獣を見る目で俺を見るな ◆ZJTBOvEGT.



表に出ると同時に、銃声を、ウルフウッドは聞いた。
とある中年男が変身すべく叫んだ合い言葉がそれによってかき消されたとも知らず、
現場に向かうべく駆け出す。
なじみの音だ。親代わりなどという肩書きをぶら下げたろくでなしを手にかけてからこっち、
ずっと、自分はあの音と共にあったのだ。そしてそれは、今とて同じ。
道を外した者は、外した道を歩き続けるしかない。
この手には銃、そして今や五体に染みつききった殺りくの業(わざ)。
ならばこの道、歩き抜く。生けども死せども、楽園(エデン)に踏み居ることの許されぬこの身なら。
なすべきことは決まっている。見敵必殺。今までと同じ。
頭に二発、心臓に二発。すみやかな安らぎをこの手で、即座に。
壁を背に、曲がり角に身を隠し、目的地に迫る…迫る。
そしてほどなく、ひとつの死体を発見する。
年端もいかぬ子供の死体と、血溜まりを。
孤児院で養っていた子供達と同じ年頃の少女が、
仰向けに天を見上げて、その長くもない人生を終えていた。

「けったくそ悪っ…」
ぼやきながらも、ウルフウッドはすでに状況の検分を始めていた。
心臓を貫通する銃弾の一撃。それに伴う失血、ショック死か。
仏にされた少女は見たところ、武器らしきものはひとつも持っていない。
殺されたあとに持っていかれたのかもしれないが、それにしては応戦した形跡すらもなかった。
一方的に殺害された可能性が非常に高いということだ。
続けて周囲を見よ。
円形に拡がった血溜まり、その先に点々と続く足跡を。
血を踏んでから去っていったそいつは、誰か?
ふところからタバコを取り出そうとし、持ち合わせがないことに気づく。
それと同時に聞こえてくる、時ならぬ幻聴。

(お腹の子にさわりますよ、あ・な・た)

「そらないわ、マイ・ハニー」
ミリィ・トンプソン。彼女にまとめて没収されたのかと、しょうもないことを考えた。
マッチもない。考えてみれば武器にもなるから、主催者に取り上げられたのだろう。
ウルフウッドはおもむろに死体を前にひざまずき、右手と左手、五本の指を組んで祈る。
一応、これでも牧師である。死んだものの安息を願ってやることくらいはできるのだ。
そして、これは同時に。

「すまんなぁ、ちびっ子」
純粋な謝罪の意味も兼ねていた。
死体の仰向けの襟首をつかみ上げ、乱暴にふり回す。
愛らしい死相が、ざくろのようにはじけた。






「なっ―――――」
屋上に伏せったまま、クアットロは呼吸を数瞬止められた。
そして次には銃声二発。にぶい衝撃。
思わず狙撃銃を取り落としてから理解した。自分に何が起こったのかを。

「っぎぃ?」
左肩に一発、銃弾がめり込んでいた。
認識した瞬間に襲い来る痛覚。
いやしくも戦闘機人の四番機たる彼女である。
それしきでまいってしまうことはなかったが、
標的のあまりの非常識ぶりに、不慣れな感情を脳内でもてあます羽目となっていた。
それは普段、彼女と姉妹達が常に供給する側にまわるもの。
時空管理局地上本部を蹂躙したときもそうだった。
すなわち、能力差による圧倒的恐怖。
クアットロ自身は、そのような力押しに近い方法で味わわせるそれを、
なんともやりがいなく面白味もないと思ってはいたが、
まさか自分の身にふりかかる日が来るとは夢にも思っていなかった。
何故だ、何故だ。
子供の死体を盾にするだと? それが人間のやることか?
何故、拳銃で狙撃銃に対抗してくる? 何故、当てられる?
反撃されるはずなんか、なかったのに!

「じょ、冗談じゃ…」
南下を決心して移動を開始するなり、ティアナと入れ替わりにやってきたあの黒服の男を発見し、ずっと見ていた。
『善良な人間』ならばさっさと取り入る方針に変わりはなく、あの死体を前にどうするつもりか、屋上からこっそり覗いていた。
そこでふと思いついたのだ。このゲームからの脱出を目論むのならば、死体の首輪を回収し、調べる必要があるな、と。
それは、『善良な人間』を疑心暗鬼に追い込んでいく上でひとつのアドバンテージとなる。
首輪、なんとも魅力的なアイテムだ。持っていたらいたで、なんとでも使いようがあるではないか。
誰かの荷物にそっと放り込んでおくもよし。つまりそいつは、他人の首をはねたことになる。
自分で持っていてもよし。見せびらかすことで敵の短絡的な行動を誘うこともできよう。
そして自分のISは幻影能力、シルバーカーテン。どんな人間にも、どんな生物にも変身できる。
首を切り落とす現場を目撃されたところで痛くもかゆくもないうえに、全てが自分の思うがままに運んでいくのだ。
生唾を呑んだ彼女は、即座に行動に移った。
以上のプラン、首輪が多くて困ることはひとつもない。
あちらは拳銃、こちらは狙撃銃。しかもこちらだけ一方的に敵の位置を把握していたのだ。
撃てばそれで終わり、あとはゆっくり首を切断すればいい。
…だが、その結果はどうだ。
世界はいつも、こんなはずじゃなかったことばっかりなのである。
常に他人を思い通りに踊らせてきた彼女にとって、それは理解の外だった。
とにかくもう、こうなっては勝ち目がない。
狙撃銃、レミントンM700は眼下の茂みに落下し回収は不可能。
キャロから奪い取った支給品の中に優秀な武器があったところで、
片腕が動かないまま戦えるほど甘い相手ではとてもない。
動く右手でデイバッグを素早く回収。
ビルの反対側から、クアットロは飛んだ。そして逃げた。
いや、これは逃げるのではない。戦略的撤退だ。
まずは、あの男を始末せねばならない。
こんなところに拳銃などというもので命中弾を出してきた以上、こちらの顔まで丸見えだったと思うしかない。
一刻も早く『善良な人間』に合流し、充分な戦力がそろい次第、あの男にけしかけるのだ。
疑心暗鬼とか、そういう趣味的なことはすべて、あの男が斃れてからだ。
夜天は白む。
バトルロワイヤルは、ユルイ考えを許さない…






ことの最初からウルフウッドは、少女の死体の銃創はライフルによるものだと理解していた。
ゆえにそれを警戒し、暗視スコープの照り返しを視界に収めることができたのだ。
ごく一瞬のことだったが、それが生死を分ける世界で生きてきたのは伊達ではない。
彼の住んでいた星自体がそういう星なのである。

銃こそ日常の世界の中で荒事を生業とし、その中にあってなお図抜けた能力の持ち主として人類完殺を望む存在に見込まれ、刺客となった男なのである。
質量兵器そのものが厳密に取り締まられ七十余年、火薬のにおいを忘れた世界(ミッドチルダ)の人間に、及びのつくものではない。
少なくとも、銃器というアイテムの扱いにおいては。
むろん、そのような事情をウルフウッドが知るわけもなかったが、聞こえたわずかな悲鳴から、
照り返しと弾道から割り出した方角に向けて撃った二発の両方、もしくはいずれかが命中したものと判断。とどめを刺すべく銃を片手にビルへと乗り込む。
この銃もまた、反撃できた秘密のひとつ。
名匠フランク・マーロンによって調整されたそれは、ウルフウッドの生きる世界においてもありえぬ精度を誇る名銃。
その性能を活かしきることができるのは、同じくありえぬ技量を持つ人間のみ。たとえば、ヴァッシュ・ザ・スタンピードのような。
たかが拳銃だが、されど拳銃。持つ者が持てば、それこそ狙撃銃すらもしのぐ可能性を持った至高の逸品だった。

「かんにんな」
ウルフウッドは行きがけに死体に振り向く。
なかば自らの手によって、後頭部が爆裂してしまった頭を。
やさしい色合いだった桃色の髪も、血に染まりきって見る影もなかった。
こぼれそうな目玉が、今やにごった水晶体にウルフウッドを映している。

「そないな目で、わいを見るなや。
 呪わんでもええ、わいの行く先はどうあがいてもな…」

自動ドアの先に足を踏み入れ、
数秒して、死体との間に透明な隔たりが生まれた。

「地獄や」





【C-5 映画館近くの路地裏 一日目 黎明】
【クアットロ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:銃撃を受けた左肩がまともに動かない、D-4に向かって飛行中
[装備]:
[道具]:支給品一式、暗視スコープ、不明支給品×1~3
[思考]:1:.勝ち残り、ドクターの元へ生きて帰る
    2:まず全力で黒服の男(ウルフウッド)から逃げる
    3:手段を問わず、黒服の男(ウルフウッド)を始末する。そのための人数を集める
    4:善良な人間の中に紛れ込み、扇動してお互いを殺し合わせる
    5:出来る限り自分は肉体労働しない
    6:可能であれば『4』のために首輪を集める

※呼ばれた時期は地上本部襲撃後のどこかです
※キャロ殺害の真犯人です
※黒服の男(ウルフウッド)に恐怖を感じています。また、顔が割れた可能性が高いとも思っています
※レミントンM700はC-5、映画館近くの路地裏の茂みの中に放置されています


【ニコラス・D・ウルフウッド @トライガン】
[状態]:健康
[装備]:ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃@トライガン 弾数×四発
[道具]:支給品一式、不明支給品×1
[思考]
基本思考:ゲームに乗る
1:自分の手でゲームを終わらせる
2:敵には容赦しない
3:ビル内を捜索し、狙撃手(クアットロ)を殺害する
4:子供の死体(キャロ)をきちんと葬ってやりたい

※参戦時期は教会での死亡直前あたりから参戦
※どうすべきか少し迷っている所もあります
※クアットロの顔は見ていません


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016:鮮血の結末 クアットロ 073:飾られた虚実
017:せめて歩ませよ我が外道の道を ニコラス・D・ウルフウッド 088:阿修羅姫(前編)





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