マタタビからの挑戦状 ◆hNG3vL8qjA



事のきっかけは周囲に広がる工事の音。
北上しようと穴倉を脱出した1人の女をそれは引き止めた。
女はするりするりと引き寄せられ、そして……。

「――で、お前は何しに来たんだ」
「……やはり気づかれていましたか」
「悪いが今取り込み中だ。出直して来い」

姿勢良い女を待ち受けていた、荒れた木の板にカンナをかけようと息巻く猫。
2『人』の間はわずか数メートル。だが心の距離はとてつもなく遠い。
リザ・ホークアイにとって、目の前で起こっている出来事はさほど珍しいものではなかった。
二足歩行で喋る猫は合成獣の類いで、国家で禁呪とされている技術のツケを被せられた者の成れの果て。
その合成獣がここで日曜大工をしているのも、別に取り乱す必要は皆無。潜在能力に恵まれていただけ。
それが彼女の頭が下した結論だった。
しかし、それでも納得できないことが一つあった。

「勝手にここへ入ったことは軽率だったと思っています。しかし気になります。なぜ『今』このようなことをしているのですか?
 その首輪を着けているということは、あなたも『螺旋王』という男の実験に選ばれた『1人』なのでしょう? 」
「『1匹』の間違いだろ。さっきも言ったが拙者は忙しいんだ……別に興味ない」
「それは『殺し合い』か『螺旋王』か『私』のいずれかですか? 」
「全部だ」
「……知人と呼べる者は? 命の危険を考えないのですか」
「あいつらはほっといても死なねぇだろ。人間のお前なんかよりはタフだ」

再び、場に肉声が消える。あるのはノミを杭に打ち込む音のみ。
このやりとりの間でもマタタビとリザは顔を合わせることは無かった。
リザはまだ姿勢を崩さずじっとマタタビを見据え、マタタビはひたすら作業を続けていた。

(本能のままに『行動』する……まさに『獣』。見くびられたものね)

リザは慎重にポケットからダーツを1本取り出し息を殺して構えをとる。狙いは当然自分のことなど見向きもしない修理屋だ。
彼女は自分のしている行為に何の自責の念はなく、また命を取るつもりもなかった。
ただ全力で相手の頭の横を通り抜けるように投げただけだった。
しかし、標的はなんと振り向かないままダーツの矢を右手の指で挟んでキャッチしたのだ。

「……おい、いい加減にしろ。女のデートに付き合う暇なんてない」
「そこそこの戦闘能力は備えているようですね。なるほど理解しました。
 あなた自身がそれなりの力を持っているのなら、あなたのご友人も同程度の実力者なのでしょう。
 確かに心配する必要はない、という安心感はあってもおかしくはない。しかしその判断は本当に正しいのでしょうか。
 螺旋王に果敢にも立ち向かって玉砕したあの男性の戦闘能力は我々の限界をはるかに越えています。
 そして私は先ほど東にあるトンネルでも、とてつもない『何か』と遭遇しました。人智を越える様な……」
「言いたいことがあるならはっきりと言え」
「私の仲間や上司の捜索。及び螺旋王や未知なる敵の打倒への支援を希望したかったのです。
 その引き換えにあなたのご友人も、と考えていたのですが……」
「だが断る」
「周囲に騒音を撒き散らしてまで我がままを優先するあなたは、身の危険への思慮が無さ過ぎる。
 しかしあなたの性格ならそう言うだろうと考え、あえてこれまでは遠まわしに発言させていただきました」

またしても、辺りに静寂が戻る。あるのは金槌で釘を打つ音のみ。
猫は相変わらず女のいる方向に振り向こうとはせず、女も黙って猫をにらみ付けるだけ。
――その静寂を打ち破ったのは、女のディバッグからこぼれ落ちる数々の道具だった。

「な……これは! (私の鞄に、穴……鋭利な刃物で切られたような傷がある!? )」
「拙者を舐めるのは勝手だが、身の危険を理解してるのなら……これ以上『火種』は作らないことだな」

マタタビは振り向かずに左手で、ある一点を指差す。
リザの背後でもあるその方向には、一本のノミが壁に突き刺さっていた。
そう、マタタビはリザが投げたダーツの矢をキャッチする為に右手を出したのではない。
彼にとってキャッチは二の次。
真の狙いはリザのディバッグ目掛けてノミを投げる為に右手を差し出したのだった。しかも後ろ向きで。

(み……見えな……いや、気づけなかった! もし、ノミの狙いが鞄ではなく私だったとしたら……)
「おい女、動物に理性を求める愚かさが身に染みたか? そんなに生き残りたければ今度は『人間』の仲間を探すこった」

振り向かぬまま、マタタビはノコギリで木材を切り始める。
リザは普段と変わらぬ彼の仕事を見せ付けられ、初めて唾をごくりと飲んだ。
元々ブラックハヤテ号を飼いならしているように、彼女はペット……もとい小動物に目が無い。
だから最初に温泉でマタタビを見つけた時は、その奇妙な光景への驚きよりも、かまってあげたいという愛情が勝っていた。
しかし彼女は思い知らされた。
遊ばれていたのは自分のほうだったことを。
鷹の目の異名を持つ自分は、所詮『鷹』そのものではないことを。

(自分は……何と身の程知らずで無力なことか)

仕事を続ける猫に何も言わず、リザはすごすごと鞄の荷物を回収し、そしてそのまま温泉建設予定地を後にしようとしていた。

「20時間」
「……え? 」
「立て直している温泉の完成に必要な予想時間だ。あと20時間あれば温泉は完成する。そしたら拙者は温泉に入る。
 温泉にゆっくり浸かって休憩する。だが温泉に飽きた後の予定はまだ考えていない」

リザは今日初めて、あっけにとられた顔をした。
今まで見向きもしてくれなかった合成獣が、初めて自分の目の前に直接立ちふさがったからだ。

「……20時間たったら、あなたは――」
「騒音を撒き散らし、人を寄せ集めようとせんばかりの軽薄な奴だと本当に思っていたわけじゃあるまい。
 貴様は戦場で初めて出会った身元もわからぬ人間をいきなり仲間にするのか? 第一印象で全てを判断するのか?
 一度交渉が失敗したらそこで諦める程度の女か貴様は。ふん、拙者マタタビの力を少しでも借りたいのなら……
『20時間生き延びて、またここに戻ってきてやる』くらいの気概は見せてほしいものだがな」

マタタビはリザにそう言い捨てると、壁に突き刺さっていたノミを引っこ抜いて再び大工仕事を始めた。

(……生き延びてみせます。生き延びて見せますとも……20時間ッ!)


リザ・ホークアイはグッと拳を握り締めると、自分の支給品であるデジタルカメラを取り出し、後姿のマタタビを撮った。

(あなたの姿……この目に、そしてこれに焼き付けておきます! )

そして彼女はそのままマタタビに声もかけず、駆け出した。
だがその姿に、恐怖はない。
走る彼女の両目は、まるで生への執着を潜めた獣――鷹のような目つきだった。


*  *



リザ・ホークアイが走り去った数分後、作業に没頭していたマタタビはふとノミの動きを止めた。

(少し言い過ぎたか……? 何も言い返してこないな。
 こういった交渉事は強く強く突っぱねて、最後に折れてやれば相手は簡単に堕ちると聞いたんだが。
 そろそろ後ろを振り向くころか? いや、いかんいかん。こうゆうのは勇み足は失敗のもとだ。
 せっかくここにやってきた人手なんだし、一生懸命手伝わせてやりたいんだよ拙者は……ブツブツ)


マタタビがリザの消失に気づくのは、この10分後である。


【H-6 温泉 1日目 早朝】
【マタタビ@サイボーグクロちゃん】

[状態]:良好
[装備]:大工道具一式@サイボーグクロちゃん、マタタビのマント@サイボーグクロちゃん
[道具]:デイバッグと支給品一式、メカブリ@金色のガッシュベル!!(バッテリー残り95%)
[思考]:
1、この建物を直す。 建物に来た奴には作業を手伝わせる。
2、リザに作業を手伝わせる。
3、出来ればキッド(クロ)とミーとの合流。
4、戦いは面倒だからパス。
5、暇があれば武装を作る。
[備考]
大工道具は初期支給品の一つです。
中身はノコギリ、カンナ、金槌、ノミ、釘

 ※建物の修理はおよそ20時間で完了しますが、妨害行為などで時間が延びることがあります。
 ※修理に手を貸す人がいれば修理完了までの時間は短くなります。H-6の周囲に建物を修理する音が響いています。
 ※リザと情報交換をしてません。

【H-6 温泉の外 1日目 早朝】
【リザ・ホークアイ@鋼の錬金術師】
 [状態]: 健康
 [装備]:ダーツ23本 、マタタビの勇姿(後ろ姿)を撮ったデータが一枚入っています。
 [道具]:デイバッグ、支給品一式、泉そうじろうのデジタルカメラ説明書付@らき☆すた
 [思考]
  基本:ここから脱出する。殺し合いをするつもりはない。
  1:ロイ・マスタング大佐、マース・ヒューズ中佐、エルリック兄弟 と合流する。
  2:トンネル付近に潜む怪物を警戒。
  3:改めて警察署で銃器を調達する。
  4:20時間後にHー6の温泉に戻ってマタタビに協力を要請する。
 ※リザ・ホークアイの参戦時期はアニメ本編15話辺り。 そのため彼女の時間軸では、マース・ヒューズはまだ生存中です。
 ※改めて道路沿いに北上中。
 ※『線路の影をなぞる者(レイルトレーサー)』の名前を聞きましたが、名簿に記載されていないことに気づいていません。
 ※ディバッグに穴が開いてしまったので、持ち運びが不便。いつもより歩行速度に影響が出ています。
 ※マタタビと情報交換をしてません。マタタビを合成獣の一種だと考えています。


【泉そうじろうのデジタルカメラ説明書付@らき☆すた】
泉こなたの父の愛用品。充電式で丸3日はもつ。
泉家の思い出の数々、小早川ゆたかとの写真など思い出がいっぱいつまっている。もちろん閲覧可能。


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036:マタタビの欲求!! マタタビ 111:車掌と大工
019:線路の影をなぞる者(レイルトレーサー) リザ・ホークアイ 069:この呼び方では迷惑ですか?





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