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「……ら、ラッド!?」
突然の闖入に、清麿は驚く。
全く予想しない事態。
いきなり目の前の男の腕が吹っ飛んだかと思うと、ラッドが一連の流れに割り込んできたのだ。
清麿でもどうすればいいのか、先の展開が全く読めなかった。
慌てる清麿に、しかしラッドは落ち着いて清麿に行動を示す。
「……さっさと行って隠れてろ、キヨマロ。
こいつの目的は分かってんだろ?
せっかく隙作ってやったんだから、それを上手く使えっつーの」
言いながら、窓枠を乗り越えて中に入ってくる。
ここでようやく清麿は、自分だけに注意が引き付けられている最中、
ラッドがシンヤの腕を窓ごとぶち抜いたことを理解できた。
……言いたい事はある。
ラッドに気付かず、こんな蛮行を止められなかった自分も腹立たしい。
だが、今はラッドのほうが正論だ。
シンヤが呆然としている隙に、180度向きを変えて思い切り走り出す。
一心不乱に、後ろを振り返ることもなく。
「……な、待て……ッ!」
激痛と猛烈な吐き気。そして、扉の音で我に返ったシンヤは、しかし動きを止める。
ここで背後を向けば、確実にラッドに背中を撃たれるだろう。
まずは、この男を排除しなければならない。
常人ではショック死してもおかしくない負傷だが、シンヤはラダムのテッカマンだ。
腕一本を失って体のバランスを崩した上、失血の症状もでているが、それでも既に戦闘すら可能な状態まで落ち着いていた。
「……く、貴様ぁああああああああああッ! 虫ケラごときが、よくもやってくれたなぁああああああああ!!」
「おうおうおうおう、いい感じにブッチ切れてくれてるねぇ相羽シンヤくんよぉ。
屈辱かい、屈辱かぁい? そりゃあそうだよな、人間如きに腕一本ぶっ飛ばされたんだもんなあ!!
いいねェ、もっともっと惨めに喚いて見せてみろよ、ヒャアハハハハハハハハハ!
分かってんのか? 今のは頭を狙った射線上にキヨマロがいたから腕を消し飛ばしてやったんだぜ?
つーまーりーだ! この俺が仲間思いの優しい優しぃ~い人間じゃあなかったら、
今頃テメエの頭は完ッ全に消滅してたんだぜ、感謝しろよ? しーてーみーせーろーよー」
「……俺は、テッカマンエビルだッ! 相羽シンヤと……、呼ぶんじゃないッ!
虫ケラがぁぁぁああああああああああッ!!」
激情するシンヤ。
その脳裏に浮かぶ言葉はただ一つ。
殺す。
目の前の白服男を、何としても殺す。
圧倒的な力の下に、目の前の男を骨一つ塵芥一つ残さずこの世から抹消する。
何故、白服男が自分の名前を知っているのかといった疑問や、右肩の激痛すら思考に入れず、ただただ消滅させることのみを考えて動く。
シンヤが床に落ちたテッククリスタルに左手を伸ばす。
これを手にし、テッカマンエビルになりさえすれば勝利は揺るがない。
いつものシンヤなら、たとえラッドに銃撃されていたとしても十分こなせる動作だ。
しかし、片手を失ったことによる身体バランスの変化、そして、奇しくもクレア・スタンフィールドによって傷付けられた左腕の動きの悪さが、その動作を僅かに遅らせる。
結果。
テッククリスタルとシンヤの左手の間に、ファイティングナイフが突き立てられた。
ラッドが、クリスタルを掴むのを妨害するために投擲したのだ。
僅か数十センチのついたてはしかし、シンヤがクリスタルを手にするのを防ぐのには十分すぎる。
同時。ラッドは既に、シンヤへの追撃を加えるべく動き出していた。
……不運なのは、ラッドがモロトフの変身を見たことで、テッククリスタルの作用を警戒していたこと。
そして、鴇羽舞衣が操るソルテッカマンとの対峙により、テッカマンの危険性を多少なりとも体験していたことだ。
故に、先刻も真っ先にクリスタルを持つ右手を狙い、今も最初からクリスタルを手にさせないことを念頭に行動し続けている。
……この状況となるに至って。不運は他にも多々ある。
ラッドが超電導ライフルを手に入れたこと。
既に一戦をこなしたことで、ラッドがシンヤに殺意を抱いていたこと。
明智とねねねとの接触により、ラッドがシンヤの情報を得ていたこと。
クレアとの戦闘により、シンヤが片手にハンデを負っていたこと。
小早川ゆたかが清麿とシンヤの邂逅に居合わせなかったこと。
こうした要因が全て重なった結果として今がある。
要するに……本当に、不運だったとしか言いようがなかった。
クリスタルの回収を阻まれ、刹那の時間でシンヤは思考する。
このままクリスタルを回収すべきか、それとも迎撃すべきか。
……シンヤはクリスタルの回収を選択した。
どうせわずかな時間だからと、虫ケラのほんの数発の攻撃など、耐えられない筈がないと。
ここで迎撃をしていたら、あるいは多少展開が変わったかもしれない。
しかし、違う可能性を論ずることに意味はない。
それは、既に失われた半数以上の人々がもし生きていたらと論ずるのと同じ様なものでしかないのである。
テッカマンの素体となったものは、人間形態でも飛躍的に身体能力が増加する。
それは防御能力においても同様であり、ビルから落ちた程度ではなんともないほどに強化されているのだ。
……だが、人体には鍛えようのない部位が存在する。
ライフルを放り出し、クリスタルを回収しようとするシンヤの懐に飛び込んだラッドは、そのまま握った拳をカチ上げた。
強く、強く振りぬきながら。
「お前よぉ、人間サマの力をナメただろ?」
――――アッパーカット。
アゴに引っ掛けるように打ち出されたそれは、単純ながらいかなる防御も無視して脳を直接揺らすことを可能とする。
シンヤの首が、ごきり、と嫌な音を立てて天を向く。
先の戦闘で噛み合わせの悪くなった口が下から打ち付けられ、歯肉からは再度出血し始めた。
「がは……っ!」
……脳震盪。
衝撃が頭蓋を通り抜け、豆腐のような中身をぐるんぐるんと揺らしてゆく。
どんなに肉体が強くとも、脳そのものを鍛える事はできはしない。
ただの一撃でシンヤは肉体の制御を失う。
足下がおぼつかず、猛烈な吐き気に見舞われた。
バランスを崩したシンヤの体は崩れそうになる。
だが、ラッドはそれを許さない。
「お前、ボクシングはやったことあるか、よォッ!」
中指一本拳による右目へのフック。
ぐちゅり。
突き出された指の関節を押し込まれ、シンヤの右半分の視界は永遠に暗闇に染まることになった。
目の周囲の骨ごと砕かれ、網膜剥離どころか、下手をすれば水晶体が眼球の内側から滲み出てきている。
「なんでもよぉ、古ぅーいギリシアのオリンピックの頃からあったらしい、ぜ!!」
顔面の真中、人中を射抜く左ストレート。
形容しようのない音と共に鼻が潰れた。
大量の鼻血が胸部まで噴出し、喉や口の中まで大量の血が流れ込む。
軟骨はひしゃげ、もう二度と元の形には戻らないだろう。
「ま、俺の弟分、の! グラハムって、ヤツの! 受け売りなんだが、なあッ!!」
胴体部への右左右の三連打。
肝臓が悲鳴をあげ、肋骨の何本かは軽く持っていかれる。
それでも、テッカマンとして改造された体は気絶することさえ許してくれない。
大量に血の混じった吐瀉物を撒き散らす。
しかし、それ故にシンヤはまだ活動できる。
連打の分だけ今の攻撃は軽かった。
……好機と見て、シンヤは攻勢に出ることを選択する。
体は動く。満足に動くわけではないが、それでも常人よりも遥かに速く。
「はぁぁああああああああああああッ!!」
震脚を一歩。
右脚を軸として、重心を低くしたミドルキックを放つ。
武術の嗜みのあるシンヤだからこそ可能な、当たれば軽く人間を潰せる一撃だ。
そして、回避は不能。
鎌のように周囲を刈り取る軌道は、いかなる動きでも逃れることはできない。
そのはずだった。
「……へ、残念賞だったなぁ」
「……ッ!」
確かに胴体に当たった。
当たったが……しかし、その効果の程は期待には到底満たないものだった。
良くても肋骨を1、2本叩き折ったのみ。
ラッドの余裕の残る表情を見るに、それすら大した効果はないだろう。
ラッドは回し蹴りを放った瞬間、シンヤの右側面に飛び込んできたのだ。
……右手を失い、更に右の視界を完全に失っているシンヤには、有効打を与えるには難しすぎた。
否、最初からラッドはそれを狙って右半身だけに集中して攻撃を入れていたのだ。
失血や体のバランスの変化、肝臓への打撃で力がまともに入らない状態で命中させることができたことはむしろ、
シンヤの体術の優秀さを示しているとさえいえるだろう。
狂気はまだまだ終わらない。
「んで、何が言いたいかっつーと、だ!」
回りこんだ先の目の前。
肩の付け根から先を失った、その傷口にラッドは拳を抉り込む。
剥き出しになった骨によって、自分の拳が傷つくのも構わずに。
何発も、何発も。
「ぎ、がァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ……!」
ぶちゅりぐちゅぐちゅぷちじゅぶっぐちゃぐちぶしゃっ。
パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。
パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。
一撃のたびにインパクトした部位から鮮血と肉片が飛び散っていく。
「人間はなあ! ずっと! 昔から! そうやって! 力を! 手に入れて! きたんだよ!
人間やめて! 手に入れた力で! 自分が! 無敵だなんて! 思ってんじゃねえ!
自分が! 死ぬなんて! 思ってねぇだろが! テメエらはよォッ!」
いつの間にか、ラッドの拳は傷口を抉るだけでなく、全身を満遍なく嬲るようになっていた。
顔も、手も、胸も、腰も、鳩尾も、間接も、肩も、喉も。
ひたすらひたすらラッドは、ひとつひとつ丁寧に、殺意という心を込めて拳をプレゼントしていく。
「どうよどうだよ今の気分はよ! テメエがくだらねえと、虫ケラって思っていた人間如きに嬲られるのはよぉッ!
俺は楽しい、楽しいぜ!? こんな楽しい事が他にあるかよ、ひゃぁはははははは!!
何でテメエは笑ってないんだよ、笑えよ無茶苦茶愉快なんだからよお!
おいおいおいおいまずいまずいぜ? 何か目覚めちまいそうだよ妙な力が湧き出てきそうだよおいおいおいおい!
この調子で何人かぶっ殺せばテンションのゲージマックス越えてどうなっちまうんだろうなあ俺!
滅べ! 滅べ! 滅べ滅べ滅べ滅べっ! 何もかも無くなっちまえ! ハァッハハハハハハハハ!!」
高笑いと共に、ラッドはとどめとばかりにシンヤのこめかみに回転を思い切り加えたフックを叩き込む。
これもまた、脳を揺らす一撃だ。
……そこでようやく、ラッドのパンチの雨は降り止んだ。
真横に吹っ飛ばされ、倒れこんだシンヤの上半身は、もはや拳を浴びていない部位は殆どない状態だった。
それでも。
顔は膨れ上がり、歯は所々欠け、あちこちがうっ血しているにもかかわらず、シンヤはゆっくりと、息を乱しながら立ち上がろうとする。
ひゅう、ひゅうと声にならない声をあげ、一つ残った左目でラッドを見据え、二本の脚でしっかり地面を踏みしめる。
「……すげえな。まだ立ち上がれんのか、ありえねえだろ」
ラッドは心底感嘆する。
いくら強化された人間とは言え、あそこまで打撃を叩き込まれてもなお立ち上がれる身体能力にもそうだが……
それ以上に、それだけの苦痛を受けてもなお立ち上がれるその精神力に。
痛覚というのは身体の異常を感知するシグナルであり、改造されてもそれを消すような処置はおそらくされていないだろう。
にもかかわらず、シンヤはいまだ立ち上がり、少しも覇気は衰えない。
それは彼の信念の強さによるものなのか。
……違う。ラッドは知っている。
明智たちとの情報交換で得た、シンヤの情報を。
(――――妄執か、くだらねえ)
……兄への劣等感。その経緯。
リストに細かく刻まれた出来事を、ラッドは思い出す。
(……使えるな)
くっくっと歪な笑みを湛え、ラッドはやれやれというようにシンヤと自身の血で真っ赤に染まった手を体の両側に突き出し、シンヤの芯を叩き折る言葉を放ち始めた。
紛れもない喜色を浮かべて。
「相羽シンヤくんよぉ、結構すげえのな、お前。
俺結構感動しちまったよ」
「…………」
「あたりまえっつー顔だな。ヒャハハハハハ、こりゃあいい!
お前、まだ自分が俺に負けるはずねえとか思ってるだろ!」
「……ラダム、の、テッカ、マンが、貴様ら虫ケラ、ごときに……ッ」
シンヤから言葉が返ってきたことに、ラッドは軽くだが今一度驚く。
喉も潰したはずが、回復速度が思ったよりも速い。
しかし、その事はラッドにとって
(……都合がイイよなあ、ヒャハハハハ)
「へ……言うねえ。まあいい、話の続きだ。
んで、だ。心の優しい俺は、お前を殺すのはどうかと思ったのよ。
このまま見逃してやろうかってなあ!!」
「きさ……まァァァァッ!!」
(いいねえいいねえ、もっともっと怒って屈辱を感じてみろよ、相羽シンヤくんよ!)
「しかしだ! このまま見逃したんじゃあ俺の殺意ゲージが治まらねえ!
そこでだ、両方にとってサイコーの選択肢を俺は思いついた!!」
ラッドは口が裂けんばかりの笑みを浮かべ、高々と言い放つ。
「テメエの前でテメエがいつまでたっても敵わない、大好きな大好きな立派でカッコいい兄貴を嬲り殺してやる!
そのときお前はどんな顔を浮かべるんだろうなあ!
オニイチャン、シナナイデーなんていって泣き喚くのかなあ、兄貴が死んだことを喜ぶのかなあ!
それとも目標に永遠に届かないことが分かって空っぽになっちまうのかなあ!
ヒャァハハハハハハハハハハハハハハッハハハッハハハハハッハハハハッハハハハッハハハハ!」
「貴様ァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!
殺してやる……殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるぅッ!」
相羽シンヤは、耐えられなかった。自分の根底にあるものを守る為に。
兄という絶対不可侵の像。それを汚されない為に。
それは、形こそ歪だったにせよ、確かに兄への愛情だった。
だからこそふらつく足で、一心不乱に拳を握る。
目の前の男に拳を届かせられる為に、負傷も武術も忘れてただただ一直線に突き進む。
こうして、幕引きが訪れる。
不意に、目の前の白服の男がシンヤの視界から消えた。
……それは、先刻と同じく、潰れた右目の視界にラッドが回りこんだためだった。
冷静なままでいれば、ラッドの挑発さえなければ、同じ手は食わなかったろう。
しかしそれを考えるのは泡沫の夢だ。
本能的にラッドの位置を察知し、シンヤは振り向く。
そして見る。
あまりにも無慈悲に、所々裂けた血染めの拳が顔面に迫ってきているのを。
それが、相羽シンヤが意識を失う前に見た最後の光景だった。
◇ ◇ ◇
高嶺清麿はエントランスにいた。
ここならば見渡しもよく、また、逃げる際にもいくつか方向が考えられるからだ。
隠れる場所も複数ある。
幾つも並ぶ長椅子の一つに腰を落ち着け、清麿は思考に沈み込む。
「……あれで、正しかったんだろうか」
ラッドを止めるべきではなかったか。
突然のことでどうしようもなかったとはいえ、そればかりが幾度となく脳裏に浮かぶ。
……ラッドの銃撃。奇襲じみたあれをまともに食らった以上、あの男はもうまともに動けないだろう。
それを止められなかった時点で最早こちらから介入する余地はないのだ。
既に相手を傷つけている以上、話し合いにさえ持ち込めない。
殺すか殺されるかの展開になり、そしておそらくあの男は……
「……くそ。今更俺は何を言ってるんだ」
もう、40人以上の命を見捨てているのだ。殺し合いに極力関わらず、放っておくと決めた時点で。
目の前で起きようが、自分の実力の及ばない時点で今までと何も変わらない。
……そう、自分の実力でどうにかできたとは思えない。
そのことが清麿を苛み――――そして、無力感を味わわせている。
「……終わったぜ、キヨマロ。どーよ、景気は?」
「……ラッド」
うつむいた顔を上げ、通路のほうを見てみれば、そこには白服を真っ赤に染めたラッドが楽しそうに笑っていた。
……それだけで、何がどうなったかを嫌というほど思い知らされる。
「……ああ、最悪だ。それとありがとう、ラッド」
搾り出すように、清麿はどうにか返答する。
助けてもらったのは事実なのだ。礼だけは言っておいた方がいいだろう。
「へえ……何も言わねえのか?」
「……助けてもらったのは事実だからな。それに、もう何十人も見殺しにしているんだ」
「今更……って訳か? それにしちゃあ顔色が優れねえな、無理する必要はねえぜ」
「…………」
沈黙する。
殺戮を終えたばかりというのにこちらに心遣いするラッドに薄ら寒いものを覚えながらも、清麿は思考を切り替える。
……今は一人でも戦力が欲しい。
とりあえずは合流を喜び、情報を交換しなければ。
「……何にせよ、無事で何よりだったラッド。よくここが分かったな」
「メッセージが残ってたからな。ま、お前もよく生き延びれたもんだ。
病院のどこにいるか探し回ってたら、お前が誰かに脅されてるんだもんよお。
苦労したぜ? 気付かれないように外に回りこむのはな。
相手があのシンヤくんだたぁ外から見るまで分からなかったが」
そう言って笑うラッドに頷き、互いのこれまでの経緯と情報を話し合いだす。
それは不安材料の多かった清麿にとって喜ばしいものになった。
「……なるほど、映画館にそんな集団がいるのか。確かに合流したい所ではあるけど……」
「そういうこったな。ま、とりあえずどうするかはお前に任せるぜ?」
ラッドの話を吟味する。
螺旋王に対抗する集団。それが本当なら、自分の考察は役に立てるはずだ。
……ラッドが騙されているか、もしくは自分を騙そうとしていない限り。
だが、その可能性は低いと見ていい。
まず、このゲームに乗る限りにおいては、大集団はメリットは少ない。
いずれ内部崩壊することが目に見えているからだ。
集団を構成している時点で、危険性は少ないだろう。
殺戮集団だとしても、戦闘力に欠ける自分をわざわざ消す為にラッドを派遣する必要はない。
ラッドが騙しているケースでも、殺すならとっくに殺しているだろう。
更に、ラッドはジンと自分が別行動していることを指摘した。
どうやら先方は参加者の所在地を把握する道具を保有していて、それを自分に隠す気はないらしい。
それだけの情報力があるのに自分からそれを公開するとは、人員に欠けているのも確かなようだ。
おそらく対螺旋王の集団は実際に存在していて、自分をメンバーに加えたがっているのは信頼してもいいと考える。
ならば、これからどうするか。
映画館にいる明智という人物は、出来る限り早く自分と接触したがっていると聞いている。
ラッドの持つフラップターという飛行機械を見せてもらったが、あれは2人乗り、無理をしても3人乗りが限界だろう。
ジンがこれから何人連れてくるかは分からないが、それなりの数は見積もっておくべきだ。
となると、3つのプランが考えられる。
プラン1.ラッドと共に先に映画館へ向かう。
これのメリットは自身の安全性と、先方との連携だ。病院が安全でない事は先ほどの一件で身に染みた。
集団に加われるなら、安全性は極度に高まるだろう。
こちらの考察を活かしてもらえそうな点も大きい。
そして、デメリットはジンとの連携。
置手紙などをするにせよ、完全に意思を疎通できない以上、彼との協調が困難になる。
プラン2.ラッドと共にジンの帰還を待つ。
これは、上記のプラン1とは連携に関するメリットデメリットが真逆だ。
安全性に関しては一人でいるよりは多少はマシだろうが、心もとなくはある。
だが、ジンの連れてくるメンバー次第では、対螺旋王の集団を先方とこちらの2つに分けて行動できる可能性もあるだろう。
ゲームに乗った相手に対抗するには非常に有利になる。
プラン3.ラッドに先に映画館に向かってもらい、自身はジンの帰還を待つ。
一番リスキーではあるが、見返りも大きいプランだ。
ラッドをメッセンジャーとすれば、こちらの考察などの情報を開示した上で向こうからの情報も得られる。
反面、ジンの帰還まで一人残ることになる為、安全性に一番不安が残るのもこのプランである。
上記3つ、どれを選ぶか。
顎に手を当て考えていたそのとき、ラッドが思い出したかのように呟く。
「……そうそうキヨマロ。さっき、少し気になるモン見つけたんだがよ。
少し付き合ってくれや」
「……?」
言って、ラッドは身を翻す。
どういう意図かは分からないが、どうやらついていった方がいいだろう。
これからどうするかを考えながら、清麿はラッドの向かう方向へと歩いていく。
「……ああ、それと、一つ聞いときたいんだがよ」
不意にラッドが立ち止まり、清麿のほうへ向いて一言、告げた。
「お前……仮に、自分がとんでもない力を手に入れたとして。
何でもいい、バケモノみたいな体でも、魔法みたいな能力でも、全知全能の賢さでもだ。
……それでも自分を人間と思えるか? 自分は人間以上だなんて考えたりするかもしれねえよな」
「俺は……俺たちは、人間だ。たとえどうなっても……人間をやめることなんて、出来はしない」
即答する。力を込めて、ラッドを見据えて。
無表情で相対していた殺人狂は、その応えに口元を吊り上げて一言返しただけだった。
「そうかよ」
赤いタキシードを翻し、背中を向けて、再度何処かへ向かってラッドは足を進めはじめる。
振り返らぬままの後ろ姿から、清麿の耳に呟くような声を届かせて。
「安心したぜ。テメエを殺さなくて済んだからよ」
◇ ◇ ◇
暗い闇の中に彼は漂っていた。
ここはどこだろうか、と考えるも、明確な答えは見つけられない。
ただ、ぼうっとしているのは何となく気持ちいいと思う。
きっと、何かをしようとするととても苦しい思いをすることになるのだろう。
……ふと、不意に光が見えたような気がした。
気になったのでそちらの方を向いてみると、見覚えのある姿が見えたように感じられた。
……誰だったろうか。それを、守らなければならなかった気がする。
確か、約束だ。
そうだ、兄さんとの約束だ。それを彼は思い出す。
頭が鮮明になってゆく。
痛くて苦しくて気持ち悪い。
――――だが、守らなければ、彼女を。
意識が浮上していくが……しかし、一歩とどかない。
体が起きる事を拒否しているのだ。
このまま休息しろと。苦痛に身をさらすなと。
一瞬、その甘い言葉に身を任せてもいいかと考える。
しかし、即座に脳裏に一つの顔が浮かぶ。
兄の顔だ。あの人を乗り越えるために、彼女は絶対必要なのだ。
……そうだ、彼女をあの狂人から逃がさなければ。
必死になって四肢を動かす。
だが、右手の反応がない。そういえば、吹っ飛ばされてしまったのだ。
もがく。もがく。あと少し、あと少しだ。
彼女の所へ辿り着け。
目印となるものが必要だ。
そう、彼女のことを示す記号が。
彼女の名前は、確か――――
「ゆたか……ッ!」
――――相羽シンヤは、目を覚ました。
ラダムのテッカマンとして強化された身体能力は、あれほどの打撃を受けてさえ、なお生命活動を停止する事はなかったのだ。
ずきり、という痛みと共に、右腕にとてつもない喪失感を感じる。
右目も開かず、声もかすれている。
……それでもなお、彼は未だ生き続けていた。
左腕一本でどうにか体を起こす。
辺りを見れば、すでにあの白服の男はいなかった。
「……く、そぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおッ!
必ず……ッ! 殺してやる……! 必ずだ……ッ!」
叫ぶ。内に篭った怨念の深さを、確認するがごとく。
大きく、大きく。
……胸いっぱいに空気を吸い込んで、ゆっくり吐き出すことで心を落ち着かせる。
恨みを吐き出した後、急に膨れ上がってきたのは安堵だった。
自分が生きているというその事を、深く何かに感謝したくなった。
もっとも、それは著しく彼のプライドを傷つけることでもあるのだが。
ひとまずは態勢を立て直す。
さすがにダメージを受けすぎた。ゆたかを連れ、早々にここを離脱して休める場所を探すべきだろう。
白服の男に遅れを取るようで悔しいが、彼女の事を考えればそれがベストだ。
だが、次に会った時には必ず殺す。テッカマンエビルとして。
それを、固く心に誓う。
周囲を見渡すと、自分のバッグと嘔吐した胃の内容物、そして右手がくっついたままのテッククリスタルが落ちていた。
……あの男はなぜ持ち去らなかったのだろうか。
僅かに疑問に思いながらも、今はそれどころではない。
急いでバッグとクリスタルを回収し、よろけながらもどうにか立ち上がる。
いそいで、ゆたかの元に向かわねば。
体が重い。立っただけで眩暈がする。血を失いすぎたためか。
片手しかないのでクリスタルをバッグにしまってから、ようやくドアを開け放ち、引きずるように歩き始める。
高々数十メートルが、砂漠を越えるような過酷さに感じられる。
ぼとぼとぼとぼと、右肩のあった場所から血はこぼれ続け、何度も何度も転倒する。
体がまだ、右手を失った状態での歩き方を習得していないのだ。
それでもなお、シンヤは歩き続ける。
何の為、誰の為にそこまでするのか――――シンヤ自身にも分からないまま。
そして、ようやくゆたかを寝かせた病室に辿り着く。
「……ゆたか、起きているかい」
ぎい、と扉を開き、暗い部屋の中へ倒れこむように進んでゆく。
そういえば、名前を呼んだのは初めてかもしれない。
苦笑し、ベッドに手をつきゆたかの顔を見ようとして、ようやく気付いた。
そこには誰もいない。
「……な、」
絶句したシンヤの後頭部に何かがこつんと当たった。
直感が告げる。
振り返ってはいけない……いや、もう振り向くことさえ許されないのだ。
「……おーい、どうしたよ? つかの間の安息は楽しめたか?
嬉しかったか? 悔しかったか? 悲しかったか? 怒ったか? 楽しかったか? 苦しかったか?
まあ、何にせよ……だ!」
ぐりぐりと、冷たい鉄の筒の先端が押し付けられる。
それが何かはいうまでもない。
「……畜生」
「お前は絶対にこう考えたはずだ!!
あの虫ケラ野郎は去った! 俺はもう安心だ!
次会った時は絶対に俺様の圧倒的な力で殺してやるから覚悟しろ!! ってなあ!
それが全部が全部、俺の掌の上で踊っていただけと知った気分はどうよ!?」
シンヤは、真の絶望というものをまざまざと思い知る。
……ここまで残酷なことがあるものか、と。
目に映るのは、背後から差し込む光がベッドに映し出す一つの影だけ。
その手には長大な筒が握られ、自分の脳天に突きつけられていた。
「……畜生……っ」
「ここに至ってもまだ自分は誰よりも強い! だから死なない!
なんて考えてるんだよなあ、テメエみたいなヤツは! ヒャアハハハハハハハハハハハハッ!!
楽しいよなあ楽しいよなあ! テメエの今までの人生全ては!
今、ここで! 俺に殺されるためだけにあったわけだ!!」
そして悟る。自分がこの後どうなるか、を。
最早悔しさも怒りもない。プライドすら原形をとどめていない。
……思い浮かぶのは、自分の近くにいた人々の事だけ。
「……畜生、ゆたか……俺は……ッ!」
「ああ安心しろや、ここにいた嬢ちゃんは俺の仲間が面倒を見ているからなあ!
テメエみたいなイカレたバケモノと行動できるくらい肝が据わってんなら上出来だ、
殺すつもりはねえからよぉ!!
それと、テメエの兄貴に関してだが」
ああ、兄もこいつに殺されてしまうのだろうか。
それだけは許せない。そんな事はあるはずはない。
兄は自分よりも優れているのだ。こんな狂人に負けるはずがない。
あの人なら絶対に勝ち抜けるはずだ。
「……兄さん……」
「やっぱりテメエから殺すことにしてやる。俺はテメエの兄貴の性格を知ってるわけじゃねえからな。
まあ、テメエの兄貴も自分が死なねえ……なんて思い上がってるんならさっさとそっちに送ってやるからよぉ、感謝しろよ?
そうじゃないなら分からねえが、未来の事なんて知ったこっちゃないからな」
ここに至ってシンヤはようやく気付く。
自分にとって、兄がどのような存在だったのかを。
……もう、彼に出来る事は殆どない。
出来るのはただ、兄がこの戦いを乗り越えることを思い浮かべるだけだった。
「……畜生、畜生ッ! タカヤ兄さんっ、俺は……俺は、兄さんの事を……ッ」
「……つーわけで、だ。そんじゃま、とりあえずはよぉ、」
「ちぃぃいいいぃくしょぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおッ!!
兄ぃぃぃいいいいいいいぃぃさぁぁぁあああああぁぁぁあああぁあぁぁぁあああああ、」
「――――死んどけ」
&color(red){【相羽シンヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード 死亡】}
【D-6・総合病院入院病棟/一日目/夜】
【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:ハイテンション、疲労(小)、右肋骨2本骨折、両拳に裂傷(戦闘には問題なし)、螺旋力増大中?
[装備]:超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾3/5)
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、ファイティングナイフ、フラップター@天空の城ラピュタ、テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
ニードルガン(残弾10/10)@コードギアス 反逆のルルーシュ 、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)
[思考]
基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
0:ヒャアハハハハハハハハハハハハハハハッ! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!
1:とりあえず清麿の意向次第。望むなら明智たちの所へ連れて行く。
2:東方不敗と鴇羽舞衣の所に戻ってぶち殺す。
3:清麿の邪魔者=ゲームに乗った参加者を重点的に殺す。
4:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す。
5:覚悟のある人間ばかりなので面白くないから螺旋王もぶっ殺す。
6:シンヤの兄であるDボゥイに興味。死なないと思っているようならブチ殺す。
※フラップターの操縦ができるようになりました。
※ソルテッカマンを着込む際、ロイドの荷物を預かりました。
※明智たちと友好関係を築きました。その際、ゲーム内で出会った人間の詳細をチェックしています。
※テンションが上がり続けると何かに目覚めそうな予感がしています。
◇ ◇ ◇
「……どうするかな、本当」
清麿は思い切り溜息をつき、愚痴を吐く。
これからの行動についてもあるが、今何よりの悩みの種になっているのは別のものだった。
その、問題そのもののほうに目を向ける。
「……ん……おねえ、ちゃん……」
自分の背にいるのは名前も知らない少女。
病棟の一室でラッドが見つけた彼女は、自分が先刻院内を回っていた時にはいなかった人物だ。
……つまりは。
「……さっきのヤツの、仲間だったってこと、だよな……」
彼女の所に案内するなり、ラッドは野暮用だといって自分を追い出した。
とりあえず、今はエントランスに向かっている最中だ。
……彼女は何者なのか。先ほどの男を殺す必要はあったのか。
彼女が起きた時にどう説明すればいいのか。眠っている間にあの男は死んだなどと自分は言えるのだろうか。
放っておく訳にもいかないが、しかし、自分達が恨まれるのは十分ありえるだろう。
……話を聞いてくれればいいのだが。問題は数多い。
何にせよ、これからの行動は彼女も含めて検討しなければならないだろう。
彼女の安全を考えるなら、今のメンバー全員で映画館に向かった方がいい。
彼女を一人にする訳にはいかないし、かといって自分と二人きりでも守れる保証はない。
ラッドに映画館まで送ってもらう手もあるが、仲間を殺したラッドに彼女が逆上する危険性もある。
しかし、ジンを放っておく訳にもいかないのだ。
清麿は考える。ラッドの言葉に従うようだが、彼女は自分が面倒を見なければならないだろう。
彼に任せるには不安要素が大きすぎる。
その上で、先ほどの3つのプランのどれを選択するか。
螺旋力に関しても、疑問は山ほどある。
先刻のラッドの言葉。
どれだけ力を得ようと『人間』であるというその内容に、何か引っかかるものを覚えたが、それ以上の答えは得られなかった。
悩みは、尽きない。
その背中で彼女は夢を見る。
「……Dボゥイさん、シンヤ、さん……みんな、一緒に……」
もう、決して叶う事のない夢を。
……未だ、気絶したままの彼女が起きる兆しはない。
眠り姫は、目覚めない。
【D-6/総合病院エントランス/1日目/夜】
【高嶺清麿@金色のガッシュベル!!】
[状態]:右耳欠損(ガーゼで処置済)、疲労(中)、精神疲労(中)、苦悩
[装備]:イングラムM10(9mmパラベラム弾22/32)
[道具]:支給品一式(水ボトルの1/2消費、おにぎり4つ消費)、殺し合いについての考察をまとめたメモ
イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!
無限エネルギー装置@サイボーグクロちゃん、清麿の右耳
首輪(エド)、首輪(エリオ/解体済み)、首輪(アニタ)、清麿のネームシール
各種治療薬、各種治療器具、各種毒物、各種毒ガス原料、各種爆発物原料、使い捨て手術用メス×14
[思考]
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
0:背中の少女やラッド、ジンを含めて今後の行動を考える。
1:プラン1~3のどの形でもいいから明智たちと接触する。
2:脱出方法の研究をする(螺旋力、首輪、螺旋王、空間そのものについてなど包括的に)
3:周辺で起こっている殺し合いには、極力、関わらない(有用な情報が得られそうな場合は例外)
4:研究に必要な情報収集。とくに螺旋力について知りたい。
5:螺旋王に挑むための仲間(ガッシュ等)を集める。その過程で出る犠牲者は極力減らしたい。
[備考]
※首輪のネジを隠していたネームシールが剥がされ、またほんの少しだけネジが回っています。
※ラッドの言った『人間』というキーワードに何か引っかかるものがあるようです。
[清麿の考察]
※監視について
監視されていることは確実。方法は監視カメラのような原始的なものではなく、螺旋王の能力かオーバーテクノロジーによるもの。
参加者が監視に気づくかどうかは螺旋王にとって大事ではない。むしろそれを含め試されている可能性アリ。
※螺旋王の真の目的について
螺旋王の目的は、道楽ではない。趣旨は殺し合いではなく実験、もしくは別のなにか(各種仮説を参考)。
ゆえに、参加者の無為な死を望みはしない。首輪による爆破や、反抗分子への粛清も、よほどのことがない限りありえない。
【仮説①】【仮説②】【仮説③】をメモにまとめています。
※首輪について
螺旋状に編まれたケーブルは導火線。三つの謎の黒球は、どれか一つが爆弾。また、清麿の理解が追いつく機械ではなくオーバーテクノロジーによるもの。
ネジを回すと、螺旋王のメッセージ付きで電流が流れる。しかし、死に至るレベルではない。
上記のことから、螺旋王にとって首輪は単なる拘束器具ではなく、参加者を試す道具の一つであると推測。
螺旋王からの遠隔爆破の危険性は(たとえこちらが大々的に反逆を企てたとしても)限りなく低い。
※螺旋力について
………………………アルェー?
【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:気絶、疲労(中)、心労(大)
[装備]:COLT M16A1/M203@現実(20/20)(0/1)、コアドリル@天元突破グレンラガン
[道具]:デイバック、支給品一式、糸色望の旅立ちセット@さよなら絶望先生[遺書用の封筒が欠損]
鴇羽舞衣のマフラー@舞-HiME、M16アサルトライフル用予備弾x20(5.56mm NATO弾)
M203グレネードランチャー用予備弾(榴弾x6、WP発煙弾x2、照明弾x2、催涙弾x2)
[思考]
基本:元の日常へと戻れるようがんばってみる
0: ……Dボゥイさん…………シンヤさん……。
1:Dボゥイと合流する
2:シンヤとの約束を守り、彼が自分から参加者を襲わないように気をつける
3:当面はシンヤと行動する
[備考]
※コアドリルがただのアクセサリーではないということに気がつきました
※今のところシンヤとの約束を破るつもりはありません(シンヤの事を他の参加者に必要以上は言わない、テッククリスタルを持つ参加者に譲ってくれるように交渉する)
※螺旋力覚醒
◇ ◇ ◇
暗い、暗い闇の中。
生ける者は立ち去り、何一つ動くものの無くなった空間に、蠢く影が一つ現れる。
部屋の真ん中で倒れている頭と右腕のない死体から這い出てきた“彼”は、白い拳大の蟲のような姿形をしていた。
――――“彼”は考える。
新たなる宿主を得る必要があると。
――――“彼”は確認する。
自分は誇り高きラダムの本体であると。
――――“彼”は知っている。
今、自分の元の宿主も含め、いくつもの人間が殺しあっていると。
――――“彼”はほくそ笑む。
これは、優秀な肉体を得る絶好の機会であると。
――――“彼”は把握する。
螺旋王とやらの技術は、非常に高度なものであると。
――――“彼”は推測する。
殺し合いが目的ならば、この会場のいずこかに自分達の用いるものと同じテックシステムがあるのではないかと。
――――“彼”は計画する。
優秀な肉体を用いて、最高のテッカマンを創造することを。
――――“彼”は切望する。
最高のテッカマンの力で、螺旋王の技術を全てラダムに持ち帰ることを。
そうして“彼”は動き出す。
ひとまずの、仮の宿主を得る為に。
幸い、ここは病院である。
先ほど前の宿主を殺した男達でもいいが、焦る必要は特にない。
弱った人間が勝手に集まってきてくれる実に都合がいい場所なのだから。
抵抗力が落ちていたり、無抵抗でありさえすれば、その人間に寄生することは難しくはないだろう。
――――“彼”は徘徊し始める。
夜の病院を、己の肉体を手に入れるために。
【ラダム@宇宙の騎士テッカマンブレード】
知性のみを高度に発達させた虫状の知的生命体。
知性のみを高度に発達させたため、肉体そのものは非常に脆弱であり、専ら他の生命体の体内に寄生している。
寄生された生命体は元々抱えていた性格が攻撃的な方向で極端に増幅されているようである(シンヤのタカヤに対するコンプレックスなど)。
※ラダムの行動範囲は基本的に病院内です。寄生の相手は、無抵抗だったり衰弱したりしているキャラクターです。
※病院内の薬物や危険な道具は殆ど清麿に回収されています。
※シンヤの死体は頭部と右腕が消滅した状態です。首輪や荷物は持ち去られています。
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|211:[[The Incarnation of Devil(前編)]]|ラッド・ルッソ|222:[[失楽園(前編)]]|
|211:[[The Incarnation of Devil(前編)]]|高嶺清麿|222:[[失楽園(前編)]]|
|211:[[The Incarnation of Devil(前編)]]|&color(red){相羽シンヤ}| |
|211:[[The Incarnation of Devil(前編)]]|小早川ゆたか|222:[[失楽園(前編)]]|
||ラダム|228:[[刻無―キズナ― 零 完全版]]|
**The Incarnation of Devil(後編)◆wYjszMXgAo
「……ら、ラッド!?」
突然の闖入に、清麿は驚く。
全く予想しない事態。
いきなり目の前の男の腕が吹っ飛んだかと思うと、ラッドが一連の流れに割り込んできたのだ。
清麿でもどうすればいいのか、先の展開が全く読めなかった。
慌てる清麿に、しかしラッドは落ち着いて清麿に行動を示す。
「……さっさと行って隠れてろ、キヨマロ。
こいつの目的は分かってんだろ?
せっかく隙作ってやったんだから、それを上手く使えっつーの」
言いながら、窓枠を乗り越えて中に入ってくる。
ここでようやく清麿は、自分だけに注意が引き付けられている最中、
ラッドがシンヤの腕を窓ごとぶち抜いたことを理解できた。
……言いたい事はある。
ラッドに気付かず、こんな蛮行を止められなかった自分も腹立たしい。
だが、今はラッドのほうが正論だ。
シンヤが呆然としている隙に、180度向きを変えて思い切り走り出す。
一心不乱に、後ろを振り返ることもなく。
「……な、待て……ッ!」
激痛と猛烈な吐き気。そして、扉の音で我に返ったシンヤは、しかし動きを止める。
ここで背後を向けば、確実にラッドに背中を撃たれるだろう。
まずは、この男を排除しなければならない。
常人ではショック死してもおかしくない負傷だが、シンヤはラダムのテッカマンだ。
腕一本を失って体のバランスを崩した上、失血の症状もでているが、それでも既に戦闘すら可能な状態まで落ち着いていた。
「……く、貴様ぁああああああああああッ! 虫ケラごときが、よくもやってくれたなぁああああああああ!!」
「おうおうおうおう、いい感じにブッチ切れてくれてるねぇ相羽シンヤくんよぉ。
屈辱かい、屈辱かぁい? そりゃあそうだよな、人間如きに腕一本ぶっ飛ばされたんだもんなあ!!
いいねェ、もっともっと惨めに喚いて見せてみろよ、ヒャアハハハハハハハハハ!
分かってんのか? 今のは頭を狙った射線上にキヨマロがいたから腕を消し飛ばしてやったんだぜ?
つーまーりーだ! この俺が仲間思いの優しい優しぃ~い人間じゃあなかったら、
今頃テメエの頭は完ッ全に消滅してたんだぜ、感謝しろよ? しーてーみーせーろーよー」
「……俺は、テッカマンエビルだッ! 相羽シンヤと……、呼ぶんじゃないッ!
虫ケラがぁぁぁああああああああああッ!!」
激情するシンヤ。
その脳裏に浮かぶ言葉はただ一つ。
殺す。
目の前の白服男を、何としても殺す。
圧倒的な力の下に、目の前の男を骨一つ塵芥一つ残さずこの世から抹消する。
何故、白服男が自分の名前を知っているのかといった疑問や、右肩の激痛すら思考に入れず、ただただ消滅させることのみを考えて動く。
シンヤが床に落ちたテッククリスタルに左手を伸ばす。
これを手にし、テッカマンエビルになりさえすれば勝利は揺るがない。
いつものシンヤなら、たとえラッドに銃撃されていたとしても十分こなせる動作だ。
しかし、片手を失ったことによる身体バランスの変化、そして、奇しくもクレア・スタンフィールドによって傷付けられた左腕の動きの悪さが、その動作を僅かに遅らせる。
結果。
テッククリスタルとシンヤの左手の間に、ファイティングナイフが突き立てられた。
ラッドが、クリスタルを掴むのを妨害するために投擲したのだ。
僅か数十センチのついたてはしかし、シンヤがクリスタルを手にするのを防ぐのには十分すぎる。
同時。ラッドは既に、シンヤへの追撃を加えるべく動き出していた。
……不運なのは、ラッドがモロトフの変身を見たことで、テッククリスタルの作用を警戒していたこと。
そして、鴇羽舞衣が操るソルテッカマンとの対峙により、テッカマンの危険性を多少なりとも体験していたことだ。
故に、先刻も真っ先にクリスタルを持つ右手を狙い、今も最初からクリスタルを手にさせないことを念頭に行動し続けている。
……この状況となるに至って。不運は他にも多々ある。
ラッドが超電導ライフルを手に入れたこと。
既に一戦をこなしたことで、ラッドがシンヤに殺意を抱いていたこと。
明智とねねねとの接触により、ラッドがシンヤの情報を得ていたこと。
クレアとの戦闘により、シンヤが片手にハンデを負っていたこと。
小早川ゆたかが清麿とシンヤの邂逅に居合わせなかったこと。
こうした要因が全て重なった結果として今がある。
要するに……本当に、不運だったとしか言いようがなかった。
クリスタルの回収を阻まれ、刹那の時間でシンヤは思考する。
このままクリスタルを回収すべきか、それとも迎撃すべきか。
……シンヤはクリスタルの回収を選択した。
どうせわずかな時間だからと、虫ケラのほんの数発の攻撃など、耐えられない筈がないと。
ここで迎撃をしていたら、あるいは多少展開が変わったかもしれない。
しかし、違う可能性を論ずることに意味はない。
それは、既に失われた半数以上の人々がもし生きていたらと論ずるのと同じ様なものでしかないのである。
テッカマンの素体となったものは、人間形態でも飛躍的に身体能力が増加する。
それは防御能力においても同様であり、ビルから落ちた程度ではなんともないほどに強化されているのだ。
……だが、人体には鍛えようのない部位が存在する。
ライフルを放り出し、クリスタルを回収しようとするシンヤの懐に飛び込んだラッドは、そのまま握った拳をカチ上げた。
強く、強く振りぬきながら。
「お前よぉ、人間サマの力をナメただろ?」
――――アッパーカット。
アゴに引っ掛けるように打ち出されたそれは、単純ながらいかなる防御も無視して脳を直接揺らすことを可能とする。
シンヤの首が、ごきり、と嫌な音を立てて天を向く。
先の戦闘で噛み合わせの悪くなった口が下から打ち付けられ、歯肉からは再度出血し始めた。
「がは……っ!」
……脳震盪。
衝撃が頭蓋を通り抜け、豆腐のような中身をぐるんぐるんと揺らしてゆく。
どんなに肉体が強くとも、脳そのものを鍛える事はできはしない。
ただの一撃でシンヤは肉体の制御を失う。
足下がおぼつかず、猛烈な吐き気に見舞われた。
バランスを崩したシンヤの体は崩れそうになる。
だが、ラッドはそれを許さない。
「お前、ボクシングはやったことあるか、よォッ!」
中指一本拳による右目へのフック。
ぐちゅり。
突き出された指の関節を押し込まれ、シンヤの右半分の視界は永遠に暗闇に染まることになった。
目の周囲の骨ごと砕かれ、網膜剥離どころか、下手をすれば水晶体が眼球の内側から滲み出てきている。
「なんでもよぉ、古ぅーいギリシアのオリンピックの頃からあったらしい、ぜ!!」
顔面の真中、人中を射抜く左ストレート。
形容しようのない音と共に鼻が潰れた。
大量の鼻血が胸部まで噴出し、喉や口の中まで大量の血が流れ込む。
軟骨はひしゃげ、もう二度と元の形には戻らないだろう。
「ま、俺の弟分、の! グラハムって、ヤツの! 受け売りなんだが、なあッ!!」
胴体部への右左右の三連打。
肝臓が悲鳴をあげ、肋骨の何本かは軽く持っていかれる。
それでも、テッカマンとして改造された体は気絶することさえ許してくれない。
大量に血の混じった吐瀉物を撒き散らす。
しかし、それ故にシンヤはまだ活動できる。
連打の分だけ今の攻撃は軽かった。
……好機と見て、シンヤは攻勢に出ることを選択する。
体は動く。満足に動くわけではないが、それでも常人よりも遥かに速く。
「はぁぁああああああああああああッ!!」
震脚を一歩。
右脚を軸として、重心を低くしたミドルキックを放つ。
武術の嗜みのあるシンヤだからこそ可能な、当たれば軽く人間を潰せる一撃だ。
そして、回避は不能。
鎌のように周囲を刈り取る軌道は、いかなる動きでも逃れることはできない。
そのはずだった。
「……へ、残念賞だったなぁ」
「……ッ!」
確かに胴体に当たった。
当たったが……しかし、その効果の程は期待には到底満たないものだった。
良くても肋骨を1、2本叩き折ったのみ。
ラッドの余裕の残る表情を見るに、それすら大した効果はないだろう。
ラッドは回し蹴りを放った瞬間、シンヤの右側面に飛び込んできたのだ。
……右手を失い、更に右の視界を完全に失っているシンヤには、有効打を与えるには難しすぎた。
否、最初からラッドはそれを狙って右半身だけに集中して攻撃を入れていたのだ。
失血や体のバランスの変化、肝臓への打撃で力がまともに入らない状態で命中させることができたことはむしろ、
シンヤの体術の優秀さを示しているとさえいえるだろう。
狂気はまだまだ終わらない。
「んで、何が言いたいかっつーと、だ!」
回りこんだ先の目の前。
肩の付け根から先を失った、その傷口にラッドは拳を抉り込む。
剥き出しになった骨によって、自分の拳が傷つくのも構わずに。
何発も、何発も。
「ぎ、がァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッ……!」
ぶちゅりぐちゅぐちゅぷちじゅぶっぐちゃぐちぶしゃっ。
パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。
パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。パンチ。
一撃のたびにインパクトした部位から鮮血と肉片が飛び散っていく。
「人間はなあ! ずっと! 昔から! そうやって! 力を! 手に入れて! きたんだよ!
人間やめて! 手に入れた力で! 自分が! 無敵だなんて! 思ってんじゃねえ!
自分が! 死ぬなんて! 思ってねぇだろが! テメエらはよォッ!」
いつの間にか、ラッドの拳は傷口を抉るだけでなく、全身を満遍なく嬲るようになっていた。
顔も、手も、胸も、腰も、鳩尾も、間接も、肩も、喉も。
ひたすらひたすらラッドは、ひとつひとつ丁寧に、殺意という心を込めて拳をプレゼントしていく。
「どうよどうだよ今の気分はよ! テメエがくだらねえと、虫ケラって思っていた人間如きに嬲られるのはよぉッ!
俺は楽しい、楽しいぜ!? こんな楽しい事が他にあるかよ、ひゃぁはははははは!!
何でテメエは笑ってないんだよ、笑えよ無茶苦茶愉快なんだからよお!
おいおいおいおいまずいまずいぜ? 何か目覚めちまいそうだよ妙な力が湧き出てきそうだよおいおいおいおい!
この調子で何人かぶっ殺せばテンションのゲージマックス越えてどうなっちまうんだろうなあ俺!
滅べ! 滅べ! 滅べ滅べ滅べ滅べっ! 何もかも無くなっちまえ! ハァッハハハハハハハハ!!」
高笑いと共に、ラッドはとどめとばかりにシンヤのこめかみに回転を思い切り加えたフックを叩き込む。
これもまた、脳を揺らす一撃だ。
……そこでようやく、ラッドのパンチの雨は降り止んだ。
真横に吹っ飛ばされ、倒れこんだシンヤの上半身は、もはや拳を浴びていない部位は殆どない状態だった。
それでも。
顔は膨れ上がり、歯は所々欠け、あちこちがうっ血しているにもかかわらず、シンヤはゆっくりと、息を乱しながら立ち上がろうとする。
ひゅう、ひゅうと声にならない声をあげ、一つ残った左目でラッドを見据え、二本の脚でしっかり地面を踏みしめる。
「……すげえな。まだ立ち上がれんのか、ありえねえだろ」
ラッドは心底感嘆する。
いくら強化された人間とは言え、あそこまで打撃を叩き込まれてもなお立ち上がれる身体能力にもそうだが……
それ以上に、それだけの苦痛を受けてもなお立ち上がれるその精神力に。
痛覚というのは身体の異常を感知するシグナルであり、改造されてもそれを消すような処置はおそらくされていないだろう。
にもかかわらず、シンヤはいまだ立ち上がり、少しも覇気は衰えない。
それは彼の信念の強さによるものなのか。
……違う。ラッドは知っている。
明智たちとの情報交換で得た、シンヤの情報を。
(――――妄執か、くだらねえ)
……兄への劣等感。その経緯。
リストに細かく刻まれた出来事を、ラッドは思い出す。
(……使えるな)
くっくっと歪な笑みを湛え、ラッドはやれやれというようにシンヤと自身の血で真っ赤に染まった手を体の両側に突き出し、シンヤの芯を叩き折る言葉を放ち始めた。
紛れもない喜色を浮かべて。
「相羽シンヤくんよぉ、結構すげえのな、お前。
俺結構感動しちまったよ」
「…………」
「あたりまえっつー顔だな。ヒャハハハハハ、こりゃあいい!
お前、まだ自分が俺に負けるはずねえとか思ってるだろ!」
「……ラダム、の、テッカ、マンが、貴様ら虫ケラ、ごときに……ッ」
シンヤから言葉が返ってきたことに、ラッドは軽くだが今一度驚く。
喉も潰したはずが、回復速度が思ったよりも速い。
しかし、その事はラッドにとって
(……都合がイイよなあ、ヒャハハハハ)
「へ……言うねえ。まあいい、話の続きだ。
んで、だ。心の優しい俺は、お前を殺すのはどうかと思ったのよ。
このまま見逃してやろうかってなあ!!」
「きさ……まァァァァッ!!」
(いいねえいいねえ、もっともっと怒って屈辱を感じてみろよ、相羽シンヤくんよ!)
「しかしだ! このまま見逃したんじゃあ俺の殺意ゲージが治まらねえ!
そこでだ、両方にとってサイコーの選択肢を俺は思いついた!!」
ラッドは口が裂けんばかりの笑みを浮かべ、高々と言い放つ。
「テメエの前でテメエがいつまでたっても敵わない、大好きな大好きな立派でカッコいい兄貴を嬲り殺してやる!
そのときお前はどんな顔を浮かべるんだろうなあ!
オニイチャン、シナナイデーなんていって泣き喚くのかなあ、兄貴が死んだことを喜ぶのかなあ!
それとも目標に永遠に届かないことが分かって空っぽになっちまうのかなあ!
ヒャァハハハハハハハハハハハハハハッハハハッハハハハハッハハハハッハハハハッハハハハ!」
「貴様ァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!
殺してやる……殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるぅッ!」
相羽シンヤは、耐えられなかった。自分の根底にあるものを守る為に。
兄という絶対不可侵の像。それを汚されない為に。
それは、形こそ歪だったにせよ、確かに兄への愛情だった。
だからこそふらつく足で、一心不乱に拳を握る。
目の前の男に拳を届かせられる為に、負傷も武術も忘れてただただ一直線に突き進む。
こうして、幕引きが訪れる。
不意に、目の前の白服の男がシンヤの視界から消えた。
……それは、先刻と同じく、潰れた右目の視界にラッドが回りこんだためだった。
冷静なままでいれば、ラッドの挑発さえなければ、同じ手は食わなかったろう。
しかしそれを考えるのは泡沫の夢だ。
本能的にラッドの位置を察知し、シンヤは振り向く。
そして見る。
あまりにも無慈悲に、所々裂けた血染めの拳が顔面に迫ってきているのを。
それが、相羽シンヤが意識を失う前に見た最後の光景だった。
◇ ◇ ◇
高嶺清麿はエントランスにいた。
ここならば見渡しもよく、また、逃げる際にもいくつか方向が考えられるからだ。
隠れる場所も複数ある。
幾つも並ぶ長椅子の一つに腰を落ち着け、清麿は思考に沈み込む。
「……あれで、正しかったんだろうか」
ラッドを止めるべきではなかったか。
突然のことでどうしようもなかったとはいえ、そればかりが幾度となく脳裏に浮かぶ。
……ラッドの銃撃。奇襲じみたあれをまともに食らった以上、あの男はもうまともに動けないだろう。
それを止められなかった時点で最早こちらから介入する余地はないのだ。
既に相手を傷つけている以上、話し合いにさえ持ち込めない。
殺すか殺されるかの展開になり、そしておそらくあの男は……
「……くそ。今更俺は何を言ってるんだ」
もう、40人以上の命を見捨てているのだ。殺し合いに極力関わらず、放っておくと決めた時点で。
目の前で起きようが、自分の実力の及ばない時点で今までと何も変わらない。
……そう、自分の実力でどうにかできたとは思えない。
そのことが清麿を苛み――――そして、無力感を味わわせている。
「……終わったぜ、キヨマロ。どーよ、景気は?」
「……ラッド」
うつむいた顔を上げ、通路のほうを見てみれば、そこには白服を真っ赤に染めたラッドが楽しそうに笑っていた。
……それだけで、何がどうなったかを嫌というほど思い知らされる。
「……ああ、最悪だ。それとありがとう、ラッド」
搾り出すように、清麿はどうにか返答する。
助けてもらったのは事実なのだ。礼だけは言っておいた方がいいだろう。
「へえ……何も言わねえのか?」
「……助けてもらったのは事実だからな。それに、もう何十人も見殺しにしているんだ」
「今更……って訳か? それにしちゃあ顔色が優れねえな、無理する必要はねえぜ」
「…………」
沈黙する。
殺戮を終えたばかりというのにこちらに心遣いするラッドに薄ら寒いものを覚えながらも、清麿は思考を切り替える。
……今は一人でも戦力が欲しい。
とりあえずは合流を喜び、情報を交換しなければ。
「……何にせよ、無事で何よりだったラッド。よくここが分かったな」
「メッセージが残ってたからな。ま、お前もよく生き延びれたもんだ。
病院のどこにいるか探し回ってたら、お前が誰かに脅されてるんだもんよお。
苦労したぜ? 気付かれないように外に回りこむのはな。
相手があのシンヤくんだたぁ外から見るまで分からなかったが」
そう言って笑うラッドに頷き、互いのこれまでの経緯と情報を話し合いだす。
それは不安材料の多かった清麿にとって喜ばしいものになった。
「……なるほど、映画館にそんな集団がいるのか。確かに合流したい所ではあるけど……」
「そういうこったな。ま、とりあえずどうするかはお前に任せるぜ?」
ラッドの話を吟味する。
螺旋王に対抗する集団。それが本当なら、自分の考察は役に立てるはずだ。
……ラッドが騙されているか、もしくは自分を騙そうとしていない限り。
だが、その可能性は低いと見ていい。
まず、このゲームに乗る限りにおいては、大集団はメリットは少ない。
いずれ内部崩壊することが目に見えているからだ。
集団を構成している時点で、危険性は少ないだろう。
殺戮集団だとしても、戦闘力に欠ける自分をわざわざ消す為にラッドを派遣する必要はない。
ラッドが騙しているケースでも、殺すならとっくに殺しているだろう。
更に、ラッドはジンと自分が別行動していることを指摘した。
どうやら先方は参加者の所在地を把握する道具を保有していて、それを自分に隠す気はないらしい。
それだけの情報力があるのに自分からそれを公開するとは、人員に欠けているのも確かなようだ。
おそらく対螺旋王の集団は実際に存在していて、自分をメンバーに加えたがっているのは信頼してもいいと考える。
ならば、これからどうするか。
映画館にいる明智という人物は、出来る限り早く自分と接触したがっていると聞いている。
ラッドの持つフラップターという飛行機械を見せてもらったが、あれは2人乗り、無理をしても3人乗りが限界だろう。
ジンがこれから何人連れてくるかは分からないが、それなりの数は見積もっておくべきだ。
となると、3つのプランが考えられる。
プラン1.ラッドと共に先に映画館へ向かう。
これのメリットは自身の安全性と、先方との連携だ。病院が安全でない事は先ほどの一件で身に染みた。
集団に加われるなら、安全性は極度に高まるだろう。
こちらの考察を活かしてもらえそうな点も大きい。
そして、デメリットはジンとの連携。
置手紙などをするにせよ、完全に意思を疎通できない以上、彼との協調が困難になる。
プラン2.ラッドと共にジンの帰還を待つ。
これは、上記のプラン1とは連携に関するメリットデメリットが真逆だ。
安全性に関しては一人でいるよりは多少はマシだろうが、心もとなくはある。
だが、ジンの連れてくるメンバー次第では、対螺旋王の集団を先方とこちらの2つに分けて行動できる可能性もあるだろう。
ゲームに乗った相手に対抗するには非常に有利になる。
プラン3.ラッドに先に映画館に向かってもらい、自身はジンの帰還を待つ。
一番リスキーではあるが、見返りも大きいプランだ。
ラッドをメッセンジャーとすれば、こちらの考察などの情報を開示した上で向こうからの情報も得られる。
反面、ジンの帰還まで一人残ることになる為、安全性に一番不安が残るのもこのプランである。
上記3つ、どれを選ぶか。
顎に手を当て考えていたそのとき、ラッドが思い出したかのように呟く。
「……そうそうキヨマロ。さっき、少し気になるモン見つけたんだがよ。
少し付き合ってくれや」
「……?」
言って、ラッドは身を翻す。
どういう意図かは分からないが、どうやらついていった方がいいだろう。
これからどうするかを考えながら、清麿はラッドの向かう方向へと歩いていく。
「……ああ、それと、一つ聞いときたいんだがよ」
不意にラッドが立ち止まり、清麿のほうへ向いて一言、告げた。
「お前……仮に、自分がとんでもない力を手に入れたとして。
何でもいい、バケモノみたいな体でも、魔法みたいな能力でも、全知全能の賢さでもだ。
……それでも自分を人間と思えるか? 自分は人間以上だなんて考えたりするかもしれねえよな」
「俺は……俺たちは、人間だ。たとえどうなっても……人間をやめることなんて、出来はしない」
即答する。力を込めて、ラッドを見据えて。
無表情で相対していた殺人狂は、その応えに口元を吊り上げて一言返しただけだった。
「そうかよ」
赤いタキシードを翻し、背中を向けて、再度何処かへ向かってラッドは足を進めはじめる。
振り返らぬままの後ろ姿から、清麿の耳に呟くような声を届かせて。
「安心したぜ。テメエを殺さなくて済んだからよ」
◇ ◇ ◇
暗い闇の中に彼は漂っていた。
ここはどこだろうか、と考えるも、明確な答えは見つけられない。
ただ、ぼうっとしているのは何となく気持ちいいと思う。
きっと、何かをしようとするととても苦しい思いをすることになるのだろう。
……ふと、不意に光が見えたような気がした。
気になったのでそちらの方を向いてみると、見覚えのある姿が見えたように感じられた。
……誰だったろうか。それを、守らなければならなかった気がする。
確か、約束だ。
そうだ、兄さんとの約束だ。それを彼は思い出す。
頭が鮮明になってゆく。
痛くて苦しくて気持ち悪い。
――――だが、守らなければ、彼女を。
意識が浮上していくが……しかし、一歩とどかない。
体が起きる事を拒否しているのだ。
このまま休息しろと。苦痛に身をさらすなと。
一瞬、その甘い言葉に身を任せてもいいかと考える。
しかし、即座に脳裏に一つの顔が浮かぶ。
兄の顔だ。あの人を乗り越えるために、彼女は絶対必要なのだ。
……そうだ、彼女をあの狂人から逃がさなければ。
必死になって四肢を動かす。
だが、右手の反応がない。そういえば、吹っ飛ばされてしまったのだ。
もがく。もがく。あと少し、あと少しだ。
彼女の所へ辿り着け。
目印となるものが必要だ。
そう、彼女のことを示す記号が。
彼女の名前は、確か――――
「ゆたか……ッ!」
――――相羽シンヤは、目を覚ました。
ラダムのテッカマンとして強化された身体能力は、あれほどの打撃を受けてさえ、なお生命活動を停止する事はなかったのだ。
ずきり、という痛みと共に、右腕にとてつもない喪失感を感じる。
右目も開かず、声もかすれている。
……それでもなお、彼は未だ生き続けていた。
左腕一本でどうにか体を起こす。
辺りを見れば、すでにあの白服の男はいなかった。
「……く、そぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおッ!
必ず……ッ! 殺してやる……! 必ずだ……ッ!」
叫ぶ。内に篭った怨念の深さを、確認するがごとく。
大きく、大きく。
……胸いっぱいに空気を吸い込んで、ゆっくり吐き出すことで心を落ち着かせる。
恨みを吐き出した後、急に膨れ上がってきたのは安堵だった。
自分が生きているというその事を、深く何かに感謝したくなった。
もっとも、それは著しく彼のプライドを傷つけることでもあるのだが。
ひとまずは態勢を立て直す。
さすがにダメージを受けすぎた。ゆたかを連れ、早々にここを離脱して休める場所を探すべきだろう。
白服の男に遅れを取るようで悔しいが、彼女の事を考えればそれがベストだ。
だが、次に会った時には必ず殺す。テッカマンエビルとして。
それを、固く心に誓う。
周囲を見渡すと、自分のバッグと嘔吐した胃の内容物、そして右手がくっついたままのテッククリスタルが落ちていた。
……あの男はなぜ持ち去らなかったのだろうか。
僅かに疑問に思いながらも、今はそれどころではない。
急いでバッグとクリスタルを回収し、よろけながらもどうにか立ち上がる。
いそいで、ゆたかの元に向かわねば。
体が重い。立っただけで眩暈がする。血を失いすぎたためか。
片手しかないのでクリスタルをバッグにしまってから、ようやくドアを開け放ち、引きずるように歩き始める。
高々数十メートルが、砂漠を越えるような過酷さに感じられる。
ぼとぼとぼとぼと、右肩のあった場所から血はこぼれ続け、何度も何度も転倒する。
体がまだ、右手を失った状態での歩き方を習得していないのだ。
それでもなお、シンヤは歩き続ける。
何の為、誰の為にそこまでするのか――――シンヤ自身にも分からないまま。
そして、ようやくゆたかを寝かせた病室に辿り着く。
「……ゆたか、起きているかい」
ぎい、と扉を開き、暗い部屋の中へ倒れこむように進んでゆく。
そういえば、名前を呼んだのは初めてかもしれない。
苦笑し、ベッドに手をつきゆたかの顔を見ようとして、ようやく気付いた。
そこには誰もいない。
「……な、」
絶句したシンヤの後頭部に何かがこつんと当たった。
直感が告げる。
振り返ってはいけない……いや、もう振り向くことさえ許されないのだ。
「……おーい、どうしたよ? つかの間の安息は楽しめたか?
嬉しかったか? 悔しかったか? 悲しかったか? 怒ったか? 楽しかったか? 苦しかったか?
まあ、何にせよ……だ!」
ぐりぐりと、冷たい鉄の筒の先端が押し付けられる。
それが何かはいうまでもない。
「……畜生」
「お前は絶対にこう考えたはずだ!!
あの虫ケラ野郎は去った! 俺はもう安心だ!
次会った時は絶対に俺様の圧倒的な力で殺してやるから覚悟しろ!! ってなあ!
それが全部が全部、俺の掌の上で踊っていただけと知った気分はどうよ!?」
シンヤは、真の絶望というものをまざまざと思い知る。
……ここまで残酷なことがあるものか、と。
目に映るのは、背後から差し込む光がベッドに映し出す一つの影だけ。
その手には長大な筒が握られ、自分の脳天に突きつけられていた。
「……畜生……っ」
「ここに至ってもまだ自分は誰よりも強い! だから死なない!
なんて考えてるんだよなあ、テメエみたいなヤツは! ヒャアハハハハハハハハハハハハッ!!
楽しいよなあ楽しいよなあ! テメエの今までの人生全ては!
今、ここで! 俺に殺されるためだけにあったわけだ!!」
そして悟る。自分がこの後どうなるか、を。
最早悔しさも怒りもない。プライドすら原形をとどめていない。
……思い浮かぶのは、自分の近くにいた人々の事だけ。
「……畜生、ゆたか……俺は……ッ!」
「ああ安心しろや、ここにいた嬢ちゃんは俺の仲間が面倒を見ているからなあ!
テメエみたいなイカレたバケモノと行動できるくらい肝が据わってんなら上出来だ、
殺すつもりはねえからよぉ!!
それと、テメエの兄貴に関してだが」
ああ、兄もこいつに殺されてしまうのだろうか。
それだけは許せない。そんな事はあるはずはない。
兄は自分よりも優れているのだ。こんな狂人に負けるはずがない。
あの人なら絶対に勝ち抜けるはずだ。
「……兄さん……」
「やっぱりテメエから殺すことにしてやる。俺はテメエの兄貴の性格を知ってるわけじゃねえからな。
まあ、テメエの兄貴も自分が死なねえ……なんて思い上がってるんならさっさとそっちに送ってやるからよぉ、感謝しろよ?
そうじゃないなら分からねえが、未来の事なんて知ったこっちゃないからな」
ここに至ってシンヤはようやく気付く。
自分にとって、兄がどのような存在だったのかを。
……もう、彼に出来る事は殆どない。
出来るのはただ、兄がこの戦いを乗り越えることを思い浮かべるだけだった。
「……畜生、畜生ッ! タカヤ兄さんっ、俺は……俺は、兄さんの事を……ッ」
「……つーわけで、だ。そんじゃま、とりあえずはよぉ、」
「ちぃぃいいいぃくしょぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおおおッ!!
兄ぃぃぃいいいいいいいぃぃさぁぁぁあああああぁぁぁあああぁあぁぁぁあああああ、」
「――――死んどけ」
&color(red){【相羽シンヤ@宇宙の騎士テッカマンブレード 死亡】}
【D-6・総合病院入院病棟/一日目/夜】
【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:ハイテンション、疲労(小)、右肋骨2本骨折、両拳に裂傷(戦闘には問題なし)、螺旋力増大中?
[装備]:超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾3/5)
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、ファイティングナイフ、フラップター@天空の城ラピュタ、テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
ニードルガン(残弾10/10)@コードギアス 反逆のルルーシュ 、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)
[思考]
基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
0:ヒャアハハハハハハハハハハハハハハハッ! ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!
1:とりあえず清麿の意向次第。望むなら明智たちの所へ連れて行く。
2:東方不敗と鴇羽舞衣の所に戻ってぶち殺す。
3:清麿の邪魔者=ゲームに乗った参加者を重点的に殺す。
4:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す。
5:覚悟のある人間ばかりなので面白くないから螺旋王もぶっ殺す。
6:シンヤの兄であるDボゥイに興味。死なないと思っているようならブチ殺す。
※フラップターの操縦ができるようになりました。
※ソルテッカマンを着込む際、ロイドの荷物を預かりました。
※明智たちと友好関係を築きました。その際、ゲーム内で出会った人間の詳細をチェックしています。
※テンションが上がり続けると何かに目覚めそうな予感がしています。
◇ ◇ ◇
「……どうするかな、本当」
清麿は思い切り溜息をつき、愚痴を吐く。
これからの行動についてもあるが、今何よりの悩みの種になっているのは別のものだった。
その、問題そのもののほうに目を向ける。
「……ん……おねえ、ちゃん……」
自分の背にいるのは名前も知らない少女。
病棟の一室でラッドが見つけた彼女は、自分が先刻院内を回っていた時にはいなかった人物だ。
……つまりは。
「……さっきのヤツの、仲間だったってこと、だよな……」
彼女の所に案内するなり、ラッドは野暮用だといって自分を追い出した。
とりあえず、今はエントランスに向かっている最中だ。
……彼女は何者なのか。先ほどの男を殺す必要はあったのか。
彼女が起きた時にどう説明すればいいのか。眠っている間にあの男は死んだなどと自分は言えるのだろうか。
放っておく訳にもいかないが、しかし、自分達が恨まれるのは十分ありえるだろう。
……話を聞いてくれればいいのだが。問題は数多い。
何にせよ、これからの行動は彼女も含めて検討しなければならないだろう。
彼女の安全を考えるなら、今のメンバー全員で映画館に向かった方がいい。
彼女を一人にする訳にはいかないし、かといって自分と二人きりでも守れる保証はない。
ラッドに映画館まで送ってもらう手もあるが、仲間を殺したラッドに彼女が逆上する危険性もある。
しかし、ジンを放っておく訳にもいかないのだ。
清麿は考える。ラッドの言葉に従うようだが、彼女は自分が面倒を見なければならないだろう。
彼に任せるには不安要素が大きすぎる。
その上で、先ほどの3つのプランのどれを選択するか。
螺旋力に関しても、疑問は山ほどある。
先刻のラッドの言葉。
どれだけ力を得ようと『人間』であるというその内容に、何か引っかかるものを覚えたが、それ以上の答えは得られなかった。
悩みは、尽きない。
その背中で彼女は夢を見る。
「……Dボゥイさん、シンヤ、さん……みんな、一緒に……」
もう、決して叶う事のない夢を。
……未だ、気絶したままの彼女が起きる兆しはない。
眠り姫は、目覚めない。
【D-6/総合病院エントランス/1日目/夜】
【高嶺清麿@金色のガッシュベル!!】
[状態]:右耳欠損(ガーゼで処置済)、疲労(中)、精神疲労(中)、苦悩
[装備]:イングラムM10(9mmパラベラム弾22/32)
[道具]:支給品一式(水ボトルの1/2消費、おにぎり4つ消費)、殺し合いについての考察をまとめたメモ
イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!
無限エネルギー装置@サイボーグクロちゃん、清麿の右耳
首輪(エド)、首輪(エリオ/解体済み)、首輪(アニタ)、清麿のネームシール
各種治療薬、各種治療器具、各種毒物、各種毒ガス原料、各種爆発物原料、使い捨て手術用メス×14
[思考]
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
0:背中の少女やラッド、ジンを含めて今後の行動を考える。
1:プラン1~3のどの形でもいいから明智たちと接触する。
2:脱出方法の研究をする(螺旋力、首輪、螺旋王、空間そのものについてなど包括的に)
3:周辺で起こっている殺し合いには、極力、関わらない(有用な情報が得られそうな場合は例外)
4:研究に必要な情報収集。とくに螺旋力について知りたい。
5:螺旋王に挑むための仲間(ガッシュ等)を集める。その過程で出る犠牲者は極力減らしたい。
[備考]
※首輪のネジを隠していたネームシールが剥がされ、またほんの少しだけネジが回っています。
※ラッドの言った『人間』というキーワードに何か引っかかるものがあるようです。
[清麿の考察]
※監視について
監視されていることは確実。方法は監視カメラのような原始的なものではなく、螺旋王の能力かオーバーテクノロジーによるもの。
参加者が監視に気づくかどうかは螺旋王にとって大事ではない。むしろそれを含め試されている可能性アリ。
※螺旋王の真の目的について
螺旋王の目的は、道楽ではない。趣旨は殺し合いではなく実験、もしくは別のなにか(各種仮説を参考)。
ゆえに、参加者の無為な死を望みはしない。首輪による爆破や、反抗分子への粛清も、よほどのことがない限りありえない。
【仮説①】【仮説②】【仮説③】をメモにまとめています。
※首輪について
螺旋状に編まれたケーブルは導火線。三つの謎の黒球は、どれか一つが爆弾。また、清麿の理解が追いつく機械ではなくオーバーテクノロジーによるもの。
ネジを回すと、螺旋王のメッセージ付きで電流が流れる。しかし、死に至るレベルではない。
上記のことから、螺旋王にとって首輪は単なる拘束器具ではなく、参加者を試す道具の一つであると推測。
螺旋王からの遠隔爆破の危険性は(たとえこちらが大々的に反逆を企てたとしても)限りなく低い。
※螺旋力について
………………………アルェー?
【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:気絶、疲労(中)、心労(大)
[装備]:COLT M16A1/M203@現実(20/20)(0/1)、コアドリル@天元突破グレンラガン
[道具]:デイバック、支給品一式、糸色望の旅立ちセット@さよなら絶望先生[遺書用の封筒が欠損]
鴇羽舞衣のマフラー@舞-HiME、M16アサルトライフル用予備弾x20(5.56mm NATO弾)
M203グレネードランチャー用予備弾(榴弾x6、WP発煙弾x2、照明弾x2、催涙弾x2)
[思考]
基本:元の日常へと戻れるようがんばってみる
0: ……Dボゥイさん…………シンヤさん……
1:Dボゥイと合流する
2:シンヤとの約束を守り、彼が自分から参加者を襲わないように気をつける
3:当面はシンヤと行動する
[備考]
※コアドリルがただのアクセサリーではないということに気がつきました
※今のところシンヤとの約束を破るつもりはありません(シンヤの事を他の参加者に必要以上は言わない、テッククリスタルを持つ参加者に譲ってくれるように交渉する)
※螺旋力覚醒
◇ ◇ ◇
暗い、暗い闇の中。
生ける者は立ち去り、何一つ動くものの無くなった空間に、蠢く影が一つ現れる。
部屋の真ん中で倒れている頭と右腕のない死体から這い出てきた“彼”は、白い拳大の蟲のような姿形をしていた。
――――“彼”は考える。
新たなる宿主を得る必要があると。
――――“彼”は確認する。
自分は誇り高きラダムの本体であると。
――――“彼”は知っている。
今、自分の元の宿主も含め、いくつもの人間が殺しあっていると。
――――“彼”はほくそ笑む。
これは、優秀な肉体を得る絶好の機会であると。
――――“彼”は把握する。
螺旋王とやらの技術は、非常に高度なものであると。
――――“彼”は推測する。
殺し合いが目的ならば、この会場のいずこかに自分達の用いるものと同じテックシステムがあるのではないかと。
――――“彼”は計画する。
優秀な肉体を用いて、最高のテッカマンを創造することを。
――――“彼”は切望する。
最高のテッカマンの力で、螺旋王の技術を全てラダムに持ち帰ることを。
そうして“彼”は動き出す。
ひとまずの、仮の宿主を得る為に。
幸い、ここは病院である。
先ほど前の宿主を殺した男達でもいいが、焦る必要は特にない。
弱った人間が勝手に集まってきてくれる実に都合がいい場所なのだから。
抵抗力が落ちていたり、無抵抗でありさえすれば、その人間に寄生することは難しくはないだろう。
――――“彼”は徘徊し始める。
夜の病院を、己の肉体を手に入れるために。
【ラダム@宇宙の騎士テッカマンブレード】
知性のみを高度に発達させた虫状の知的生命体。
知性のみを高度に発達させたため、肉体そのものは非常に脆弱であり、専ら他の生命体の体内に寄生している。
寄生された生命体は元々抱えていた性格が攻撃的な方向で極端に増幅されているようである(シンヤのタカヤに対するコンプレックスなど)。
※ラダムの行動範囲は基本的に病院内です。寄生の相手は、無抵抗だったり衰弱したりしているキャラクターです。
※病院内の薬物や危険な道具は殆ど清麿に回収されています。
※シンヤの死体は頭部と右腕が消滅した状態です。首輪や荷物は持ち去られています。
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||ラダム|228:[[刻無―キズナ― 零 完全版]]|
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