唯「あっ! そうだ忘れてた!」
律「なんだ?」
唯「見て見て! ほら、これ!」
律「うおっ! なんか高そうな時計だなっ!」
唯「えへへ~、憂に合格祝いにもらったんだぁ」
憂「買ったのはお父さんとお母さんなんですけどね。私は渡しただけで」
律「へ~いいな~」
澪「…………」
唯「りっちゃんはまだ合格祝いもらってないの?」
律「私はまだだな。てかうちの親はそんなん用意してんのかなぁ……」
唯「あ~、もしかしたら入学式に渡す派なのかなぁ?」
律「どうだろうな。まぁあんまり期待しないでおくよ」
律(つかこの会話の流れはやぱいな……)
唯「ところで、澪ちゃんは合格祝い――」
澪「」ピクッ
唯「あっ!、いやなんでもないや~。ごめんごめん」
澪「…………」
律(唯…お前ってやつはほんとに……)
憂「お、お姉ちゃんそろそろ急がないと学校遅れちゃうよ!」ガシッ
唯「えっ? ちょっ――憂! なんで急ぐの? う~い~!」
憂「ごめんなさい律さん、澪さん! 私たち先に行きますね!」
律「…………」
澪「…………」
律「行っちゃったな…」
澪「……うん」ドンヨリ
律(うわ~せっかく立ち直ったと思ったのに唯のせいで……)
律「私たちも行こうぜ」
澪「…………うん」
律「…………」
学校
憂「それじゃお姉ちゃん私はここで」
唯「うん、それじゃ」
憂(やっぱり…早く着いちゃったな)
ガラガラ
梓「あっ、憂おはよー」
憂「おはよう、梓ちゃん早いね」
梓「うん、今日はたまたまね」
注)梓と憂は同じクラスです
梓「なるほど…今日の朝そんなことがあったんだ」
憂「うん…お姉ちゃん悪気はないんだけど、ちょっとだけぬけてるとこあるから…」
梓(ちょっと?)
梓「憂も大変だね。でも澪先輩が落ちるなんて意外だったなぁ」
憂「うん…澪さんは残念だったよね。あんなに頑張ってたのに」
梓(澪先輩って勉強でも努力の人なんだなぁ。かわいそうに)
梓「でも来年は私たちの番だからね。気抜かないようにしないと明日は我が身だよ」
憂「え? 梓ちゃんもう志望校決めてるの?」
梓「うん。って言っても決めたのはきのうだけどね」
憂「ホントに?」
梓「うん、唯先輩たちと一緒のとこに行くつもりだよ。憂もそうなんでしょ?」
憂「えっ!? なんでわかったの?」
梓「そりゃわかるよ。 憂の考えることだもん」
憂「そっか~。それじゃ今年は一緒に勉強頑張ろうね!」
梓「うん」
……
ガラガラ
唯「和ちゃん、ムギちゃんおはよ~」
和「あら、今日は早いのね。おはよう」
紬「おはよう唯ちゃん」
唯「いや~なんか憂がいきなり走りだしちゃってさ~」
注)5人はみんな同じクラスで担任はさわ子です
唯「そうだ! 2人ともこれ、見て見て!」
紬「あら、ステキな時計ね唯ちゃん!」
和「ホント、いい時計ね。高かったんじゃないの」
唯「えへへ、ありがと~、でもいくらしたかはきいてないんだぁ」
和「あぁ、もしかして合格祝い?」
唯「そうそう、憂にもらったんだ~」
紬「え? それ憂ちゃんが?」
唯「ううん、買ったのはお父さんとお母さんって言ってたよ」
紬「そっか、そうよね。いくら憂ちゃんでも高校生がバイトしたくらいで買える代物じゃないわ」
唯「そっか~」
和(え……? 実際いくらすんのよそれ…?)
唯「和ちゃんは合格祝いもらってないの? 国立に合格したのに」
和「私はまだよ。まぁきっとなにか用意してくれるとは思うけど」
唯「ムギちゃんは?」
紬「私もまだね」
唯「そうなんだ。ところで和ちゃんはもらうなら何がほしい?」
和「そうね~…唯みたいに時計も嬉しいけど、私はパソコンがいいわね」
唯「パソコンか~高そうだね…」
和「そうでもないわよ。別にそんなにハイスペックなのいらないし」
和「あっ、でもモニタはいいやつ使いたいわね」
唯「へ~」
和「まぁ合わせても10万そこそこだと思うけど」
唯「じゅ、じゅうまん!」
唯「私そんな大きな買い物したことないよ……」
紬(そういえばギターのお金って結局返してもらってないわ……)
唯「あーあ、私もパソコンにすればよかったなー」
和「時計だってステキじゃない」
紬「そうよ唯ちゃん」
唯「そうだけどー。10万あればこの時計5個は買えるよ」ブーブー
紬「そんなことないわよ唯ちゃん」
唯「え?」
紬「その時計があればギー太が2本は買えるわよ」
唯「えぇぇぇぇ!? ホントに!?」
紬「ホントよ」
唯「この時計10万円もするんだ~!!」
紬「…………」
唯「それでムギちゃんは合格祝いに欲しいものとかあるの?」
紬「そうね~……」
唯「時計とかパソコンとか?」
紬「う~ん…時計ねぇ……」
唯「あはは、ほしいものが色々あると悩んじゃうよね~」
紬「ええ」
和(絶対違うと思うわ……)
ガラガラ
唯「あっ! りっちゃんに澪ちゃん! おはよ~」
律「おう、3人ともおはよう!」
澪「……おはよう」
紬「おはよう。りっちゃん、澪ちゃん」
和「おはよう」
和(やば……まだ澪の顔まともに見れないわ…)
唯「今ね~合格祝いに何がほしいかって話してたんだ~」
澪「…………」
律「へ~…そうなんだ……」
律(どうしていつもいつも狙ったようなタイミングなんだ……)
紬(この話題はまずいわ…)
和(なんとか話題を変えないと…)
キーンコーンカーンコーン
ガラガラ
さわ子「は~い、みんな席について~!」
律(さわちゃんナイス!)
紬(助かりました)
和(助かった……)
さわ子「ほら、静かにしなさい! 自由登校だけど一応出席はとるわよ」
さわ子「ええと…だいたいみんないるわね」
和(え? 何人かいないと思うんだけど…)
律(適当すぎる…)
唯「も~さわちゃん先生は適当すぎるよ~」
さわ子「いいのよ、どうせもう卒業するだけなんだから。そもそも――えっ!」
唯「さわちゃん先生どうかしたの?」
さわ子(唯ちゃんの左腕に光るあれはまさか…いえ、そんなはずないわ…高校生が持てるような代物じゃないはず……でも)
唯「へ? 私?」
さわ子「あ…あぁ、別に大したことじゃないの。ステキな時計ね唯ちゃん」
唯「えへへ~そうでしょ~! 合格祝いにもらったんだ~!」
さわ子(あぁ、そういえばこの子たちきのうが発表日だったわね。ということは唯ちゃんは合格したのね)
さわ子「そういうことだったの。まぁなにより合格おめでとう!」
唯「さわちゃん先生、ありがと~」
さわ子「正直な話あなたが一番心配だったのよ~軽音部4人で同じ大学に行くなんて言い出すから」
さわ子「他の3人はともかくあなただけは本当に心配だったんだから」
唯「え~さわちゃん先生ヒドいよ~」ブーブー
律(あれ? なんだこの流れ……)
紬(嫌な予感がるすわ……)
和(大丈夫…これは私のせいじゃない……)
さわ子「まぁ、とにかく軽音部の顧問としてもあなたたちの合格を嬉しく思うわ!」
さわ子「4人とも合格おめでとう!」
クラスメイトA「おめでとう!」
クラスメイトB「よかったね!」
その他クラスメイト達「おめでとー!」
パチパチパチパチ
律(あれ? いつの間にか勝手に話が進んでるぞ……)
紬(こんな気まずいスタンディングオベーションは初めてだわ……)
和(いろんな意味で引っ込みがつかなくなってきたわね……)
澪「…………」
パチパチパチパチ
唯「あれ~~?」
クラスメイトA「どうかしたの唯ちゃん?」
唯「みんな~違うよぉ! 4人じゃないよぉ」
クラスメイトB「え?」
唯「澪ちゃんは落ちたんだよぉ、合格したのは私とりっちゃんとムギちゃんの3人だよ!」
パチパチパ…………
クラスメイト達(え………?)
澪「…………」
さわ子「え…? 唯ちゃん今なんて?」
唯「だ~か~ら~! 澪ちゃんは落ちたんだよ、1人だけ!」
さわ子「…………」
シーン
さわ子「澪ちゃん…本当なの……?」
澪「……はい」
律(唯…お前ってやつは……)
紬(どうして……)
和(もう帰りたい……)
ザワザワザワザワ
クラスメイトA「うそっ、秋山さん1人だけ落ちたんだ」ヒソヒソ
クラスメイトB「うわ~かわいそ~」ヒソヒソ
クラスメイトC「え~頭よかったんじゃないの~」ヒソヒソ
クラスメイトD「唯ちゃんでも受かったのにね~」ヒソヒソ
クラスメイトE「ひさ~ん」ヒソヒソ
澪「…………」
さわ子「ちょっと、みんな静かにしなさい!」
シーン
さわ子(あれ? これってもしかして私のせい…? 私やっちゃった?)
さわ子「ええと……ホームルームはこれで終わりよ。それじゃみんな今日も頑張ってね!」
ガラガラ ピシャ
律(おい!!!!)
紬(逃げた……)
和(私のせいじゃない…私のせいじゃないわ……)
ザワザワザワザワ
澪「…………」
ザワザワヒソヒソ
澪「…………」
律(この雰囲気はまずいな……)
紬(声をかけてあげたいけどなんて言えば……)
和(澪……私にはどうすることもできないわ……)
澪「…………」ガタッ
律「お、おい澪どこ行くんだよ?」
澪「……保健室」
律「そ、そうか。先生には私が言っとくよ」
澪「ありがと……」
ガラガラ ピシャ
シーン
クラスメイトA(いたたまれなくなったんだわ……)
クラスメイトB(かわいそ~)
昼休み
唯「澪ちゃん早退しちゃったんだって?」
律「みたいだな……」
唯「なんでだろ~? 風邪でもひいちゃったのかなぁ? そういえば元気なかったよね~」
律(いや、お前のせいだろ!)
紬(唯ちゃん…ホントに自覚ないのね……)
和(あんたのせいよ!)
最終更新:2010年01月26日 02:39