今 そこにいる私 ◆AaR9queMcU



あの銃声は他の参加者に聞こえたかもしれない。
それがこの、殺人ゲームに乗っている者だったとしたら、それがもしも複数だったなら。
アルフォンスは、最悪の状況を想定し、こなたに話しかける。

「ねぇ、君!あの銃声を誰かが聞いたかもしれない、このゲームに乗っている奴だったなら最悪だ。
とりあえず安全な場所に身を隠そう!いいね!」
応答はない。
こなたは、カタカタと震えていた。
震えが止まらない。
たった一発撃っただけなのに。
震えが止まらない。
弾が顔を掠めただけなのに。
震えが止まらない。
無意味にリアルなエアガンだと思っていた物が本物と解った時からこのゲームはサバイバルゲームなどではなく、
他者の命を奪い合う、本当の殺人ゲームだということなのだ。
そして先ほどの銃を撃ったという行為は、一般人であるこなたをここまで恐怖させるに至った。
人を撃った、というよりも本物だったというショックの方が大きいのだろう。
こなたはアルフォンスの提案にも答えず、ただ震えるのみだった。

「仕方がない…ごめんね!」
そういうとアルフォンスはこなたをその鎧の腕で抱き上げると、ロビーを駆け出した。
小さな悲鳴を上げた気がするが気にしている暇はない。
銃声が響いてからそんなに時間はたっていない、他の参加者が残響を聞きつけてここに来るまでにはまだ余裕があるはず。
ならば考える時間も惜しい、急いで出口を探そう。
ガシャガシャと慌しく足音を響かせアルフォンスは出口を目指す。

十数分探し続け、ようやく出口らしきものをを見つけると、外に誰も居ないかを確認し、扉を開けた。
どうやらその扉は業務用入り口だったらしく、その視界に飛び込んできたのは、滑走路だった。
もちろん飛行機などはなく、アスファルトで舗装され記号のように白線の引かれた数キロ程度の短めのものだった。
ふと見渡すとその滑走路の脇に、コンテナが升目のように配置されていた。
コンテナには鍵が掛かって中には入れなさそうだが、ここならひとまず隠れられそうだ。
見つかりにくそうな陰に隠れるとアルフォンスは自分とコンテナの死角にこなたを降ろす。

ここに隠れていればこの子も落ち着くだろう。
……そういえばこのこの名前聞いてなかったな。
今この状況で自己紹介など変だと思ったが、この子を落ち着かせるきっかけにでもと、アルフォンスは話を切り出してみた

「……ボク、アルフォンス・エルリックっていうんだ。君、名前は?」
相変わらず応答は無い。
アルフォンスはつけない溜め息をつくと、空を見上げる。
時は黎明、夜天は白み始めていた。



泉こなたは思考の海に沈んでいた。

そういえば漫画やアニメにも、こんなシチュエーションあったっけ……
人が、撃って、斬って、裂いて、嬲って。
殺しあって、死んで、死んで、死んで。
それで私は、私みたいな一般人は、すぐに殺されて……。
殺され……て。
そしてこなたは思い出す。
私が持ってたあの銃は、今、この鎧の男が持っていて。
私は今、何も持ってない丸腰で。
そこまで考えたところで思考の海から抜け出した。
逃げなきゃ、殺されちゃう、逃げなきゃ、逃げなきゃ!殺される!

今のこなたの精神は異常だった。
普通の状態ならここまで支離滅裂な考え方などしないだろう。
だが、今の状況は『普通』ではない、本来ならありえない異常事態。
ましてや今は殺人ゲームの真っ最中、隣には得体の知れぬ鎧の男。
正常でいられる精神などこなたは持ち合わせていなかったのである。

「ぃ、あ」
声にならない悲鳴が漏れる。

「どうしたの?」
アルフォンスは手を差し出しながら訊ねた。
ただそれだけだった。
その鉄の手が、私のことを、殺そうとしているようにみえて。
ただ、それだけなのに、その手が、明らかに私を狙っているように見えて。

「ひぃあああああああああああああああっ!!こないでぇ!!!!こないでよぉっ!!!!!」
泉こなたの精神はここで、壊れた。
自分ひとりの妄想の中だけで、ありもしない虚構の中で。
このバトルロワイアルという状況は、そこまでに人を疑わせ、惑わし、狂気させるものであった。
狂ったようにデイパックを振り回し、アルフォンスから遠ざかろうとする。

「ちょっ、ど、どうしたの?」
いきなり暴れだすこなたをもちろんアルフォンスは止めようとする。
だが、それは今のこなたにとっては逆効果にしかならなかった。

「ぁぁあああああああああっ!!ひぃあああああああああ!!!!」
来ないで、来ないで、来ないで!!!!
デイパックを振り回し、転びかけながら立ち上がる。
その時、バチィッという音と共にこなたのデイパックのストラップがちぎれた。
鎧の突起に引っかけ、引き抜いたためである。
袋部分は変則的に飛んで行き、兜に直撃した。
ガラン、ガラガラガラと音が響き、兜が転がる。
そして信じられない物を見た。



首がなかった。



中身も空っぽだった。

え?どういうこと?なんで中身が『無』いのにうごいてんの?
それは、その姿は、理解ができるものではなかった。
先ほどの状態が嘘のように冷静なのに、理解が出来ない。

ロボット、というならまだ辛うじて理解できるのだろう。
だが中身が『無』い。
ならば亡霊だとでもいうのだろうか。

そこまで来た所で考えるのを止めた。
もう何も考えず、ここから遠ざかりたいその一心で滑走路へと駆け出した。

きっと助からないんだ。
きっと逃げても無駄なんだ。
あんな奴がいるんだ、みんな殺されるんだ。
ここに選ばれた時点で私に生き残れる可能性は無いんだ。

なのに、どうして?

今、そこにいる私は、何故逃げているんだろう……


【G-3/空港-滑走路付近/一日目-黎明】

【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:右頬に銃創、恐慌、錯乱
[装備]:デイパックのストラップ
[道具]:なし
[思考]
 1:死にたくない
 2:とりあえずここから逃げたい

【アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師】
[状態]:こなたの行動に混乱
[装備]:なし
[道具]:デイバッグと支給品一式、エンフィールドNO.2(弾数5/6)、不明支給品1~3個 こなたのデイパック 不明支給品0~2個
[思考]
 1:とりあえず少女の対処
 2:しかし追いかけてよいものか迷っている


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033:いきなりは変われない 泉こなた 076:美少女と甲冑、他
033:いきなりは変われない アルフォンス・エルリック 076:美少女と甲冑、他





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