澪「ああ、また明日」

唯「あっ…」

澪「どうした?」

唯「雪が降ってきたよ」

澪「えっ」



澪「…ホントだ、今年は早かったな」

唯「うん、まだクリスマス前なのに凄いね」

澪「地球温暖化って言っても、四季の流れは正常なんだな」

唯「うん、私日本に生まれてきてよかったって思う」

澪「そうなると、地球に生まれてきてよかったとも言えるな」

唯「そうだねぇ」

澪「…」


……

唯「あっ…今日の水すっかり忘れてた」

澪「今日はしなくていいと思うよ」

唯「?どうして?」

澪「春や夏じゃないからさ、何度も水を飲んでも土に流れていくだけなんだよ」

唯「そっか、あまり飲みすぎも良くないんだね」

澪「ああ、何事も程々が一番さ」

唯「そうなんだねぇ」

澪「あっ、肥料だけは撒いといてくれないかな?冬になると栄養が吸収しにくくなるんだよ」

唯「りょーかーい」


……

唯「うんしょ、うんしょ」

澪「唯、何してんだ?」

唯「あっ澪ちゃん」

唯「これからどんどん風が冷たくなるでしょ?」

唯「だからこうして風除けに砂袋を積み重ねたら大丈夫かなぁって思ったの」

澪「唯…何もそこまでやらなくても」

唯「ううん、これは私がやるべき事なの」

唯「澪ちゃんが病気になったら、世話してる私の責任だから…」

澪「…」

澪「だから澪ちゃん、もう少しだけ我慢しててね」

澪「…あぁ、ありがとう」


唯「澪ちゃん、気分はどう?」

澪「ん、唯のおかげで暖かいよ」

唯「そっか、よかった~」

澪「でもこれだけの砂袋を私の周りの置くのはキツかっただろう?」

唯「あはは…普段ゴロゴロばっかりしてるからちょっと疲れたかな」

澪「まったく…お前って奴は」

唯「でもね、別にいいんだ」

澪「唯?」

唯「こうやって澪ちゃんの幸せそうな笑顔が見れたら…」

唯「私、何だか疲れなんてどっか行っちゃったみたいだもん」

澪「…ぷっ、何だよそれ」

唯「あっバカにした!」

澪「いやいや、別に馬鹿にはしてないよ」

唯「むー」

澪「でもさ」

唯「ん?」

澪「…何かいいよね、こういうの」

唯「…うん、そうだね」

澪「…」

唯「…」









唯「ぐぅ…」

澪「寝るなっ」 ゴチンッ

唯「あうっ」


……

唯「…雪、積もってきたね」

澪「そうだな」

唯「澪ちゃんは大丈夫?寒くない?」

澪「ん…ちょっと寒いけど、まぁ我慢できるよ」

唯「ちょっとでも寒かっただめだよ」

澪「大丈夫、私は土に埋まってるから」

唯「でも…」

澪「唯、私はあくまで土に埋まってるんだ」

澪「時にはつらい事を我慢しないと、本当の意味で成長する事はできない」

唯「…」

澪「そんな顔をするな、これは私が自ら望んだ試練だ」

澪「必ず乗り越えて、唯と一緒に軽音部に戻るよ」

唯「…約束だよ」

澪「うん、約束」


……

ザッ、ザッ、ザッ…



唯「ハァ…ハァ…」

唯「っ…!」

唯「うっ…グスッ」

唯「ハァ…ハァ…!」



ザッ、ザッ、ザッ…



唯「あと少し…あと少しの我慢だよ、澪ちゃん…!」

唯「澪ちゃん!」

澪「…」

唯「澪ちゃん…澪ちゃん!」




澪「…ぁ、唯」

唯「澪ちゃん…よかった…よかったよぉ」

唯「ヒック…私、もう…ダメかと思って…」

澪「…馬鹿だな、ちゃんと約束したじゃないか」

唯「だって…だってぇ…」

澪「うん…心配かけてごめんね」

唯「グスッ…もう、雪なんかに埋もれちゃダメだからね…」

澪「あぁ、私が埋まるのは土だけだ」

唯「澪ちゃん…」

唯「ねぇ澪ちゃん」

澪「どうした?」

唯「私ね、二人で暖かくなる環境を考えたの」

澪「二人で?」

唯「うん」




澪「これ…マフラー」

唯「えへへ…温かいでしょ?」

澪「…うん、温かい」



唯「あったかあったか…」

澪「…あったか、あったか」



――――――――――――


澪「ただいま、みんな」

律「澪!お前…戻って来れたんだなっ!」

梓「おめでとうございます!澪先輩は桜ヶ丘高の英雄です!」

紬「唯ちゃんもお疲れ様。一年間よく一人で頑張ったね」

唯「えへへ…それ程でも」

澪「いや、唯はよくやってくれた」

澪「私は唯のおかげでここに戻ってくる事ができたんだ」

澪「お前はもっと自分の事を誇っていい。唯にはその価値は十分にあるんだ」

梓「そうですよ、いつもも怠けていた唯先輩が毎日一人で澪先輩の世話をしたのですよ?びっくりです」

律「そうだぞ唯。お前は凄いよ、一年間埋まり続けた澪と同じくらいにな!」

唯「み、みんな誉めすぎだよ~」

紬「あらあら、唯ちゃん照れてる?」

唯「はわっ!そ、そんな事ないよ!」


澪「クスッ…お前達は相変わらずだったみたいだな」

律「なんだよーそれじゃ私達が全然成長してないみたいじゃないかー」

梓「律先輩は私から見て去年と全く変わってないと思います」

律「唯、梓ペロペロしていいぞ」

唯「わーい」ガバッ

梓「きゃあ!?唯先輩そこはダメェ!」

紬「あらあらまぁまぁ」

澪「こらっ!せっかく揃ったんだから遊んでないで練習するぞ!」

律「そうだな。へへっ…このメンバーで練習するのも久しぶりだな」

唯「うんっ!私頑張っちゃうよ!」

律「よし!じゃあみんな位置につけぇ!」


律「みんな、準備はいいな?」

澪紬梓唯「…」コクッ

律「じゃあ行くぞ!ワンツースリーフォーワンツー!」





唯「ねぇ澪ちゃん」

澪「何だ?」

唯「結局澪ちゃんって、何で土に埋まってたの?」

澪「あぁ、それはね…」







「そこに、土があったからさ」




      ._
       \ヽ, ,、
        `''|/ノ
         .|
     _   |
     \`ヽ、|
      \, V
         `L,,_
         |ヽ、)  ,、
        /    ヽYノ
       /    r''ヽ、.|
      |     `ー-ヽ|ヮ
      |       `|
      |.        |          ┼ヽ  -|r‐、. レ |
      ヽ、      |          d⌒) ./| _ノ  __ノ
        ヽ____ノ




最終更新:2010年01月28日 03:01