澪(律、ムギ……恩に着るよ)

澪(唯……唯っ!)

澪「どこに行ったんだ? 教室にもいない。鞄を持って行ってなかったってことはまだ校内に……」

澪(いや、唯のことだ。きっとあれだけ取り乱してたら取る物も取らずに飛び出しただけのはず)

澪(だったら学校を出られたら探しきれないかも。まずは昇降口に……)

澪「あれは……」

澪「梓!」

梓「!」

澪「!?」

澪「梓、お前泣いて」

梓「さっさと行ってください!」

梓「唯先輩ならもうとっくにあっちに行きました! だから早く……行ってくださいよぉ……」ググッ

澪「……ああ」

澪(梓ごめん……!)


~♪

唯「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」タッタッタッタ

唯(最低だ、最低だ私……)

唯(もう軽音部にいられない……!)

唯(あずにゃんを傷つけて、澪ちゃんを傷つけて)

唯(私のせいで、軽音部がなくなっちゃう……!)

ガッ

唯「きゃう!?」

唯(手、引っ張られて……誰!?)

澪「唯!」

唯(澪ちゃん!?)

唯「……っ! 放して! 放してよぉ!」

澪「唯! やめっ、暴れるな落ち着け!」

澪(校内でまだ人残って……、そんなの気にしてられるか!)

唯「」ジワッ...

唯「どっどうじで、みおぢゃんがぐるんだよぅ!」グシュ

唯「わだじのごどなんがほうっでおいでよ!」ボロボロ

澪「心配なんだっ!!」

唯「っ!」ビクッ

澪「私が、心配なんだ。唯のことが……」ギュウッ...

唯「……うっぐ、うえっ、うええええんっ!」

唯「いっいまご、ろっ!」

唯「うっ、ぐぅうっ、うぇっえっ、ごっ、ごどわらなげればよがっだ!」

澪「……なにを……?」

唯「あず、あずにゃんのこぐはぐっご、ごどわらなげれば、あずにゃんどもながいい、ままっでっ……」

唯「けいおんぶっもっ、みんなっ、ながよぐっうっ、うぐっ、わっ、わだじがごどわっだがらぁ~!」

唯「ひぅ、うっあうっ、ぐっ……うっうううぅ!」

澪「…………」

澪(律が前に言っていた……唯は軽音部の変化を嫌うって。それは言い換えれば軽音部の、今のままを守りたいってことで)

澪(唯がいつまでも今のままでいたいって言ってたこと)

澪(梓……やっぱり唯に告白してたんだな。それを断って、多分梓が部を辞めることになるかもしれないって。そうじゃなくても前みたいには戻れないって)

唯「みっみおぢゃんなんて、りっ、りっぢゃんどいっじょにいればいっいいじゃん~! ごっぢにくんな゛よ゛ぉ~!」

澪「律は関係ない!」

澪(それは私も同じだ。でも今のままじゃ……)

澪「唯、聞いて」

唯「やっやだぁ~! うっうっう゛あ゛あ゛あ゛ぁ~ん!」

澪「聞いて! お願い……」グスッ

澪「私は……唯が好きなんだ」

澪「いつも唯のこと考えて、唯を思うと胸が苦しくなるほど好きなんだ! だから、梓の告白は断って貰わないと私が困る!」

唯「…………」ボロボロボロ

唯「うっぐぐっ、な、なんでもっどはやぐいっでぐれながっだんだよぅ!」

澪「唯……ごめん」

唯「わだじっあ、あずに゛ゃんっに゛っがっ、がわいぞうなごどじで……」

唯「……ぢがう、わだっ、わだじがっず、ずるいごど、おっおもっで、あずにゃんごべん、ごべんね! あずにゃん……!」

澪「違う、私が、私が悪いんだ……! ごめん唯」

唯「もっもっどあやぐいっでぐれればっみっおぢゃんのっばっばがぁ~!」ギュウゥ!

澪「ごめん、ごめん唯……遅くなってごめん……」ギュウゥ!

唯「ごっごんなに、ずぎなのっにぃ、ずっど、みおぢゃっ、うっ、うぅー!」

澪「私も好きだ、唯が好きなんだ……!」

唯「う゛っう゛っう゛う゛~! み、みおぢゃん……」ギュッ

澪「……うん、唯……」ギュッ

~♪

梓「ムギ先輩……?」

紬「うん」

梓「私、軽音部辞めます」

紬「…………」

梓「だって、こんな私がいたら空気悪くなるじゃないですか。皆さんを、ムギ先輩を振り回して」

梓「いられるわけ、ないじゃないですか」

梓「全部私の責任です。軽音部を壊そうとした」

紬「そう?」

梓「唯先輩は……お昼にですね、私の時は泣かなかったんです」

紬「うん」

梓「と、とても真剣に考えてくれて、とても真剣な顔で、わ、私を振ったんですよ……」

梓「ダメじゃないですか、もう……」

紬「梓ちゃん、泣いてるの?」

梓「泣いてなんかいません……」ゴシゴシ

紬「そう。ごめんね。泣かせちゃって」

梓「なっ泣いて、なんか……」グシュ

紬(ダメね私。見ているだけって決めていたのに……)

紬(……こんなにも愛おしい)

紬「」ギュウ...

梓「ふぇっ……うっうっ……うぐっうっうぇ……」ギュウゥ

紬「梓ちゃん、心配ない」

梓「うっ、ゆっ唯先輩……唯先輩……」

紬「心配ないわ。梓ちゃん……」ナデナデ

~♪
律(怒鳴った手前、居場所ないよな)テクテク
律(あ~、テキトーに歩いてたら、どこだここ?)
ガラッ
律「あれ? 和?」
和「来るんじゃないかなぁって」
律「ってことはここは生徒会室か」
和「まあそういうことね」
律「そうかー」
和「寄ってく?」
律「行くとこないしなぁ」
和「歓迎するわ」

コポコポ
和「はいどうぞ」
律「んっ……。旨いな、腕上げた?」
和「そうなの聞いてよ、最近緑茶を淹れる頻度が多くなったの」
律「ほほぉ~」
和「ムギに二回くらい教えて貰ったけど、それからやたら毎日緑茶を淹れてる気がするわ」
律「茶人になれるんじゃね?」
和「このまま続けてたら千利休を追い越しそうね」
律「緑茶も飽きてきたなー」
和「そう、なら次のご注文は?」


~♪
憂「」テクテク
憂「」テクテク
憂「」テクテク
憂「」テクテク
憂「」テクテク
ガラッ
純「よっ」ビシッ!
憂「純ちゃん部活サボり?」
純「休みだよ休み」
憂「でもジャズ研やってたよ今」
純「有給取ったの」
憂「なんで?」
純「憂とケーキバイキング行きたくなったから」
憂「……な、なんで……」
純「なぁに、伊達に中学から憂の友達やってないって」
憂「…………」フルフル


しばらく!

律「はぁ……」

律「…………苦っ」

律「やっぱコーヒーはブラックで飲むもんじゃないな……」

和「へぇ。大人ね、律」

律「!? 和……なんでここに?」

和「偶然ね。たまたま買い物の帰りに寄ったのよ」

律「マジでか……すげぇ偶然。っていうか制服のまま寄り道していいのかよ。生徒会長さん」

和「こんなところで時間潰していてもいいの? 部長さん」

律「…………。いいんだよ、色々あったから。落ち着くまで軽音部は開店休業中だよ」

律「全員暗黙の了解してる」

和「さすが軽音部。結束が強いわね」

律「……それって皮肉?」

和「まさか。前も同じようなこと言ったけど、あの子たちなら、もう少ししたら前のように戻れるって信じてるから」

律「和はすごいな」

和「律だって分かってるでしょ」

律「…………」

律「私は不安でたまらないよ……」

和「…………」

和「さっきの」

律「さっきの?」

和「偶然ってね。うそ」

律「は?」

和「いつかあんた言ってたじゃない。ここがお気に入りの喫茶店だって」

律「……あれ? そうだっけ」

和「そうよ」

律「……そっか」

和「離れてこそ、より強くなる絆もあるわ……」

和「私はあの子たちのこと、そう思ってる」

律「…………」グシュ

和「ねぇ、振られた者同士ぱーっと遊びに行かない?」

律「な、なんだよその振られた者同士ってのは」ゴシゴシ

和「細かいことは気にしない。ほら、行くわよ」グイ

律「ったく強引だなぁ。じゃあカラオケでも行くか!」

和「いいわ。一対一で私に挑もうなんて後悔するんじゃないわよ」

律「へぇ、返り討ちにしてやるよ」


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