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「希望の船?絶望の城?(後編)」(2023/05/22 (月) 21:18:39) の最新版変更点
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**希望の船?絶望の城?(後編)◆10fcvoEbko
高遠の立てたプラン自体は簡単なものだ。
固まって行動することは避け、チェスはアレンビーと船の機動を、高遠とガッシュは脱出に必要な道具の調達をそれぞれ担当する。襲撃を受けた場合は戦おうとせずひたすら逃げる。
戦力比がチェスの側に傾いているのは船の起動を優先した高遠の判断である。
「ここね!」
アレンビーとチェスはブリッジに辿り着くと乱暴に扉を開け転がり込むように中に飛び込んだ。
幸いにもあれから一度も襲撃は受けていない。ちまちまとした走りに、それでもチェスにとっては全力だったのだが、痺れを切らしたアレンビーがチェスを抱えて爆走したのだ。
それなりに消耗していたチェスは数百年の常識を覆されるような人間離れしたスピードに何度か意識を失いかけたのだが、結果的には功を奏したと言える。
「鍵穴ってどこ!?」
「ここだよ!アレンビー姉ちゃん!」
首を振って叫ぶアレンビーにチェスは目聡く舵の横に設けられた穴を見つけ指を差した。
身長が足りないため飛びつくようにして確認する。奇妙な螺旋状の形は鍵と一致しており、間違いはないだろう。
「よし!じゃあ、チェス君!」
「うん!」
チェスは最短の動作でポケットから鍵を取り出すと突き刺すように鍵穴に差し込んだ。勢いをそのままに右に捻る。
鍵は抵抗もなくチェスの手に従って回り、そのまま問題なく二人の役目は完了すると思われた、が。
『螺旋力を確認できません。出港は不可能です』
聞こえてきたのは船を動かす駆動音ではなく、絶望を告げるハスキーな女性の声を模した機械の音声だった。
「うそ、何で動かないのよ!螺旋力ってなに!?」
汗を浮かべて何度も鍵を回し直すチェスの後ろでアレンビーが声を上げる。
まさかこんな訳の分からない理由に邪魔をされるとは思ってもみず、アレンビーの怒りはチェスにとっても全く同感だった。抑揚の変わらない機械音が何度も同じ内容を告げる。
(螺旋力だと?博物館にも似たような言葉があった。
何だというのだ?螺旋王は何を考えている?
私達は皆貴様に踊らされているとでも言うのか!)
必死で鍵を回すも、結果に変わりはない。焦りを通り越し、チェスの表情にも怒りが込み上げてきた。
頭の片隅で錬金術師の自分が冷静な思考を訴えてくるが、そのための情報が圧倒的に不足しているのはそいつも十分承知しているようだった。
一向に好転しない状況に、チェスの手から力が抜ける。絶望に襲われそうになったそのとき、チェスの体は横に押しのけられた。
「ちょっと代わって!」
「あ、アレンビー姉ちゃん!」
「何だかわかんないけど挫けちゃ駄目、要は気合よ!うおおおおおおおお!!」
アレンビーは一旦鍵を引き抜くと、叫びとともに再び鍵穴に叩き付ける。
中の機構もろとも殴り壊さんばかりの衝撃に、チェスは船室が一瞬大きく揺らいだように感じられた。
そうして右に捻る。チェスがやったのと同じ小さな動作のはずが、そこに使われているエネルギーには何十倍もの差があるように見えた。
「絶対みんなで助かるんだから!こんなとこで邪魔される訳にはいかないのよ!だから、うごけえええええええええ!!」
船室中の大気をびりびりと弾き飛ばすように叫ぶアレンビーの背中を見ながら、しかしチェスの思考は現実的なものだった。
アレンビーの言葉には賛同するし、諦めようとしないその心根は賞賛に値する。だが、だからと言ってそれで船が動く訳ではない。
あの男の策は外れたのだ。何か別の手立てを考えなくてはならない。
見ろ、アレンビーがいくら叫び声を上げたところで鍵穴の周囲にしつらえられた渦巻状の模様に緑色の光が満ちていくだけだ。
そして、その光が模様を満たし淡い光を発したところで事態は何も――
『螺旋力確認。出航します』
「え?」
淡い光を発したところで聞こえてきた、さっきまでとは違う内容の機械音声にチェスは思わずすっとんきょうな声を上げてしまった。
「やったぁ!ね、チェス君、言ったとおりだったでしょ?」
汗だくになりながらアレンビーが勝利の喜びに満ちた表情でチェスにウインクをする。
鍵穴から発するのと同じ緑色の光を湛えたその瞳を見ながら、チェスは茫然と頷くしかなかった。
船の起動を終えた後のブリッジには、チェスが一人で残っていた。
アレンビーは先に行かせた。一緒に高遠達のところへと走る振りをしながら、少しずつ歩調を落とし気付かれないように一人で戻ってきたのだ。
彼女の脚力ならばれたら連れ戻されるのは一瞬だろうが、問題はない。用事はすぐに済む。
アレンビーには疲れも見えたしすぐに気付かれるということはないだろう。
気になることがあった。チェスは緑色に淡く発光する鍵穴を見上げる。
(螺旋力……博物館のことと言い、一体何のことだ?
アレンビーは要は気合いと言い、そしてその通り船は動いた。それに、あのときの瞳……)
揺れを増した船室の中で、チェスは文字通り色を変えていたアレンビーの緑色の瞳を思い出す。
(放送でも奴はしつこいくらいに螺旋力について触れていた。
そして、それが無くては動かない装置をこうして置いておく……)
久しく見せていなかった錬金術師としての一面が顔を覗かせ、論理的な思考を積み重ねさせる。
その背後に、黒い影がそっと近寄った。
(試されているとしか思えんな。殺し合いと言いつつ、その実私達が用意された解答にどこまで到達できるか見ているようだ。
高遠のように趣味に走る馬鹿ばかりでもないだろう。まるで実験……実験、そうか)
何かを掴んだような表情で頷くチェスの背後で、影は刀を構えゆっくりと腰を落とす。
そのまま一息に首をはねようと静かに息を整え――
「……ぐぅ!」
「残念だったな」
懐に飛び込んできたチェスの小さな両手で、軍用ナイフを胸に突き立てられた。
抉り込むようにナイフに力を込めながら嘲るようにチェスが笑う。
「そういつまでも上手くいくと思うな。
……螺旋力などどうでもいい。今は……貴様を殺す!」
老獪さと獰猛さに唇を歪ませながら、チェスはさらに手に力を込めてナイフを突き出した。
◇
正直なところ、高遠はティアナの死をどう受け止めたものか決めかねていた。
騙されて殺人までさせられたと知りながら、変わらずに慕ってくれたのは素直にありがたいと思う。
だが、これまでの犯罪人生の中でそのような経験をしたことはなかった。
そもそも、自分が殺人を教唆した犯人達は高遠の考える芸術犯罪を汚したと判断した時点で容赦なく切り捨ててきたのである。
どうにも、いつもと違う立ち位置というものには慣れない。
「むう、高遠。道具はもうよいのか?」
「ええ、十分です。ありがとう、ガッシュ君」
高遠の謝辞にガッシュが目を輝かせて喜びを表現する。
自分もこれくらい素直なら、と少し思わないでもない。
だがそういったものを切り捨てる形で、望んだ今の姿を手に入れたのだ。
後悔するほどのことではない。
「静かなのだ。チェスとアレンビーは大丈夫だろうか」
「アレンビー君の身体能力には目を見張るものがあります。滅多なことはないでしょう。
チェス君は……私に心配されても嬉しくないでしょうから、止めておきます」
「ウヌゥ、仲良くするのだ」
高遠の言葉を真に受け、ガッシュが慌てるようにたしなめる。
先程からのガッシュの様子は必要以上にキョロキョロ周囲を警戒するなど、明らかに落ち着いていない。
ティアナとジェットを失ったと知ったときの悔しがりようを見れば無理もないことと言えるが、それにしてもこのような警戒の仕方に効果があるとは思えなかった。
「落ち着いてください、ガッシュ君。敵は床から現れたりしませんよ」
「わ、私は落ち着いて……いないのだ。本当を言うと怖いのだ。
これ以上仲間を失くてしまうかと思うと……」
「それは私も同じことです。
それに、このような無粋極まりない形で私の脱出計画を邪魔されてはたまりませんし」
「ウヌゥ、それでも高遠はこうやって率先して働いておる。偉いのだ。
だというのに私は……」
がっくりと肩を落とす。
どうやら相当に参っているようだ。
ふむ、と高遠は思案する。一人の奇術師としては、落ち込んだ子供を元気付けるに吝かではない。
どれ程効果があるかは分からないが、ちょうどそれに使えそうな物にも心当たりがあった。
「まぁ、今は目の前の状況に対処することを考えましょう。
これを差し上げますので、元気を出してください」
「ん……?お、おお!バルカンではないか!!」
菓子箱に割り箸を付けただけの適当な代物でどれだけ喜ばせることができるか、奇術師としての腕の見せどころのつもりだったがどうやらその必要はないようだった。
ガッシュはそれを一目見るなり飛び付き大喜びで戯れている。というか、そもそもガッシュが持っていたものらしい。
「おや、お知り合いでしたか。それは良かった」
「うむ!バルカンなのだ!清麿が私のために作ってくれた友達なのだ!
空気ミサイル300発に、ナオミちゃんにどれだけ虐められようと帰ってくる強い体を持っておる!!
おお、二人いれば一緒にゲームで遊ぶこともできるのだぞ!!
今度高遠も一緒に遊ぶのだ!!」
「お誘いいただき光栄です。覚えておきましょう」
苦笑しつつ、鷹揚に返す。まさかここまで受けるとは思わなかった。
「うむ、きっとだぞ!なぁ、高遠……」
「はい?」
「高遠は良い奴だな」
曇りのない顔でガッシュにそう言われ高遠はかなり面食らった。
甲板上では確かに許すと宣言されたが、こうまで心の底からの笑顔を見せられるとは想像していなかった。
呆れつつもなるほど優しい王様とは伊達ではないなと思い、さらにそのような肯定的な感情を持った自分に対して驚いた。
照れ隠しという訳ではないが、少しからかうような口調で言う。
「そんなことを言っていいのですか?
……こんなことをしながら、また新たな犯罪計画を練っているかも知れませんよ」
「そ、そんなことはやめるのだ!それは悪い奴のすることなのだ。
ウヌゥ、しかし高遠はバルカンを守っていてくれていたし……良く分からなくなったのだ」
両腕を組んでう~んと考え込む。本気で悩んでいる様子だ。
一々素直な反応を返すガッシュとの対話を楽しんでいたとき、船ががくんと大きく震えた。
同時に、揺れが大きくなりどこからか機械音が聞こえ始める。
「おお!船が動き始めたぞ」
「成功したようですね。さすがはチェス君」
窓の景色が流れ始めたのを確認する。今のところ計画に支障は出てないようだ。
「では、我々も急ぎましょうか」
「うむ!」
ガッシュを促し、連れだって高遠も歩き始める。
元気良く先を行こうとするガッシュの背中を眺めながら、高遠は思った。
(さて、申し訳ありませんティアナ君。
私はあなたのために泣いてあげられるような人間ではありません。そのような心性はとうの昔に過ぎ去ってしまった。
ですが……そうですね。あなたに膝枕をして頂いていたとき。
その間だけは私は確かに「安らぎ」のようなものを感じていたように思います)
今は、これでどうかご勘弁を。
最後だけ口に出して呟くと、ティアナへの追悼を終えた高遠は再び目的地に向けて歩き始めた。
チェス達は無事だろうかと、そのようなことを思いながら。
◇
両腕から伝わってきた感触にチェスは歯噛みした。硬い。明らかに、何か金属質のものに刃を止められている。
そう思い手を引いた瞬間、チェスはビシャスに突き飛ばされ大きく吹き飛んだ。
自動で動き続ける舵に強かに頭をぶつけ、意識を失いそうになる。
霞んで消えそうになるチェスの視界が、銃のようなものを向けるビシャスの姿を捉えた。
そして、UZIの放つ9mmパラベラムの弾丸がチェスに降り注ぐ。
咄嗟に転がって回避しようとしたが、かなりの数を食らってしまった。お陰で意識がはっきりしたのはありがたかったが。
問題なく再生が行われているのを確認し、チェスは立ち上がると愛らしい見た目に不釣り合いな憎悪の顔中に浮かべてビシャスを睨み付けた。
高遠の言う通り、この場ではどういう訳か不死者の再生力に限界があるらしい。
趣味の悪い悪魔がいたずら心でもだしたか。首を折られたとき、あれは実は危なかったか。
とはいえ、これまでの経験からしても肉体の破壊などの致命傷を負わなければ大丈夫だろうとチェスは考えていた。
(もっとも、人間の致命傷がどのくらいだったかなど半分忘れてしまったがな)
自嘲ぎみに心中で付け加える。
こちらの武器は軍用ナイフとアゾット剣、それに回復力のみ。冷静にそう分析していると男が懐から何かを取りだし、忌々しげに顔を歪めた。
どうやらそれがチェスの刃を止めたものの正体らしい。表情を見るに一矢は報いたか。
だが、まだ足りない。高遠達との取り決めも忘れてチェスは思った。
「貴様は私の手で殺し尽くしてやる。貴様は……貴様だけは!」
怒りの叫びとともにチェスはビシャス目掛けて飛び出した。
もとより戦闘は得手ではない。再生力にまかせて押しきるしかなかった。
一気に駆け寄り、捨て身でナイフを突きだす。だが、交差する形で放たれたビシャスの刃が両ももを深々と切り裂き、勢いをなくしたチェスの体は床に叩きつけられた。
「ぐぅ!」
顎を打った嫌な衝撃が脳を揺らす。降り下ろされた一撃は予測していたため、何とか転がって回避する。
(懐には潜り込んだ。後はどれだけ切られようと構わん!少しずつでも切り刻んでやる)
首や心臓への攻撃さえ避ければいい。後はひたすら突っ込み、敵の体力を消費させる。
いくら切っても立ち上がることに僅かでも恐怖を感じさせることができればなおのこと良い。
幾度も刃を振るい、傷を負いながらチェスは思った。
(ごめんね、アイザックさん。僕じゃあなたの代わりはできないよ。
だってさ、僕はこいつがどうしようもなく憎いんだ。
アイザックさんならこんな気持ちでも許しちゃうのかな?)
心中で語りかけても、当然返事はない。だが、アイザックの記憶の片隅にある目の前の男との邂逅の様子を見ればあり得なくはないと思えてくる。
(ううん。でもやっぱり僕にはミリアお姉ちゃんが殺されたらなんて想像はできないや。
それくらい、二人はぴったりだったから。
離れ離れになるなんてあり得ないくらいに)
ミリアの笑顔が再び浮かび上がってきた。
アイザックの記憶、アイザックの中にあるチェス君の表情。
どれを見ても二人の仲は完璧だったと知れる。
それを引き裂いたのはチェスだ。そして止めを指したのが目の前の男だ。
その事実に、チェスは自分の血が頬にべちゃりと張り付いたことにも構わず皮肉げに笑った。
(仇討ちなどと言えた義理ではないがな。
本来ならこの刃は真っ先に私に突き立てるべきなのだろうが、まぁいい。
そんなことは後でいくらでもしてやる。今はただ、こいつを!)
こいつを殺す。
目の前にいる漆黒の男を。
奪えないはずのミリアの命を奪ったこの男を。
そうしてミリアの
ミリアの仇を。
ミリア。
眼前に、ミリアの顔が現れた。
「…………ふ、ぇ?」
男が放り投げてきたそれを、反射的に受け取ってしまう。
それは、甲板にあるはずの切り離されたミリアの頭部だった。
原形を止めない程にぐしゃぐしゃに潰されたミリアの首がチェスの眼前に広がる。
舌を抉られ耳を削がれ、額は骨が覗くまでにばっくりと割られている。綺麗なブランドの髪は血で真っ黒に染められ元色の部分はほとんど残っていない。
それでいて本人と判別できるだけのラインはぎりぎりで保たれたそれは、どれ程記憶を辿っても決して見ることのできないミリアの新しい表情だった。
チェスの中の全ての記憶が消し飛んだ。頭の中がまっさらになる。
「う、あ」
言葉がしゃべれない。やり方を忘れてしまった。五感が閉じていくのを辛うじて感じる。
「き。き」
それでも体は一方的に、感情を言葉にして紡ぎだそうとする。
脳は既に、一切の思考を放棄していると言うのに。
「貴様ああああああああああああああああ!
あああああああああああああああああああ!!
あああああああああああああああああああ!!!」
喉の皮が破れ血が噴出する痛みも感じないまま、チェスは絶叫した。
「赤い涙を流すがいい」
そうして一片の策も持たず狂人のように突進を始めたチェスは、待ち構えていたビシャスの一閃により首を撥ね飛ばされた。
刈り取られた首は、衝撃で吹き飛んだミリアの首と一緒にころころと寄り添うように床を転がり、壁にぶつかって止まった。
二人の首は、仲の良い男女がよくそうするように真っ直ぐ視線を合わせて向かい合っていた。
&color(red){【チェスワフ・メイエル@BACCANO バッカーノ! 死亡】}
◇
最初に甲板上で襲撃を受けた時点で高遠は通常の方法での脱出は不可能だと確信していた。
身体能力に差がありすぎる。普段のように十分に道具を揃えた状態ならともかく、今の高遠は怪我人だ。
加えて、高遠以上の重傷を負っている者も何人かいた。
彼等を放置するのは人道的にでもなんでもなく、全員での脱出を決意した高遠の矜持が許さない。
奇術師として、不可能と思われる状況からの脱出は得意とするところである。大前提であるはずの全員で、という部分は既に大幅に崩されてしまったが。
怪我人の集団である高遠達が無事逃げおおせるために、確実に敵の手の届かないところまで移動する必要があった。
船から飛び降り、闇夜に紛れるなどという方法ではまだ足りない。確実に誰かは追い付かれ殺される。アレンビーからもたらされた情報で、この案は完全に却下された。
下に逃げても追跡は避けられない。ならば、どうするか。下が駄目なら上に逃げればいい。
相手が追跡を諦める程の高みへと、一瞬で。
「そこで、高速道路ですよ」
「ウヌゥ……緊張してきたのだ」
甲板上は数刻前までとは打って変わって叩きつけるように海風が吹いていた。ライトアップされたその場所に、身を隠すように高遠とガッシュが潜んでいる。
「資料によるとこの船は停泊していた島の周囲を右回りに2時間程度で周回するようです。
結構なスピードでしょう?チャンスは一瞬です。
だからこそ価値があり、同時にわくわくもするというものです」
高遠の計画は船内の備品である太縄を道路の高架に巻き付け、船が道路の下を通るのに合わせてそれに掴まり脱出するというものだった。
そうして高遠達は高速道路に登り、殺人鬼を一人残した船はあっという間に遥か彼方へと去っていくという寸法だ。
もちろん、技術はともかく高遠にはそんなに高くに縄を投げるような腕力はない。
だがアレンビーや、あるいはガッシュのような常人離れした能力があれば十分に可能だと判断していた。
「我ながら力技も良いところで少々お恥ずかしいですが、まぁ贅沢は言わないでおきましょう」
未知というものに頼るのも中々に悪くないですし、と続ける。
「滑車の原理を利用して自動的に縄が我々を道路まで引き上げてくれるという、怪我人に配慮したプランもあったのですが……その必要はなくなってしまいましたからね」
「……もう誰も死なせないのだ。絶対に皆で脱出してみせる。
この船だけではない。この争いそのものを止めさせるのだ」
ほんの少し悔しさを滲ませる高遠に対し、ガッシュははっきりと告げる。
高遠は苦笑した。この年でこれ程までに強い決意を見せるとは、感心するほかない。
「そうですね、バルカンと遊ぶ約束もありますし。そのためにもお二人には早く
戻ってきてもらいたいものですが……ああ、いらっしゃいました。アレンビー君!こちらです!」
甲板にアレンビーの姿を認めて高遠は声をかけた。向こうもすぐこちらに気付く。
だが、近付いてきたアレンビーは何か焦っているように見えた。
「……お一人ですか?」
原因はすぐに知れた。チェスの姿がない。
「うん……ごめん、二人とも。
船を動かすところまでは一緒にいたんだけど、
戻ってくる途中ではぐれちゃったみたいで……
ほんとごめん!すぐ探しに戻るから!」
「わ、私も行くのだ!」
沈痛な面持ちで船内に戻ろうとするアレンビーの後をガッシュも続こうとする。
高遠は二人を押し止めるように強く、けれども口調だけは静かに言った。
「いえ……その必要はないでしょう。お二人は、とにかく脱出を。
もう、時間がない。どうしてもというならチェス君は私が探します」
高速道路はもうすぐそこまで近付いていた。これを逃せばもう後がない。
高遠がそう言ったのには理由がある。チェスが単独行動をしようとする訳には心当たりがあった。
なおも納得しない様子の二人に続ける。
「チェス君なら大丈夫です。彼を甘く見ると痛い目に遭うことは誰よりもこの私がよく知っている。
はぐれたのではありません。一人で行動したいだけの用事が彼にはあったのでしょう。
彼は見た目よりもずっと大人です。老獪と言っても良い程にね」
具体的な理由までは触れなかった。言えば二人は飛び出していくだろうし、自分のせいで脱出のチャンスを潰すのはチェスの本意ではあるまい。
どうしても邪魔されたくないものは誰にだってある。
ガッシュはまだ迷っているようだったが、アレンビーは理解してくれたようだ。多少逡巡しつつも、納得したように足を止めている。
「……分かったわ、高遠。チェス君にはどうしても残りたい理由があった。そうなんだよね?」
「ええ、そう考えて間違いありません」
「自分がやらなくてはいけない戦いというものはあるのだ……だが、本当にそれで良いのか。
ウヌゥ……分からないのだ」
「チェス君を、そしてこの高遠遙一を信頼してください、ガッシュ君。
それこそが……うっ!」
うつむき瞳を震わせるガッシュを諭す高遠の言葉を遮るように、船ががくんと一際大きくな揺れを示した。船内のどこかで爆発でも起きたのか、震動が伝わってくる。
そして、船が徐々にその速度を落とし始めついには高速道路の高架下に差し掛かる寸前で緩やかに停止した。
「……基幹部をやられたようですね。どこまでも邪魔をしてくれる。
さぁ、もう一刻の猶予もありません。アレンビー君、あなたならあそこまで飛び上がることはできますか?おあつらえ向きに穴が空いている」
「うん。そんなに高くもないし、行けるよ」
高速道路を指差して聞く高遠にアレンビーは力強く頷いた。高遠も満足気に首肯を返す。
「結構。ではまずガッシュ君からお願いします。ガッシュ君、デイパックをお預けします。
全員分の荷物をまとめてありますので」
「う、うむ……」
未だどう判断するか決めかねている様子のガッシュに無理やりデイパックを背負わせる。そして、決断させるように背中を押した。
たたらを踏んだガッシュが、不安そうに高遠を見る。
高遠はできるだけ子供を安心させられるような表情を心掛けながら、にんまりと笑った。
「ただの順番ですよ。私もすぐに引き上げて貰います。
もちろん、彼が望むのであればチェス君もね」
「……分かったのだ。約束だぞ高遠。皆で一緒に脱出するのだ」
「ええ、約束です。バルカンと遊ぶのでしょう?」
その言葉でようやくガッシュは決心、というよりは安心することができたようだ。
デイパックを背負い直し、準備運動を終えたアレンビーに抱き抱えられる。
「じゃあ、先に行くわね。って言っても私はすぐに降りてくるけど」
「お願いします。計画が失敗した場合は速やかに去るのが私のモットーでして」
高遠がそう言うとアレンビーはふっと笑った。
そうして走りやすい形にガッシュを抱え直すとその表情を一気に引き締める。
「じゃあ、飛ぶわよ。ガッシュ、しっかり掴まっててよね」
「う、うむ。任せるのだ」
「上等!うおおおおおおおおお!!」
アレンビーは数歩助走をつけると、ダンと踏み抜かんばかりの大きな音を立てて甲板を蹴り飛び上がった。
高遠が見守る中、重力を無視するかのように高速道路へと手を伸ばす。
(やれやれ、この場所は全く反則ばかりだ)
呆れつつも、ひとまず全滅は避けられたことに安堵の息を漏らす。
アレンビーが今まさに高速道路に足をかけんとするのを見ながらさてチェスをどうしようかと思案を巡らせたところで、
月明かりの中、無数の銃弾がアレンビーの体を貫くのを見た。
◇
甲板にいる高遠と、船に背を向ける形のアレンビーには見えなかったが、空中で船を見下ろすガッシュにははっきりとそれが見えた。
さっきの男が、凍てついた刃物ような視線でデイパックから突き出した砲塔をガッシュ達に突き出している。
警告する間もなくその先端が火を吹き、同時にアレンビーの体が小刻みに揺れた。
「あ……」
そんな音がアレンビーの口から漏れ、高速道路を目の前に勢いをなくした体が静かに落下を始める。
「ア、アレンビー!しっかりするのだ!死んではならぬ!」
「う……お」
抱き抱えられているガッシュにはアレンビーの蜂の巣のように穴だらけになった背中しか見ることができない。
弱々しい吐息が耳に届く中、砲身を反転させた男が通路で使ったのと同じロケットランチャーを発射するのが見えた。
「アレンビー!!」
「う……おおおおおおおおおおおおお!!」
ガッシュがこれまでで一番大きな叫びを上げた瞬間、伏せられていたアレンビーの顔がぎっと前を向いた。
口から大量の血が溢れるのも構わず、アレンビーは全身を大きく捻りガッシュを掴むと高速道路の中目掛けて全力で放り投げる。
「どおおおおおおりゃあああああああ!!」
ガッシュは見た。アレンビーの歯は痛みを叩き潰すかのように力強く食いしばられ、両の瞳には緑色の光が煌々と輝いている。
届く訳がないと知りながらもガッシュが空中で手を伸ばしたとき、アレンビーのその表情が緩み慈しむような優しいものへと変わった。
「頑張ってね、応援してるから!そうだ。ドモンに、ドモンに会ったら――!」
着弾したロケットランチャーによりアレンビーの体は爆散し、その続きを聞くことはできなかった。
衝撃の余波を受けたガッシュもまた、気を失い高速道路の中に吸い込まれるように落ちていった。
&color(red){【アレンビー・ビアズリー@機動武闘伝Gガンダム 死亡】}
◇
アレンビーの体の残骸が甲板上に落下したのを確認し、ビシャスはパニッシャーをデイパックへと仕舞った。
代わりに、強奪したデイパックに入っていた愛用の刀を取り出す。レーダーは破損してしまったが残るはすぐ近くの男のみ。戦闘に秀でているようには見えない。
苦もなく葬ることができるだろう。
さすがに疲労を感じながら立ち上がって歩きだそうとし、背後に感じた固い気配に動きを止めた。
「ポロロッカって知ってるか?」
ビシャスの後頭部にコルトガバメントの銃口を向けながら、ジェットは言った。
全身を水で濡らし、飛びそうになる意識を意地で繋ぎ止めながら言葉を続ける。
「ある女が言ってた話だ。
何でも宇宙のどっかにゃそんな名前の星があって、この殺し合いはその星の入国審査なんだと。
は、俺やお前さんがこうしてやってることは全くの茶番って訳だ。
どうだい、あんたこんな与太信じるかい?」
話の途中で、レンズのピントがぼやけるようにジェットの視界がぶれる。
ビシャスは何も答えない
「俺は信じるぜ」
絶対の確信をもって、ジェットは言った。
「だってそうだろうが?死んだと思ったのは実は眠りから覚めるだけで、晴れて入国した暁には飯にも金にも一切不自由しない生活が待ってるときたもんだ。
肉抜きの料理も、ハネっ返りの女も、馬鹿な相棒ともまとめておさらばできるってんだ。
こんな上手い話信じない手があるか?」
内容の正確さにも構わず、まくし立てる。
息が上がるのを、無理やりに笑うことで抑えた。
俺はいつからこんなにお喋りになったのかと思いながら。
「上手い話にゃ裏があるっていうが、この話ばっかりは例外だ。
何せ、これを聞かせてくれたのは裏も表もないまっさらな女なんだからな」
ビシャスは身じろぎ一つしない。
聞いているのかいないのか、その表情を窺い知ることはできない。
「最近じゃあ珍しい、優しい女だったよ。この銃を持ってた女だってそうだ。
色々厳しい目にもあったが、最後は仲間を想ってわんわん泣いていた。
さぁこれからってときに夢から覚めちまったがな」
自分の女を自慢するかのように、ジェットは言う。
構える銃はその女との間で奇妙に行き来したものだ。
「何でこんな話をするのかって?意味はねぇ。ただ、お前さんが殺しちまったのはそういう女だったってだけの話だ。
青臭ぇか?青臭ぇよなぁ?
だがな、今はどうしようもなくそういうことを言いたいんだよ!俺はなぁ!!」
ついに、ジェットは激昂した。
言いたいことを腹の底から言い終えたジェットが黙り、二人の間に静寂が満ちる。
聞こえるのは、黒い波の音のみ。
ビシャスは何も答えない、かと思われた。
「死んだ女のためにできることなどない」
その言葉がビシャスより発せられたものだと理解するのに、ジェットは数秒の時間を必要とした。
この男が言葉を発することなど、完全に想定の外にあった。
ジェットは答えず、ただへっとだけ笑うと銃を構え直した。
そのまま、ただ静かに時が過ぎる。
しばらくして、ジジ、という音とともに機械を通した能天気な声が響いた。
『エドです。地図に載っている施設を全部、良く調べてみてください。すごいお宝を発見ができるかもしれません』
名乗られずとも分かった。ビバップ号で散々に聞かされた声だ。
『詳しい情報は追って連絡しますが、ラセンリョクという物を用意してください。それが絶対必要なんだそうです!』
軽やかな声が、二人の間を通りすぎていく。
その声を聞きながらジェットは思った。
『もしも見つけてしまったらぁ~一切、粉砕、喝采ぃ~八百屋町に火がともる~!』
何だよ、お前らもちゃんと働いてんじゃねぇか、と。
始まったときと同じジジ、という音を最後に、声は聞こえなくなった。
甲板の上に、再び静寂が戻る。
その静寂がもう一瞬だけ続き。
数発の銃声と白銀の一閃が交錯した。
◇
直撃を受け吹き飛ぶアレンビーとそこから放り投げられたガッシュの姿を、高遠は見上げていた。
ガッシュが高速道路の中に消えるのを確認し、視線を正面に戻す。
姿勢良く伸ばされた背中には何の感情も含まれておらず、その表情を確認することはできない。
高遠はしばらく、そのままの姿勢でただ立っていた。
特に動くこともなく、外界の刺激に反応することもなく。
背後にコツコツと足音が近付いてくるそのときまで、高遠は微動だにしなかった。
その間、高遠が何を考えていたのかは分からない。
だが、少なくとも。
「いかがでしたか、私の脱出マジックは?」
くるりと向き直り、背後に迫ってきたビシャスに向かってそう言った高遠の顔には、これまでと変わらない奇術師然としたにんまりとした笑顔が浮かんでいた。
&color(red){【ジェット・ブラック@カウボーイビバップ 死亡】}
「自己評価を申しましょうか。散々と言う他はありません。
ガッシュ君に全てを押し付ける形になってしまい、何より私が脱出できていない」
おどけるように笑った。
観客はつられてはくれなかったが。
「彼の今後を思うと心苦しいですが、まぁ信じるより仕方ないですね。
彼はやる男だと思っていますよ、私は?
あなたもその怪我では追跡は諦めて休まざるを得ないでしょう」
ビシャスの体には幾つかの銃痕が生まれ、血が滲んでいた。
動きからも、最初に見せた敏捷さが失われている。
「かくして私の脱出劇は幕、となります。続きの舞台はガッシュ君に任せ、役目を終えた奇術師は退散するといたしましょう。
夢から覚めるか地獄に落ちるか、はたまたおかしな名前の星で楽しく暮らすことができるのか、楽しみにしながらね」
ビシャスが腰だめに刀を構えるのを見ながら、
奇術師は恭しい仕草で腰を折った。
「それでは、Good Luck」
◇
傷の手当てを終えしばしの休息をとったビシャスは、奪取したデイパックに入っていた水上オートバイを駆り豪華客船を後にした。
レーダーは破壊されたが、代わりに自分の得物と移動手段を手に入れた。
戦果を考えれば十分収穫があったと言える。
いくつか傷をもらいはしたが、まだ十分戦える。
人が見つからなければ更に休息を取ることも視野に入れながら、
ビシャスはこれまでと一切変わらない冷徹な視線で闇夜の水上を駆けた。
船中で起きた全てのことに一切の感慨を持たず、ビシャスは高速道路を潜り闇夜に消えていった。
ビシャスが走り抜けた高速道路の直上に、全身をぼろぼろにしながら夢の中に沈み込む少年の姿があった。
道路を縦断する巨壁にもたれ、希望を詰め込んだデイパックを肩にかけながら、少年は未だ目覚める気配すらない。
彼がいつその気高さを秘めた意識を取り戻し、そしてそのとき何を思うのか、まだ知ることはできない。
ただ、少年の手には菓子箱に割り箸を付けただけのいい加減な造りのおもちゃが、しっかりと握られていた。
【E-3水上を移動中/1日目-夜中】
【ビシャス@カウボーイビバップ】
[状態]:疲労(大)、胴体にダメージ大、左肩と右脇に銃創(応急処置済み)
[装備]:ビシャスの日本刀@カウボーイビバップ 、ジェリコ941改(残弾7/16)@カウボーイビバップ、軍用ナイフ@現実、水上オートバイ
[道具]:支給品一式×3(内一つの食料:アンパン×5)、パニッシャー@トライガン(重機関銃残弾80%/ロケットランチャー残弾50%)、日出処の戦士の剣@王ドロボウJING
ウォンのチョコ詰め合わせ@機動武闘伝Gガンダム、アゾット剣@Fate/stay night、レーダー(破損)@アニロワオリジナル
コルトガバメント(残弾:3/7発)、UZI(9mmパラベラム弾・弾数0)@現実、防弾チョッキ@現実、薬局で入手した薬品等数種類(風邪薬、睡眠薬、消毒薬、包帯等)
[思考]
基本:参加者全員の皆殺し。元の世界に戻ってレッドドラゴンの頂点を目指す。
1:皆殺し。確実に仕留められる参加者が見つからなければ休む。
2:武器の補充
[備考]
※地図の外に出ればワープするかもしれないと考えています
【E-3 高速道路・巨大文鎮の南側/1日目-夜中】
【ガッシュ・ベル@金色のガッシュベル!!】
[状態]:おでこに少々擦り傷、全身ぼろぼろ肉体疲労(大)、精神疲労(大)、気絶
[装備]:バルカン300@@金色のガッシュベル!!
[思考]
基本:やさしい王様を目指す者として、螺旋王を王座から引きずり落とす。
1:……
2:なんとしてでも高嶺清麿と再会する。
3:ジンとドモンと明智を捜す。
[備考]
※剣持、アレンビー、キール、ミリアと情報交換済み
※螺旋力覚醒
[持ち物]:支給品一式×8(ランダムアイテム0~1つ ジェット・高遠確認済み、内一つは食料-[全国駅弁食べ歩きセット][お茶][サンドイッチセット])
【武器】
巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING
ジンの仕込みナイフ@王ドロボウJING
ドーラの大砲@天空の城ラピュタ(大砲の弾1発)
東風のステッキ(残弾率60%)@カウボーイビバップ
ライダーダガー@Fate/stay night
鉄扇子@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-
スペツナズナイフ×2
【特殊な道具】
テッカマンブレードのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-
賢者の石@鋼の錬金術師
ガッシュの魔本@金色のガッシュベル!!
リボルバー・ナックル(右手)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ6/6、予備カートリッジ数12発)
ドミノのバック×2@カウボーイビバップ
アイザックの首輪
【通常の道具】
マオのバイザー@コードギアス 反逆のルルーシュ、剣持のライター、豪華客船に関する資料、安全メット、スコップ、注射器と各種薬剤、拡声器
【その他】
ブリ@金色のガッシュベル!!(鮮度:生きてる)、アンディの衣装(-帽子、スカーフ)@カウボーイビバップ
イザックのパンツ、アイザックの掘り当てたガラクタ(未識別)×1~6、カウボーイ風の服とハット、血塗れの制服(可符香)
*時系列順で読む
Back:[[希望の船?絶望の城?(前編)]] Next:[[エミヤ]]
*投下順で読む
Back:[[希望の船?絶望の城?(前編)]] Next:[[エミヤ]]
|224:[[希望の船?絶望の城?(前編)]]|&color(red){高遠遙一}| |
|224:[[希望の船?絶望の城?(前編)]]|&color(red){チェスワフ・メイエル}| |
|224:[[希望の船?絶望の城?(前編)]]|ガッシュ・ベル|234:[[どうでもよくなった理由]]|
|224:[[希望の船?絶望の城?(前編)]]|&color(red){ジェット・ブラック}| |
|224:[[希望の船?絶望の城?(前編)]]|&color(red){アレンビー・ビアズリー}| |
|224:[[希望の船?絶望の城?(前編)]]|ビシャス|230:[[Rising Moon the Samurai & the Gunman(前編)]]|
**希望の船?絶望の城?(後編)◆10fcvoEbko
高遠の立てたプラン自体は簡単なものだ。
固まって行動することは避け、チェスはアレンビーと船の機動を、高遠とガッシュは脱出に必要な道具の調達をそれぞれ担当する。襲撃を受けた場合は戦おうとせずひたすら逃げる。
戦力比がチェスの側に傾いているのは船の起動を優先した高遠の判断である。
「ここね!」
アレンビーとチェスはブリッジに辿り着くと乱暴に扉を開け転がり込むように中に飛び込んだ。
幸いにもあれから一度も襲撃は受けていない。ちまちまとした走りに、それでもチェスにとっては全力だったのだが、痺れを切らしたアレンビーがチェスを抱えて爆走したのだ。
それなりに消耗していたチェスは数百年の常識を覆されるような人間離れしたスピードに何度か意識を失いかけたのだが、結果的には功を奏したと言える。
「鍵穴ってどこ!?」
「ここだよ!アレンビー姉ちゃん!」
首を振って叫ぶアレンビーにチェスは目聡く舵の横に設けられた穴を見つけ指を差した。
身長が足りないため飛びつくようにして確認する。奇妙な螺旋状の形は鍵と一致しており、間違いはないだろう。
「よし!じゃあ、チェス君!」
「うん!」
チェスは最短の動作でポケットから鍵を取り出すと突き刺すように鍵穴に差し込んだ。勢いをそのままに右に捻る。
鍵は抵抗もなくチェスの手に従って回り、そのまま問題なく二人の役目は完了すると思われた、が。
『螺旋力を確認できません。出港は不可能です』
聞こえてきたのは船を動かす駆動音ではなく、絶望を告げるハスキーな女性の声を模した機械の音声だった。
「うそ、何で動かないのよ!螺旋力ってなに!?」
汗を浮かべて何度も鍵を回し直すチェスの後ろでアレンビーが声を上げる。
まさかこんな訳の分からない理由に邪魔をされるとは思ってもみず、アレンビーの怒りはチェスにとっても全く同感だった。抑揚の変わらない機械音が何度も同じ内容を告げる。
(螺旋力だと?博物館にも似たような言葉があった。
何だというのだ?螺旋王は何を考えている?
私達は皆貴様に踊らされているとでも言うのか!)
必死で鍵を回すも、結果に変わりはない。焦りを通り越し、チェスの表情にも怒りが込み上げてきた。
頭の片隅で錬金術師の自分が冷静な思考を訴えてくるが、そのための情報が圧倒的に不足しているのはそいつも十分承知しているようだった。
一向に好転しない状況に、チェスの手から力が抜ける。絶望に襲われそうになったそのとき、チェスの体は横に押しのけられた。
「ちょっと代わって!」
「あ、アレンビー姉ちゃん!」
「何だかわかんないけど挫けちゃ駄目、要は気合よ!うおおおおおおおお!!」
アレンビーは一旦鍵を引き抜くと、叫びとともに再び鍵穴に叩き付ける。
中の機構もろとも殴り壊さんばかりの衝撃に、チェスは船室が一瞬大きく揺らいだように感じられた。
そうして右に捻る。チェスがやったのと同じ小さな動作のはずが、そこに使われているエネルギーには何十倍もの差があるように見えた。
「絶対みんなで助かるんだから!こんなとこで邪魔される訳にはいかないのよ!だから、うごけえええええええええ!!」
船室中の大気をびりびりと弾き飛ばすように叫ぶアレンビーの背中を見ながら、しかしチェスの思考は現実的なものだった。
アレンビーの言葉には賛同するし、諦めようとしないその心根は賞賛に値する。だが、だからと言ってそれで船が動く訳ではない。
あの男の策は外れたのだ。何か別の手立てを考えなくてはならない。
見ろ、アレンビーがいくら叫び声を上げたところで鍵穴の周囲にしつらえられた渦巻状の模様に緑色の光が満ちていくだけだ。
そして、その光が模様を満たし淡い光を発したところで事態は何も――
『螺旋力確認。出航します』
「え?」
淡い光を発したところで聞こえてきた、さっきまでとは違う内容の機械音声にチェスは思わずすっとんきょうな声を上げてしまった。
「やったぁ!ね、チェス君、言ったとおりだったでしょ?」
汗だくになりながらアレンビーが勝利の喜びに満ちた表情でチェスにウインクをする。
鍵穴から発するのと同じ緑色の光を湛えたその瞳を見ながら、チェスは茫然と頷くしかなかった。
船の起動を終えた後のブリッジには、チェスが一人で残っていた。
アレンビーは先に行かせた。一緒に高遠達のところへと走る振りをしながら、少しずつ歩調を落とし気付かれないように一人で戻ってきたのだ。
彼女の脚力ならばれたら連れ戻されるのは一瞬だろうが、問題はない。用事はすぐに済む。
アレンビーには疲れも見えたしすぐに気付かれるということはないだろう。
気になることがあった。チェスは緑色に淡く発光する鍵穴を見上げる。
(螺旋力……博物館のことと言い、一体何のことだ?
アレンビーは要は気合いと言い、そしてその通り船は動いた。それに、あのときの瞳……)
揺れを増した船室の中で、チェスは文字通り色を変えていたアレンビーの緑色の瞳を思い出す。
(放送でも奴はしつこいくらいに螺旋力について触れていた。
そして、それが無くては動かない装置をこうして置いておく……)
久しく見せていなかった錬金術師としての一面が顔を覗かせ、論理的な思考を積み重ねさせる。
その背後に、黒い影がそっと近寄った。
(試されているとしか思えんな。殺し合いと言いつつ、その実私達が用意された解答にどこまで到達できるか見ているようだ。
高遠のように趣味に走る馬鹿ばかりでもないだろう。まるで実験……実験、そうか)
何かを掴んだような表情で頷くチェスの背後で、影は刀を構えゆっくりと腰を落とす。
そのまま一息に首をはねようと静かに息を整え――
「……ぐぅ!」
「残念だったな」
懐に飛び込んできたチェスの小さな両手で、軍用ナイフを胸に突き立てられた。
抉り込むようにナイフに力を込めながら嘲るようにチェスが笑う。
「そういつまでも上手くいくと思うな。
……螺旋力などどうでもいい。今は……貴様を殺す!」
老獪さと獰猛さに唇を歪ませながら、チェスはさらに手に力を込めてナイフを突き出した。
◇
正直なところ、高遠はティアナの死をどう受け止めたものか決めかねていた。
騙されて殺人までさせられたと知りながら、変わらずに慕ってくれたのは素直にありがたいと思う。
だが、これまでの犯罪人生の中でそのような経験をしたことはなかった。
そもそも、自分が殺人を教唆した犯人達は高遠の考える芸術犯罪を汚したと判断した時点で容赦なく切り捨ててきたのである。
どうにも、いつもと違う立ち位置というものには慣れない。
「むう、高遠。道具はもうよいのか?」
「ええ、十分です。ありがとう、ガッシュ君」
高遠の謝辞にガッシュが目を輝かせて喜びを表現する。
自分もこれくらい素直なら、と少し思わないでもない。
だがそういったものを切り捨てる形で、望んだ今の姿を手に入れたのだ。
後悔するほどのことではない。
「静かなのだ。チェスとアレンビーは大丈夫だろうか」
「アレンビー君の身体能力には目を見張るものがあります。滅多なことはないでしょう。
チェス君は……私に心配されても嬉しくないでしょうから、止めておきます」
「ウヌゥ、仲良くするのだ」
高遠の言葉を真に受け、ガッシュが慌てるようにたしなめる。
先程からのガッシュの様子は必要以上にキョロキョロ周囲を警戒するなど、明らかに落ち着いていない。
ティアナとジェットを失ったと知ったときの悔しがりようを見れば無理もないことと言えるが、それにしてもこのような警戒の仕方に効果があるとは思えなかった。
「落ち着いてください、ガッシュ君。敵は床から現れたりしませんよ」
「わ、私は落ち着いて……いないのだ。本当を言うと怖いのだ。
これ以上仲間を失くてしまうかと思うと……」
「それは私も同じことです。
それに、このような無粋極まりない形で私の脱出計画を邪魔されてはたまりませんし」
「ウヌゥ、それでも高遠はこうやって率先して働いておる。偉いのだ。
だというのに私は……」
がっくりと肩を落とす。
どうやら相当に参っているようだ。
ふむ、と高遠は思案する。一人の奇術師としては、落ち込んだ子供を元気付けるに吝かではない。
どれ程効果があるかは分からないが、ちょうどそれに使えそうな物にも心当たりがあった。
「まぁ、今は目の前の状況に対処することを考えましょう。
これを差し上げますので、元気を出してください」
「ん……?お、おお!バルカンではないか!!」
菓子箱に割り箸を付けただけの適当な代物でどれだけ喜ばせることができるか、奇術師としての腕の見せどころのつもりだったがどうやらその必要はないようだった。
ガッシュはそれを一目見るなり飛び付き大喜びで戯れている。というか、そもそもガッシュが持っていたものらしい。
「おや、お知り合いでしたか。それは良かった」
「うむ!バルカンなのだ!清麿が私のために作ってくれた友達なのだ!
空気ミサイル300発に、ナオミちゃんにどれだけ虐められようと帰ってくる強い体を持っておる!!
おお、二人いれば一緒にゲームで遊ぶこともできるのだぞ!!
今度高遠も一緒に遊ぶのだ!!」
「お誘いいただき光栄です。覚えておきましょう」
苦笑しつつ、鷹揚に返す。まさかここまで受けるとは思わなかった。
「うむ、きっとだぞ!なぁ、高遠……」
「はい?」
「高遠は良い奴だな」
曇りのない顔でガッシュにそう言われ高遠はかなり面食らった。
甲板上では確かに許すと宣言されたが、こうまで心の底からの笑顔を見せられるとは想像していなかった。
呆れつつもなるほど優しい王様とは伊達ではないなと思い、さらにそのような肯定的な感情を持った自分に対して驚いた。
照れ隠しという訳ではないが、少しからかうような口調で言う。
「そんなことを言っていいのですか?
……こんなことをしながら、また新たな犯罪計画を練っているかも知れませんよ」
「そ、そんなことはやめるのだ!それは悪い奴のすることなのだ。
ウヌゥ、しかし高遠はバルカンを守っていてくれていたし……良く分からなくなったのだ」
両腕を組んでう~んと考え込む。本気で悩んでいる様子だ。
一々素直な反応を返すガッシュとの対話を楽しんでいたとき、船ががくんと大きく震えた。
同時に、揺れが大きくなりどこからか機械音が聞こえ始める。
「おお!船が動き始めたぞ」
「成功したようですね。さすがはチェス君」
窓の景色が流れ始めたのを確認する。今のところ計画に支障は出てないようだ。
「では、我々も急ぎましょうか」
「うむ!」
ガッシュを促し、連れだって高遠も歩き始める。
元気良く先を行こうとするガッシュの背中を眺めながら、高遠は思った。
(さて、申し訳ありませんティアナ君。
私はあなたのために泣いてあげられるような人間ではありません。そのような心性はとうの昔に過ぎ去ってしまった。
ですが……そうですね。あなたに膝枕をして頂いていたとき。
その間だけは私は確かに「安らぎ」のようなものを感じていたように思います)
今は、これでどうかご勘弁を。
最後だけ口に出して呟くと、ティアナへの追悼を終えた高遠は再び目的地に向けて歩き始めた。
チェス達は無事だろうかと、そのようなことを思いながら。
◇
両腕から伝わってきた感触にチェスは歯噛みした。硬い。明らかに、何か金属質のものに刃を止められている。
そう思い手を引いた瞬間、チェスはビシャスに突き飛ばされ大きく吹き飛んだ。
自動で動き続ける舵に強かに頭をぶつけ、意識を失いそうになる。
霞んで消えそうになるチェスの視界が、銃のようなものを向けるビシャスの姿を捉えた。
そして、UZIの放つ9mmパラベラムの弾丸がチェスに降り注ぐ。
咄嗟に転がって回避しようとしたが、かなりの数を食らってしまった。お陰で意識がはっきりしたのはありがたかったが。
問題なく再生が行われているのを確認し、チェスは立ち上がると愛らしい見た目に不釣り合いな憎悪の顔中に浮かべてビシャスを睨み付けた。
高遠の言う通り、この場ではどういう訳か不死者の再生力に限界があるらしい。
趣味の悪い悪魔がいたずら心でもだしたか。首を折られたとき、あれは実は危なかったか。
とはいえ、これまでの経験からしても肉体の破壊などの致命傷を負わなければ大丈夫だろうとチェスは考えていた。
(もっとも、人間の致命傷がどのくらいだったかなど半分忘れてしまったがな)
自嘲ぎみに心中で付け加える。
こちらの武器は軍用ナイフとアゾット剣、それに回復力のみ。冷静にそう分析していると男が懐から何かを取りだし、忌々しげに顔を歪めた。
どうやらそれがチェスの刃を止めたものの正体らしい。表情を見るに一矢は報いたか。
だが、まだ足りない。高遠達との取り決めも忘れてチェスは思った。
「貴様は私の手で殺し尽くしてやる。貴様は……貴様だけは!」
怒りの叫びとともにチェスはビシャス目掛けて飛び出した。
もとより戦闘は得手ではない。再生力にまかせて押しきるしかなかった。
一気に駆け寄り、捨て身でナイフを突きだす。だが、交差する形で放たれたビシャスの刃が両ももを深々と切り裂き、勢いをなくしたチェスの体は床に叩きつけられた。
「ぐぅ!」
顎を打った嫌な衝撃が脳を揺らす。降り下ろされた一撃は予測していたため、何とか転がって回避する。
(懐には潜り込んだ。後はどれだけ切られようと構わん!少しずつでも切り刻んでやる)
首や心臓への攻撃さえ避ければいい。後はひたすら突っ込み、敵の体力を消費させる。
いくら切っても立ち上がることに僅かでも恐怖を感じさせることができればなおのこと良い。
幾度も刃を振るい、傷を負いながらチェスは思った。
(ごめんね、アイザックさん。僕じゃあなたの代わりはできないよ。
だってさ、僕はこいつがどうしようもなく憎いんだ。
アイザックさんならこんな気持ちでも許しちゃうのかな?)
心中で語りかけても、当然返事はない。だが、アイザックの記憶の片隅にある目の前の男との邂逅の様子を見ればあり得なくはないと思えてくる。
(ううん。でもやっぱり僕にはミリアお姉ちゃんが殺されたらなんて想像はできないや。
それくらい、二人はぴったりだったから。
離れ離れになるなんてあり得ないくらいに)
ミリアの笑顔が再び浮かび上がってきた。
アイザックの記憶、アイザックの中にあるチェス君の表情。
どれを見ても二人の仲は完璧だったと知れる。
それを引き裂いたのはチェスだ。そして止めを指したのが目の前の男だ。
その事実に、チェスは自分の血が頬にべちゃりと張り付いたことにも構わず皮肉げに笑った。
(仇討ちなどと言えた義理ではないがな。
本来ならこの刃は真っ先に私に突き立てるべきなのだろうが、まぁいい。
そんなことは後でいくらでもしてやる。今はただ、こいつを!)
こいつを殺す。
目の前にいる漆黒の男を。
奪えないはずのミリアの命を奪ったこの男を。
そうしてミリアの
ミリアの仇を。
ミリア。
眼前に、ミリアの顔が現れた。
「…………ふ、ぇ?」
男が放り投げてきたそれを、反射的に受け取ってしまう。
それは、甲板にあるはずの切り離されたミリアの頭部だった。
原形を止めない程にぐしゃぐしゃに潰されたミリアの首がチェスの眼前に広がる。
舌を抉られ耳を削がれ、額は骨が覗くまでにばっくりと割られている。綺麗なブランドの髪は血で真っ黒に染められ元色の部分はほとんど残っていない。
それでいて本人と判別できるだけのラインはぎりぎりで保たれたそれは、どれ程記憶を辿っても決して見ることのできないミリアの新しい表情だった。
チェスの中の全ての記憶が消し飛んだ。頭の中がまっさらになる。
「う、あ」
言葉がしゃべれない。やり方を忘れてしまった。五感が閉じていくのを辛うじて感じる。
「き。き」
それでも体は一方的に、感情を言葉にして紡ぎだそうとする。
脳は既に、一切の思考を放棄していると言うのに。
「貴様ああああああああああああああああ!
あああああああああああああああああああ!!
あああああああああああああああああああ!!!」
喉の皮が破れ血が噴出する痛みも感じないまま、チェスは絶叫した。
「赤い涙を流すがいい」
そうして一片の策も持たず狂人のように突進を始めたチェスは、待ち構えていたビシャスの一閃により首を撥ね飛ばされた。
刈り取られた首は、衝撃で吹き飛んだミリアの首と一緒にころころと寄り添うように床を転がり、壁にぶつかって止まった。
二人の首は、仲の良い男女がよくそうするように真っ直ぐ視線を合わせて向かい合っていた。
&color(red){【チェスワフ・メイエル@BACCANO バッカーノ! 死亡】}
◇
最初に甲板上で襲撃を受けた時点で高遠は通常の方法での脱出は不可能だと確信していた。
身体能力に差がありすぎる。普段のように十分に道具を揃えた状態ならともかく、今の高遠は怪我人だ。
加えて、高遠以上の重傷を負っている者も何人かいた。
彼等を放置するのは人道的にでもなんでもなく、全員での脱出を決意した高遠の矜持が許さない。
奇術師として、不可能と思われる状況からの脱出は得意とするところである。大前提であるはずの全員で、という部分は既に大幅に崩されてしまったが。
怪我人の集団である高遠達が無事逃げおおせるために、確実に敵の手の届かないところまで移動する必要があった。
船から飛び降り、闇夜に紛れるなどという方法ではまだ足りない。確実に誰かは追い付かれ殺される。アレンビーからもたらされた情報で、この案は完全に却下された。
下に逃げても追跡は避けられない。ならば、どうするか。下が駄目なら上に逃げればいい。
相手が追跡を諦める程の高みへと、一瞬で。
「そこで、高速道路ですよ」
「ウヌゥ……緊張してきたのだ」
甲板上は数刻前までとは打って変わって叩きつけるように海風が吹いていた。ライトアップされたその場所に、身を隠すように高遠とガッシュが潜んでいる。
「資料によるとこの船は停泊していた島の周囲を右回りに2時間程度で周回するようです。
結構なスピードでしょう?チャンスは一瞬です。
だからこそ価値があり、同時にわくわくもするというものです」
高遠の計画は船内の備品である太縄を道路の高架に巻き付け、船が道路の下を通るのに合わせてそれに掴まり脱出するというものだった。
そうして高遠達は高速道路に登り、殺人鬼を一人残した船はあっという間に遥か彼方へと去っていくという寸法だ。
もちろん、技術はともかく高遠にはそんなに高くに縄を投げるような腕力はない。
だがアレンビーや、あるいはガッシュのような常人離れした能力があれば十分に可能だと判断していた。
「我ながら力技も良いところで少々お恥ずかしいですが、まぁ贅沢は言わないでおきましょう」
未知というものに頼るのも中々に悪くないですし、と続ける。
「滑車の原理を利用して自動的に縄が我々を道路まで引き上げてくれるという、怪我人に配慮したプランもあったのですが……その必要はなくなってしまいましたからね」
「……もう誰も死なせないのだ。絶対に皆で脱出してみせる。
この船だけではない。この争いそのものを止めさせるのだ」
ほんの少し悔しさを滲ませる高遠に対し、ガッシュははっきりと告げる。
高遠は苦笑した。この年でこれ程までに強い決意を見せるとは、感心するほかない。
「そうですね、バルカンと遊ぶ約束もありますし。そのためにもお二人には早く
戻ってきてもらいたいものですが……ああ、いらっしゃいました。アレンビー君!こちらです!」
甲板にアレンビーの姿を認めて高遠は声をかけた。向こうもすぐこちらに気付く。
だが、近付いてきたアレンビーは何か焦っているように見えた。
「……お一人ですか?」
原因はすぐに知れた。チェスの姿がない。
「うん……ごめん、二人とも。
船を動かすところまでは一緒にいたんだけど、
戻ってくる途中ではぐれちゃったみたいで……
ほんとごめん!すぐ探しに戻るから!」
「わ、私も行くのだ!」
沈痛な面持ちで船内に戻ろうとするアレンビーの後をガッシュも続こうとする。
高遠は二人を押し止めるように強く、けれども口調だけは静かに言った。
「いえ……その必要はないでしょう。お二人は、とにかく脱出を。
もう、時間がない。どうしてもというならチェス君は私が探します」
高速道路はもうすぐそこまで近付いていた。これを逃せばもう後がない。
高遠がそう言ったのには理由がある。チェスが単独行動をしようとする訳には心当たりがあった。
なおも納得しない様子の二人に続ける。
「チェス君なら大丈夫です。彼を甘く見ると痛い目に遭うことは誰よりもこの私がよく知っている。
はぐれたのではありません。一人で行動したいだけの用事が彼にはあったのでしょう。
彼は見た目よりもずっと大人です。老獪と言っても良い程にね」
具体的な理由までは触れなかった。言えば二人は飛び出していくだろうし、自分のせいで脱出のチャンスを潰すのはチェスの本意ではあるまい。
どうしても邪魔されたくないものは誰にだってある。
ガッシュはまだ迷っているようだったが、アレンビーは理解してくれたようだ。多少逡巡しつつも、納得したように足を止めている。
「……分かったわ、高遠。チェス君にはどうしても残りたい理由があった。そうなんだよね?」
「ええ、そう考えて間違いありません」
「自分がやらなくてはいけない戦いというものはあるのだ……だが、本当にそれで良いのか。
ウヌゥ……分からないのだ」
「チェス君を、そしてこの高遠遙一を信頼してください、ガッシュ君。
それこそが……うっ!」
うつむき瞳を震わせるガッシュを諭す高遠の言葉を遮るように、船ががくんと一際大きくな揺れを示した。船内のどこかで爆発でも起きたのか、震動が伝わってくる。
そして、船が徐々にその速度を落とし始めついには高速道路の高架下に差し掛かる寸前で緩やかに停止した。
「……基幹部をやられたようですね。どこまでも邪魔をしてくれる。
さぁ、もう一刻の猶予もありません。アレンビー君、あなたならあそこまで飛び上がることはできますか?おあつらえ向きに穴が空いている」
「うん。そんなに高くもないし、行けるよ」
高速道路を指差して聞く高遠にアレンビーは力強く頷いた。高遠も満足気に首肯を返す。
「結構。ではまずガッシュ君からお願いします。ガッシュ君、デイパックをお預けします。
全員分の荷物をまとめてありますので」
「う、うむ……」
未だどう判断するか決めかねている様子のガッシュに無理やりデイパックを背負わせる。そして、決断させるように背中を押した。
たたらを踏んだガッシュが、不安そうに高遠を見る。
高遠はできるだけ子供を安心させられるような表情を心掛けながら、にんまりと笑った。
「ただの順番ですよ。私もすぐに引き上げて貰います。
もちろん、彼が望むのであればチェス君もね」
「……分かったのだ。約束だぞ高遠。皆で一緒に脱出するのだ」
「ええ、約束です。バルカンと遊ぶのでしょう?」
その言葉でようやくガッシュは決心、というよりは安心することができたようだ。
デイパックを背負い直し、準備運動を終えたアレンビーに抱き抱えられる。
「じゃあ、先に行くわね。って言っても私はすぐに降りてくるけど」
「お願いします。計画が失敗した場合は速やかに去るのが私のモットーでして」
高遠がそう言うとアレンビーはふっと笑った。
そうして走りやすい形にガッシュを抱え直すとその表情を一気に引き締める。
「じゃあ、飛ぶわよ。ガッシュ、しっかり掴まっててよね」
「う、うむ。任せるのだ」
「上等!うおおおおおおおおお!!」
アレンビーは数歩助走をつけると、ダンと踏み抜かんばかりの大きな音を立てて甲板を蹴り飛び上がった。
高遠が見守る中、重力を無視するかのように高速道路へと手を伸ばす。
(やれやれ、この場所は全く反則ばかりだ)
呆れつつも、ひとまず全滅は避けられたことに安堵の息を漏らす。
アレンビーが今まさに高速道路に足をかけんとするのを見ながらさてチェスをどうしようかと思案を巡らせたところで、
月明かりの中、無数の銃弾がアレンビーの体を貫くのを見た。
◇
甲板にいる高遠と、船に背を向ける形のアレンビーには見えなかったが、空中で船を見下ろすガッシュにははっきりとそれが見えた。
さっきの男が、凍てついた刃物ような視線でデイパックから突き出した砲塔をガッシュ達に突き出している。
警告する間もなくその先端が火を吹き、同時にアレンビーの体が小刻みに揺れた。
「あ……」
そんな音がアレンビーの口から漏れ、高速道路を目の前に勢いをなくした体が静かに落下を始める。
「ア、アレンビー!しっかりするのだ!死んではならぬ!」
「う……お」
抱き抱えられているガッシュにはアレンビーの蜂の巣のように穴だらけになった背中しか見ることができない。
弱々しい吐息が耳に届く中、砲身を反転させた男が通路で使ったのと同じロケットランチャーを発射するのが見えた。
「アレンビー!!」
「う……おおおおおおおおおおおおお!!」
ガッシュがこれまでで一番大きな叫びを上げた瞬間、伏せられていたアレンビーの顔がぎっと前を向いた。
口から大量の血が溢れるのも構わず、アレンビーは全身を大きく捻りガッシュを掴むと高速道路の中目掛けて全力で放り投げる。
「どおおおおおおりゃあああああああ!!」
ガッシュは見た。アレンビーの歯は痛みを叩き潰すかのように力強く食いしばられ、両の瞳には緑色の光が煌々と輝いている。
届く訳がないと知りながらもガッシュが空中で手を伸ばしたとき、アレンビーのその表情が緩み慈しむような優しいものへと変わった。
「頑張ってね、応援してるから!そうだ。ドモンに、ドモンに会ったら――!」
着弾したロケットランチャーによりアレンビーの体は爆散し、その続きを聞くことはできなかった。
衝撃の余波を受けたガッシュもまた、気を失い高速道路の中に吸い込まれるように落ちていった。
&color(red){【アレンビー・ビアズリー@機動武闘伝Gガンダム 死亡】}
◇
アレンビーの体の残骸が甲板上に落下したのを確認し、ビシャスはパニッシャーをデイパックへと仕舞った。
代わりに、強奪したデイパックに入っていた愛用の刀を取り出す。レーダーは破損してしまったが残るはすぐ近くの男のみ。戦闘に秀でているようには見えない。
苦もなく葬ることができるだろう。
さすがに疲労を感じながら立ち上がって歩きだそうとし、背後に感じた固い気配に動きを止めた。
「ポロロッカって知ってるか?」
ビシャスの後頭部にコルトガバメントの銃口を向けながら、ジェットは言った。
全身を水で濡らし、飛びそうになる意識を意地で繋ぎ止めながら言葉を続ける。
「ある女が言ってた話だ。
何でも宇宙のどっかにゃそんな名前の星があって、この殺し合いはその星の入国審査なんだと。
は、俺やお前さんがこうしてやってることは全くの茶番って訳だ。
どうだい、あんたこんな与太信じるかい?」
話の途中で、レンズのピントがぼやけるようにジェットの視界がぶれる。
ビシャスは何も答えない。
「俺は信じるぜ」
絶対の確信をもって、ジェットは言った。
「だってそうだろうが?死んだと思ったのは実は眠りから覚めるだけで、晴れて入国した暁には飯にも金にも一切不自由しない生活が待ってるときたもんだ。
肉抜きの料理も、ハネっ返りの女も、馬鹿な相棒ともまとめておさらばできるってんだ。
こんな上手い話信じない手があるか?」
内容の正確さにも構わず、まくし立てる。
息が上がるのを、無理やりに笑うことで抑えた。
俺はいつからこんなにお喋りになったのかと思いながら。
「上手い話にゃ裏があるっていうが、この話ばっかりは例外だ。
何せ、これを聞かせてくれたのは裏も表もないまっさらな女なんだからな」
ビシャスは身じろぎ一つしない。
聞いているのかいないのか、その表情を窺い知ることはできない。
「最近じゃあ珍しい、優しい女だったよ。この銃を持ってた女だってそうだ。
色々厳しい目にもあったが、最後は仲間を想ってわんわん泣いていた。
さぁこれからってときに夢から覚めちまったがな」
自分の女を自慢するかのように、ジェットは言う。
構える銃はその女との間で奇妙に行き来したものだ。
「何でこんな話をするのかって?意味はねぇ。ただ、お前さんが殺しちまったのはそういう女だったってだけの話だ。
青臭ぇか?青臭ぇよなぁ?
だがな、今はどうしようもなくそういうことを言いたいんだよ!俺はなぁ!!」
ついに、ジェットは激昂した。
言いたいことを腹の底から言い終えたジェットが黙り、二人の間に静寂が満ちる。
聞こえるのは、黒い波の音のみ。
ビシャスは何も答えない、かと思われた。
「死んだ女のためにできることなどない」
その言葉がビシャスより発せられたものだと理解するのに、ジェットは数秒の時間を必要とした。
この男が言葉を発することなど、完全に想定の外にあった。
ジェットは答えず、ただへっとだけ笑うと銃を構え直した。
そのまま、ただ静かに時が過ぎる。
しばらくして、ジジ、という音とともに機械を通した能天気な声が響いた。
『エドです。地図に載っている施設を全部、良く調べてみてください。すごいお宝を発見ができるかもしれません』
名乗られずとも分かった。ビバップ号で散々に聞かされた声だ。
『詳しい情報は追って連絡しますが、ラセンリョクという物を用意してください。それが絶対必要なんだそうです!』
軽やかな声が、二人の間を通りすぎていく。
その声を聞きながらジェットは思った。
『もしも見つけてしまったらぁ~一切、粉砕、喝采ぃ~八百屋町に火がともる~!』
何だよ、お前らもちゃんと働いてんじゃねぇか、と。
始まったときと同じジジ、という音を最後に、声は聞こえなくなった。
甲板の上に、再び静寂が戻る。
その静寂がもう一瞬だけ続き。
数発の銃声と白銀の一閃が交錯した。
&color(red){【ジェット・ブラック@カウボーイビバップ 死亡】}
◇
直撃を受け吹き飛ぶアレンビーとそこから放り投げられたガッシュの姿を、高遠は見上げていた。
ガッシュが高速道路の中に消えるのを確認し、視線を正面に戻す。
姿勢良く伸ばされた背中には何の感情も含まれておらず、その表情を確認することはできない。
高遠はしばらく、そのままの姿勢でただ立っていた。
特に動くこともなく、外界の刺激に反応することもなく。
背後にコツコツと足音が近付いてくるそのときまで、高遠は微動だにしなかった。
その間、高遠が何を考えていたのかは分からない。
だが、少なくとも。
「いかがでしたか、私の脱出マジックは?」
くるりと向き直り、背後に迫ってきたビシャスに向かってそう言った高遠の顔には、これまでと変わらない奇術師然としたにんまりとした笑顔が浮かんでいた。
「自己評価を申しましょうか。散々と言う他はありません。
ガッシュ君に全てを押し付ける形になってしまい、何より私が脱出できていない」
おどけるように笑った。
観客はつられてはくれなかったが。
「彼の今後を思うと心苦しいですが、まぁ信じるより仕方ないですね。
彼はやる男だと思っていますよ、私は?
あなたもその怪我では追跡は諦めて休まざるを得ないでしょう」
ビシャスの体には幾つかの銃痕が生まれ、血が滲んでいた。
動きからも、最初に見せた敏捷さが失われている。
「かくして私の脱出劇は幕、となります。続きの舞台はガッシュ君に任せ、役目を終えた奇術師は退散するといたしましょう。
夢から覚めるか地獄に落ちるか、はたまたおかしな名前の星で楽しく暮らすことができるのか、楽しみにしながらね」
ビシャスが腰だめに刀を構えるのを見ながら、
奇術師は恭しい仕草で腰を折った。
「それでは、Good Luck」
◇
傷の手当てを終えしばしの休息をとったビシャスは、奪取したデイパックに入っていた水上オートバイを駆り豪華客船を後にした。
レーダーは破壊されたが、代わりに自分の得物と移動手段を手に入れた。
戦果を考えれば十分収穫があったと言える。
いくつか傷をもらいはしたが、まだ十分戦える。
人が見つからなければ更に休息を取ることも視野に入れながら、
ビシャスはこれまでと一切変わらない冷徹な視線で闇夜の水上を駆けた。
船中で起きた全てのことに一切の感慨を持たず、ビシャスは高速道路を潜り闇夜に消えていった。
ビシャスが走り抜けた高速道路の直上に、全身をぼろぼろにしながら夢の中に沈み込む少年の姿があった。
道路を縦断する巨壁にもたれ、希望を詰め込んだデイパックを肩にかけながら、少年は未だ目覚める気配すらない。
彼がいつその気高さを秘めた意識を取り戻し、そしてそのとき何を思うのか、まだ知ることはできない。
ただ、少年の手には菓子箱に割り箸を付けただけのいい加減な造りのおもちゃが、しっかりと握られていた。
【E-3水上を移動中/1日目-夜中】
【ビシャス@カウボーイビバップ】
[状態]:疲労(大)、胴体にダメージ大、左肩と右脇に銃創(応急処置済み)
[装備]:ビシャスの日本刀@カウボーイビバップ 、ジェリコ941改(残弾7/16)@カウボーイビバップ、軍用ナイフ@現実、水上オートバイ
[道具]:支給品一式×3(内一つの食料:アンパン×5)、パニッシャー@トライガン(重機関銃残弾80%/ロケットランチャー残弾50%)、日出処の戦士の剣@王ドロボウJING
ウォンのチョコ詰め合わせ@機動武闘伝Gガンダム、アゾット剣@Fate/stay night、レーダー(破損)@アニロワオリジナル
コルトガバメント(残弾:3/7発)、UZI(9mmパラベラム弾・弾数0)@現実、防弾チョッキ@現実、薬局で入手した薬品等数種類(風邪薬、睡眠薬、消毒薬、包帯等)
[思考]
基本:参加者全員の皆殺し。元の世界に戻ってレッドドラゴンの頂点を目指す。
1:皆殺し。確実に仕留められる参加者が見つからなければ休む。
2:武器の補充
[備考]
※地図の外に出ればワープするかもしれないと考えています
【E-3 高速道路・巨大文鎮の南側/1日目-夜中】
【ガッシュ・ベル@金色のガッシュベル!!】
[状態]:おでこに少々擦り傷、全身ぼろぼろ肉体疲労(大)、精神疲労(大)、気絶
[装備]:バルカン300@@金色のガッシュベル!!
[思考]
基本:やさしい王様を目指す者として、螺旋王を王座から引きずり落とす。
1:……
2:なんとしてでも高嶺清麿と再会する。
3:ジンとドモンと明智を捜す。
[備考]
※剣持、アレンビー、キール、ミリアと情報交換済み
※螺旋力覚醒
[持ち物]:支給品一式×8(ランダムアイテム0~1つ ジェット・高遠確認済み、内一つは食料-[全国駅弁食べ歩きセット][お茶][サンドイッチセット])
【武器】
巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING
ジンの仕込みナイフ@王ドロボウJING
ドーラの大砲@天空の城ラピュタ(大砲の弾1発)
東風のステッキ(残弾率60%)@カウボーイビバップ
ライダーダガー@Fate/stay night
鉄扇子@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-
スペツナズナイフ×2
【特殊な道具】
テッカマンブレードのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-
賢者の石@鋼の錬金術師
ガッシュの魔本@金色のガッシュベル!!
リボルバー・ナックル(右手)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ6/6、予備カートリッジ数12発)
ドミノのバック×2@カウボーイビバップ
アイザックの首輪
【通常の道具】
マオのバイザー@コードギアス 反逆のルルーシュ、剣持のライター、豪華客船に関する資料、安全メット、スコップ、注射器と各種薬剤、拡声器
【その他】
ブリ@金色のガッシュベル!!(鮮度:生きてる)、アンディの衣装(-帽子、スカーフ)@カウボーイビバップ
アイザックのパンツ、アイザックの掘り当てたガラクタ(未識別)×1~6、カウボーイ風の服とハット、血塗れの制服(可符香)
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|224:[[希望の船?絶望の城?(前編)]]|&color(red){ジェット・ブラック}| |
|224:[[希望の船?絶望の城?(前編)]]|&color(red){アレンビー・ビアズリー}| |
|224:[[希望の船?絶望の城?(前編)]]|ビシャス|230:[[Rising Moon the Samurai & the Gunman(前編)]]|
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