夏奈(それにしても、なんて純粋な姉妹なんだ)
夏奈(今の世の中にこんな純粋な人間が残ってるとは…天然記念物だな)
夏奈(チアキに教えてやりたいぐらいだ…)
夏奈(そういえばチアキとハルカは今なにやってるんだろう?連絡してないけど大丈夫かな)
唯「えへへ~、あ~ずにゃんっ」スリスリ
夏奈「だ、抱きつけとは言ってないだろ!」ビシッ
唯「あうっ」
憂「そろそろお風呂入ろっか?」
唯「そうだ!せっかくだから三人で入ろうよ!」
夏奈「なんだ、ここの風呂は三人で入れるぐらい広いのか?」
唯「うん、たぶん大丈夫だよ~」
憂「そうだね…せっかくだし三人で入ろっか」
憂「あっ、梓ちゃんには私のパジャマ貸してあげる」
夏奈「相変わらずおもてなすな~」
ガラガラッ
夏奈「うおぉっ!?確かにうちより広い!」
唯「あずにゃん、背中流してあげるよ」
夏奈「だんだん分かってきたじゃないか」
唯「えへへ~」
憂「じゃあ私がお姉ちゃんの背中流してあげるねっ」
夏奈「よし、それなら私が憂の背中を流してやろう」
夏奈「こう…三角形になる感じで並んで」
ゴシゴシ、ゴシゴシ
唯「これなら三人で同時に洗えるねっ」
憂「梓ちゃん頭良い」
夏奈「そうだ、私は頭が良いんだ」
夏奈「やれば出来る子なんだぞ!」
唯「うん、知ってるよ~」
夏奈「!」
夏奈(な、なんだこのリアクションは…いくらなんでも純粋過ぎるだろ)
憂「梓ちゃんはすごいね~」
夏奈(こいつら本当に人間か!?これっぽっちも薄汚い心がないのか!?)
夏奈(こるじゃあまるで…こんな事を考えてる私が極悪人みたいじゃないか)
唯「梓ちゃんどうしたの?」
夏奈「ちょっと反省」
唯「?」
唯「……」ジーッ
夏奈「な、なんだよぅ」
唯「あずにゃん、おっぱいちょっと大きくなった?」
夏奈「!」ビシッ
唯「あうっ」
夏奈「吉野のくせに人の胸に指図するとは!そういうお前は…」
唯「えぇ~?」
夏奈(そこそこある!?)
憂「二人とも、ケンカはだめだよ」
夏奈(こっちはもっとある!!)
夏奈「極悪人だからか?私が極悪人だからないのか!?」
唯憂「?」
唯「ふぅ~、良いお湯だった~」
夏奈「憂、牛乳はあるか?」
憂「はいどうぞ」
夏奈「よし」ゴクゴク
唯「あっ、私も飲みた~い」
夏奈「吉野はダメだ!」
唯「えぇ!?」
夏奈「お前はこれ以上大きくても…」
夏奈(はっ!これでは悪い人間のままだ。大きな人間になれない)
夏奈「…仕方ない、飲ませてやろう」
唯「わーい!」
憂「ありがとう梓ちゃん。よかったね、お姉ちゃん」
夏奈(そう、私は清らかな心を持つ人間。いつか大きくなる人間)
憂「明日も学校あるし、もうそろそろ寝よっか」
夏奈「なんだもう寝ちゃうのか」
唯「もっと起きてたいよ~」
憂「明日遅刻しちゃうからダメ」
夏奈「そんなことより夜を語り明かそう」
夏奈「吉野、なんか喋ろ」
唯「え~っとねぇ…」
憂「もう、二人ったら。電気は消しておくからね?」
唯「私はねぇ…ごはんが好きだよ」
夏奈「それは聞いてないよ」
唯「ごはんって美味しいよね~」
夏奈「美味しいのは否定しないが今はもっと別の話をするべきじゃないか?」
唯「あっ、明日のお菓子なんだろ~?」
夏奈「それは気になるな」
唯「そういえばトンちゃんかわいいよね~」
夏奈「お前は普段なにを考えて生きてるんだ」
唯「ぐぅー…」
夏奈「寝るのかよっ!」
夏奈「まったく、吉野並みに何を考えてるか分からないやつだ」
憂「でもかわいいよね~」
夏奈「憂はお姉ちゃん大好きか」
憂「うんっ」
夏奈「お前みたいな妹が欲しかったよ」
憂「えへへ」
憂「梓ちゃんは本当に次女って感じだね」
夏奈「え?」
憂「今日見ててそう思っただけ」
夏奈「なんだそれ」
憂「えへー」
夏奈(こいつも未知数だな…)
憂「梓ちゃんもお姉ちゃんと妹さんのこと好きでしょ?」
夏奈「まぁ…嫌いではないな」
夏奈「けどお前の好きとは次元が違う」
憂「そうかなー。梓ちゃん優しいから同じだと思うけど」
夏奈「なっ…バカなことを言うな!」
夏奈「もういい私も寝る!」
憂「ふふっ」
朝
憂「二人とも起きて、遅刻するよ!」
唯「あ゛ぃ~~~…」
夏奈「う゛ぇ~~~…」
憂「ご飯できてるよ」
夏奈「ごはん!」
夏奈「起きろ吉野!お前の大好きなごはんだぞ!」
唯「お゛~~…」
学校
キーンコーンカーンコーン
夏奈「今日も授業が分からなかった」
純「梓ってそんなバカだったっけ?」
夏奈「…」ドンッ
純「あたっ」
夏奈「お前ねぇ、人に会うたびバカバカ言うなよ!」
純「最近はずいぶんと暴力的だし…本当に梓なの?」
夏奈「!」
夏奈(まずい…正体がバレる)
夏奈(ケーキが食べられなくなる!?)
夏奈「……梓ですわよ」
純「いや、なにそのキャラ」
夏奈「純さんの髪の毛はすごい癖毛ですね。昨日掃除に使ったもじゃもじゃのモップよりすごいですわ!」
純(そこまで!!)
夏奈「純さん大変!指がつってリコーダーが吹けませんわ」
純「指の体操するといいよ…」
夏奈「…」ピュ~ヒョロロロ~
キーンコーンカーンコーン
夏奈「あっ、放課後だ」
純「私と憂は届け出してないからまだ軽音部には行けないよ」
夏奈「はいはーい」
夏奈(さて、今日はどんなお菓子かな)
ガチャッ
夏奈「こんにちはー!」
シーン
夏奈「あれ?まだ来てな…」
紬「すぅ…すぅ…」
夏奈「お?」
紬「すぅ…すぴー…」
夏奈(ムギちゃんが寝ている…)
夏奈「おーい、ムギちゃーん」
紬「ふぁっ!?……ふあぁ」
紬「…あれ?梓ちゃん?」
夏奈「そんな所で寝てると風邪ひくぞ」
紬「お日さまが気持ちよくてつい」
夏奈「あー、確かに今日は良い天気だねぇ」
紬「あっ!」
夏奈「どうした」
紬「せっかく誰か来たら驚かそうと思ってたのに…」
夏奈「はぁ?」
紬「こういう感じで…わー」
夏奈「……」
紬「うふふ」
夏奈「わーーーーーーっ!!!」ガバッ
紬「きゃあっ!?」ビクッ
夏奈「ダメだよムギちゃん、やるならここまでやらないと」
紬「び、びっくりした~」
夏奈「いいか?人を驚かしたいなら自分が本気にならないと驚かないんだよ」
夏奈「ムギちゃんはそこら辺がまだ甘い!」
紬「!」ガーン
紬「じゃ、じゃあどうすれば…」
夏奈「もっと腹から声を」
夏奈「わーーーーーーっ!!」
紬「わ、わー」
夏奈「やる気あるのかぁ!!」
紬「ご、ごめんなさ~い!」
夏奈「わーーーーーーっ!!」
紬「わー!」
夏奈「オラーーーーーー!!」
紬「オラー!」
夏奈「バカ野郎ーーーーーー!!」
紬「バカ野郎ー!」
夏奈「なんだとコノヤロウ!!」ガバッ
紬「きゃあっ!?」
夏奈「ダメだよムギちゃん、今のはやり返さないと」
紬「難しいわ~」
紬「今日の梓ちゃんは激しいのね」
夏奈「私はいつでも情熱的だからな」
紬「すてきだわ~」
夏奈「それよりムギちゃん、早くお菓子を」
紬「待ってて、今用意するから」
夏奈「……」
夏奈(ムギちゃんはどこか浮世離れしてるな)
夏奈(このままじゃ、世間の荒波を乗り越えることができるか心配だ)
夏奈(私が正しい方向へと導かないと)
紬「持ってきたわよ~♪」
夏奈(さて、まずはどうしようか…)
夏奈(とりあえずお菓子を食べてから考えよう)モグモグ
紬「美味しい?」
夏奈「うまいぞ!」
紬「よかったぁ」
夏奈(さて、それよりどうしようか…)
夏奈(とりあえずお茶を飲んでから考えよう)ゴクゴク
紬「私ね、こうやって梓ちゃんと親しくなりたかったの」
夏奈「は?」
夏奈「なに言ってるんだ、今まで親しくなかったのか?」
紬「あっ、そうじゃなくて!」
紬「その~…もうちょっと砕けた関係に憧れてて」
夏奈「なんだ、そんな砕けた関係になりたかったのか」
紬「う、うん」
夏奈「そうかそうか…ならムギちゃんには教えておかないとな」
紬「なにを?」
夏奈「ツッコミだ!」
紬「ツ、ツッコミ…」ゴクリ
夏奈「ここに来て感じていた違和感…それがようやく分かった」
紬「違和感…?」
夏奈「ツッコミキャラがいない!私のボケをさばけるほどのな」
紬「はぁ」
夏奈「というわけだからムギちゃんがツッコミキャラになるんだ!いいね?」
紬「は、はい!」
夏奈「じゃあ私のあとに続いて…」
夏奈「たった一億円かよっ!」
紬「たった一億円かよ」
夏奈「お嬢様が言うと現実味があるな~」
夏奈「いいかムギちゃん、ツッコミキャラは常識人でなければいけない」
紬「うん」
夏奈「だが今のムギちゃんはお嬢様気質が抜けきれていない」
紬「言われると…でもそれならどうすればいいの?」
夏奈「だから自分がお嬢様だということを忘れてしまえばいいんだよ」
紬「おぉ~」
夏奈「ムギちゃん、ムギちゃんは今一般生徒Aだ」
紬「え、A…」
夏奈「そう、いわばそこら辺に売っているありふれた沢庵と同じだ!」
紬「私、一般生徒になるのが夢だったの~」
夏奈「いや…そこは『私は漬け物かっ!』って言わないと」
紬「あっ…わ、わたっ」
夏奈「無理しなくていいよ」
夏奈「……」
夏奈(ひょっとしたら…)
紬「わ、私は漬け物かー」
夏奈(この人はツッコミに向いてないんじゃないだろうか?)
夏奈「……」
紬「私は漬け物かー!」
夏奈(でもいい機会だ、これを機にムギちゃんもいい方向に進むだろう……たぶん)
ガチャッ
澪「ごめん、遅れ…」
紬「私は漬け物かーっ!」
澪「えっ」
紬「……」
澪「……」
紬「オラーーー!!」
澪「な、なに!?」
夏奈「よし、いいぞムギちゃん!驚いてるぞ!」
紬「やったぁ!」
澪「ムギ…なんなんだこれは?」
紬「私、今日からツッコミキャラになったの~」
澪「え?」
夏奈「澪さん、彼女の新しい船出のためです。温かく迎え入れてあげてください」
澪「な、なんだそれ…」
紬「澪ちゃんはベースやってるのかよ!」
夏奈「ムギちゃん、そこはツッコむようなところじゃないよ」
最終更新:2010年08月28日 21:06