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「最愛ナル魔王サマ(後編)」(2023/07/23 (日) 00:17:44) の最新版変更点
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**最愛ナル魔王サマ(後編)◆2PGjCBHFlk
場が停滞しないように留意しながら、次に取り出して見せるのはレーダーだ。
幾つかの光点の集中するそちらを提示しながら、同時に地面へと筆の跡を残していく。
「参加者については詳細名簿で、相手を選んでいるつもりだ。
ただ、君の懸念ももっともな話ではある。俺の知り得る情報は参加者の参加前のものでしかないからな。
君はこのゲームの中でどれぐらいの人に会っている? この中にはどうだ?」
『理論的に辻褄は合っている。俺の持つ情報によれば、どちらかといえば首輪の解除、及び脱出の前準備の確立といったところだ』
筆談で情報を開示しつつ、レーダーの光点の示しているエリアは隣のC-5だ。
そこにいるジン達とかがみの間に面識があれば、同行者がいる状況は尚のことうまく事態を転がすだろう。
その打算を肯定するようにかがみは頷いて、
「この、ここに名前がある人だったら全員知ってるわ。特にジンやゆたかちゃんは」
『具体的に必要なものや、人員。その他を聞いてもいいかしら?』
明確な返事、そして示される聡明さと協力意思――まさに、得難い駒が現れたものだ。
ほくそ笑みたい気持ちを堪えつつ、ルルーシュはかがみに頷き返す。
「そうか。ジンは俺も知っている。その彼と知り合いなら、彼らとの合流に問題はないな」
「ええ」
――よし、条件はクリア。
忠実な部下となったチミルフをジン達にどう説明すべきかがネックだったのだが、彼らと友好的な関係にある柊かがみの証言もあれば集団にチミルフを混ぜることも容易だろう。
最悪、彼らとの関係に亀裂を入れかねないチミルフには自害を命じるか、レーダーを持たせて禁止エリアにでも隠しておこうと思っていたところだ。
ここぞという相手以外、ギアスの使用は控えた方が賢明だろう。
あまりに皆が皆、自分に友好的すぎるとそれは不必要な疑念を招くことにもなりかねない。
柊かがみはギアスではなく、弁論によって信用を勝ち得るべきだ。
「光点を見る限り、集まっている面々に危険な印象はない。脱出する意思は、そのために協力する仲間は一人でも多く必要だ」
『必要なのはフォーグラー……あの、遠くに見える黒い球体だ。あれのある機能を利用する必要がある』
「優しいのね。人がいいのかも。私は嫌いじゃないけど、ここでは危うい考えじゃないかしら?」
『あれを押さえるのは結構な難題ね。誰が乗ってるのか、どう動くかも予想できないし。他は?』
「ご忠告、痛み入るよ。だが、それでも俺は人の心の強さを信じていたい。それだけさ」
『ここからは少し説明が面倒になる。長い話だが、順序立てて話そう。まずは――』
そうしてルルーシュは簡易的に、脱出までの必要な道のりについて筆談を始める。
その間も取り留めのない、言ってしまえばむず痒くなるような青臭さを演じながら、だ。
説明に対してかがみは高い理解力を発揮し、ほとんど口(筆)を挟まなかった。
しかし重要な箇所には質問を欠かさないなど、優秀な生徒であると感心させられたほどだ。
「……以上が俺のここまでの道のりだ。合流、離散を繰り返したが、その芽が今になって開花しているのは皮肉な幸いだな」
『アンチ・シズマ管を集め、試作型へ改造。そして人為的にエネルギー中和現象を引き起こす。
それがこの作戦の肝になる、中核を担う重要な部分だ。
シズマ管の改造は俺が挑戦するつもりだ。少しは機械いじりの知識はあるつもりだからな』
脱出方法の説明と、ルルーシュ個人のゲーム内での動向を一通り話し終える。
もちろん、後者に関しては『情に厚いルルーシュ君』らしく脚色させてもらったが。
「やっぱりみんな……大変な目に遭ってるのね。自分ばっかり不幸だって、自惚れてたかも」
『ひょっとしたら私、アンチ・シズマ管を持ってるかもしれないわ』
「なに?」
かがみの最後の筆談で示された情報に驚き、会話と筆談のリズムを崩して思わず言ってしまった。
その失言にかがみは少し白けた顔をした後で「だから、私ばっかり不幸なわけじゃないわよねって話」とフォローを入れる。
「あ、ああ……すまない。疲れているのかもしれない」
「無理もないわね。私もずっと動いてて、ほとんど眠ったりしてないし」
そう言いながらかがみがデイパックから取り出したのは、緑色の液体のようなものが入ったエネルギーアンプルだった。
そしてそれは――支給品リストに載っている、アンチ・シズマ管そのものだ。
「そうだな。眠っていないのはよくない。睡眠は重要だ。睡眠による疲労の回復が行われなければ、頭の回転も鈍くなる!」
『そうだ! これだよ、これだ。素晴らしい!』
差し出されるままにアンチ・シズマ管を受け取り、興奮を隠せないのが筆談にも声にも出た。
その状況を度外視して、ルルーシュはアンチ・シズマ管の検分を始める。
なるほど、設計思想などは完全に自分の世界のものとは違うが、その作りの部分に限っては文化的な差異はほとんどないようだ。
首輪の解放のためのネジ穴といい、多種多様な世界の根本にまで違いが生じることはそうないらしい。
『役に立った?』
『役に立ったどころじゃないぞ、柊。これはまさしく大金星だ!
できる、できるぞ。やはり俺達には運が向いてきている!』
チミルフという手駒といい、脱出するためのアンチ・シズマ管といい、さらには聡明な協力者。
まるで天がルルーシュ・ランペルージに使命を果たせと言わんばかりではないか。
歓喜に全身を震わせるルルーシュを見ながら、かがみもまたその口元を緩める。
それが不思議と今までの彼女の印象と乖離する、奇妙な笑みに見えたのは見間違いだろうか。
「それで、仲間との合流は今すぐに?」
『エネルギー中和現象について、詳しく聞いてもいい? そこが肝心なんでしょ?』
「あ、ああ。すまない、少し興奮してしまった。寝不足も罪なことだな」
『つまり、このエネルギー中和現象を引き起こすことによって、会場中の機械の機能が停止することになる――そう、首輪もだ』
かがみの丸い目がさらに大きく見開かれ、そこに納得の輝きが広がっていくのをルルーシュは見ていた。
そう。それによって首輪が機能を失えば、ギアスの制限もまた失われるに違いない。
最悪、ギアスの制限さえ外れれば参加者を皆殺しにすることも、あるいは脱出を妨げるものがなくなれば安全な脱出路を探ることも可能になるはずだ。
参加者達の頸木が外れれば、状況悪しと見た螺旋王が直接やってくることも考えられる。
もしもそんな軽挙妄動を螺旋王が起こし、眼前にその憎き姿を晒そうというのなら――スザクの仇を討ってやる。
静かな決意を固めるルルーシュ。不意にその前で、かがみがごそごそと懐を探っている。
どうした、と視線で問いかけると、彼女はううんと首を横に振って、
「ちょっと、驚いたからか目にゴミが入っちゃったみたい。今、目薬さすから」
「目薬なんてものがあるのか……気付かなかったな」
脱出の明確な方法を聞けたことで、緊張感の糸が切れたのだろう。
筆談もこれ以上は必要がないはずだ。筆代わりの枝と石を互いに放り捨て、一息をつく。
かがみは安堵感の生まれた微笑のまま、懐から取り出した『目薬』を目に吹きかけているところだ。
――吹きかけるタイプの目薬とは珍しい。そういえば、俺もこのゲームに参加して以来、睡眠もまともに取れていないから目が疲れているな。ちょっと貸してほしいくらいだ。
疲れ目を感じてぎゅっと目を瞑り、それから眉間を揉み解して疲労を実感する。
かがみはそんなルルーシュの挙動に気付かないまま、目薬を差した両目をぱちぱちと瞬きさせていた。そして、
「そういえばルルーシュ、ちょっといい? 聞きたいことがあるんだけど」
「うん? なんだ?」
「ううん、全然大したことじゃないんだけど」
妙に人懐っこい笑顔になったかがみは、後ろで手を組みながら、愛らしい顔で問いかけてくる。
「人生って、落差がすごいものだと思わない?
上がったと思ったら下がって、下がったと思ったらそんなに捨てたものでもない。
それはなんていうか、神様なんて存在のことを私は全然信じてたりはしてないんだけどね。
でも、運命ってものにはそういう人の意思みたいなものが混ざってるんじゃないかって思うことが私にはあるの」
「……? わからなくもないが……」
「でしょ? それで、落差が云々って話に戻るんだけど、ルルーシュはさっきこう言ってたわよね。
こんな殺し合いの場所でも人を信じたい。そして行動に結果はついてきている。自分達には運が向いてきてるって。
それは正しいことだわ。だってルルーシュは螺旋王に反逆しようと頑張って、それで敵の幹部まで味方につけちゃったものね。
ノリにノッてる状態で、これが幸運じゃなきゃ何が幸運よって話だもの」
取り留めのないことを急に語り出すかがみに、ルルーシュは頷きながらも得体の知れないものを感じる。
緊張の糸が切れて、友人に接するような態度になっているのか?
奇妙なほど早口になる姿、まるで徐々に徐々にテンションが際限なく上がり続けるような――
「つまり何が言いたいのかっていうと、今、運が無敵に素敵に完璧のぺきぺきに向いてきてるルルーシュは言葉で言えば上向き状態。
人生の上下の中でも上の位置にいると思うわけ。それはもう何でもかんでもまるで天が自分を生かそうとしてるんじゃない?
ってちょっと思えてくるぐらいにいい状況だと思うの。それはとても楽しいし嬉しいことよ」
「待て、かがみ。少し落ち着こう、急にどうした?」
「急にも何も全然大丈夫。落ち着いてないわけじゃないわよ。
そろそろ落ち着かなきゃいけない年頃だなぁなんて思いつつ毎日を過ごしている私に対して落ち着けなんて言葉はちょっと違うと思うわ。
そうそう、それでルルーシュのことばっかり話してるのもよくないわよね。で、そんな上向き状態のルルーシュもそうだけど、
それに出会えた私もかなりラッキーだと思う。ラッキーが二人揃ってすごい状態。これが本当のラッキースターなんてね」
――なんだ、この女は?
壊滅的に感情表現が過剰で問題のあるだけなのか?
言いたいことはあくまで、この出会いは素晴らしいものだというそれだけなのか?
普段の態度がいっそ扱いやすかっただけに、今の状況は非常に難解だ。
同行者に選ぶには非常に疲れる相手だと思わざるをえないが。
「ごめんなさい、ちょっと自分で話をずらしちゃった。それでまたまた最初の話題に戻るわけなんだけど、人生の落差ってやつね。
これは言葉で話すのは簡単だけど、実際にはかなり意識し辛いことだと思うの。後になって思い返してみて、
そういえばあの時は人生の絶頂期だったけど、今にしてみればその時は調子に乗ってたなぁなんて感じでね。
やっぱり今、自分が高いところにいるのがわかってる人間に足元を見るようにって忠告は届き難いし言い難いものなのよ。
それでもやっぱり人生ってのはいつだってずっと真っ直ぐに同じ高さをいけるわけじゃないから、
今が高いところにいるのなら低いところに落ちるかもしれないことを意識してなきゃいけないと思うのよね」
そこまで聞いて、ようやくルルーシュはかがみの意図するところを理解した。
つまり彼女は、準備が整い始めてきた今だからこそ気を引き締めて、失敗しないようにと発破をかけているのだ。
何とも遠回しで、しかもわかり難い応援だろうか。そのことに苦笑が浮かぶのを堪え切れない。
「ああ、わかったよ、柊。でも大丈夫だ。ここから失敗するようなヘマはしない。
今が絶頂な状態だというなら、この状況を維持してやろうじゃないか。それぐらいの能力はあるつもりだ」
「なるほどなるほど、つまり、完全に完璧に一分の隙もなく全ッッッッッ然問題なしな感じでいけると、そう思ってるってぇわけだ?」
「ああ、そういうことだ――ここまできて、死んだりなんかするものか」
「もう一声」
「……? とにかく、俺は絶対に死んだりしない」
「ハハァ。つまり、人生の絶頂からまっさかさまに堕落墜落崩落しちまって、
自分がいともあっさりと無残に残酷に酷薄に薄命に死ぬかもなんてことは一切合切考えちゃぁいねェわけだ」
その声が鼓膜を叩いた時、ルルーシュは自分の耳がおかしくなったのかと本気で思った。
何故ならその声は、つい今までずっと話していたかがみと同じものなのに、全くの別のもののように感じられたからだ。
目の前のかがみは相変わらず、愛らしい顔を笑みの形にしている。
だが、何故だろうか。その笑みが急に、ひどく歪んだ狂ったものに見えてきたのは。
「――そうだって、言えよ」
まるで男になったような口調で吐き捨てて、かがみは線にしていた目を剥いてルルーシュを見た。
――その双眸が、まるで悪魔のように赤くて。
「――王っ!!」
怒号と共に、乱暴な衝撃がルルーシュの全身を包み込んでいた。
それがチミルフの駆るビャコウの左手に握られたのが原因だと、全身を濡らす冷や汗が風に扇がれたことで初めて気付く。
「ご無事ですか、王!」
「も、問題ない――よくやった、チミルフ」
こちらの身を案じるチミルフに震えを隠した声で応じるが、実際に紙一重のタイミングであったことには戦慄を隠せない。
死線をほんの僅かな間隙によって救われたルルーシュ、その震える痩身に、
「んだよ。やっぱそっちが先に動いちまったか。
せっかくか弱くて可愛らしい女の子を演じてみたってのに、油断してくれないなんて悲しいぜぇ?」
はっきりと別人に代わったようなかがみが――その全身をいつの間にか白いスーツに覆いながら、黄金の剣を振り切った体勢で嗤っていた。
その変貌に、あまりの異質な変化に、ルルーシュは二の句を告げないほどに驚愕している。
その姿すら物笑いの種なのか、かがみはケタケタとした嗤いをやめない。
その狂人と化した少女を前に、しかし戦場に身を置く武人は一切の動揺のない声で、
「たとえ相手が少女の形をしていようと、油断などしないのが武人の心得だ。色仕掛けなら相手を間違ったと思うがいい」
「ハッ、いいねえいいねえ。お前は死ぬってのをちゃんと意識してやがる。
武人ってなぁ、つまりはサムライだな? ともなりゃ傭兵とかと同じ覚悟は当然ってわけだ。
自分が死ぬなんてちっとも考えてねえ、主とは全然違うじゃねえの」
「黙れ。それ以上、王を侮辱することは臣下の俺が許さん」
「ハッ、許さねえってのはアレだぜ。
つまりは俺がさらにさらにルルーシュきゅんを小馬鹿にしてやったら怒ってくれちまうわけだ。
あんたみたいな奴が忠誠を誓う価値があるかよ、そいつに。
そいつは安全圏で、殺し合いする奴らを高笑いで見下す醜悪な臭いがするぜ。
他人を動かして命の取り合いはさせるくせに、自分はその戦場を遠巻きに見てるってぇ感じのゲスっぽい――」
「――アルカイドグレイブ!!」
決着は一瞬の間についた。
それは蹂躙とも虐殺とも呼ぶことのできない、暴虐が通り過ぎただけの惨劇だ。
主君の侮辱に並々ならぬ忠義が、宣言通りに無礼者を手討ちにしただけのことに過ぎない。
一瞬の間に振り上げられたビーム刃は、秒の停滞もなくその焼け付く刃で柊かがみの小柄な体格を撫で切っていった。
斬撃の威力はそこで留まらず、突き立った地面を爆砕して、土砂の爆裂によって死に体を追撃する。
ビャコウの手の中のルルーシュも、その流れるような攻撃を最初から最後まで完全に見届けた。
ビーム刃の滑らかな斬撃は傷口を焼き、出血すら生むことはない。
左肩から右腰までをばっさりと切られたかがみの体は、そのビームの高熱によって炙られて燃え上がった。
そこをトドメとばかりに降り注ぐ岩石と土砂の雨――助かるはずもない。
有用なはずの手駒がこの手を離れて敵対し、一瞬の攻防の間にその命を散らせていく。
それは正しく、このゲームの残酷な無常観の体現に他ならなかった。
「チミルフ」
「王の意向に背き、出過ぎた真似をしました。処分は如何様にも受け入れるつもりです」
呼びかけに忠臣は頭を垂れ、沙汰が下るのを待つ構えでいる。
主君のためという大義名分すら、その気高い忠義の前には独断専行の言い訳にならないらしい。
――騎士を持つ、ということはこういうことだろうか。
早くにその資格を失っていたルルーシュにとって、その感慨は物珍しいものだった。
「問題はない。奴は危険人物だった。排除して正解だ。よくやったぞ、チミルフ」
「勿体なき言葉です、王」
そうしてコックピットにて跪き続けるチミルフを見て、ルルーシュは思う。
このビャコウという機体のスペックの高さ、そしてそれを扱うチミルフの技量の高さを。
――無理をして、ジン達と合流する必要はないかもしれない。
安全であると睨んでいたはずの柊かがみとの接触がこの様だ。仲間を増やすということは、危険を増やすことにも繋がる。
それよりもこのチミルフをうまく扱いながら、フォーグラーを起動させても問題はないか?
幸いにも柊かがみからアンチ・シズマ管だけは入手することに成功した。
これを入手せずに今の争乱となっていれば、計画は瓦解するところだったのだが。
「どちらにせよ、入手した情報をまとめる時間は必要だな」
短慮はそのまま失敗を招く。
柊かがみの件は一つの結果にすぎない。別の人間までそうであると断じるのはそれこそ短慮の極み。
「チミルフ、とにかく今はこの場を移動する。
この攻撃の音を聞きつけて誰かが集まってこないとも限らない。考える時間が必要だ」
「了解しました。ならば、映画館はどうでしょうか?」
「そこには確か……お前の協力者であるニコラス・D・ウルフウッドがいるんだったな」
「はい。かの男は目的こそ王と違いますが、その力には個人としての俺を上回るものがあります。協力を持ちかけることも不可能ではないかと」
チミルフの言葉に熟考する素振りを見せながら、その考えの甘さを心中で罵倒する。
戦って分かり合った、などと馬鹿げたことを信じる理由になると思っているのだろうか。
そのウルフウッドの目的はチミルフに聞く限り、会場にいる参加者の皆殺しに他ならない。
危険人物中の危険人物だ。東方不敗という老人と大差あるまい。
チミルフはその両者と共闘、あるいは最後に決着をつける約束をしているらしいが、武人という生き物は馬鹿の集まりなのか。
それこそ力こそ正義だと、正しいと考えているのならそれは――
――それはルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにとって、最も唾棄すべき男と同じ考えだ。
「チミルフ、とにかく今はここを離脱しろ。時間が惜しい」
「わかりました。では王、そちらではなくコックピットの方へ」
狭苦しいコックピットに獣人と一緒に入るというのはあまりにも魅力に欠ける提案だが、仕方ないとその誘いに乗ることにする。
掌の上の移動というのは如何にも安定感に欠ける上に、見栄えがよくない。
それにこれだけ目立つ兵器での移動に同乗しているのを他者に見られるのは得策ではない。
チミルフという存在を、友好的な参加者にどう説明すべきか定まっていない今では尚更だ。
「できるだけ他の参加者に見つからないよう、レーダーに注意しながら低空飛行しろ」
「御意に」
素直に従うチミルフの操縦で、ビャコウが静かに、しかし風のような移動を開始する。
それを風の吹き込むコックピット内で、髪を押さえながら悠々と見据えるルルーシュ。
その内心をふと、思い出したように湧き上がった思考があった。
――そういえば結局、柊かがみがどうして特別扱いされていたのかはわからなかったな。
【C-6/西側川付近上空/二日目/午前】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:肉体的疲労(中)、中度の頭痛、後頭部にたんこぶ、胸に打撲、ビャコウ搭乗中(乗ってるだけ)
[装備]:ベレッタM92(残弾11/15)@カウボーイビバップ、ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:支給品一式(-メモ)、メロン×10個 、ノートパソコン(バッテリー残り三時間)@現実、消防服
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日- 、予備マガジン(9mmパラベラム弾)x1
毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿、ゼロの仮面@コードギアス 反逆のルルーシュ
支給品一式(一食分消費)、ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた、ジャン・ハボックの煙草(残り15本)@鋼の錬金術師
『フルメタル・パニック!』全巻セット@らき☆すた(『戦うボーイ・ミーツ・ガール』はフォルゴレのサイン付き)
『イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに捧ぐ』@アニロワ2nd オリジナル
参加者詳細名簿(ルルのページ欠損)、詳細名簿+(読子、アニタ、ルルのページ欠損)
支給品リスト(ゼロの仮面とマント欠損)、考察メモ、警戒者リスト、ダイヤグラムのコピー、携帯電話@アニロワ2ndオリジナル
[思考]
基本:何を代償にしても生き残る。
1:チミルフを従えつつ、最善の行動を選ぶ。
1:ジンの集団を目指すか、あるいは単独で優勝を狙うか。
2:清麿との険悪な関係を知る菫川ねねねに対処する
3:適当な相手に対してギアスの実験を試みる。
4:以下の実行。
「情報を収集し、掌握」「敵戦力の削減、削除」「参加者自体の間引き」
5:余裕があればショッピングモールかモノレールを調べる。
[備考]
※首輪は電波を遮断すれば機能しないと考えています。
※明智組の得た情報について把握しました。
※会場のループについて把握しました。
※ギアスの制限は主に一度に使用する人数が問題なのではないか、と想像しています。
※名簿は生存者と異世界についての情報把握に的を絞って見たため、スザク他との時間軸の矛盾に気付いていません。
※清麿殺しの罪はヴィラル、シャマルのどちらかに擦り付けるつもりです。
※チミルフから螺旋王の目的やアンチスパイラルについての情報を入手しました。
【怒涛のチミルフ@天元突破グレンラガン】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(小)、頭部に軽い裂傷、左頬が腫れあがっている、敗北感の克服による強い使命感、ギアス(忠誠を誓う相手の書き換え)
[装備]:愛用の巨大ハンマー@天元突破グレンラガン(支給品扱い)
ビャコウ@天元突破グレンラガン(右脚部小破、コクピットハッチ全損、稼動には支障なし)
[道具]:デイパック、支給品一式、ファウードの回復液(500ml×1)@金色のガッシュベル!!
[思考]
基本A:獣人以外を最終的には皆殺しにする上で、ニンゲンの持つ強さの本質を理解する。
B:王であるルルーシュの命に従い、ルルーシュの願いを叶える。
0:ルルーシュと同行し、臣下としての務めを果たす。
1:ウルフウッドと合流し、ニンゲンとは何か見極める。
2:ヴィラルと接触したい。
3:螺旋王の第一王女、ニアに対する強い興味。
4:強者との戦いの渇望(東方不敗、ギルガメッシュ(未確認)は特に優先したい)。
5:ヴィラルが首を一つも用意できなければ、シャマルの首を差し出させるかもしれない。
6:夜なのに行動が出来ることについては余り考えていない(夜行性の獣人もいるため)。
7:ニンゲンに創られたニンゲン以上の存在として、ヴァッシュに強い興味。彼の知人に話を聞きたい。
[備考]
※ヴィラルには違う世界の存在について話していません。同じ世界のチミルフのフリをしています。
※シャマルがヴィラルを手玉に取っていないか疑っています。
※チミルフがヴィラルと同じように螺旋王から改造(人間に近い状態や、識字能力)を受けているのかはわかりません。
※ダイグレンを螺旋王の手によって改修されたダイガンザンだと思っています。
※螺旋王から、会場にある施設の幾つかについて知識を得ているようです。
※『怒涛』の二つ名とニンゲンを侮る慢心を捨て、NEWチミルフ気分です。
※自分なりの解釈で、ニンゲンの持つ螺旋の力への関心を抱きました。ニンゲンへの積極的交戦より接触、力の本質を見定めたがっています。(ただし手段は問わない)
※ビャコウ及び愛用のハンマーはウルフウッドの気絶中に回収しました。
※ビャコウは起動には問題ありませんが、コクピット内部が剥き出しになっています。
※東方不敗と一時休戦、次に出会った時は共闘することを決めました。
実験の最後に全力で決闘することを誓いました。
※東方不敗の知る参加者についての情報を入手しました。
※『忠誠を誓うべき相手は螺旋王ではなく、ルルーシュである』という認識の書き換えをギアスで受けました。
螺旋王に対して抱いていた忠誠が全てルルーシュに向きます。武人たる彼は自害しろとルルーシュに言われればするでしょう。
獣人としての誇りは持っていますが、螺旋王に対する忠誠心は失っています。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「いやいやいやいや、まったく痛いねぇ辛いねぇ。うまくいかねえもんだよ、なぁ」
ルルーシュとチミルフの両名が立ち去ってから数分、
うず高く積まれた土砂を黄金の剣で掘り返して、少女はしばし別れを告げていた空を仰ぐ。
「おおう、やっぱ青空はいいな。普段はいつも頭の上にあるもんだから気にしちゃいねえが、
土の下に埋まって真っ暗闇に周りを囲まれてみると、改めてその蒼さが目に沁みてくるぜ」
――それにしても、タカヤ君の目薬があって本当に助かったぜ。
砂埃をふんだんに浴びた目を擦りながら感嘆し、狂人は裸体を晒したまま述懐する。
殺害したDボゥイはその満身創痍の肉体の悲痛さもさながら、持ち合わせた荷物の貧相さにも涙が出そうになった。
荷物としては支給品を除けばまともな道具は赤い目薬しかなかったのだ。
Dボゥイを殺害した後の戦利品の検めということで、狂人は一度この目薬を使用している。
実際のところ、戦っている最中にこの目薬を注してDボゥイの動きが変わったことには気付いていたので、回収して使ってみることに躊躇はなかった。
それにより、効果が動体視力の異常な強化だということはわかっていた。
効果時間が短すぎるのが不満だが、パフォーマンスを考えれば文句は言えまい。
ここへきて彼女は気付いていないが、ブラッディアイの本来の効果時間は彼女の自覚よりもう少し長い。そして、その副作用も。
それに彼女が気付かない理由は明白――副作用を感じていないのだ。
ブラッディアイはその使用者の視神経を侵す代わりに、莫大な力を与えることになる薬だ。
そのブラッディアイを使用するものとしての資格のほとんどを、不死者となった彼女は失っている。
不死者として酒を飲んだ状態で肉体が固定されている彼女、その肉体が薬の侵食を受け入れないのだ。
侵される視神経は即座に修復し、ブラッディアイの異常な効果を数十秒で打ち消してしまう。
さらに付け加えれば、不死者の肉体は同じダメージに対して耐性を作るようになる。
つまり、今は六十秒ほど持つブラッディアイの効果は徐々に短くなり、最終的には何の効果も発揮しなくなるということだ。
それでも、副作用なくこの薬を使うことができるという彼女とブラッディアイの相性は、抜群に良いと言わざるをえないが。
とにかく、その薬の効果によって彼女が命を拾ったことは間違いないのだ。タカヤ君様々である。
チミルフのビャコウによる一撃の瞬間、狂人の世界は赤く停滞していた。
その攻撃の速度を回避しきることはできずとも、頭部と心臓の致命傷を庇うことができる程度には。
その後に土砂に巻き込まれたのは、脱出に手間がかかりはしたが僥倖だった。
もしもあれがなければ二人の前で再生し、戦いは長引いていたことだろう。
「ま、やり合ってたら負けてたかもわかんねえしな。チミルフ……だったか。
あいつはいい目ぇしてやがった。主君のために命を懸けて、死ぬかもしれない戦場に臨むってなぁ。
ああいう奴は殺したくねえや。代わりにルルーシュ君が俺的に最高に殺したい温さだったがね!」
Dボゥイを殺害し、薬の効果を確かめた後で、狂人が選んだのは周囲の散策だった。
おそらくは付近にいるだろう、先ほどまで戦い合っていた面々。
――スパイク・スピーゲルや奈緒ちゃんといった奴らを殺しに行くのはとても楽しそうなことだ。
ただ、ジンは仲間だから殺せないやな。適当に誰かに殺されてくれれば楽なんだが。
何より――小早川ゆたか。彼女を殺そうと思い切ることができなかった。
この気持ちは非常に厄介なものだ。殺したいんだが、殺したくない。
殺したくない子を殺すのはすごくいいことのようで悪いことのようで結局どうすればいいんだか――
「わからなくなってわからなくなって、ああ考えるの面倒くせぇってなったから、とりあえず散歩することにしたんだったな」
特別な理由もなく、鼻歌交じりで川に沿って歩いていたら、ちょうどよく獲物を見つけたのだ。
ただ、獲物はおっかないペットと一緒で、しかもこっちの位置をレーダーで確認していた。
位置がばれているとなれば、開き直って飛び出すしかない。それでも、なるたけ利用できるものは利用しておきたい。
だから、せっかく女の子の格好してんだし、女の子のふりとかすればいけるんじゃね?
という狡猾とも悪ふざけともいえるような理由で、柊かがみを演じながら近付いたのだ。
我ながらうまくやれていたものだと、自画自賛してもいいぐらいだったと思う。
聞き出せた情報も有用なものばかりだったし、ジンにでも聞かせたら大喜びしそうだ。
ただし脱出方法や首輪の考察以外は眉唾と思っていいだろう。
こっちの『演技』に向こうが気付いていなかったのは確かだが、向こうが空寒い演技をしていたのは事実。
見覚えのある携帯電話に詳細名簿――それらの入手に明智達の名前が出なかったことも含めて。
「あー、清麿も死んでんのかねぇ。悲しいねぇ辛いねぇ、仲間が死ぬってのはよぉ。殺したのはルルーシュ君だろうしなぁ。
でもせっかく目ぇ合わせてたってのに、必殺催眠術は使ってこなかったけどよぉ」
しかし、目の前に美味しそうな餌がずーーーーーーーーっとぶら下げられているのに、それを我慢するのは苦痛だった。
ルルーシュ・ランペルージ――その態度、物腰、仕草、喋り方、表情、性格からスタンスに至るまで、それは正しく今の彼女にとって生唾ものの極上な温さだった。
命懸けの行動を、命を懸けずにやってのけたいというような、温い甘い青い願望。
我慢しなければならなかったのだ。一応、我慢しようという努力はしてみた。
ルルーシュの背後に立つチミルフはずっと、自分の動向に目を光らせていたのだ。
まともな戦いになれば戦力差からして勝てるはずもない。無謀もいいところだ。
それが分かっていたからこそ、この場で手を出すのは我慢して、タイミングを見計らうつもりだったのだ。だったのに――
「エネルギー中和現象とか、そんなこと言うんだもんなぁ」
フォーグラーを利用し、エネルギー中和現象を起こす――それがルルーシュの考える、脱出のための方策だったらしい。
それによれば首輪の制限は失われ、そして会場中の機械が停止するという。
なるほど確かに会場の端のバリアがなくなれば、あるいは制限がなくなれば会場を脱出するための力を持っている奴ぐらいいるのかもしれない。
宇宙人が参加しているぐらいだ。宇宙船ぐらいどっかに埋めてある可能性もある。
「でもよぉ、そんなことされっと俺が困るんだよなァ」
そう、困るのだ。脱出できるというのは非常にありがたいことだ。
自分もいい加減、この会場でなくてもいいから適当に温い連中をぶっ殺して回りたい。
だが、制限が外れてしまうというのは困るのだ。だって――
「制限が外れたら、俺は死なねぇ体になっちまう。
完全な不死者になっちまったらよ、俺のこの大事なアイデンティティが崩壊しちまわぁ」
死ぬなんて考えから縁遠く、今生きていることの素晴らしさを理解していない連中に生きることをレクチャーする。
それが自分の持つ、他者殺害への信念だ。
そんな信念を持つ自分が、死ねる可能性さえ完全に失って、死なない体になってみろ。
――死なない奴が、そんな説教なんてちゃんちゃらおかしくなっちまう。
故に狂人としては、脱出できるに越したことはない。
ただし、その場合は制限は持ち越したままの脱出でなければ意味がないのだ。
会場中の誰もが窮屈で邪魔だと思っているだろう首輪が、彼女には必要だった。
「ま、結果的に死んだふりみたいになったし。
レーダー持ってるルルーシュ君はそう遠くない内に俺に気付くだろうけどな。
目的地はわかってるわけだから、先回りでもしといてやろうかねぇ」
Dボゥイとの約束は後回しだ。ゆたかちゃんと舞衣ちゃんを殺してる間に、首輪の制限を外されでもしたら困ったことになってしまう。
となれば、狂人が次に目指すべき場所は――
「あのでっかい黒いボールは、フォーグラーだったか? あれを壊すかどうかしないといけねえよなぁ。
清麿は草葉の陰から怒っかもしんねえけど、あれがあったら俺が困るわけだから、俺が困るから壊したって謝っときゃぁいいだろ」
身勝手な方針を打ち立てると、狂人は気合いを入れるように「よしっ」と牙を剥いて嗤う。
手にした黄金の剣をスコップ代わりに地面を掘り進め、埋もれていたデイパックも回収した。
あれだけの被害があったものだから喪失も覚悟していたが、丈夫な素材で何よりだ。
「さて……んじゃま、とりあえず黒い太陽を壊しに行きますかね。
壊すのは俺じゃなく、グラハムの奴の専売特許だってのによ。うぉ、そう思うとあいつならスゲェ嬉しそうに壊しそうだなアレ」
そんな感慨を漏らしてから歩き出そうとして、ふと全身がすーすーすることを思い出した。
そうだ。チミルフの攻撃のせいで、遂に最後の衣服まで失っていたんだった。
これは困ったことになった。いくら女の子でも、素っ裸で近寄ってきたら油断はさせられないんじゃないか?
「となると、やっぱり便利なこいつに頼るっきゃねえか」
呟き、緑の光が全身を包み込んだ。次の瞬間にはその全身を白のスーツが覆っている。
その衣装を満足げに見ていた狂人だったが、不意にその表情が歪む。と、
「うおおい、何だよ! 一回解除すると、もう一回着た時はクリーニング済みになっちまうのか!
せっかくタカヤ君の返り血でいい感じだったってのに、まっさらじゃねえかよぉ」
綺麗になった白服は卸し立ての華やかさだ。そこにはあの楽しかった惨劇の、一片たりとも残っていない。
歪み切った悲しみの声を上げて一頻り騒ぐと、狂人はゆっくり歩き出した。
「ま、なくなったもんはしゃーない。お星様になったタカヤ君のことは忘れるとして、俺は次なる出会いを求めようじゃねえの。
おっと、出会いとか言ってるとルーアに誤解されちまうな。大丈夫、問題なし! 俺はお前一筋だからよ!
愛して愛して最後に殺すのはお前だけだ! とりあえず、ルルーシュ君とかぶち殺して、この白い布地の最初の斑点になってほしいもんだねぇ。
ハハ、ハハハ、ヒャハハハハハハッハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
歪んで歪んで歪み切った狂笑を浮かべながら、狂人は弾むようなステップで道を急ぐ。
その道筋の先に、新たな血の臭いを感じさせながら――
【C-6/川沿いの道/二日目/午前】
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死者、髪留め無し、螺旋力覚醒(ラッドの分もプラス) 、疲労(大) 、ラッドモード
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、 ブラッディアイ(残量40%)@カウボーイビバップ
クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:デイバッグ×14(支給品一式×14[うち一つ食料なし、食料×5 消費/水入りペットボトル×2消費])
【武器】
超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾0/5)
王の財宝@Fate/stay night、シュバルツのブーメラン@機動武闘伝Gガンダム
【特殊な道具】
オドラデクエンジン@王ドロボウJING、緑色の鉱石@天元突破グレンラガン、全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ)
衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日
サングラス@カウボーイビバップ、赤絵の具@王ドロボウJING
マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ、ヴァッシュの手配書@トライガン、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!
首輪(つかさ)、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)、首輪(クアットロ)
【通常の道具】
シガレットケースと葉巻(葉巻-1本)、ボイスレコーダー、防水性の紙×10、暗視双眼鏡
【その他】
がらくた×3、柊かがみの靴、破れたチャイナ服、ずたずたの番長ルック(吐瀉物まみれ、殆ど裸)、ガンメンの設計図まとめ
壊れたローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[思考]
基本:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
0:フォーグラーを破壊して、エネルギー中和現象計画を頓挫させる。
1:Dボゥイとの約束通り、舞衣とゆたかを殺したい(ゆたか殺害には精神的苦痛を感じます)
2:ルルーシュをとてもとても殺したい。
3:とりあえず服が白いと寂しいので、誰かを殺したい。
[備考]:
※ボイスレコーダーには、なつきによるドモン(チェス)への伝言が記録されています。
※会場端のワープを認識。
※奈緒からギルガメッシュの持つ情報を手に入れました。
※ラッド・ルッソの力を開放することに恐怖を覚えました。
※ラッドの知識により、不死者の再生力への制限に思い当たりました。
※本人の意思とは無関係にギルガメッシュ、舞衣に強い殺意を抱いています。
※『自分が死なない』に類する台詞を聞いたとき、非常に強い殺意が湧き上がります。抑え切れない可能性があります。
※かがみのバリアジャケットは『ラッドのアルカトラズスタイル(青い囚人服+義手状の鋼鉄製左篭手)』です。
2ndフォームは『黒を基調としたゴシックロリータ風の衣裳です』 その下に最後の予備の服を着用しています。
※王の財宝@Fate/stay nightは、空間からバッグの中身を飛び出させる能力(ギルとアルベルトに関係あり?)、と認識。
※シータのロボットは飛行機能持ちであることを確認。またレーザービーム機能についても目視したようです。
※第五回放送を聞き逃しました。
※『かがみ』の人格を手放すことを選びました。
※かがみの3rdフォームは『列車時のラッドの白服』です。下は裸なので、擦れて痛いかもしれません。
※ルルーシュから『フォーグラーを利用した脱出法』の情報を得ました。成功すると困るので、何とか止めたいと思っています。
※ルルーシュが『チーム戦術交渉部隊』の道具を持っていたことで、明智達を殺害したのはルルーシュだと思っています。
**時系列順に読む
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|269:[[最愛ナル魔王サマ(前編)]]|ルルーシュ・ランペルージ|271:[[天のさだめを誰が知るⅠ]]|
|269:[[最愛ナル魔王サマ(前編)]]|チミルフ|271:[[天のさだめを誰が知るⅠ]]|
|269:[[最愛ナル魔王サマ(前編)]]|柊かがみ|275:[[柊かがみの憂鬱 Ⅰ]]|
**最愛ナル魔王サマ(後編)◆2PGjCBHFlk
場が停滞しないように留意しながら、次に取り出して見せるのはレーダーだ。
幾つかの光点の集中するそちらを提示しながら、同時に地面へと筆の跡を残していく。
「参加者については詳細名簿で、相手を選んでいるつもりだ。
ただ、君の懸念ももっともな話ではある。俺の知り得る情報は参加者の参加前のものでしかないからな。
君はこのゲームの中でどれぐらいの人に会っている? この中にはどうだ?」
『理論的に辻褄は合っている。俺の持つ情報によれば、どちらかといえば首輪の解除、及び脱出の前準備の確立といったところだ』
筆談で情報を開示しつつ、レーダーの光点の示しているエリアは隣のC-5だ。
そこにいるジン達とかがみの間に面識があれば、同行者がいる状況は尚のことうまく事態を転がすだろう。
その打算を肯定するようにかがみは頷いて、
「この、ここに名前がある人だったら全員知ってるわ。特にジンやゆたかちゃんは」
『具体的に必要なものや、人員。その他を聞いてもいいかしら?』
明確な返事、そして示される聡明さと協力意思――まさに、得難い駒が現れたものだ。
ほくそ笑みたい気持ちを堪えつつ、ルルーシュはかがみに頷き返す。
「そうか。ジンは俺も知っている。その彼と知り合いなら、彼らとの合流に問題はないな」
「ええ」
――よし、条件はクリア。
忠実な部下となったチミルフをジン達にどう説明すべきかがネックだったのだが、彼らと友好的な関係にある柊かがみの証言もあれば集団にチミルフを混ぜることも容易だろう。
最悪、彼らとの関係に亀裂を入れかねないチミルフには自害を命じるか、レーダーを持たせて禁止エリアにでも隠しておこうと思っていたところだ。
ここぞという相手以外、ギアスの使用は控えた方が賢明だろう。
あまりに皆が皆、自分に友好的すぎるとそれは不必要な疑念を招くことにもなりかねない。
柊かがみはギアスではなく、弁論によって信用を勝ち得るべきだ。
「光点を見る限り、集まっている面々に危険な印象はない。脱出する意思は、そのために協力する仲間は一人でも多く必要だ」
『必要なのはフォーグラー……あの、遠くに見える黒い球体だ。あれのある機能を利用する必要がある』
「優しいのね。人がいいのかも。私は嫌いじゃないけど、ここでは危うい考えじゃないかしら?」
『あれを押さえるのは結構な難題ね。誰が乗ってるのか、どう動くかも予想できないし。他は?』
「ご忠告、痛み入るよ。だが、それでも俺は人の心の強さを信じていたい。それだけさ」
『ここからは少し説明が面倒になる。長い話だが、順序立てて話そう。まずは――』
そうしてルルーシュは簡易的に、脱出までの必要な道のりについて筆談を始める。
その間も取り留めのない、言ってしまえばむず痒くなるような青臭さを演じながら、だ。
説明に対してかがみは高い理解力を発揮し、ほとんど口(筆)を挟まなかった。
しかし重要な箇所には質問を欠かさないなど、優秀な生徒であると感心させられたほどだ。
「……以上が俺のここまでの道のりだ。合流、離散を繰り返したが、その芽が今になって開花しているのは皮肉な幸いだな」
『アンチ・シズマ管を集め、試作型へ改造。そして人為的にエネルギー中和現象を引き起こす。
それがこの作戦の肝になる、中核を担う重要な部分だ。
シズマ管の改造は俺が挑戦するつもりだ。少しは機械いじりの知識はあるつもりだからな』
脱出方法の説明と、ルルーシュ個人のゲーム内での動向を一通り話し終える。
もちろん、後者に関しては『情に厚いルルーシュ君』らしく脚色させてもらったが。
「やっぱりみんな……大変な目に遭ってるのね。自分ばっかり不幸だって、自惚れてたかも」
『ひょっとしたら私、アンチ・シズマ管を持ってるかもしれないわ』
「なに?」
かがみの最後の筆談で示された情報に驚き、会話と筆談のリズムを崩して思わず言ってしまった。
その失言にかがみは少し白けた顔をした後で「だから、私ばっかり不幸なわけじゃないわよねって話」とフォローを入れる。
「あ、ああ……すまない。疲れているのかもしれない」
「無理もないわね。私もずっと動いてて、ほとんど眠ったりしてないし」
そう言いながらかがみがデイパックから取り出したのは、緑色の液体のようなものが入ったエネルギーアンプルだった。
そしてそれは――支給品リストに載っている、アンチ・シズマ管そのものだ。
「そうだな。眠っていないのはよくない。睡眠は重要だ。睡眠による疲労の回復が行われなければ、頭の回転も鈍くなる!」
『そうだ! これだよ、これだ。素晴らしい!』
差し出されるままにアンチ・シズマ管を受け取り、興奮を隠せないのが筆談にも声にも出た。
その状況を度外視して、ルルーシュはアンチ・シズマ管の検分を始める。
なるほど、設計思想などは完全に自分の世界のものとは違うが、その作りの部分に限っては文化的な差異はほとんどないようだ。
首輪の解放のためのネジ穴といい、多種多様な世界の根本にまで違いが生じることはそうないらしい。
『役に立った?』
『役に立ったどころじゃないぞ、柊。これはまさしく大金星だ!
できる、できるぞ。やはり俺達には運が向いてきている!』
チミルフという手駒といい、脱出するためのアンチ・シズマ管といい、さらには聡明な協力者。
まるで天がルルーシュ・ランペルージに使命を果たせと言わんばかりではないか。
歓喜に全身を震わせるルルーシュを見ながら、かがみもまたその口元を緩める。
それが不思議と今までの彼女の印象と乖離する、奇妙な笑みに見えたのは見間違いだろうか。
「それで、仲間との合流は今すぐに?」
『エネルギー中和現象について、詳しく聞いてもいい? そこが肝心なんでしょ?』
「あ、ああ。すまない、少し興奮してしまった。寝不足も罪なことだな」
『つまり、このエネルギー中和現象を引き起こすことによって、会場中の機械の機能が停止することになる――そう、首輪もだ』
かがみの丸い目がさらに大きく見開かれ、そこに納得の輝きが広がっていくのをルルーシュは見ていた。
そう。それによって首輪が機能を失えば、ギアスの制限もまた失われるに違いない。
最悪、ギアスの制限さえ外れれば参加者を皆殺しにすることも、あるいは脱出を妨げるものがなくなれば安全な脱出路を探ることも可能になるはずだ。
参加者達の頸木が外れれば、状況悪しと見た螺旋王が直接やってくることも考えられる。
もしもそんな軽挙妄動を螺旋王が起こし、眼前にその憎き姿を晒そうというのなら――スザクの仇を討ってやる。
静かな決意を固めるルルーシュ。不意にその前で、かがみがごそごそと懐を探っている。
どうした、と視線で問いかけると、彼女はううんと首を横に振って、
「ちょっと、驚いたからか目にゴミが入っちゃったみたい。今、目薬さすから」
「目薬なんてものがあるのか……気付かなかったな」
脱出の明確な方法を聞けたことで、緊張感の糸が切れたのだろう。
筆談もこれ以上は必要がないはずだ。筆代わりの枝と石を互いに放り捨て、一息をつく。
かがみは安堵感の生まれた微笑のまま、懐から取り出した『目薬』を目に吹きかけているところだ。
――吹きかけるタイプの目薬とは珍しい。そういえば、俺もこのゲームに参加して以来、睡眠もまともに取れていないから目が疲れているな。ちょっと貸してほしいくらいだ。
疲れ目を感じてぎゅっと目を瞑り、それから眉間を揉み解して疲労を実感する。
かがみはそんなルルーシュの挙動に気付かないまま、目薬を差した両目をぱちぱちと瞬きさせていた。そして、
「そういえばルルーシュ、ちょっといい? 聞きたいことがあるんだけど」
「うん? なんだ?」
「ううん、全然大したことじゃないんだけど」
妙に人懐っこい笑顔になったかがみは、後ろで手を組みながら、愛らしい顔で問いかけてくる。
「人生って、落差がすごいものだと思わない?
上がったと思ったら下がって、下がったと思ったらそんなに捨てたものでもない。
それはなんていうか、神様なんて存在のことを私は全然信じてたりはしてないんだけどね。
でも、運命ってものにはそういう人の意思みたいなものが混ざってるんじゃないかって思うことが私にはあるの」
「……? わからなくもないが……」
「でしょ? それで、落差が云々って話に戻るんだけど、ルルーシュはさっきこう言ってたわよね。
こんな殺し合いの場所でも人を信じたい。そして行動に結果はついてきている。自分達には運が向いてきてるって。
それは正しいことだわ。だってルルーシュは螺旋王に反逆しようと頑張って、それで敵の幹部まで味方につけちゃったものね。
ノリにノッてる状態で、これが幸運じゃなきゃ何が幸運よって話だもの」
取り留めのないことを急に語り出すかがみに、ルルーシュは頷きながらも得体の知れないものを感じる。
緊張の糸が切れて、友人に接するような態度になっているのか?
奇妙なほど早口になる姿、まるで徐々に徐々にテンションが際限なく上がり続けるような――
「つまり何が言いたいのかっていうと、今、運が無敵に素敵に完璧のぺきぺきに向いてきてるルルーシュは言葉で言えば上向き状態。
人生の上下の中でも上の位置にいると思うわけ。それはもう何でもかんでもまるで天が自分を生かそうとしてるんじゃない?
ってちょっと思えてくるぐらいにいい状況だと思うの。それはとても楽しいし嬉しいことよ」
「待て、かがみ。少し落ち着こう、急にどうした?」
「急にも何も全然大丈夫。落ち着いてないわけじゃないわよ。
そろそろ落ち着かなきゃいけない年頃だなぁなんて思いつつ毎日を過ごしている私に対して落ち着けなんて言葉はちょっと違うと思うわ。
そうそう、それでルルーシュのことばっかり話してるのもよくないわよね。で、そんな上向き状態のルルーシュもそうだけど、
それに出会えた私もかなりラッキーだと思う。ラッキーが二人揃ってすごい状態。これが本当のラッキースターなんてね」
――なんだ、この女は?
壊滅的に感情表現が過剰で問題のあるだけなのか?
言いたいことはあくまで、この出会いは素晴らしいものだというそれだけなのか?
普段の態度がいっそ扱いやすかっただけに、今の状況は非常に難解だ。
同行者に選ぶには非常に疲れる相手だと思わざるをえないが。
「ごめんなさい、ちょっと自分で話をずらしちゃった。それでまたまた最初の話題に戻るわけなんだけど、人生の落差ってやつね。
これは言葉で話すのは簡単だけど、実際にはかなり意識し辛いことだと思うの。後になって思い返してみて、
そういえばあの時は人生の絶頂期だったけど、今にしてみればその時は調子に乗ってたなぁなんて感じでね。
やっぱり今、自分が高いところにいるのがわかってる人間に足元を見るようにって忠告は届き難いし言い難いものなのよ。
それでもやっぱり人生ってのはいつだってずっと真っ直ぐに同じ高さをいけるわけじゃないから、
今が高いところにいるのなら低いところに落ちるかもしれないことを意識してなきゃいけないと思うのよね」
そこまで聞いて、ようやくルルーシュはかがみの意図するところを理解した。
つまり彼女は、準備が整い始めてきた今だからこそ気を引き締めて、失敗しないようにと発破をかけているのだ。
何とも遠回しで、しかもわかり難い応援だろうか。そのことに苦笑が浮かぶのを堪え切れない。
「ああ、わかったよ、柊。でも大丈夫だ。ここから失敗するようなヘマはしない。
今が絶頂な状態だというなら、この状況を維持してやろうじゃないか。それぐらいの能力はあるつもりだ」
「なるほどなるほど、つまり、完全に完璧に一分の隙もなく全ッッッッッ然問題なしな感じでいけると、そう思ってるってぇわけだ?」
「ああ、そういうことだ――ここまできて、死んだりなんかするものか」
「もう一声」
「……? とにかく、俺は絶対に死んだりしない」
「ハハァ。つまり、人生の絶頂からまっさかさまに堕落墜落崩落しちまって、
自分がいともあっさりと無残に残酷に酷薄に薄命に死ぬかもなんてことは一切合切考えちゃぁいねェわけだ」
その声が鼓膜を叩いた時、ルルーシュは自分の耳がおかしくなったのかと本気で思った。
何故ならその声は、つい今までずっと話していたかがみと同じものなのに、全くの別のもののように感じられたからだ。
目の前のかがみは相変わらず、愛らしい顔を笑みの形にしている。
だが、何故だろうか。その笑みが急に、ひどく歪んだ狂ったものに見えてきたのは。
「――そうだって、言えよ」
まるで男になったような口調で吐き捨てて、かがみは線にしていた目を剥いてルルーシュを見た。
――その双眸が、まるで悪魔のように赤くて。
「――王っ!!」
怒号と共に、乱暴な衝撃がルルーシュの全身を包み込んでいた。
それがチミルフの駆るビャコウの左手に握られたのが原因だと、全身を濡らす冷や汗が風に扇がれたことで初めて気付く。
「ご無事ですか、王!」
「も、問題ない――よくやった、チミルフ」
こちらの身を案じるチミルフに震えを隠した声で応じるが、実際に紙一重のタイミングであったことには戦慄を隠せない。
死線をほんの僅かな間隙によって救われたルルーシュ、その震える痩身に、
「んだよ。やっぱそっちが先に動いちまったか。
せっかくか弱くて可愛らしい女の子を演じてみたってのに、油断してくれないなんて悲しいぜぇ?」
はっきりと別人に代わったようなかがみが――その全身をいつの間にか白いスーツに覆いながら、黄金の剣を振り切った体勢で嗤っていた。
その変貌に、あまりの異質な変化に、ルルーシュは二の句を告げないほどに驚愕している。
その姿すら物笑いの種なのか、かがみはケタケタとした嗤いをやめない。
その狂人と化した少女を前に、しかし戦場に身を置く武人は一切の動揺のない声で、
「たとえ相手が少女の形をしていようと、油断などしないのが武人の心得だ。色仕掛けなら相手を間違ったと思うがいい」
「ハッ、いいねえいいねえ。お前は死ぬってのをちゃんと意識してやがる。
武人ってなぁ、つまりはサムライだな? ともなりゃ傭兵とかと同じ覚悟は当然ってわけだ。
自分が死ぬなんてちっとも考えてねえ、主とは全然違うじゃねえの」
「黙れ。それ以上、王を侮辱することは臣下の俺が許さん」
「ハッ、許さねえってのはアレだぜ。
つまりは俺がさらにさらにルルーシュきゅんを小馬鹿にしてやったら怒ってくれちまうわけだ。
あんたみたいな奴が忠誠を誓う価値があるかよ、そいつに。
そいつは安全圏で、殺し合いする奴らを高笑いで見下す醜悪な臭いがするぜ。
他人を動かして命の取り合いはさせるくせに、自分はその戦場を遠巻きに見てるってぇ感じのゲスっぽい――」
「――アルカイドグレイブ!!」
決着は一瞬の間についた。
それは蹂躙とも虐殺とも呼ぶことのできない、暴虐が通り過ぎただけの惨劇だ。
主君の侮辱に並々ならぬ忠義が、宣言通りに無礼者を手討ちにしただけのことに過ぎない。
一瞬の間に振り上げられたビーム刃は、秒の停滞もなくその焼け付く刃で柊かがみの小柄な体格を撫で切っていった。
斬撃の威力はそこで留まらず、突き立った地面を爆砕して、土砂の爆裂によって死に体を追撃する。
ビャコウの手の中のルルーシュも、その流れるような攻撃を最初から最後まで完全に見届けた。
ビーム刃の滑らかな斬撃は傷口を焼き、出血すら生むことはない。
左肩から右腰までをばっさりと切られたかがみの体は、そのビームの高熱によって炙られて燃え上がった。
そこをトドメとばかりに降り注ぐ岩石と土砂の雨――助かるはずもない。
有用なはずの手駒がこの手を離れて敵対し、一瞬の攻防の間にその命を散らせていく。
それは正しく、このゲームの残酷な無常観の体現に他ならなかった。
「チミルフ」
「王の意向に背き、出過ぎた真似をしました。処分は如何様にも受け入れるつもりです」
呼びかけに忠臣は頭を垂れ、沙汰が下るのを待つ構えでいる。
主君のためという大義名分すら、その気高い忠義の前には独断専行の言い訳にならないらしい。
――騎士を持つ、ということはこういうことだろうか。
早くにその資格を失っていたルルーシュにとって、その感慨は物珍しいものだった。
「問題はない。奴は危険人物だった。排除して正解だ。よくやったぞ、チミルフ」
「勿体なき言葉です、王」
そうしてコックピットにて跪き続けるチミルフを見て、ルルーシュは思う。
このビャコウという機体のスペックの高さ、そしてそれを扱うチミルフの技量の高さを。
――無理をして、ジン達と合流する必要はないかもしれない。
安全であると睨んでいたはずの柊かがみとの接触がこの様だ。仲間を増やすということは、危険を増やすことにも繋がる。
それよりもこのチミルフをうまく扱いながら、フォーグラーを起動させても問題はないか?
幸いにも柊かがみからアンチ・シズマ管だけは入手することに成功した。
これを入手せずに今の争乱となっていれば、計画は瓦解するところだったのだが。
「どちらにせよ、入手した情報をまとめる時間は必要だな」
短慮はそのまま失敗を招く。
柊かがみの件は一つの結果にすぎない。別の人間までそうであると断じるのはそれこそ短慮の極み。
「チミルフ、とにかく今はこの場を移動する。
この攻撃の音を聞きつけて誰かが集まってこないとも限らない。考える時間が必要だ」
「了解しました。ならば、映画館はどうでしょうか?」
「そこには確か……お前の協力者であるニコラス・D・ウルフウッドがいるんだったな」
「はい。かの男は目的こそ王と違いますが、その力には個人としての俺を上回るものがあります。協力を持ちかけることも不可能ではないかと」
チミルフの言葉に熟考する素振りを見せながら、その考えの甘さを心中で罵倒する。
戦って分かり合った、などと馬鹿げたことを信じる理由になると思っているのだろうか。
そのウルフウッドの目的はチミルフに聞く限り、会場にいる参加者の皆殺しに他ならない。
危険人物中の危険人物だ。東方不敗という老人と大差あるまい。
チミルフはその両者と共闘、あるいは最後に決着をつける約束をしているらしいが、武人という生き物は馬鹿の集まりなのか。
それこそ力こそ正義だと、正しいと考えているのならそれは――
――それはルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにとって、最も唾棄すべき男と同じ考えだ。
「チミルフ、とにかく今はここを離脱しろ。時間が惜しい」
「わかりました。では王、そちらではなくコックピットの方へ」
狭苦しいコックピットに獣人と一緒に入るというのはあまりにも魅力に欠ける提案だが、仕方ないとその誘いに乗ることにする。
掌の上の移動というのは如何にも安定感に欠ける上に、見栄えがよくない。
それにこれだけ目立つ兵器での移動に同乗しているのを他者に見られるのは得策ではない。
チミルフという存在を、友好的な参加者にどう説明すべきか定まっていない今では尚更だ。
「できるだけ他の参加者に見つからないよう、レーダーに注意しながら低空飛行しろ」
「御意に」
素直に従うチミルフの操縦で、ビャコウが静かに、しかし風のような移動を開始する。
それを風の吹き込むコックピット内で、髪を押さえながら悠々と見据えるルルーシュ。
その内心をふと、思い出したように湧き上がった思考があった。
――そういえば結局、柊かがみがどうして特別扱いされていたのかはわからなかったな。
【C-6/西側川付近上空/二日目/午前】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:肉体的疲労(中)、中度の頭痛、後頭部にたんこぶ、胸に打撲、ビャコウ搭乗中(乗ってるだけ)
[装備]:ベレッタM92(残弾11/15)@カウボーイビバップ、ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュ
[道具]:支給品一式(-メモ)、メロン×10個 、ノートパソコン(バッテリー残り三時間)@現実、消防服
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日- 、予備マガジン(9mmパラベラム弾)x1
毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿、ゼロの仮面@コードギアス 反逆のルルーシュ
支給品一式(一食分消費)、ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた、ジャン・ハボックの煙草(残り15本)@鋼の錬金術師
『フルメタル・パニック!』全巻セット@らき☆すた(『戦うボーイ・ミーツ・ガール』はフォルゴレのサイン付き)
『イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに捧ぐ』@アニロワ2nd オリジナル
参加者詳細名簿(ルルのページ欠損)、詳細名簿+(読子、アニタ、ルルのページ欠損)
支給品リスト(ゼロの仮面とマント欠損)、考察メモ、警戒者リスト、ダイヤグラムのコピー、携帯電話@アニロワ2ndオリジナル
[思考]
基本:何を代償にしても生き残る。
1:チミルフを従えつつ、最善の行動を選ぶ。
1:ジンの集団を目指すか、あるいは単独で優勝を狙うか。
2:清麿との険悪な関係を知る菫川ねねねに対処する
3:適当な相手に対してギアスの実験を試みる。
4:以下の実行。
「情報を収集し、掌握」「敵戦力の削減、削除」「参加者自体の間引き」
5:余裕があればショッピングモールかモノレールを調べる。
[備考]
※首輪は電波を遮断すれば機能しないと考えています。
※明智組の得た情報について把握しました。
※会場のループについて把握しました。
※ギアスの制限は主に一度に使用する人数が問題なのではないか、と想像しています。
※名簿は生存者と異世界についての情報把握に的を絞って見たため、スザク他との時間軸の矛盾に気付いていません。
※清麿殺しの罪はヴィラル、シャマルのどちらかに擦り付けるつもりです。
※チミルフから螺旋王の目的やアンチスパイラルについての情報を入手しました。
【怒涛のチミルフ@天元突破グレンラガン】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(小)、頭部に軽い裂傷、左頬が腫れあがっている、敗北感の克服による強い使命感、ギアス(忠誠を誓う相手の書き換え)
[装備]:愛用の巨大ハンマー@天元突破グレンラガン(支給品扱い)
ビャコウ@天元突破グレンラガン(右脚部小破、コクピットハッチ全損、稼動には支障なし)
[道具]:デイパック、支給品一式、ファウードの回復液(500ml×1)@金色のガッシュベル!!
[思考]
基本A:獣人以外を最終的には皆殺しにする上で、ニンゲンの持つ強さの本質を理解する。
B:王であるルルーシュの命に従い、ルルーシュの願いを叶える。
0:ルルーシュと同行し、臣下としての務めを果たす。
1:ウルフウッドと合流し、ニンゲンとは何か見極める。
2:ヴィラルと接触したい。
3:螺旋王の第一王女、ニアに対する強い興味。
4:強者との戦いの渇望(東方不敗、ギルガメッシュ(未確認)は特に優先したい)。
5:ヴィラルが首を一つも用意できなければ、シャマルの首を差し出させるかもしれない。
6:夜なのに行動が出来ることについては余り考えていない(夜行性の獣人もいるため)。
7:ニンゲンに創られたニンゲン以上の存在として、ヴァッシュに強い興味。彼の知人に話を聞きたい。
[備考]
※ヴィラルには違う世界の存在について話していません。同じ世界のチミルフのフリをしています。
※シャマルがヴィラルを手玉に取っていないか疑っています。
※チミルフがヴィラルと同じように螺旋王から改造(人間に近い状態や、識字能力)を受けているのかはわかりません。
※ダイグレンを螺旋王の手によって改修されたダイガンザンだと思っています。
※螺旋王から、会場にある施設の幾つかについて知識を得ているようです。
※『怒涛』の二つ名とニンゲンを侮る慢心を捨て、NEWチミルフ気分です。
※自分なりの解釈で、ニンゲンの持つ螺旋の力への関心を抱きました。ニンゲンへの積極的交戦より接触、力の本質を見定めたがっています。(ただし手段は問わない)
※ビャコウ及び愛用のハンマーはウルフウッドの気絶中に回収しました。
※ビャコウは起動には問題ありませんが、コクピット内部が剥き出しになっています。
※東方不敗と一時休戦、次に出会った時は共闘することを決めました。
実験の最後に全力で決闘することを誓いました。
※東方不敗の知る参加者についての情報を入手しました。
※『忠誠を誓うべき相手は螺旋王ではなく、ルルーシュである』という認識の書き換えをギアスで受けました。
螺旋王に対して抱いていた忠誠が全てルルーシュに向きます。武人たる彼は自害しろとルルーシュに言われればするでしょう。
獣人としての誇りは持っていますが、螺旋王に対する忠誠心は失っています。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「いやいやいやいや、まったく痛いねぇ辛いねぇ。うまくいかねえもんだよ、なぁ」
ルルーシュとチミルフの両名が立ち去ってから数分、
うず高く積まれた土砂を黄金の剣で掘り返して、少女はしばし別れを告げていた空を仰ぐ。
「おおう、やっぱ青空はいいな。普段はいつも頭の上にあるもんだから気にしちゃいねえが、
土の下に埋まって真っ暗闇に周りを囲まれてみると、改めてその蒼さが目に沁みてくるぜ」
――それにしても、タカヤ君の目薬があって本当に助かったぜ。
砂埃をふんだんに浴びた目を擦りながら感嘆し、狂人は裸体を晒したまま述懐する。
殺害したDボゥイはその満身創痍の肉体の悲痛さもさながら、持ち合わせた荷物の貧相さにも涙が出そうになった。
荷物としては支給品を除けばまともな道具は赤い目薬しかなかったのだ。
Dボゥイを殺害した後の戦利品の検めということで、狂人は一度この目薬を使用している。
実際のところ、戦っている最中にこの目薬を注してDボゥイの動きが変わったことには気付いていたので、回収して使ってみることに躊躇はなかった。
それにより、効果が動体視力の異常な強化だということはわかっていた。
効果時間が短すぎるのが不満だが、パフォーマンスを考えれば文句は言えまい。
ここへきて彼女は気付いていないが、ブラッディアイの本来の効果時間は彼女の自覚よりもう少し長い。そして、その副作用も。
それに彼女が気付かない理由は明白――副作用を感じていないのだ。
ブラッディアイはその使用者の視神経を侵す代わりに、莫大な力を与えることになる薬だ。
そのブラッディアイを使用するものとしての資格のほとんどを、不死者となった彼女は失っている。
不死者として酒を飲んだ状態で肉体が固定されている彼女、その肉体が薬の侵食を受け入れないのだ。
侵される視神経は即座に修復し、ブラッディアイの異常な効果を数十秒で打ち消してしまう。
さらに付け加えれば、不死者の肉体は同じダメージに対して耐性を作るようになる。
つまり、今は六十秒ほど持つブラッディアイの効果は徐々に短くなり、最終的には何の効果も発揮しなくなるということだ。
それでも、副作用なくこの薬を使うことができるという彼女とブラッディアイの相性は、抜群に良いと言わざるをえないが。
とにかく、その薬の効果によって彼女が命を拾ったことは間違いないのだ。タカヤ君様々である。
チミルフのビャコウによる一撃の瞬間、狂人の世界は赤く停滞していた。
その攻撃の速度を回避しきることはできずとも、頭部と心臓の致命傷を庇うことができる程度には。
その後に土砂に巻き込まれたのは、脱出に手間がかかりはしたが僥倖だった。
もしもあれがなければ二人の前で再生し、戦いは長引いていたことだろう。
「ま、やり合ってたら負けてたかもわかんねえしな。チミルフ……だったか。
あいつはいい目ぇしてやがった。主君のために命を懸けて、死ぬかもしれない戦場に臨むってなぁ。
ああいう奴は殺したくねえや。代わりにルルーシュ君が俺的に最高に殺したい温さだったがね!」
Dボゥイを殺害し、薬の効果を確かめた後で、狂人が選んだのは周囲の散策だった。
おそらくは付近にいるだろう、先ほどまで戦い合っていた面々。
――スパイク・スピーゲルや奈緒ちゃんといった奴らを殺しに行くのはとても楽しそうなことだ。
ただ、ジンは仲間だから殺せないやな。適当に誰かに殺されてくれれば楽なんだが。
何より――小早川ゆたか。彼女を殺そうと思い切ることができなかった。
この気持ちは非常に厄介なものだ。殺したいんだが、殺したくない。
殺したくない子を殺すのはすごくいいことのようで悪いことのようで結局どうすればいいんだか――
「わからなくなってわからなくなって、ああ考えるの面倒くせぇってなったから、とりあえず散歩することにしたんだったな」
特別な理由もなく、鼻歌交じりで川に沿って歩いていたら、ちょうどよく獲物を見つけたのだ。
ただ、獲物はおっかないペットと一緒で、しかもこっちの位置をレーダーで確認していた。
位置がばれているとなれば、開き直って飛び出すしかない。それでも、なるたけ利用できるものは利用しておきたい。
だから、せっかく女の子の格好してんだし、女の子のふりとかすればいけるんじゃね?
という狡猾とも悪ふざけともいえるような理由で、柊かがみを演じながら近付いたのだ。
我ながらうまくやれていたものだと、自画自賛してもいいぐらいだったと思う。
聞き出せた情報も有用なものばかりだったし、ジンにでも聞かせたら大喜びしそうだ。
ただし脱出方法や首輪の考察以外は眉唾と思っていいだろう。
こっちの『演技』に向こうが気付いていなかったのは確かだが、向こうが空寒い演技をしていたのは事実。
見覚えのある携帯電話に詳細名簿――それらの入手に明智達の名前が出なかったことも含めて。
「あー、清麿も死んでんのかねぇ。悲しいねぇ辛いねぇ、仲間が死ぬってのはよぉ。殺したのはルルーシュ君だろうしなぁ。
でもせっかく目ぇ合わせてたってのに、必殺催眠術は使ってこなかったけどよぉ」
しかし、目の前に美味しそうな餌がずーーーーーーーーっとぶら下げられているのに、それを我慢するのは苦痛だった。
ルルーシュ・ランペルージ――その態度、物腰、仕草、喋り方、表情、性格からスタンスに至るまで、それは正しく今の彼女にとって生唾ものの極上な温さだった。
命懸けの行動を、命を懸けずにやってのけたいというような、温い甘い青い願望。
我慢しなければならなかったのだ。一応、我慢しようという努力はしてみた。
ルルーシュの背後に立つチミルフはずっと、自分の動向に目を光らせていたのだ。
まともな戦いになれば戦力差からして勝てるはずもない。無謀もいいところだ。
それが分かっていたからこそ、この場で手を出すのは我慢して、タイミングを見計らうつもりだったのだ。だったのに――
「エネルギー中和現象とか、そんなこと言うんだもんなぁ」
フォーグラーを利用し、エネルギー中和現象を起こす――それがルルーシュの考える、脱出のための方策だったらしい。
それによれば首輪の制限は失われ、そして会場中の機械が停止するという。
なるほど確かに会場の端のバリアがなくなれば、あるいは制限がなくなれば会場を脱出するための力を持っている奴ぐらいいるのかもしれない。
宇宙人が参加しているぐらいだ。宇宙船ぐらいどっかに埋めてある可能性もある。
「でもよぉ、そんなことされっと俺が困るんだよなァ」
そう、困るのだ。脱出できるというのは非常にありがたいことだ。
自分もいい加減、この会場でなくてもいいから適当に温い連中をぶっ殺して回りたい。
だが、制限が外れてしまうというのは困るのだ。だって――
「制限が外れたら、俺は死なねぇ体になっちまう。
完全な不死者になっちまったらよ、俺のこの大事なアイデンティティが崩壊しちまわぁ」
死ぬなんて考えから縁遠く、今生きていることの素晴らしさを理解していない連中に生きることをレクチャーする。
それが自分の持つ、他者殺害への信念だ。
そんな信念を持つ自分が、死ねる可能性さえ完全に失って、死なない体になってみろ。
――死なない奴が、そんな説教なんてちゃんちゃらおかしくなっちまう。
故に狂人としては、脱出できるに越したことはない。
ただし、その場合は制限は持ち越したままの脱出でなければ意味がないのだ。
会場中の誰もが窮屈で邪魔だと思っているだろう首輪が、彼女には必要だった。
「ま、結果的に死んだふりみたいになったし。
レーダー持ってるルルーシュ君はそう遠くない内に俺に気付くだろうけどな。
目的地はわかってるわけだから、先回りでもしといてやろうかねぇ」
Dボゥイとの約束は後回しだ。ゆたかちゃんと舞衣ちゃんを殺してる間に、首輪の制限を外されでもしたら困ったことになってしまう。
となれば、狂人が次に目指すべき場所は――
「あのでっかい黒いボールは、フォーグラーだったか? あれを壊すかどうかしないといけねえよなぁ。
清麿は草葉の陰から怒っかもしんねえけど、あれがあったら俺が困るわけだから、俺が困るから壊したって謝っときゃぁいいだろ」
身勝手な方針を打ち立てると、狂人は気合いを入れるように「よしっ」と牙を剥いて嗤う。
手にした黄金の剣をスコップ代わりに地面を掘り進め、埋もれていたデイパックも回収した。
あれだけの被害があったものだから喪失も覚悟していたが、丈夫な素材で何よりだ。
「さて……んじゃま、とりあえず黒い太陽を壊しに行きますかね。
壊すのは俺じゃなく、グラハムの奴の専売特許だってのによ。うぉ、そう思うとあいつならスゲェ嬉しそうに壊しそうだなアレ」
そんな感慨を漏らしてから歩き出そうとして、ふと全身がすーすーすることを思い出した。
そうだ。チミルフの攻撃のせいで、遂に最後の衣服まで失っていたんだった。
これは困ったことになった。いくら女の子でも、素っ裸で近寄ってきたら油断はさせられないんじゃないか?
「となると、やっぱり便利なこいつに頼るっきゃねえか」
呟き、緑の光が全身を包み込んだ。次の瞬間にはその全身を白のスーツが覆っている。
その衣装を満足げに見ていた狂人だったが、不意にその表情が歪む。と、
「うおおい、何だよ! 一回解除すると、もう一回着た時はクリーニング済みになっちまうのか!
せっかくタカヤ君の返り血でいい感じだったってのに、まっさらじゃねえかよぉ」
綺麗になった白服は卸し立ての華やかさだ。そこにはあの楽しかった惨劇の、一片たりとも残っていない。
歪み切った悲しみの声を上げて一頻り騒ぐと、狂人はゆっくり歩き出した。
「ま、なくなったもんはしゃーない。お星様になったタカヤ君のことは忘れるとして、俺は次なる出会いを求めようじゃねえの。
おっと、出会いとか言ってるとルーアに誤解されちまうな。大丈夫、問題なし! 俺はお前一筋だからよ!
愛して愛して最後に殺すのはお前だけだ! とりあえず、ルルーシュ君とかぶち殺して、この白い布地の最初の斑点になってほしいもんだねぇ。
ハハ、ハハハ、ヒャハハハハハハッハッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
歪んで歪んで歪み切った狂笑を浮かべながら、狂人は弾むようなステップで道を急ぐ。
その道筋の先に、新たな血の臭いを感じさせながら――
【C-6/川沿いの道/二日目/午前】
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死者、髪留め無し、螺旋力覚醒(ラッドの分もプラス) 、疲労(大) 、ラッドモード
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、 ブラッディアイ(残量40%)@カウボーイビバップ
クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット
[道具]:デイバッグ×14(支給品一式×14[うち一つ食料なし、食料×5 消費/水入りペットボトル×2消費])
【武器】
超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾0/5)
王の財宝@Fate/stay night、シュバルツのブーメラン@機動武闘伝Gガンダム
【特殊な道具】
オドラデクエンジン@王ドロボウJING、緑色の鉱石@天元突破グレンラガン、全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ)
衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-
サングラス@カウボーイビバップ、赤絵の具@王ドロボウJING
マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ、ヴァッシュの手配書@トライガン、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!
首輪(つかさ)、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)、首輪(クアットロ)
【通常の道具】
シガレットケースと葉巻(葉巻-1本)、ボイスレコーダー、防水性の紙×10、暗視双眼鏡
【その他】
がらくた×3、柊かがみの靴、破れたチャイナ服、ずたずたの番長ルック(吐瀉物まみれ、殆ど裸)、ガンメンの設計図まとめ
壊れたローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[思考]
基本:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
0:フォーグラーを破壊して、エネルギー中和現象計画を頓挫させる。
1:Dボゥイとの約束通り、舞衣とゆたかを殺したい(ゆたか殺害には精神的苦痛を感じます)
2:ルルーシュをとてもとても殺したい。
3:とりあえず服が白いと寂しいので、誰かを殺したい。
[備考]:
※ボイスレコーダーには、なつきによるドモン(チェス)への伝言が記録されています。
※会場端のワープを認識。
※奈緒からギルガメッシュの持つ情報を手に入れました。
※ラッド・ルッソの力を開放することに恐怖を覚えました。
※ラッドの知識により、不死者の再生力への制限に思い当たりました。
※本人の意思とは無関係にギルガメッシュ、舞衣に強い殺意を抱いています。
※『自分が死なない』に類する台詞を聞いたとき、非常に強い殺意が湧き上がります。抑え切れない可能性があります。
※かがみのバリアジャケットは『ラッドのアルカトラズスタイル(青い囚人服+義手状の鋼鉄製左篭手)』です。
2ndフォームは『黒を基調としたゴシックロリータ風の衣裳です』 その下に最後の予備の服を着用しています。
※王の財宝@Fate/stay nightは、空間からバッグの中身を飛び出させる能力(ギルとアルベルトに関係あり?)、と認識。
※シータのロボットは飛行機能持ちであることを確認。またレーザービーム機能についても目視したようです。
※第五回放送を聞き逃しました。
※『かがみ』の人格を手放すことを選びました。
※かがみの3rdフォームは『列車時のラッドの白服』です。下は裸なので、擦れて痛いかもしれません。
※ルルーシュから『フォーグラーを利用した脱出法』の情報を得ました。成功すると困るので、何とか止めたいと思っています。
※ルルーシュが『チーム戦術交渉部隊』の道具を持っていたことで、明智達を殺害したのはルルーシュだと思っています。
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