(奈緒)をギルガメッシュのマスターだと思っています。


時系列順で読む


投下順で読む


006:それが我の名だ 結城奈緒 092:流血へのシナリオ
006:それが我の名だ ギルガメッシュ 092:流血へのシナリオ
023:friend 間桐慎二 092:流血へのシナリオ





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