魔法少年ラディカルエリオHeaven's feel ◆2kGkudiwr6



事態が分からないまま、それでも何とかしようと周りを見渡して。
視界の端に見知った桃色の髪を見つけたような気がした瞬間……
僕はまた違う場所へと転送されていた。夜闇の中、周りには知っている人も知らない人もいない。
正真正銘の独りぼっち、音もしない……いや、何かが走っているような音がする。
ともかく落ち着かないと。こういう時自分がしないといけない事は……

「そうだ! 管理局に連絡を……」

そうして、ストラーダも連絡用の端末も何にも無いことに今更気付いた。
僕はちっとも冷静になれていない、と自覚しないわけにはいかない。
自覚できるだけ、ましなのかもしれないけれど……。

ともかく脇にあったデイパックを取り出して、一通り中身を確認する。
双眼鏡……捻れた剣……紙。説明書を見る限り、双眼鏡は結構高性能の物みたいだ。
一応剣は槍として使……うには短すぎるけど、ないよりはいい。
紙は防水性らしい。でも、どうやったらこれを武器にできるんだろう?
次に、名簿と地図を一通り確認。

「フェイトさんはいない、か……」

安心して呟いたのか、それとも不安になったのか……自分でも分からない。
だけど、どの道僕がすることは変わらない。変えちゃいけない。
今まで受けた訓練を思い出して、落ち着いてしっかり自分の行動を考える。

「まず、六課の皆と合流する。
 できるだけ殺し合いを止めて犯人を確保・拘束しながら、外と連絡を付ける……」

……どうやったらそれができるか、は考えないことにした。今の状況じゃ考えるだけ無駄だ。
道端に設置されてる電灯とランタンで手元を照らして、双眼鏡のレンズを暗視用に取り替える。
ちょっと苦戦したけど、説明書が付いていたからなんとかできた。そのまま、周りを見渡して地形を確認する。
ふと聞こえた音に振り向くと、上の方で何か交通機関が走っているのが見えた。
双眼鏡もあの乗り物も、魔力が使われてる様子はないみたいだ……

「……え?」

そこまで考えたところで、僕はとんでもないものを見た。
……なぜか、モノレールから海へダイブする人を。


とりあえず救助しようと近くの岸に向かうと、その人はとっくに泳ぎ着いていた。
いや、それはいいんだけど。

「何が平和主義者だ!ヴァッシュ・ザ・スタンピードォッ!」
「う、うわあ!」

何かに怒って叫んでいる。なぜか。

「あ、あのー……大丈夫ですか?」
「ん? なんだ、ガキか。
 ……いやなモン持ってるな、オイ」
「はい?」
「こっちの都合だ、忘れろ」
「???」

起き上がってこっちを見た青い人は、今度は僕を見るなりそんなことを吐き捨てていた。
よく分からないけれど、この人はこのドリルみたいな剣にはいい思い出がないらしい。
ともかく、こういう異世界を巻き込んだ事件は僕たちが解決しないといけないことだ。
落ち着いて自分の名前と役職を説明する。

「僕はエリオ・モンディアルっていいます。えっと……」

そこまで言って気付いた。管理外の時空の人に管理局の存在を喋っていいんだっけ?
いい場合と駄目な場合、一定の基準があるらしいけど……僕にはさっぱりだ。
仕方ないので、誤魔化すことにする。その辺は後ではやて隊長に聞くしかない。

「治安組織と言うか、そんな感じのものに所属してます。説明すると長くなるんですけど……。
 ともかくこの事件を解決したいので、同行をお願いできますか?」
「……へぇ。俺はランサーだ。だが」

その瞬間。空気が、変わった。
僕だって、自分に向けられる敵意や戦場の空気ぐらいは知ってるし、感じ取れる。
……けどランサーさんが突然向けたのは、そんなレベルじゃなかった。

「……っ!?」

影が動く。
とっさに後ろに目を向ける。できたのはそれだけ。腕を動かす余裕なんて無かった。
ほんの一瞬。その間に――ランサーさんは僕の後ろに回りこんで、僕の首に手刀を付きつけていた。

「へえ、ついて来れたか。確かに訓練は受けてるらしいな」
「いったい、何を……!?」

張り詰めた空気の中、それ以上言葉を発する余裕は僕に無かった。
もし下手な動きをすれば、簡単に首をへし折られる。それくらいは分かる。
それでも諦める気はない。こんな所に皆とお別れなんてできない。必死に、僕が打開策を考える中。

「ま、冗談だ」

あっさり、ランサーさんは手を離していた。

「ったく、根本的なことを忘れてるな。
 螺旋王って奴に殺されたあの男。ここにはああいったレベルの奴が少なくとも二人はいるんだぜ?
 少なくとも、坊主がそこまでの実力を持っているようには見えねえ。
 生兵法で動いても死ぬだけだぜ。下手に気張るのはよしな」
「あ……」

緩んだ空気の中、そう言われて思い出した。
並み大抵のレベルじゃない砲撃を放った人物、そして螺旋王とかいう人物が言っていた台詞。
あの人は少なくとも、デバイスを持っていない僕が敵うレベルじゃなかった。それと同じタイプの人が二人いる。
この事実を警戒していなかった辺り、結局僕は全然冷静じゃなかったらしい。

「ごめんなさい……」
「謝ることでもねえさ。ほとんど不意を突くようなやり方だしな。
 その年でそこまで鍛えてるんなら大したもんだろう。気に入った。
 ……ところで、地図と名簿持ってねえか?」
「はい?」


「そういえば、なんで博物館なんですか?」
「原理は知らねえが、この舞台はどうやら俺が聖杯戦争って奴に呼ばれた時代に似てやがる。
 となると、戦争で使う槍は過去の遺物になってるはずだ。
 そういったものがあるとすれば博物館ってとこが一番ありえるんじゃねえのか?」
「……展示されてる槍って、あんまり武器として役に立たないんじゃ?」
「まぁ、その可能性もあるな。だが俺は銃や名剣より鈍ら槍の方が好みでね」

ランサーさんの提案で、僕たちはモノレールの駅に行って博物館へ向かうことになった。
駅を経由するのは「海に叩き落してくれた野郎が駅にいるかもしれない」らしい。
その人物については手配書を通じて顔を見せてもらった。それによると、
【レヴナント・ヴァスケス伯殺害およびG級器物破損容疑で指名手配中】とある。
……ただ、少し気になる部分もあって。

「気になったんですけど、あの手配書の平和主義者ってどういうことなんですか?」
「知るか。どの道俺を叩き落したのには変わりねえよ」

歩きながらそう質問した僕に、苦々しい声でランサーさんはそう返した。
名簿(僕が貸した)を見ながらだからその表情は僕には見えないけれど、多分渋い顔をしているんだろう。
……どうやら指名手配されてることより落とされたことの方が重要みたいだ。
とはいえ指名手配されるような危険人物なら、僕としても捕まえないわけにはいかない。

「気に喰わねえと言えばギルガメッシュと言峰綺礼、この二人もだな。
 ちょうどいい機会だ。できれば俺自身の手でしっかり借りを返さねえとな」

その呟くランサーさんの表情は、さっき僕に見せたものに近いそれを放っている。
非殺傷設定が当たり前の世界じゃ珍しい、本物の殺気。
この人が借りを返す。そういう相手だからには、相手も殺しを躊躇しない相手ってことなんだろう。
考え込んだ僕に気付いているのかいないのか、名簿を返しながらランサーさんは質問を投げかけて来た。

「それより、お前の方は知ってる奴いんのか?」
「え、あ……
 知り合いは八神はやて、スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター、キャロ・ル・ルシエ、シャマル……の五人です。
 危ないと思うのはクアットロって人で、管理局……
 治安組織の名前ですけど、その本部に少人数で襲撃を掛けて壊滅させた一人なんです。
 主犯格ですし、反省してる様子も無いって話でした。
 出られないような場所に設置された牢獄に囚われてるはずだったんですけど……」
「……よくそんな奴を殺さないで捕まえられたな?
 管理局って組織がどんなのかは知らないが、訓練された集団だろう?
 それを壊滅させるような奴を殺さず捕まえるなんてかなりの手間が掛かる」
「その……僕たちの世界には非殺傷設定というものがあって。
 デバイスにその設定をしておけば、それだけで殺さずに済むんです」
「なるほど……便利な道具だぜ。戦いの経験をどれだけ重ねても殺しの経験をせずに済む、ってわけか」
「…………?」

思わず、その表情を見上げていた。
ランサーさんの口調がどこかおかしい。呆れているような、驚いているような、そんな感じ。
僕の視線に気付いたのか、答えるようにランサーさんは口を開いた。
軽い様子なんて欠片も無い――本物の戦士の重みが乗っている口調だった。

「覚えておけ坊主。
 こうなったら絶対にあれをしない、とか絶対あれをする、って類の誓いは大抵難しくなる。
 絶対殺したくないという覚悟を決めるか、それとも場合に応じて殺すのか。早い所決めた方が身のためだぜ。
 例えそのデバイスって奴がすぐに手に入ったとしても、だ」
「え……?」
「普通に戦うだけなのに殺すか殺さないか簡単に決められる……確かに便利な道具だ。
 だけどな、殺し合いの場ってのは戦場だ。ましてやここでお前を支援してやる奴がどれだけいるかはまだわからねえ。
 冷静に人を殺す覚悟ってのは慣れてなきゃ身に付くもんじゃねえが……
 だからって道具頼りの中途半端な考えで敵を気遣ってたら、死ぬぞ」

そう言っている彼の目は、まるで豹のように鋭い。
僕がランサーさんの敵だったとしたら、この人は子供だからなんて理由で手を抜かないんだろう。
視線だけでその事実が予想できるくらい、本当にその目は鋭かった。
もしキャロが敵だったとしても、絶対に僕は殺す気になんてなれない。ルーテシアの時だってそうだ。
なのはさんも同じだ。小さい時、フェイトさんと戦った時のことを僕はよく聞いてる。
――もし二人がこの場にいたとしたら、どうするんだろうか?僕には分からない。
黙り込んだ僕を見かねたのか、ランサーさんはさっぱりした明るい声で話題を切り替えた。

「――ま、その前に身の安全だ。俺たち二人分の槍を探さねえとな。
 ちょうどいいのが見つかったら少し手合わせでもしてみるか?」
「あ……は、はい」

ほとんど反射的に声を上げた僕に、にやりと笑みを浮かべてランサーさんは駅の中へ入っていく。
ともかく、今はこの人についていくしかない。悪い人じゃないみたいだから。

……この人の言った事を認めるか、自分達が今までやってきたやり方を信じるかは、まだ決まっていない。
けれど……多分いつか決めなくちゃいけない時が来るっていうのは、分かった。


【F-5/駅手前  1日目 黎明】
【エリオ・モンディアル@リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:暗視双眼鏡@現実、偽・螺旋剣@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、防水性の紙×10@現実
[思考・状況]基本:このゲームの破壊。
1.ランサーについていく。
2.仲間と合流。
3.いざとなれば敵を殺す覚悟を決めるべきなのかどうか、迷い。

【ランサー@Fate/stay night】
[状態]:疲労(小) 精神的疲労(小) 
[装備]:不明
[道具]:支給品一式(地図と名簿を除く)、ヴァッシュの手配書(一枚)、
   不明支給品1~3個(槍・デバイスは無い)
[思考・状況]基本:このゲームを管理している奴らとの戦いを愉しませてもらう。
1.言峰、ギルガメッシュ、ヴァッシュの三人に借りを返す。
 言峰とギルガメッシュは殺す予定(ヴァッシュについては不明)。
2.ゲームに乗った強者と全力の戦いを愉しむ。
3.できればまともな槍が欲しい。
4.ゲームに乗っていない相手でも実力を測るくらいはしたい。まずはエリオと手合わせ。
※参加時期は本編での死後。そのため言峰の令呪は無効化しています。

【暗視双眼鏡@現実】
読んで字の如し。接眼レンズを交換することで双眼鏡としても使用可能(正確には逆だが)。
軍事用のため結構丈夫。第三世代と呼ばれるもので光に対しても耐性がある。そしてすごく高値。

【偽・螺旋剣@Fate/stay night】
本来のカラド・ボルグに改造を加えることで生み出された宝具。形状はドリルのような捻れた剣。
矢として使う他、刺突用の剣として使うことも可能。

【防水性の紙×10@現実】
これも読んで字の如し。画用紙程度の大きさの物が10枚ある。
出典は微妙に迷ったが、現実にあるので現実出典。


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エリオ・モンディアル 068:覚悟はいいか?
031:英霊と台風 ランサー 068:覚悟はいいか?





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