唯「あずにゃん…梓と付き合ってから、もう一ヶ月になるね」

梓「そ、そうですね」

唯「でも、やってることは今までと変わらない気がするね?」

梓「強いて言えば、お互いに呼び方を変えたことくらいですね」

唯「うん…なにか変わったことがあった方がいいと思って」

梓「唯先輩のこと、"唯"って呼ぶの…なんだか照れちゃいますね」

唯「梓はかわいいねえ」

唯「ふふ、みんなは私達のこと、まだ知らないんだよね」

梓「はい、憂には相談してたんですけど…」

唯「なんだか、秘密って感じでドキドキするね」

梓「そうですね」

唯「梓…もうそろそろ敬語はやめよう?」

梓「で、でも…やっぱり」

唯「私の前では恋人でいてほしいんだ」

梓「わか…ったよ、唯」

唯「ふふ、照れる梓もかわいいよ」

梓「唯…は、週末の予定とかありま…ある?」

唯「(一生懸命敬語使わないようにしてる…かわいいなあ)」

唯「ううん、ないよ」

梓「じゃ、じゃあよかったら…私とお出かけしま…しない?」

唯「うん!どこ行こっか?」

梓「地元のお祭りがあるから、そこに行きたいな」

唯「そうだったんだ!楽しみだなあ」

梓「唯は、ゆかた着たりしない?」

唯「どうしようかなあ…着て欲しい?」

梓「そ、それは唯に任せるよ!」

唯「じゃあ…いいや」

梓「えっ…あ…」

唯「梓はあんまり興味ないよね…私のゆかた」

梓「そんなことないです!」


梓「唯のゆかたが見たいからこんなこと聞いたのに…」

梓「やっぱり恥ずかしくて…素直に言えなかったんです!」

唯「…ふふ、わかってるよお」

梓「え?」

唯「梓が真っ赤になっててすごく可愛いから、ちょっといじめてみたくなっただけ」

梓「…」カァッ

唯「あと、また敬語になってるよ?」

梓「はっ…!つい…ごめんね」

唯「ううん、ちょっとずつ治していこ?2人で」

梓「はい!」

唯「ほらほら」

梓「あっ」


―――
梓「唯先ぱ…唯と2人でお祭り…」

梓「なんでだろう…付き合う前も2人で出かけたりしてたのに」

梓「すごくドキドキする…意識しちゃってる」

梓「どんなゆかた着てくるんだろう?」

梓「どんなゆかたでも可愛いんだろうなあ」

梓「私も…着てみようかな」

―――
唯「憂~、ゆかたってまだあったっけ?」

憂「小学校以来だから、もう小さいと思うよ?」

唯「そうだよね…どうしよう、週末に梓とお祭りなのに」

憂「ふふ、梓ちゃんにゆかた姿見せたいんだ~」

唯「うん…でも今からじゃ買うわけにもいかないし…」

憂「…わかった!私が作ってあげるよ!」

唯「えっ憂が!?」



週末
―――
憂「ど、どうかな?お姉ちゃん」

唯「…憂…」

憂「どこかまずかった…?」

唯「柄といい裾の長さといい…完璧だよ」

憂「ほんと?!よかったあ…初めてだし時間もなかったから…」

唯「私は憂みたいな妹がいて幸せだよおー」

憂「えへへ…ありがと」

唯「これなら梓にも自慢できるよ!」

憂「頑張ってきてね、お姉ちゃん」

唯「うん!いってきまーす!」


―――
梓「これで大丈夫かな…?」

梓「着付けなんて全然わかんないからなあ…」

梓「こんなことなら憂に聞いておくんだった」

梓「ゆかたの柄も…気に入ってもらえるかわかんないし…」

梓「でも…いっか。すれ違う人はきっと唯の方に目がいくよね、可愛いから」

梓「あっ…もうこんな時間!」

梓「急がなきゃ!」

梓「いってきまーす」


会場
―――
唯「梓…どこかな?ちっちゃいからどこにいるかわかんないよ」

梓「唯、もう来てるのかな…人が多くて歩きづらい…」


梓「うう…人ごみに流される~」

唯「ちょっとごめんなさい…っと…」

唯「あっ!あのちっちゃくて可愛らしい後姿は…」


梓「唯…どこだろ?迷子になってないかなあ…?」

ギュッ

梓「わっ!」

唯「えへへ、やっと会えたね、梓」

梓「ゆ、唯!よかった…迷子になってなくて」

梓「って!ひ、人がいっぱいいますから!」

唯「そんなの気にしないよ~!あと…敬語はなしね?」

梓「あっ、また…ごめんね」

唯「ううん、それより梓のゆかた!すごくかわいいよ~」

梓「あ、ありがとう」

梓「唯のゆかたは…もっともっとかわいいよ」

唯「えへへ、照れちゃうな~…実はこれ、憂の手作りなんだよ」

梓「て、手作りですか!」

唯「梓にゆかた姿を見せるんだって言ったら、こんな可愛いのを作ってくれたんだ」

梓「憂…ほんとにできた妹ですね」

唯「ふふ、あんなにいい妹を持てて幸せだよ~」

梓「(わたしも…唯のこんなに可愛い姿を見られて幸せ)」

梓「憂に感謝しないとだね」

唯「うん!」


梓「今日は花火の打ち上げがあるんだ」

唯「花火!やった~!」

梓「8:30からだけど、まだ時間あるから…出店回ろう?」

唯「うん!あ、噂をすればたこ焼き屋さんが!いこっ、梓!」

ギュッ

梓「わっ、ま、待って!」

―――
唯「おいひいー」

梓「ほら、あおのりが口のまわりについてるよ」

唯「梓、拭いて~」

梓「しょうがないなあ」フキフキ

唯「ふふ…あ、あっちには唐揚げ屋さん!」

唯「あそこには白たい焼き!」

梓「唯…食べ物ばっかりだね」

唯「ほら、売り切れる前にいこっ?」

梓「うん!(唯が幸せそうだから、いっか)」

―――
唯「うーん、また破けちゃった…おじちゃん、もう1回!」

梓「もう4回目だよ?金魚すくいって地味に高いし…」

唯「だってえー…なんか悔しいんだもん」

おじちゃん「お嬢ちゃん、ほれ、持ってきな!」

唯「えっ、ほんとに!?」

おじちゃん「おう!4回もやらせたらかわいそうだからな!」

梓「あ、ありがとうございます!」

唯「ございます!」

唯「やったー!トンちゃんの水槽に一緒に…」

梓「だめ!食べられちゃうかも…!」

唯「じょうだんだよ~、ちゃんとうちで飼うよ」

梓「じょうだんに聞こえなかったよ…」


ドーン


唯「あっ!始まったよ!花火!」

梓「あっ、あそこの土手、空いてる」

唯「じゃああそこに座って見よっか」

―――

梓「すごい迫力…綺麗」

唯「たーまやー!ほら、梓も!」

梓「た、たーまやー」

唯「ほんとに綺麗だねえ…」

梓「うん…」

梓「(唯と2人きりで花火…か)」

梓「(いつからだろう?"唯先輩"を意識し始めたのは)」

梓「(夏フェス?合宿?ううん、もっと前…)」

梓「(最初に軽音部に入ったときは、そんな感情、全然なかった)」

梓「(いつもダラダラしてて…練習もろくにしなくて…)」

梓「(楽譜も読めなくて…それでも楽しそうで)」

梓「(部活では練習してなくても、ライブではすごくいい演奏して)」

梓「(怠け者に見えるけど、実は誰よりも頑張ってて…)」

梓「(いつの間にか…好きになってた)」

梓「(告白したら、泣いてくれてたなあ…すごく嬉しかった)」

梓「(できることなら、ずっと一緒に…軽音部として…)」

梓「(ふふ…そんなの無理だよね…唯たちはもうすぐ卒業だもん)」

梓「(私達…卒業したらどうなっちゃうんだろう…)」

唯「梓…」

梓「…はい」

唯「キス…しよっか?」


梓「えっ!?そんな…人前ですよ!キ、キ、キスなんて…」

唯「…ごめんね、嫌だよね…」

梓「ちっ、ちがうよ!そんなことない!すごく嬉しい!!」

唯「じゃあ…キス、しよ?」

梓「でも…だれかに見られたら恥ずかしいよ」

唯「大丈夫!みんな花火見てるから!」

唯「それに…ほら、あそこの2人だって」



ホモ(AA略


梓「(あ…あれは…)」

唯「だから、大丈夫!」

梓「わ…わかった!」

唯「じゃあ、私、目瞑るね」

梓「よ、よし…」ドキドキ

唯「…」


チュッ


唯「…えへへ」

梓「…き…緊張しました…」

唯「ふふ、私もすごくドキドキしてた」

唯「緊張、ほぐれるとやっぱり敬語になっちゃうね」

梓「もうちょっと…かかりそうですね、治るまで」

唯「いいよ、ゆっくり…ね?」

梓「…うん」

唯「もうすぐ…卒業だよ」

梓「…そうだね」

唯「梓…やっぱり不安?」

梓「軽音部の方ももちろん不安だけど…」

梓「何より、唯が遠くへ行っちゃうような気がして…」

唯「梓…」

梓「大学生になったら忙しくなるだろうから…私のこと、忘れちゃうかも…とか考えて」

梓「私達…卒業したら…」

ギュッ

唯「大丈夫だよ…梓」

梓「唯…先輩…」

唯「梓に告白されたとき…すごく嬉しかった」

唯「ずっと片思いだと思ってたから…」

唯「柄にもなく、泣いちゃった」

梓「…」

唯「私にとって、梓は誰よりも、何よりも大事なんだよ?」

唯「こんなにかわいくて、しっかりしてて、それでもどこか抜けてて…」

唯「こうして梓と一緒にいられることが、一番嬉しいんだよ」

唯「大学生になったって、この気持ちは変わらないよ」

梓「…はい…っ」

唯「ま、大学生になれるかどうかはまだわからないんだけどねえ~」

梓「そんな…しっかりしてください!」

唯「わかってるよ~、さすがに今回はしっかり勉強するよ」

梓「ライブも忘れちゃだめだよ!」

唯「もちろん!一番の楽しみだからね」

唯「梓…私達が卒業しても…」

梓「大丈夫です!軽音部は守ります!」

唯「よかった…じゃあ、軽音部と、憂と、それから私も…よろしくね?」

梓「やってやるです!」

唯「ふふ…梓」


唯「これからも、ずっと一緒にいようね」


おわり



最終更新:2010年07月06日 21:48