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-*オープニング ◆P2vcbk2T1w
+*THE OPENING ◆P2vcbk2T1w
 
 
- 夜よりも深く、そして纏わりつくような闇が周囲を包んでいる。それは今まで見たこともない、本当に無明の闇だ。
- ぼのぼのはその闇を払うように身を震わせた。
- 闇に溶け込んでいて見えないが、周囲にはむせ返るような獣の臭いと、複数の声が聞こえている。その声はどれもが不安に彩られ、大声で叫んでいるものもいた。
- 割と近くでシマリスくんとアライグマくんが喧嘩をする声が聞こえてくる。そのことに、ぼのぼのは少し安堵した。
+ 闇が広がっている。 
+ 漆黒の闇だ。 
 
- ここはどこだろう。昨日はいつものようにお父さんと共に眠りについたのだ。
- だが、気がつけば自分をつなぎとめていたケルプもないし、海にも浮かんでいない。
- ただ、暗いだけの空間に、いろんな動物たちが集められている。
- そこから考えられることは一つだった。
- ぼのぼのの脳裏には、スラリとした体躯を桃色の毛皮で包んだ猫科の獣に抱えられる自分の姿が浮かんでいた。
+ 俺は闇が好きだ。 
+ 闇は、自分を、自分の過去を、自分の宿命を、全て飲み込んでくれる。 
+ 闇の中に生きる俺に、闇だけが俺に安息を提供してくれた。 
 
-(そうか。ボクたちはしまっちゃうおじさんに仕舞われちゃったんだ!)
+ 俺は、まどろみの中、夢と現の境を漂っているのだと思っていた。 
+ その声を聞くまでは。 
 
-「もうダメだぁ~……」
- ぼのぼのはガクリと前足を地面について、むせび泣いた。
- 恐れていた事が起きたのだ。しまっちゃうおじさんに仕舞われてしまった以上、自分はもうお日様を見ることが出来ないのだ。お父さんのぼりも出来ないし、貝も食べられない。きっと毎日夜魔王が来て、闇の中で足を嘗めたりするのだ。暗いから嘗め放題に違いない。
- そう思ったとき、ペロリと何かがぼのぼのの足を嘗めた。
- びっくりして振り返ると、そこには真っ白いオオカミがいた。暗闇なのになぜオオカミと分かったのかというと、その毛皮は闇の中だというのにうっすらと光を放っていたからだ。しかも面白いことに、オオカミの顔と胸部には赤い模様が走っている。今までみたことがない、美しい獣だった。
- オオカミはラッコにとっても危険な動物だ。しかし、この白いオオカミを怖いとは思えなかった。おそらく、惚けた顔をしているからだろう。
-「はげましてくれたの?」
-「ワンッ!!」
- オオカミは元気よく返事を返し、ペロンと今度は顔を嘗めてきた。
-なぜかオオカミの言葉は分からなかったが、その存在が発する温かい雰囲気は、ぼのぼのを立ち直らせるのには十分であった。オオカミの温かさはまるでお日様のようだったのだ。
-「オオカミさん、ありがとう」
- ぼのぼのは立ち上がってオオカミに礼を言い、オオカミは尻尾を振った。 
+「そこに居るのかい、兄さん」 
+「……シンヤか」 
+ 朦朧としていた意識が、急激に覚醒する。 
 
- そのとき、ふいに青白いものが視界に入った。
- 何か光るものが浮いている。それは忽然と宙から生まれ、そしてどんどん増えていく。ゆらゆらと揺れるそれは、色こそ違うがかつて見た火と同じだった。
- 鬼火に照らされて、状況が段々と分かってきた。ぼのぼのたちが集められたのは大きな四角い空間のようだ。壁は分厚い木板と黒光りする鉄骨が張り巡らされ、まるで大きな動物のお腹の中にいるようにぼのぼのは感じた。
-「お、ぼのぼのじゃねえか!」
-「ぼのぼのちゃんもいた!ぼのぼのちゃんもいたー!」
- アライグマくんとシマリスくんがぼのぼのの元へと駆け寄ってきた。周りを見れば、見知った顔が幾つかある。赤いワニや長い犬歯をもったヒョウなど、見たことも無い動物たちもたくさんいた。
- 彼らは全員、首に黒い輪っかを付けていた。自分の首に触れると、そこに同様のものがあることがわかる。石のような硬いもので出来ているようだ。
-「おい、なんだよ?そいつ」
- アライグマくんがオオカミを指差した。オオカミはフンフンとアライグマくんの指の臭いを嗅いでいる。
-「さっきお友達になったの。ねー」
- ぼのぼのの言葉にオオカミはワフッと応えた。
-「シマリスよー。オオカミちゃん、よろしくねっ」
-「…ポアっとした間抜け面だな。変な模様だし」
- アライグマくんがオオカミの模様を指でなぞったとき、今までに浮かんだものよりも一層大きな火がぼのぼのたちのずっと前方で生まれた。
 
- そして、火と同じように忽然とソレは宙より現れた。
- 九つの尾っぽをくねらせた巨大な影。金色の毛皮に身を包み、顔には白塗りの狐を模した面を付けている。白いオオカミと同じぐらい美しいが、それ以上に全身が総毛立つほどのおぞましさと禍々しさを全身から放っていた。今までぼのぼのが想像してきたあらゆる怖いモノよりも恐ろしかった。
- 突然の登場に、周りの喧騒は一層やかましくなった。
+ 徐々に目が慣れてくると、周囲の様子がおぼろげに浮かび上がってくる。 
+ どうやら、此処は広い部屋の中のようだ。 
+ そして、この場には俺とシンヤ――テッカマンブレードとテッカマンエビルの他にも、多数の人間が居る様だった。 
+ 最初は衣擦れの音と呼吸音が、そして段々と人の声――不安げな会話音が場を満たす。 
+ 遠くでなにやら怒鳴り散らす声も聞こえるようだ。どうやらここは相当に広い空間のようだ。 
+ だが、それ以上は分からない。 
+ それらのことに気を裂く余裕は、俺には無かった。 
+ 最も危険で最も重大な存在は、既に俺の目の前に立っているのだから。 
+「コレは何だ? いつの間に俺を連れてきた? これもお前達ラダムの仕業か?」 
+「フフ、僕達にこんな真似が出来るのならば、とっくの昔に実行に移しているさ。兄さんを殺すためにね……」 
+ その言葉には妙な説得力があった。 
+ だが、ラダムの仕業で無いならば、一体これは……!? 
 
-「静マレ」
+ そう思った、次の瞬間だった。 
 
- 厳かな声が金色の獣の口から漏れた。決して大きな声ではなかったが、動物たちに口をぴたりと閉ざさせるだけの迫力と威厳を持っていた。
+ 突然、目も眩むほどの光がその場を満たした。 
+ 地面が、円柱状のその部屋の壁が眩い光を放っている。渦巻きのような模様で…… 
+「こ……これは!?」 
+「兄さん、あそこだ!」 
+ シンヤが示すその先には……一つの椅子が、それも玉座と呼ぶべき大層な代物が聳え立っていた。 
+ そこに鎮座する一人の男を誇示するかのように。 
 
-「我ガ名ハ妖魔王キュウビ。貴様達ガ集メラレタノハ我ガ呪法ノ為……」
 
- 身じろぎすら躊躇う緊張した空気の中、キュウビの名乗った獣は朗々と続けた。
+「ようこそ諸君。初対面のものもそうでないものも居るようだが、一応名乗っておこう。 
+我が名は、螺旋王ロージェノム。覚えたければ覚えておくが良い」 
+ 男は低い、威圧感の溢れる声でそう名乗った。 
 
-「貴様達ニハ、コレカラ残リ一匹トナルマデ殺シ合イヲシテ貰ウ――」
+「螺旋王? ロージェノム……?」 
+「何者だ……?」 
+ ざわざわと、場が乱れる。それと同時に、殺気が周囲から溢れ出した。 
+ どうやらこの場に居る人間の中には、血の気の多い者が多いようだ。 
+ しかし、当の螺旋王は、全く動じる素振りも無く、言葉を紡いでゆく。 
 
- そう、キュウビが告げるやいなや、轟という地鳴りのような吼え声がすぐ横からした。見れば、先ほどのオオカミが凄まじい形相でキュウビを凝視している。四肢を張って身を低くし、今にも全身のばねを使ってキュウビに飛び掛らんばかりだ。今までの惚けた表情からは想像できない変貌だ。
- その一方で、その吼え声を聞いて、キュウビの面が嗤ったように見えたのはぼのぼのの気のせいだろうか。
+「だが、名前などどうでも良い事だ。大切なことは別にある。 
+よく聞くがいい。 
+重要な事は、お前たちは今から全員で、最後の一人になるまで殺し合うこと。 
+そして、その一人以外は、全員死ぬ、ということだけだ」 
 
- オオカミの吼え声で呪縛を解かれたのだろうか。周囲で一斉に怒号が上がった。
- この状況にぼのぼのはただただ慄き、周囲をキョロキョロと見回した。そして、気付く。
-「シマリスくんがいない……?」
-「なにぃっ!?」
- シマリスくんの姿が消えていた。あの小さい姿を求め首を巡らすと、なんとシマリスくんは周囲の動物たちの足元をすり抜け、キュウビの目の前に立っていた。
- ぼのぼのは慌ててシマリスくんのもとへ往こうとしたが、いきり立った動物たちのせいで思うように進めない。
- キュウビは制するでもなく、怒声を上げる動物たちを黙って睥睨するだけだ。その様子はぼのぼのを酷く不安な気持ちにさせた。
-「ぼのぼの!こっちだ!!」
- 隙間を見つけたアライグマくんが声を張り上げた。四つんばいになって、ぼのぼのは前へと進んだ。騒音の中だというのに、シマリスくんの声は酷くはっきりと聞こえた。
+「!?」 
+ 意味不明で不穏な、だが有無を言わせぬその宣言が部屋中に木霊する。 
+ 周囲の混乱がピークに達してゆく。 
+ そしてその混乱をさらに助長するかのように、螺旋王の言葉は続く。 
+「私は優秀な個体、優秀な螺旋遺伝子を求めている。 
+これは言わばそのための実験。お前達は、それを見定める上でのモルモットだ。 
+手段は問わん。貴様らの中から、最も優秀な一人を選び出せ。 
+生き残りゲームだとでも考えて貰って結構だ。 
+そう、ゲームだ。命を懸けたな……」 
 
-「ねえねえ、キュウビちゃん。シマリスはそんなつまんないことやりたくないの。シマリスはぼのぼのちゃんやアライグマちゃんやオオカミちゃんと遊びたいの」
-「ホウ。ツマリ?」
-「つまり!シマリスたちを帰してほしいのでぃすっ!そんなもんに付き合わされちゃ堪ったもんじゃないのでぃすっ!」
-「成程……子鼠ヨ。我二逆ラウトイウノダナ……丁度良イ」
- 
- 今まで感情の感じられなかったキュウビの声に愉悦が混じったのをぼのぼのは感じた。
- シマリスくんの身体が金縛りにあったように強張ったのが、足の隙間から見えた。 
+「そこまでにしておくんだな、思い上がった虫ケラめ!」 
+ 突如、何物かの声が響いた。 
+ いや、俺はこの声を知っている。この声は―― 
+「お前は――モロトフ!!」 
+ そう、ラダムのテッカマンにして指揮官。 
+ 憎むべき俺の宿敵の一人、テッカマンランス・モロトフだ。 
+「ほう、貴様も居たのか、出来損ないのブレード。 
+好都合だ。貴様もあの世に送ってやろう……この虫ケラの次にな……!」 
+ そう言うと共に、モロトフはロージェノムの元へと向かう。 
+ 他の人間達も、モロトフに続かんとばかりにいきり立っている者が多数居るようだ。 
+ 早くもロージェノムとやらの計画は破綻しかかっているかに見えた。 
+ だが…… 
 
- それと同時に、動物たちの頭上を白い影が飛びぬけて行くのもぼのぼのの目に写った。
- 宙を駆けるオオカミの尾が大気を切り裂くが如き一文字を描く。しかし、キュウビの尾の一本が蠢いて十字に走る方が幾許か早い。
- ガウッ!?と驚愕の声を上げたオオカミにキュウビの二本目の尾が振り下ろされた。オオカミは悲痛な声を上げ、床へと叩きつけられる。
- キュウビは身を凍らせるような哄笑を上げた。
- ようやく抜け出たアライグマくんがシマリスくんの元へと駆け寄ろうとするが、その哄笑に足が竦んでしまったようだ。
- ぼのぼのの耳にキュウビの嘲笑が突き刺さる。
+「ふむ、異星生命体に改造されし螺旋生命体か。 
+しかしサンプルは既に2体居る。 
+このまま一参加者の目に余る行動を見過ごすのも実験の妨げになるな……」 
+ 当の螺旋王は、さも当然とばかりに落ち着き払っている。 
+ さながら。これも計算の内と言わんばかりに。 
+「まあよかろう。特別に貴様はこの螺旋王ロージェノムが相手をしてやろう。かかってくるが良い。 
+ああ、そういえば貴様達はコレが無ければ話にならんのだったな? そら、くれてやる」 
+ そう言うと、ロージェノムはモロトフにあるものを投げよこした。 
 
-「皆ノ者見ルガ良イ。我二逆ラッタモノノ末路ヲ!」
+ この光煌く結晶は……テッククリスタル! 
+ そう、この螺旋王とやらは、わざわざ没収していたテッカマンにとっての核とも言える存在を、敢えてその持ち主へと返したのだ。 
+ そして、ゆっくりと立ち上がるロージェノムの仕草は、面倒な仕事に望むかのようにすら見える。 
+ 絶対的な優位を確信した者の見せる、余裕だった。 
+ そして、それがモロトフの苛立ちを臨界点に押し上げる。 
 
- ポンッと、あまりにも軽い音が響いた。
- 何も知らなければ、その音の正体を想像して楽しくなるような音だ。そして、いつもならそれを確かめにシマリスくんやアライグマくんと探検に行っただろう。
- しかし、もうそんなことは起こらない。そんな楽しいことは金輪際訪れない。
- シマリスくんの首が赤い水を噴き上げていた。首の上にあるはずのシマリスくんの顔はどこにも見当たらない。赤い水がぼのぼのとアライグマくんに降りかかった。それは、とても嫌な臭いがした。
- ぼのぼのの目と鼻の先で、シマリスくんの小さな身体は床に崩れ落ちた。
- オオカミが地面に叩きつけられたときよりも悲痛な声を上げる。
-「シマリスくん!?」
-「シマリスー!」
- ぼのぼのは首から上を失ったシマリスくんの亡骸を抱きしめた。アライグマくんは膝をついて、ぼのぼのとシマリスくんを呆けたように凝視している。
- 先ほどまでの喧騒は一気に静まっていた。
+「……言いたいことはそれだけか?  
+良いだろう! 宇宙の塵となって自らの過ちを悔い改めるが良い!! テーック、セッターーー!!」 
+ 次の瞬間、完全に臨戦態勢となったテッカマンランスが、ロージェノムへ向かって突進する。 
+「死ねぇ――――ッ!!」 
+ そして、激しい衝撃音が室内を轟く。 
 
-「良ク聞ケ、畜生ドモヨ。貴様タチニ付ケタ首枷ハ、我ノ思イ一ツデ爆破サセル事ガ出来ル。無理に外ソウトシタリ、我ノ意ニ逆ラオウトスレバ、コノ様ナ最期ヲ遂ゲル事トナロウ」
+ しかし―― 
+「ちぃッ! バリアかッ!!」 
+ ランスの攻撃は、ロージェノムの目前で、淡い緑の壁によって遮られ、届かない。 
+「螺旋力を利用したバリアーだ。その程度の攻撃では私には指一本触れられんぞ?」 
+「ほざけッ、ならばコレでどうだッ!!!」 
+ そういうや否や、ランスのプロテクターが開き……不味いッ!! 
+「危ないッ!! 全員伏せろ―――ッ!!」 
 
- 惨状を目にし、気圧され怯える動物たちの様子が愉快なのか、キュウビの尾がそれぞれが別の生き物の如く禍々しくうねり、踊る。
+「ボルテッカァァァ―――――ッ!!!」 
 
-「デハ殺シ合イノ概要ダ。コレカラ貴様達ヲ我ノ用意シタ土地ニ、ソレゾレ転移サセル。ソノ際ニハ食料ニ地図、ソシテ幾ツカノ道具ノハイッタ袋ヲ持タセヨウ。貴様達ニ使イコナセルカハ分カラヌガナ。
-ソノ地ニハ立チ入リヲ禁ズル区域ヲ設ケル。ソコニ入リ込ンデモ、首枷ハ爆発スル。禁止区域ハ四半日ニ増エテユク。ソノ場所ハ、ソレ迄ノ脱落者ノ名ト共ニ我ガ伝エヨウ。努々、聞キ洩ラスコトノ無イヨウニナ。首枷ニヨル爆死ハ我ノ求メル物デハ無イ。因ミニ、丸一日経過シテ一人モ脱落者ガ出ナイ場合モ全員ノ首枷ヲ爆破スル」
+ ランスの絶叫と共に、凄まじいまでの爆音と衝撃が室内に充満する。 
+ 砕けた床や壁の破片が、もうもうと立ち込める。 
+「クッ、これでは他の人間に被害が……!」 
+「いや、そうでもないみたいだよ兄さん」 
+「何!?」 
+ シンヤに言われて改めて周りを窺う。 
+ 確かに、凄まじい衝撃の割には、周囲の人間は皆無事……それも、無傷に近いようだ。 
+「馬鹿な……あの爆発に巻き込まれていながら……!?」 
+「それだけ、あのバリアが高性能ということなんじゃないかな?」 
+「……では、まさか……!」 
 
- ぼのぼのの耳をキュウビの言葉は空風のように通り抜けてゆく。いつもの「どうして?」が次々と内に湧き上がってくる。
-どうして、シマリスくんは動かないんだろう。どうして、あの獣は大きく美しいのにこんなことをするんだろう。
-(ボクの中で気味の悪いものが大きくなっていくのはどうしてなんだろう?)
+ 土煙が晴れてゆく。それと共に、ランスの姿が浮かび上がる。 
+「フッ……如何に強固なバリアと言えども、この至近距離からボルテッカを食らえば……」 
+ ランスの周囲は、ボルテッカの軌跡が綺麗に抉り取られているようだった。 
+ そして、その地面を抉る傷跡の先には…… 
+「……何ッ!?」 
+ 螺旋王ロージェノムが、そこに居た。 
+ 先ほどと寸分たがわぬ、傷一つ無い姿で。 
+「この程度とはな。片腹痛いわッ!!」 
+「バカな――ぐはァッ!」 
+ 嗚咽と同時に、鈍い炸裂音が弾ける。 
+ そして次の瞬間には、ランスの体は遥か後方の壁中へとめり込んでいた。 
+ ロージェノムの一撃……そう、唯一撃の正拳が、ランスを弾き飛ばしたのだ。 
 
-「最後マデ生キ残リシ者ニハ、褒美トシテ我ガ何デモ願イヲ叶エテヤロウ。念ヲ押スガ、我ニ逆ラオウトスルデナイゾ?我ノ目ハ全テヲ見通シ、我ノ耳ハ全テヲ聞イテオル。貴様ラハ生存本能ノ赴ク儘、タダタダ殺シ喰ライ合エバ良イノダ」
+「見ての通りだ。お前たちが足掻いたところで我が螺旋力の前では無力そのもの。 
+そして――もう一つ、首輪についても説明しておいてやろう。貴様たちの首についているそれだ」 
+「――!」 
+ 言われて始めて気付くほどに、その首輪は違和感なく、まるでそれが当然かのように、シンヤの首にも、俺自身の首にも嵌っていた。 
+ 一体、いつの間に嵌められたというのか? 
+「その首輪には、特殊な反物質――爆薬が詰まっている。 
+先ほどの男のように私に歯向かったり、実験に支障を来たす様な行動を取れば――」 
+ その刹那。 
 
- キュウビの嘲りが響くが、それに反発の声を上げるものはもういない。
- いや、ただ一匹――
-「グァーゥッ!」
- 傷つき、白い身体の所々を赤く染めたオオカミが吼えた。その痛々しい姿に、キュウビは更に愉悦を刻んだ声を響かせた。
-「天照ヨ。神ヲ名乗ル犬畜生ヨ。貴様ガ真ノ大神ナラバ、コノ獣達ヲ救ッテ見セヨ。出来ルカ?出来マイナ。子鼠ノ命モ守レヌ貴様ガ!」
-その言葉にオオカミは応えない。ただ、尻尾が弧を描いた。
- それを見たキュウビはカッと吐き捨てると、甲高く啼いた。
- その声に吃驚したぼのぼのの目に写ったのは、先ほどのまで金色の獣ではなく、紫紺の法衣に身を包んだ毛の無い雌猿の姿であった。
-それが人間という種族であり、またその姿がとある世界の民を諭し導いた慈悲深い尼僧の似姿であることをぼのぼのは知らない。
-「畜生たちよ!我を憎め!怨み、憂い、呪え!!我は全て受け入れよう!貴様達の無念は我が胸へと刻んでやろう!」
- キュウビはたおやかな女の声で高らかと告げた。
-「故に……心置きなく、去ね」
- その言葉と共に鬼火が消え、また辺りを闇が包んだ。
+ 壁にめり込むランスの体――その首が、閃光と共に爆発した。 
 
+「こうなる。 
+まあ、爆発自体は内向的なものだから他への影響は少ないが、本人は確実に生命活動を停止するだろうな。 
+それと、実験の円滑な進行の為に、禁止区域に侵入してもこの首輪は爆発する。肝に銘じておくことだ。 
+そして――」 
 
-再び闇が晴れたとき、あれほど居た動物達は跡形もなく消えていた。残されたのは首を吹き飛ばされた子栗鼠の亡骸。その傍らには小さな花が一輪――
+ 淡々と、その『実験』についての説明を続けるロージェノムの言葉を遮るものは、最早存在しなかった。 
+ その時には、もう既にロージェノムの声だけが、その場を支配していた。 
+ 爆煙の中に残ったランス――モロトフの変わり果てた姿が、そうさせていたのだ。 
+「貴様らの中には、先ほどの男のように私に挑みたいものも居るだろうが……生憎と、貴様ら全員を相手にしていては実験にならん。 
+まあ、最後の一人に残ったならば、また私が直々に相手をしてやろう。爆弾だのバリアだのの小道具を抜きにな。 
+それだけではない。栄誉ある最後の一人は、私にとっても貴重な個体だ。 
+その者が望むことを何でも叶えてやることにする。億万長者にでも不老不死にでも、なんにでもしてやろう。 
+その栄冠を得るために、殺し合え。死力を尽くしてな……!」 
+
+ その場の人々は、怒りとも、悲しみとも、諦めともつかない混沌とした感情で沸きあがっていた。 
+ だが、目の前の男――シンヤの感情は、その中でも一際異質で、その向けられる先も異なっていた。 
+
+「望みを叶える……? フフ、あの男は何を言っているのやら。僕の望みは、もう殆ど適ったも同然なのにね。 
+兄さんと命を賭けて戦える、このステージを用意してくれただけで僕はもう満足さ。 
+さあ、兄さん。始めようか? 
+僕が必ず兄さんを殺してあげるよ……」 
+
+ 目も眩むような闇が、その空間を侵食してゆく。 
+ ドス黒い、憎しみという忌むべき闇が……
 
-【シマリス@ぼのぼの 死亡】
-[残り 47匹] 
 
 
 
 
 
 
 
 
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-||キュウビ||
-||ぼのぼの||
-||アライグマ||
-||アマテラス||
-||&color(red){シマリス}||
+|外伝:[[螺旋のはじまり]]|ロージェノム|097:[[第一回放送]]|
+||Dボゥイ|002:[[この血塗られた指先で救えるのなら]]|
+||相羽シンヤ|040:[[紙は舞い降りた]]|
+||&color(red){モロトフ}||
 
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