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「HAPPY END(1)」(2023/07/09 (日) 20:40:53) の最新版変更点
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**HAPPY END(1)◆ANI2to4ndE
空に表情は無かった。世界にも色はない。
代わりにただぼうと鉛のように重たい空間が果てしなく広がっていた。
大地に相当する平面に起伏は見られず、遥かに見える土くれが辛うじて山のように見える他には、自然物さえも存在しない。
不思議な空間であった。
無限地獄さながらの世界を、横に切り裂くように一条の光が走る。
続いて、寄り添うようにいくつもの爆発が起き、爆風と衝撃が通り抜けた。
それが呼び水となったのかのように次々と新たな閃光が走り、限定された空間が色を得る。
生物に類するものは一切存在しない。そう思われた世界にさえ人はいた。
一騎当千の巨神が隊を成し、万古不易の英傑たちが手に手に武器を持って空を駆る。
更に遥か上空では、終末を思わせる凶鳥が甲高い声を響かせて鳴いていた。
相争う無数の人間たち。
友の遺志を継いだ男は次の瞬間光輪の塵となり、泣くことしかできない少女は誰にも気づかれぬまま踏み潰され標本と化す。
愛する者は、繋いだ手を残して消えていた。
果てしなき絶望の末に、一滴の水滴のような光がささやかな終焉のときをもたらした。
渦を巻くようにゆっくりと広がるうねりは全てを平等に包みこみ、飲み込んだものたちの生をそっと奪って行った。
光は半球となり、自らを閉じ込めていた世界の殻を乗り越えてなお、消えることなくまたたき続けていた。
天の光はすべて星。
そして死が始まる。
◇
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 最終回
『HAPPY END』
◇
「ギィイイイイイガァアアアアアアアア!!」
「ラァアアアアアブラブゥウウウウウ!!」
「ドリル――ブレイクゥウウウウウ!!」
はるか高く天元すら突破して、愛に狂った男と女の叫びが木霊する。
猛り狂う叫びに呼応し、薄緑と桃色の輝きがグレンラガンより放たれた。
その右腕には全身を上回る巨大なドリル。
それを携えたグレンラガンが全身を唸らせ回転を始める。
高速で回転する機体にあわせ碧と桃色の眩い光が交じり合ってゆく。
それはまさしく無限の可能性を秘めた螺旋遺伝子の象徴、二重螺旋。
光を放つグレンラガンがその身全てを一つの螺旋と化して大地を突き進む。
それはまさしく冗談めいた光景だった。
恥ずかしいまでの愛の告白を聞かされたかと思えば、突然の合体。
さらには馬鹿みたいに巨大なドリルがこちらの命を奪わんと迫っているのだ。
嗚呼……コレを冗談と呼ばずして何と呼ぼう。
まして、そんな冗談にこちらの命は脅かされているのだ、もはや悪夢と呼んで差し支えない。
差し迫る悪夢。
ガッシュはあまりの自体にあっけに取られ、ねねねにはそもそも反応できるだけの力がない。
故に、その一撃に辛うじて反応できたのはスカーとジンの二人だけだった。
最初に動いたのは王ドロボウ、ジン。
すぐ脇のねねねを抱きかかえ、足元のガッシュの襟元をつかむと、持ち前の俊敏さを発揮して瞬時に身を翻し、そのまま一目散に駆け出した。
だが、迫る一撃はあまりにも巨大、あまりにも強力。
反応できたとして、どうしようもない代物である。
いかにジンの俊足を持ってしても、被弾するまでに攻撃範囲から逃れることは不可能だ。
その必死の足掻きを嘲笑うかのように、天にも迫る巨大なドリルは眼前まで迫り、ジンの視界から太陽を覆い隠す。
伸びる影が地面を染め、ジン達は巨大な闇に飲み込まれた。
――――駄目か。
ドリルが視界全てを埋め尽くす光景を前に、そんな王ドロボウらしからぬ諦めがジンの脳裏をよぎりかけた、瞬間。
その横合いから閃光めいた紫電が奔った。
影を払う閃光。
それはスカーの右腕が生み出した錬成反応の輝き。
スカーが選んだ破壊の対象は、自らが起立するその大地であった。
右腕に触れるあらゆる要素が分解され、その破壊に従って彼らが踏みしめていた大地が崩壊する。
蜘蛛の巣のようなヒビが走る。
地面が波のように隆起する。
崩壊に応じ弾け飛ぶ岩石。
ささくれの様に地表が湧き上がる。
その一部、湧き上がった大地がグレンラガンの行く手に割り込んだ。
それはあたかも彼らを守る盾のように。
「無ゥウ駄ぁだぁああああああ!!!!」
突き進むドリルの裏から、ヴィラルの叫びが響き渡る。
その言の通り、突き進む愛の前にして、この程度の障害などなんの妨げにもなりはしない。
押し進むドリルは立ち塞がる岩壁を物ともせず、それこそ障子を突き破る容易さで急造の盾を打ち破った。
だが、スカーにとってもそれはたいした問題ではない。
もとよりそんなもので防げるモノだとは思ってはいないし、防ぐつもりもない。
地面を崩壊させた狙いは別にある。
スカーが引き起こした大地の崩壊。
それは、当然ながら、その場にいたジン達をも同時に飲み込んだ。
スカーの狙いはそれである。
スカーもジンと同じく、放たれた攻撃がかわしたところでどうにもできない類のモノであることを瞬時に悟っていた。
故に、彼は半ば強制的に彼らをドリルの攻撃範囲から排出することを選択した。
その瞬時の判断と、適切に破壊すべき箇所を選択し実行した決断力は賞賛に値するだろう。
事実、大地の倒壊は彼らが駆け抜けるよりも早く彼らを運び、遠くの地面へとジンたちを放り出した。
ジン以外の二人は受身も取れず背から大地に叩きつけられたため、まったく無事とは言いがたいが五体は健在。
あれほどの一撃に対する成果としては十分に僥倖だ。
多少乱暴ではあったが、あの状況では最善の一手だったと言えるだろう。
もし問題があったとしたならば、ただ一つ。
破壊の中心、それを巻き起こした張本人――――スカーだけは、その場を大きく動くことは叶わず。
その攻撃から、逃れようがないという一点だけだろう。
「スカーーーーーー!」
スカーの意図に気づいたジンの叫び。
それすらも打ち消す激しさで、ドリルが地面を貫き抜ける。
それはスカーが巻き起こした破壊とは比べ物にならないほどの圧倒的な破壊行為。
駆け抜けた跡に残った地形はもはや変わり果てていた。
進むドリルは触れる全てのモノを許しはせず、軌道上のあらゆるものすべてが消滅。
一文字に刻まれた大地の傷跡は深く、生み出された溝は谷と称して差し支えなかった。
「…………う、うぬぅ」
その傍ら。
辛うじて破壊を免れた大地の上でガッシュ・ベルは身を起こした。
立ち上がるなりガッシュは強かに打ち付けた背の痛みをおくびに出さず、大きな金色の瞳を凝らし辺りを見渡した。
目に入るのはただ朽ち果てた大地。
見渡す限り無事な大地など存在しない。
それを見てなおガッシュは諦めない。
ただ純粋な祈りを込めて、そこにいるべきはずのスカーの姿を探していた。
そして、それは程なくして見つかった。
抉れ果てた瓦礫の陰に、見えるのはイシュヴァール人特有の褐色の肌と額に刻まれた十字傷。
見紛うこともない、その特徴は間違いなく探し人のそれである。
だが、その姿を認識したにもかかわらずガッシュは歓喜するでもなく立ち止まり絶句していた。
それも仕方あるまい。
倒れこむスカー。
その姿は見るも無残なものだった。
僅かながらに呼吸しているのは見て取れる。
まだ生きているのは確かだろう。
だが、彼の切り札であり、実兄より受け継いだ形見でもある破壊の右腕は肘の先から見当たらず。
左足は膝から先を紛失しており、右足は根元から欠けている。
そして、傷口からは、鮮やか過ぎるほど真っ赤な血液が止め処なく溢れていた。
壊れた蛇口のように血液が垂れ流される。
流れる血液が小さな川を作り瓦礫の間を滑り落ちていった。
このまま放っておけば確実に死に至ると、ガッシュでも理解できるほどの致命傷だった。
立ち上がる足を失い、荒廃した大地に横たわるスカー。
そこに大きな影が重なった。
それは人型にして人あらざる鉄巨人の影。
太陽に輝く赤いボディに、不敵に笑う二つの顔面。
語るまでもなく、ヴィラルとシャマルの二人が操るグレンラガンである。
放っておいても確実に息絶えるであろう相手だが、今のヴィラルに抜かりはない。
たとえ0.1%でもこの愛の障害になりえるものならば、全て確実に打ち滅ぼすのみ。
許容もなく、慈悲もなく、遥か高みより見下ろす赤い巨人はスカーに向けて右腕を振り上げる。
その腕が振り下ろされてしまえば、両足がないスカーにはそれを避ける術はない。
待つのはより確実な死だ。
だというのに、スカーの瞳にはそんなものは一片たりとも映ってはいなかった。
真紅の瞳に映し出されているのは、自らに死をもたらす鉄槌ではなく、自らを遠く見つめる三人の姿だった。
それを見て何を思うのか、今にもこちらに駆け出してきそうな顔をした三人とは対照的に、スカーの表情は常と変わらぬ仏頂面。
睨み付けるような鋭さを放つ眼光も相変わらず。
こんな状況下においても恐怖や痛みといった感情は見て取れない。
それはきっと、彼が無念に散ったイシュバラの民の痛みと悲しみを抱え生きてきた覚悟の証なのだろう。
復讐と贖罪に彩られた人生の終わり。
告げるべき言葉はただ一言。
「―――――行け」
届くかもわからぬ程小さな声。
それでも確かに、万感の想いを込めたその一言は菫川ねねねの耳に届いた。
その言葉を受けたねねねは奥歯を噛み締めながらも、スカーに背を向け走り出す。
直後。ズドンと、背後で大地を揺らす音が響いた。
同時に聞こえる何かが潰れる嫌な水音。
それが何の音であるかを知りながらも、いや、知っているからこそ止まるわけにはいかなかった。
この身は我等の剣となる。
彼は最後までその役割を全うした。
ならば、その彼に報いるためにもねねねは生き延びなければならなかった。
生き延びて、彼女もまた自らの役割を果たさねばならなかった。
「ッ―――……カ野郎!」
だが、それでも、言葉は口から漏れていた。
それは誰に向けての言葉だったか。
未だ殺し合いを止めない獣たちへか。
自らを犠牲にしたスカーへか。
それとも、何もできない無力な自分に向けてだろうか。
振り返りもせず、彼の最後を見届けることもせず。
悔しさと歯がゆさに、血がにじむほど唇を噛み締めながらも、ねねねは走り続ける。
敗走ではない。
逃避でもない。
全ては明日を掴むために。
遥か遠い、ハッピーエンドを目指しながら。
◇
「おう、やっとるやっとる」
ヴィラルとシャマルが駆るグレンラガン、翻弄される蟻の生き残り、それらを遠巻きに眺める三つの機体。
ルルーシュ・ランペルージによって差し向けられた使者たちは、並び合い、与えられた作戦に想いを馳せる。
――ヴィラルとシャマル及びグレンラガンの回収。
作戦を遂行するには、まずグレンラガンの戦闘を止めなければならない。
東方不敗を召喚したような強制転送システムは既に機能を失いつつあり、今は凍結も不可能なほどに、会場全域で綻びが生じている。
今頃は、参加者たちの首に嵌められた輪も役目を追え、自壊しているに違いなかった。
剣を鞘に収めるには力ずく、天元突破を為した雄を相手にすると心がけ三人がかりで、そういう算段だったが、
「しかしとんでもない暴れっぷりじゃの。あれではとても近づけん」
三機のうちの一体――ゴリラのような長い腕に、甲殻虫を思わせる装甲と触覚を併せ持ったカスタムガンメン、ゲンバーが微動する。
搭乗者のアルマジロ、四天王がひとり不動のグアームは、グレンラガンの猛威を観察しながら尻込みした。
「臆したかグアームよ。四天王が二人も出張っているのだ、やれなくてどうする」
三機のうちの一体――両腕、脚部に鋭い刃を備え、胴体に武骨な顔を浮かばせるカスタムガンメン、ビャコウが一歩前に出る。
搭乗者のゴリラ、怒涛の名を捨てた武人チミルフは、勇ましくも闘争の舞台に恋焦がれた。
「まあそう力むな、チミルフよ。要はあれをどうにかすればいいのだろう? やり方なぞ無数にある」
三機のうちの一体――機械仕掛けの鉄馬に跨る、漆黒のモビルファイター、マスターガンダムと風雲再起が諌める。
搭乗者の老人、東方不敗マスターアジアは鷹揚に微笑み、目の前の大命に向き合った。
彼ら、実験場に降り立った三名の使者。
それぞれが愛機を持ち出し、当初予定していた『試練』の尖兵として、交渉材料の回収に参じた。
実際に天元突破を為した大物を前にして、さてどうするか、と構えたところで東方不敗が案を提示する。
「今の奴に、力ずくといった手段は失策であろう。儂らはなにも、潰し合いをしにきたわけではない」
「ぬ、ぬぅ……では、いったいどうやって奴を止める? 言葉で説得をしろとでも言いたいのか?」
「そのまさかよ。チミルフ……他でもない貴様が、黄泉路より帰還せし勇者としてな」
マスターガンダムのコクピットの中、東方不敗は不敵に微笑んだ。
怪訝に唸るチミルフ、反応を返さぬグアームを尻目に、自らが考案した策を述べる。
「ルルーシュの言葉を思い出してみるがいい。あの二人は儂らほどではないが、事の裏側を把握しておる。
迎えが来たとしてもさして怪しまれることはあるまい……ましてや、死んだと思われた上官ともなればな」
ククク、と笑う東方不敗の言葉には、説得力があった。
チミルフを押し黙らせ、熟考に至らせる。
「もとより、儂は後衛を言い渡されておる。今はまだ隠れ潜み、万が一の事態に備えよう」
「懸命じゃな。チミルフよ、まずはおぬしがヴィラルのもとへ向かえ。ワシも後衛に回る」
「む、グアームもか?」
ルルーシュの采配では、チミルフとグアームがヴィラルと接触、東方不敗がバックアップに回る予定だった。
だからこそ東方不敗の提案にも頷けたチミルフだったが、ここで割り込んできたグアームには些細な異を覚える。
「あの様子では、小競り合いを続けていた者たちも長くないじゃろう。
チミルフが駆けつける頃には、戦闘も終局。説得なぞ、おぬし一人で十分ではないか」
「しかし、王は――」
「細かい交渉の内容はワシらに任せる。そう言ったのは、おぬしの王じゃろが。
確実に王の期待に応えるならば、周囲で起こるやもしれんイレギュラーに目を配らせていたほうが、懸命じゃと言っとる」
音吐朗々たる声で唱えるグアームの言霊は、『王』という絶対のキーワードを持ってチミルフを黙らせた。
ルルーシュの作戦を肯定するならば、この場は東方不敗とグアームの言にこそ理がある。
力ずく、などという発想が生まれてしまったのは、間近でグレンラガンの奮闘を見てしまったがためか。
ロージェノムの螺旋力を凌駕し、天元突破を実現して見せた勇士、ヴィラル。
シャマルという伴侶を得て、豪快に駆る合体ガンメン、グレンラガン。
武人として、情念を燃やさずにはいられない相手であることは確かだ。
チミルフは喉が鳴るのを自覚し、生唾を飲み込む。視線は、遠方のグレンラガンに釘付けだった。
「決まりだな。では、儂とグアームは後衛に回る。チミルフよ、尖兵は任せたぞ」
「尖兵か……ぐふふっ、おぬしにピッタリの役目ではないか。がんばれよぉ」
「言われるまでもない……! 生憎だがおまえたち二人の出番はない。必ずや、王の期待に応えてみせよう」
チミルフは意を決し、操縦桿を固く握る。
彼の操縦するビャコウが一歩、強く大地を踏み締めた。
そして、悠然と歩を進めて行く。焦らず、じっくりと、戦場の渦を目指して。
「……さて、と。おぬしもなにやら悪巧みの最中か? のう、東方不敗よ」
ビャコウの背が徐々に遠ざかっていくのを見やりつつ、グアームが東方不敗に語りかける。
「悪巧み、とはまた……貴様の大切な同志に知れては、事ではないのか?」
東方不敗もまた、グアームに言葉を返す。互いに、惜しげもなく本音を言い合うつもりだった。
「凍結システムを始め、首輪、転送装置、そして他の計器も……あの碧色と桃色の奔流は、磁場を歪める砂嵐じゃよ」
「ふん……今さら小言を聞かれようが、瑣末にすぎんというわけか?」
「惜しいの。小言だからこそ、上手くは拾えないんじゃよ。この実験場、おぬしやルルーシュが思っている以上に、限界きとるぞ?」
監視の目を恐れず、グアームは大胆不敵に笑いを零す。
自らが招きいれた同士たちへの、裏切りにもなりかねない言動を添えて。
隣に立つ東方不敗が、同じような立場にいる人間だということも知りながら。
「さて、ワシは好きにやらせてもらうがおぬしはどうする? 自分の悪巧みを続けるか?」
「ふっ、喰えぬ男よのぉ。儂の胸中を知っているでもなく、あえて座視するというのか?」
「なに、予想はつく。ワシとおぬしの思惑は交わらん。敵にも味方にもなりえぬほどにな」
そう言って、グアームも動く。
ゲンバーの巨躯を巧みに操り、チミルフとはまた違うルートで、天元突破の中心点を目指した。
取り残された東方不敗は、それを後ろから見送る。視線を傾けながら、マスターガンダムの双腕が微かに持ち上がった。
しかし、すぐに下ろされる。間合いは愚か、射的距離からも脱したゲンバーを、余裕の態度で送り出したのだった。
「このまま後ろから始末してしまってもよいのだがな。儂はおぬしほど、あの小僧を見縊ってはおらんのだ。
今はまだ同志として……後衛の任に就き、獣人どもの仕事ぶりを観察させてもらうとしようではないか」
そして、東方不敗も動いた。
マスターガンダムの騎乗する鉄馬が、颯爽と大地を駆ける。
先人たちとはやはり違うルートで、生け贄の待つ遊技場を目指した。
信じ、従い、行動する者――
見限り、裏切り、暗躍する者――
先見据え、身焦がれ、挑戦する者――
三者三様、使わされた三人の男たちは、それぞれの思惑に遵守して突き動く。
ある者は王手と、ある者は一里塚と、ある者は最後の詰めと捉えて。
どこからどこまでが、誰の術中なのか……考える者もいなかった。
**時系列順に読む
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|282:[[愛に時間をⅣ]]|ガッシュ・ベル|285:[[HAPPY END(2)]]|
|282:[[愛に時間をⅣ]]|菫川ねねね|285:[[HAPPY END(2)]]|
|282:[[愛に時間をⅣ]]|ジン|285:[[HAPPY END(2)]]|
|284:[[始まりは終わりの始まり(後編)]]|東方不敗|285:[[HAPPY END(2)]]|
|284:[[始まりは終わりの始まり(後編)]]|チミルフ|285:[[HAPPY END(2)]]|
|284:[[始まりは終わりの始まり(後編)]]|不動のグアーム|285:[[HAPPY END(2)]]|
**HAPPY END(1)◆ANI2to4ndE
空に表情は無かった。世界にも色はない。
代わりにただぼうと鉛のように重たい空間が果てしなく広がっていた。
大地に相当する平面に起伏は見られず、遥かに見える土くれが辛うじて山のように見える他には、自然物さえも存在しない。
不思議な空間であった。
無限地獄さながらの世界を、横に切り裂くように一条の光が走る。
続いて、寄り添うようにいくつもの爆発が起き、爆風と衝撃が通り抜けた。
それが呼び水となったのかのように次々と新たな閃光が走り、限定された空間が色を得る。
生物に類するものは一切存在しない。そう思われた世界にさえ人はいた。
一騎当千の巨神が隊を成し、万古不易の英傑たちが手に手に武器を持って空を駆る。
更に遥か上空では、終末を思わせる凶鳥が甲高い声を響かせて鳴いていた。
相争う無数の人間たち。
友の遺志を継いだ男は次の瞬間光輪の塵となり、泣くことしかできない少女は誰にも気づかれぬまま踏み潰され標本と化す。
愛する者は、繋いだ手を残して消えていた。
果てしなき絶望の末に、一滴の水滴のような光がささやかな終焉のときをもたらした。
渦を巻くようにゆっくりと広がるうねりは全てを平等に包みこみ、飲み込んだものたちの生をそっと奪って行った。
光は半球となり、自らを閉じ込めていた世界の殻を乗り越えてなお、消えることなくまたたき続けていた。
天の光はすべて星。
そして死が始まる。
◇
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 最終回
『HAPPY END』
◇
「ギィイイイイイガァアアアアアアアア!!」
「ラァアアアアアブラブゥウウウウウ!!」
「ドリル――ブレイクゥウウウウウ!!」
はるか高く天元すら突破して、愛に狂った男と女の叫びが木霊する。
猛り狂う叫びに呼応し、薄緑と桃色の輝きがグレンラガンより放たれた。
その右腕には全身を上回る巨大なドリル。
それを携えたグレンラガンが全身を唸らせ回転を始める。
高速で回転する機体にあわせ碧と桃色の眩い光が交じり合ってゆく。
それはまさしく無限の可能性を秘めた螺旋遺伝子の象徴、二重螺旋。
光を放つグレンラガンがその身全てを一つの螺旋と化して大地を突き進む。
それはまさしく冗談めいた光景だった。
恥ずかしいまでの愛の告白を聞かされたかと思えば、突然の合体。
さらには馬鹿みたいに巨大なドリルがこちらの命を奪わんと迫っているのだ。
嗚呼……コレを冗談と呼ばずして何と呼ぼう。
まして、そんな冗談にこちらの命は脅かされているのだ、もはや悪夢と呼んで差し支えない。
差し迫る悪夢。
ガッシュはあまりの自体にあっけに取られ、ねねねにはそもそも反応できるだけの力がない。
故に、その一撃に辛うじて反応できたのはスカーとジンの二人だけだった。
最初に動いたのは王ドロボウ、ジン。
すぐ脇のねねねを抱きかかえ、足元のガッシュの襟元をつかむと、持ち前の俊敏さを発揮して瞬時に身を翻し、そのまま一目散に駆け出した。
だが、迫る一撃はあまりにも巨大、あまりにも強力。
反応できたとして、どうしようもない代物である。
いかにジンの俊足を持ってしても、被弾するまでに攻撃範囲から逃れることは不可能だ。
その必死の足掻きを嘲笑うかのように、天にも迫る巨大なドリルは眼前まで迫り、ジンの視界から太陽を覆い隠す。
伸びる影が地面を染め、ジン達は巨大な闇に飲み込まれた。
――――駄目か。
ドリルが視界全てを埋め尽くす光景を前に、そんな王ドロボウらしからぬ諦めがジンの脳裏をよぎりかけた、瞬間。
その横合いから閃光めいた紫電が奔った。
影を払う閃光。
それはスカーの右腕が生み出した錬成反応の輝き。
スカーが選んだ破壊の対象は、自らが起立するその大地であった。
右腕に触れるあらゆる要素が分解され、その破壊に従って彼らが踏みしめていた大地が崩壊する。
蜘蛛の巣のようなヒビが走る。
地面が波のように隆起する。
崩壊に応じ弾け飛ぶ岩石。
ささくれの様に地表が湧き上がる。
その一部、湧き上がった大地がグレンラガンの行く手に割り込んだ。
それはあたかも彼らを守る盾のように。
「無ゥウ駄ぁだぁああああああ!!!!」
突き進むドリルの裏から、ヴィラルの叫びが響き渡る。
その言の通り、突き進む愛の前にして、この程度の障害などなんの妨げにもなりはしない。
押し進むドリルは立ち塞がる岩壁を物ともせず、それこそ障子を突き破る容易さで急造の盾を打ち破った。
だが、スカーにとってもそれはたいした問題ではない。
もとよりそんなもので防げるモノだとは思ってはいないし、防ぐつもりもない。
地面を崩壊させた狙いは別にある。
スカーが引き起こした大地の崩壊。
それは、当然ながら、その場にいたジン達をも同時に飲み込んだ。
スカーの狙いはそれである。
スカーもジンと同じく、放たれた攻撃がかわしたところでどうにもできない類のモノであることを瞬時に悟っていた。
故に、彼は半ば強制的に彼らをドリルの攻撃範囲から排出することを選択した。
その瞬時の判断と、適切に破壊すべき箇所を選択し実行した決断力は賞賛に値するだろう。
事実、大地の倒壊は彼らが駆け抜けるよりも早く彼らを運び、遠くの地面へとジンたちを放り出した。
ジン以外の二人は受身も取れず背から大地に叩きつけられたため、まったく無事とは言いがたいが五体は健在。
あれほどの一撃に対する成果としては十分に僥倖だ。
多少乱暴ではあったが、あの状況では最善の一手だったと言えるだろう。
もし問題があったとしたならば、ただ一つ。
破壊の中心、それを巻き起こした張本人――――スカーだけは、その場を大きく動くことは叶わず。
その攻撃から、逃れようがないという一点だけだろう。
「スカーーーーーー!」
スカーの意図に気づいたジンの叫び。
それすらも打ち消す激しさで、ドリルが地面を貫き抜ける。
それはスカーが巻き起こした破壊とは比べ物にならないほどの圧倒的な破壊行為。
駆け抜けた跡に残った地形はもはや変わり果てていた。
進むドリルは触れる全てのモノを許しはせず、軌道上のあらゆるものすべてが消滅。
一文字に刻まれた大地の傷跡は深く、生み出された溝は谷と称して差し支えなかった。
「…………う、うぬぅ」
その傍ら。
辛うじて破壊を免れた大地の上でガッシュ・ベルは身を起こした。
立ち上がるなりガッシュは強かに打ち付けた背の痛みをおくびに出さず、大きな金色の瞳を凝らし辺りを見渡した。
目に入るのはただ朽ち果てた大地。
見渡す限り無事な大地など存在しない。
それを見てなおガッシュは諦めない。
ただ純粋な祈りを込めて、そこにいるべきはずのスカーの姿を探していた。
そして、それは程なくして見つかった。
抉れ果てた瓦礫の陰に、見えるのはイシュヴァール人特有の褐色の肌と額に刻まれた十字傷。
見紛うこともない、その特徴は間違いなく探し人のそれである。
だが、その姿を認識したにもかかわらずガッシュは歓喜するでもなく立ち止まり絶句していた。
それも仕方あるまい。
倒れこむスカー。
その姿は見るも無残なものだった。
僅かながらに呼吸しているのは見て取れる。
まだ生きているのは確かだろう。
だが、彼の切り札であり、実兄より受け継いだ形見でもある破壊の右腕は肘の先から見当たらず。
左足は膝から先を紛失しており、右足は根元から欠けている。
そして、傷口からは、鮮やか過ぎるほど真っ赤な血液が止め処なく溢れていた。
壊れた蛇口のように血液が垂れ流される。
流れる血液が小さな川を作り瓦礫の間を滑り落ちていった。
このまま放っておけば確実に死に至ると、ガッシュでも理解できるほどの致命傷だった。
立ち上がる足を失い、荒廃した大地に横たわるスカー。
そこに大きな影が重なった。
それは人型にして人あらざる鉄巨人の影。
太陽に輝く赤いボディに、不敵に笑う二つの顔面。
語るまでもなく、ヴィラルとシャマルの二人が操るグレンラガンである。
放っておいても確実に息絶えるであろう相手だが、今のヴィラルに抜かりはない。
たとえ0.1%でもこの愛の障害になりえるものならば、全て確実に打ち滅ぼすのみ。
許容もなく、慈悲もなく、遥か高みより見下ろす赤い巨人はスカーに向けて右腕を振り上げる。
その腕が振り下ろされてしまえば、両足がないスカーにはそれを避ける術はない。
待つのはより確実な死だ。
だというのに、スカーの瞳にはそんなものは一片たりとも映ってはいなかった。
真紅の瞳に映し出されているのは、自らに死をもたらす鉄槌ではなく、自らを遠く見つめる三人の姿だった。
それを見て何を思うのか、今にもこちらに駆け出してきそうな顔をした三人とは対照的に、スカーの表情は常と変わらぬ仏頂面。
睨み付けるような鋭さを放つ眼光も相変わらず。
こんな状況下においても恐怖や痛みといった感情は見て取れない。
それはきっと、彼が無念に散ったイシュバラの民の痛みと悲しみを抱え生きてきた覚悟の証なのだろう。
復讐と贖罪に彩られた人生の終わり。
告げるべき言葉はただ一言。
「―――――行け」
届くかもわからぬ程小さな声。
それでも確かに、万感の想いを込めたその一言は菫川ねねねの耳に届いた。
その言葉を受けたねねねは奥歯を噛み締めながらも、スカーに背を向け走り出す。
直後。ズドンと、背後で大地を揺らす音が響いた。
同時に聞こえる何かが潰れる嫌な水音。
それが何の音であるかを知りながらも、いや、知っているからこそ止まるわけにはいかなかった。
この身は我等の剣となる。
彼は最後までその役割を全うした。
ならば、その彼に報いるためにもねねねは生き延びなければならなかった。
生き延びて、彼女もまた自らの役割を果たさねばならなかった。
「ッ―――……カ野郎!」
だが、それでも、言葉は口から漏れていた。
それは誰に向けての言葉だったか。
未だ殺し合いを止めない獣たちへか。
自らを犠牲にしたスカーへか。
それとも、何もできない無力な自分に向けてだろうか。
振り返りもせず、彼の最後を見届けることもせず。
悔しさと歯がゆさに、血がにじむほど唇を噛み締めながらも、ねねねは走り続ける。
敗走ではない。
逃避でもない。
全ては明日を掴むために。
遥か遠い、ハッピーエンドを目指しながら。
◇
「おう、やっとるやっとる」
ヴィラルとシャマルが駆るグレンラガン、翻弄される蟻の生き残り、それらを遠巻きに眺める三つの機体。
ルルーシュ・ランペルージによって差し向けられた使者たちは、並び合い、与えられた作戦に想いを馳せる。
――ヴィラルとシャマル及びグレンラガンの回収。
作戦を遂行するには、まずグレンラガンの戦闘を止めなければならない。
東方不敗を召喚したような強制転送システムは既に機能を失いつつあり、今は凍結も不可能なほどに、会場全域で綻びが生じている。
今頃は、参加者たちの首に嵌められた輪も役目を追え、自壊しているに違いなかった。
剣を鞘に収めるには力ずく、天元突破を為した雄を相手にすると心がけ三人がかりで、そういう算段だったが、
「しかしとんでもない暴れっぷりじゃの。あれではとても近づけん」
三機のうちの一体――ゴリラのような長い腕に、甲殻虫を思わせる装甲と触覚を併せ持ったカスタムガンメン、ゲンバーが微動する。
搭乗者のアルマジロ、四天王がひとり不動のグアームは、グレンラガンの猛威を観察しながら尻込みした。
「臆したかグアームよ。四天王が二人も出張っているのだ、やれなくてどうする」
三機のうちの一体――両腕、脚部に鋭い刃を備え、胴体に武骨な顔を浮かばせるカスタムガンメン、ビャコウが一歩前に出る。
搭乗者のゴリラ、怒涛の名を捨てた武人チミルフは、勇ましくも闘争の舞台に恋焦がれた。
「まあそう力むな、チミルフよ。要はあれをどうにかすればいいのだろう? やり方なぞ無数にある」
三機のうちの一体――機械仕掛けの鉄馬に跨る、漆黒のモビルファイター、マスターガンダムと風雲再起が諌める。
搭乗者の老人、東方不敗マスターアジアは鷹揚に微笑み、目の前の大命に向き合った。
彼ら、実験場に降り立った三名の使者。
それぞれが愛機を持ち出し、当初予定していた『試練』の尖兵として、交渉材料の回収に参じた。
実際に天元突破を為した大物を前にして、さてどうするか、と構えたところで東方不敗が案を提示する。
「今の奴に、力ずくといった手段は失策であろう。儂らはなにも、潰し合いをしにきたわけではない」
「ぬ、ぬぅ……では、いったいどうやって奴を止める? 言葉で説得をしろとでも言いたいのか?」
「そのまさかよ。チミルフ……他でもない貴様が、黄泉路より帰還せし勇者としてな」
マスターガンダムのコクピットの中、東方不敗は不敵に微笑んだ。
怪訝に唸るチミルフ、反応を返さぬグアームを尻目に、自らが考案した策を述べる。
「ルルーシュの言葉を思い出してみるがいい。あの二人は儂らほどではないが、事の裏側を把握しておる。
迎えが来たとしてもさして怪しまれることはあるまい……ましてや、死んだと思われた上官ともなればな」
ククク、と笑う東方不敗の言葉には、説得力があった。
チミルフを押し黙らせ、熟考に至らせる。
「もとより、儂は後衛を言い渡されておる。今はまだ隠れ潜み、万が一の事態に備えよう」
「懸命じゃな。チミルフよ、まずはおぬしがヴィラルのもとへ向かえ。ワシも後衛に回る」
「む、グアームもか?」
ルルーシュの采配では、チミルフとグアームがヴィラルと接触、東方不敗がバックアップに回る予定だった。
だからこそ東方不敗の提案にも頷けたチミルフだったが、ここで割り込んできたグアームには些細な異を覚える。
「あの様子では、小競り合いを続けていた者たちも長くないじゃろう。
チミルフが駆けつける頃には、戦闘も終局。説得なぞ、おぬし一人で十分ではないか」
「しかし、王は――」
「細かい交渉の内容はワシらに任せる。そう言ったのは、おぬしの王じゃろが。
確実に王の期待に応えるならば、周囲で起こるやもしれんイレギュラーに目を配らせていたほうが、懸命じゃと言っとる」
音吐朗々たる声で唱えるグアームの言霊は、『王』という絶対のキーワードを持ってチミルフを黙らせた。
ルルーシュの作戦を肯定するならば、この場は東方不敗とグアームの言にこそ理がある。
力ずく、などという発想が生まれてしまったのは、間近でグレンラガンの奮闘を見てしまったがためか。
ロージェノムの螺旋力を凌駕し、天元突破を実現して見せた勇士、ヴィラル。
シャマルという伴侶を得て、豪快に駆る合体ガンメン、グレンラガン。
武人として、情念を燃やさずにはいられない相手であることは確かだ。
チミルフは喉が鳴るのを自覚し、生唾を飲み込む。視線は、遠方のグレンラガンに釘付けだった。
「決まりだな。では、儂とグアームは後衛に回る。チミルフよ、尖兵は任せたぞ」
「尖兵か……ぐふふっ、おぬしにピッタリの役目ではないか。がんばれよぉ」
「言われるまでもない……! 生憎だがおまえたち二人の出番はない。必ずや、王の期待に応えてみせよう」
チミルフは意を決し、操縦桿を固く握る。
彼の操縦するビャコウが一歩、強く大地を踏み締めた。
そして、悠然と歩を進めて行く。焦らず、じっくりと、戦場の渦を目指して。
「……さて、と。おぬしもなにやら悪巧みの最中か? のう、東方不敗よ」
ビャコウの背が徐々に遠ざかっていくのを見やりつつ、グアームが東方不敗に語りかける。
「悪巧み、とはまた……貴様の大切な同志に知れては、事ではないのか?」
東方不敗もまた、グアームに言葉を返す。互いに、惜しげもなく本音を言い合うつもりだった。
「凍結システムを始め、首輪、転送装置、そして他の計器も……あの碧色と桃色の奔流は、磁場を歪める砂嵐じゃよ」
「ふん……今さら小言を聞かれようが、瑣末にすぎんというわけか?」
「惜しいの。小言だからこそ、上手くは拾えないんじゃよ。この実験場、おぬしやルルーシュが思っている以上に、限界きとるぞ?」
監視の目を恐れず、グアームは大胆不敵に笑いを零す。
自らが招きいれた同士たちへの、裏切りにもなりかねない言動を添えて。
隣に立つ東方不敗が、同じような立場にいる人間だということも知りながら。
「さて、ワシは好きにやらせてもらうがおぬしはどうする? 自分の悪巧みを続けるか?」
「ふっ、喰えぬ男よのぉ。儂の胸中を知っているでもなく、あえて座視するというのか?」
「なに、予想はつく。ワシとおぬしの思惑は交わらん。敵にも味方にもなりえぬほどにな」
そう言って、グアームも動く。
ゲンバーの巨躯を巧みに操り、チミルフとはまた違うルートで、天元突破の中心点を目指した。
取り残された東方不敗は、それを後ろから見送る。視線を傾けながら、マスターガンダムの双腕が微かに持ち上がった。
しかし、すぐに下ろされる。間合いは愚か、射的距離からも脱したゲンバーを、余裕の態度で送り出したのだった。
「このまま後ろから始末してしまってもよいのだがな。儂はおぬしほど、あの小僧を見縊ってはおらんのだ。
今はまだ同志として……後衛の任に就き、獣人どもの仕事ぶりを観察させてもらうとしようではないか」
そして、東方不敗も動いた。
マスターガンダムの騎乗する鉄馬が、颯爽と大地を駆ける。
先人たちとはやはり違うルートで、生け贄の待つ遊技場を目指した。
信じ、従い、行動する者――
見限り、裏切り、暗躍する者――
先見据え、身焦がれ、挑戦する者――
三者三様、遣わされた三人の男たちは、それぞれの思惑に遵守して突き動く。
ある者は王手と、ある者は一里塚と、ある者は最後の詰めと捉えて。
どこからどこまでが、誰の術中なのか……考える者もいなかった。
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