梓(唯先輩今日は一度も抱きついてこなかったな……)テクテク

憂「梓ちゃん」

梓「う、憂?」

憂「部活の帰り?」

梓「う、うん。憂は?」

憂「夕ご飯の買い出しだよ。この時間が丁度夕方と夜の商品入れ替えの境目でお安くなるの」

梓「そうなんだ。毎日大変だね」

憂「えへへ、そうでもないよ。お料理とか好きだもん。たまにお姉ちゃん手伝ってくれるしね」

憂「そうだ、せっかく会ったんだからちょっとお茶していかないかな?」

梓「え、でも私制服だし……」

憂「大丈夫だよ、スーパーにある飲食コーナーに行くだけだから」

梓(憂ったら随分所帯じみちゃって……)

梓「そこなら気兼ねないからいいかな。あ、夕ご飯の用意はいいの?」

憂「うん。下ごしらえはしてあるから時間はあるの」

憂「良かった。最近梓ちゃんと一緒にこういうことなかったしね」

梓「そだね。純とはどうなの?」

憂「純ちゃんともたまにお茶しに行くよ。ジャズ研が休みの日とかに」

憂「今度三人でどこかに遊びに行こうよ」

梓「いいね。明日にでも純に話そう」

憂「それでね、お姉ちゃんがお風呂でのぼせちゃって部屋まで運ぶのが大変で――」

梓「唯先輩らしいなぁ、はは……」

憂「でもお姉ちゃんを担いでるときあったかくて柔らかくていい匂いがして、その前にのぼせたお姉ちゃんを介抱するのに裸で横たわったお姉ちゃんを団扇で扇いでハァハァ」

梓「わかったわかったから声抑えて!」

憂「ちゃんとタオルは掛けてたから大丈夫だよ! いかに妹の私でもお姉ちゃんの裸をそう易々と見る事は」

梓「見てる向こうのおばさんたちこっち見てるよ憂声声!」

梓「ほんと憂はお姉ちゃん大好きなんだね。唯先輩があんなにだらしがないわけだ」

憂「そんなだらしがないお姉ちゃんも可愛いよぉ」

梓(純ともいつもこんな会話してるんだろうか……)ゲッソリ

梓「あ、ねえ憂。朝言ってた唯先輩と澪先輩が遊びに行ったって話」

憂「え、ああ、うん。それがどうかしたの?」

梓「それと関係してるのか分からないけど唯先輩と澪先輩がケンカしたとかで……。憂は何か知らない?」

憂「ケンカ!? ……さあ、そんな様子はなかった気がする。本当に澪さんとお姉ちゃんがケンカしたの?」

梓「今は仲直りしたって。ムギ先輩からの情報。その、仲直りしたてだからなのか澪先輩とやけに仲が良くて」

憂「それなら良かった。お姉ちゃんの悲しむ顔は見たくないもん」

憂「あ、いつもは梓ちゃんのこと可愛がってるお姉ちゃんを澪さんに取られて妬いちゃってるのかな?」

梓「べっ別にそんなことないもん!///」

梓「憂こそ、それだけお姉ちゃん好きなのにヤキモチとか妬かないの」

憂「……それなりにはするよ。少しは、ね」オオォ...

梓「寒っ。ここ冷房かけすぎじゃないの」ガクガク

憂「なんて冗談。お姉ちゃんはお姉ちゃん。私のお姉ちゃんだもん。大丈夫だよ」

梓「そっか……」

梓(なんか達観してるなぁ。姉妹だからかな)

梓「ん……そろそろ出ようか憂」

憂「あ、そうだね。もうこんな時間」

梓「貴重な唯先輩話が聞けて面白かったよ」

憂「そう、良かった。今度はゆっくり遊ぼうね」

梓「うん。それじゃまた明日」

憂「じゃあね。……あ、梓ちゃん」

梓「え、なに?」

憂「……ううん、ごめん。なんでもない。ばいばい」

梓「ばいばーい」

憂(梓ちゃん、……ごめんね)

梓(なにか引っかかるな……)


……

澪「…………」

澪「はぁ。こうしていつまでも携帯見つめていても仕方ないよな」

澪「んんん~……ていっ」ピッ

プルルルル プルルルル

澪(……出ないな)

プルルルル プルルルル

澪(い、一旦かけなおそう)

プル

唯『もっもしもしもしもし澪ちゃん!? んどぅわわああ!』ボスッ

澪「唯!?」ドキッ

唯『あいたた。だ、大丈夫。ベッドに倒れただけ』

澪「な、なにやってんだよ」ホッ

唯『あはは。携帯部屋に置きっぱなしで着信きたから急いで取ったらね』

澪「そんなに急ぐことないのに」

澪(私からの着信だから? ……なんてそんなわけないか)

唯『んで澪ちゃんなにー?』

澪「い、いや特別用事があったんじゃないけど、なんとなく……。なんかしてた?」

唯『……ううん! 全然! 暇してたとこだったからちょうど良かったよ!』

澪「それもどうかと思うがな。明日の宿題済ませたか?」

澪(あ、そういう話したいんじゃないのに……)

唯『い、今からやろうと思ってたとこだよ!』

澪「じゃあこうして電話してるのは悪いな」

唯『う~。澪ちゃんのいじわる』

澪「あはは。ごめん。でも長話はできないね」

唯『あ、そうだ! それなら電話で宿題教えてよ!』

澪「それは無理」


~♪

澪「あ~うんうん、わかるわかる」

唯『でしょでしょ~。それで憂ったらねー――』

澪「――それは憂ちゃんの言うほうが正しいな。あ、もう二時間も過ぎてる」

唯『え、あれ? ほんとだ』

澪「じゃあそろそろ切るね。唯宿題忘れるなよ」

唯『えー、もう少し話そうよぅ』

澪「だーめ。これで唯が宿題できなかったら私の寝覚めが悪いから」

唯『む~……。わかったよ。今からやるよ』

澪「まあ分からないところあったらメールでもしてくれ」

唯『電話するよ』

澪「それでもいいよ。じゃあまた明日」

唯『うん。じゃあね。電話ありがとね』

澪「…………」

唯『…………』

澪「唯、電話切れよ///」

唯『澪ちゃんこそ切ってよ///』

澪唯(この展開は普通に切りづらい……///)


~♪

澪「ふぅ。電話切るのも一苦労だな」

澪「…………」

澪「ふふっ」マクラギューッ

澪(なんだろう。唯と話してるととても楽しい)

澪(はぁ……なんか今日は暑いな。体がぽかぽかする……)

澪(本当は私ももっと電話してたかったけど、私のせいで宿題忘れるなんてことになって欲しくないしな)

澪(そうだ、今からメールもしてみようかな)

澪(いやいやいや、メールし始めて止まらなくなったら本末転倒じゃないか)

澪(でも返信来ても私が止めればいいよな)

澪(でもでも私が返信止めたら唯どう思うんだろ……)

澪「ん~どうしよう~!///」バタバタ



~♪

唯「澪ちゃんから電話くるなんて。う~!///」バタバタ

唯「嬉しいよぅ」マクラギューッ

唯「和ちゃんの言ってたこと、本当だったりして///」

唯「そしたらいいなぁ……」

唯(でも、私のこの気持ち、変なのかな。だってやっぱり女の子同士だし……)

唯「ううん! 大丈夫だよきっと! ね、ギー太!」

メルメルメル♪

唯「ひゃっ!? 澪ちゃんからメールかな?」

唯「あ、あずにゃんだ。『起きてますか?』って」

唯「『起きてるよ。あずにゃんどうしたの?』っと」

メルメルメル♪

唯「はやっ。『良かったら明日朝練付き合って貰えませんか』か……」

唯「今から宿題して朝練のために起きたら寝る時間少なくなっちゃうなぁ」

唯「でも他ならぬあずにゃんの頼み事だもんね。『いいよ~。いつもの時間に玄関で待ち合わせよう』っと」

メルメルメル♪

唯「あずにゃんってば返信早すぎ。ケータイマスター? 『ありがとうございます。それと、遅刻しないでくださいね』って」

唯「もー。私ってばそんなに信用ないのかなぁ」

唯「ういー」

憂「なにお姉ちゃん?」ガチャ

純『憂? う』ピッ

唯「ごめん憂、明日部活の朝練行くから早めに起こしてくんないかなぁ」

憂「わかったよお姉ちゃん。なら今日は一緒にお風呂入ろっ♪」ヌギヌギ

唯「前後の繋がりがよく分からないしパンツから脱がなくていいよ私今から宿題しなくちゃいけないんだぁ」

憂「そうなの……」シュン

唯(パンツ半脱ぎでシュンとしちゃうレアな憂を見られるのは姉の特権だね! ハァハァ)



純『ぐぬぬぬぬ!』



~♪

梓「ほぅ……。良かった、朝練楽しみだな。二人でやるの久しぶりだ」

梓(澪先輩とのこと……気になるなぁ)

梓(先輩方もどうして誰も話してくれなかったんだろ。ギクシャクしてたっていうから、話題に出しづらかったのかな)

梓(やっぱデート……なのかな。二人きりで)

梓(でもそんなことないよね。女の子が好きだなんて、そうそう無いんだし)

梓(そうそう無い……唯先輩だって、そうなんだろうな……)

梓「…………」

梓「あーもう! うじうじ考えていても仕方ない! 明日は朝練だから今日は寝よう」

梓「おやすみなさい」

梓「…………」

梓(私は……どうしたいんだろう)

梓「…………」

梓(唯先輩……)

梓「…………」スゥスゥ



~♪

唯「はがっ……ぐぅぐぅ……もがっ……」

憂「もうお姉ちゃんたら、机で寝てたら風邪ひいちゃうよ」

憂(宿題半分も終わってない)パラパラ

憂(澪さんいるから、私が宿題を手伝ってあげることはできないけれど……)

憂「ベッドで寝ようね、お姉ちゃん」ヒョイ...トサッ

唯「んん……み、おちゃ……」ムニャ

憂「…………」

憂「頑張ってね、お姉ちゃん」チュッ



~♪

澪「…………」ウツラウツラ...

澪「はっ。ん……唯からメールは来てないか。そろそろ私も寝ようかな」

澪「……もしかしたらこれから来るかもしれないから、もう少し起きてるか……」ウツラウツラ...



チュンチュン

澪「結局こなかったか……ふぁ、眠い……」



~♪

唯「ふわぁあ~。あずにゃん今朝は機嫌がいいね」

梓「そうですか? ま、まあ唯先輩が遅刻しないで来たのに怒る理由なんてありませんよ」

梓「それにしても、そんなに眠いですか」

唯「昨日はちょっとね、夜更かししちゃって」

梓「もう、朝練あるって連絡した意味ないじゃないですかぁ」

唯「ごめんごめん。じゃあ目覚ましに一曲弾こうか」

梓「はいっ!」キラキラ

唯「と、言うとでも思ったかー!」ダキッ!

梓「にゃあんっ! ゆっ唯先輩! 朝からもぅ!」

梓「……///」

唯「おろ、あずにゃん具合でも悪いの?」

梓「え、そんなことないですよ。いたって元気印です」

唯「だぁって、こういう時はいつもてーこーするじゃん」

梓「し、してますよ今も!」

唯「まあいいやぁ。うりうり~朝一のあずにゃん分補給ぅ~」グリグリ

梓「も~早く練習しましょうよ///」

梓(良かった。いつもの唯先輩だ)

梓「ってちょ、ほんとにもうやめ……いやぁなんかカクカクしてる!」

唯「もうちょっと、もうちょっとだけ。お゛ぉおおお゛ー」カクカク

梓「れ、練習するですー!///」




唯「っていうことがあってねぇ。なんだかあずにゃんがしおらしくて可愛かったよ」

澪「ふーん」ムスー

律「部長に断りもなく朝練とは何事だ!」

和「律に断りを入れても状況は変わらないと思うけど」

和「…………」チラッ

和「澪、目の下に隈ができてるわよ」

澪「ああ、気にしないでいいよ……」グテー

澪(梓と朝練か……宿題やれてないんだろうな)

唯「澪ちゃん大丈夫?」

澪「大丈夫」ムスー

唯「???」

律「みーおー。宿題……写させてくれないかしらん?」

唯「あっ! 私も途中までやったけど寝ちゃったんだった。澪ちゃん私もお願い~」

澪「い・や・だ」

唯「えっ、あは、だ、だめかな」アセアセ

澪「だから昨日ちゃんとやれって言っただろ」ムスッ

律「え~! のど」

和「震えて眠れ」

律「」ガクガク

紬「遅れちゃった。みんなおはよう」

和「珍しいわね。ムギがこんな時間に来るなんて」

紬「ええ、ちょっと用事があって」

律「へー。なんの?」

紬「大したことではないの。あ、さわ子先生が来たわ」

唯「…………」チラッ

澪「…………」ムスー

和(やれやれね)

紬(朝練?の様子バッチリ撮れてたわ!)ハァハァ



……

澪(朝はちょっと強く言いすぎたかな……)カキカキ

澪(次の時間が宿題ある授業か……。唯、順番で当たりそうだったもんな)カキカキ

キーンコーンカーンコーン

唯「あ゛~。休み時間だぁ~。カレー食わせろ~」

澪「唯」

唯「澪ちゃん。どうしたの?」

澪「ほら、これ」カサ

唯「ルーズリーフ? あ、宿題の部分だ」

澪「今回だけだからな」タッ

唯「澪ちゃん……ありがと!」



和「澪」

澪「ん、なに?」

和「あんまり唯を甘やかしちゃだめよ」

澪「な、なんのこと?」

和「宿題」

澪「う、なんとなくだよ」

和「ふふ。まあ頑張ってちょうだい」

澪「へ、なにを?」

和「なんでもない。独り言」

澪(なんだろ……)


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