律「全部、唯の誕生日を、サプライズにするための、ドッキリだったんだ!」

唯「え…ウソ…そんなはず…」

紬「辛かったよね、唯ちゃん」

憂「ごめんねお姉ちゃん…」

澪「やりすぎなんだ!律は!」ゴツン

律「あいたっ」

梓「まったくです!最低です!唯先輩はさっき…」

唯「待って!あずにゃん」

梓「…」

唯「私、こんなことしてもらう資格ないよ…」

律「な、なんでだ?…って、やっぱり怒ってるよな、私のこと」

律「ごめん!本当にごめん!許してくれよ!」

律「面白半分でやったら、後に引けなくなっちゃって…」

律「あっ…、突き飛ばした傷、大丈夫か…?」

律「…もしかして私のこと、嫌いになったか?当然だよな…」

律「もし殴って気が済むならいくらでも…」

唯「どうして?謝るのは私だよ!」

律「ええっと…話がかみ合ってないな…」

律「どこから話そうか…」




この日は金曜日

土曜日は各々がドロドロした思いを胸に過ごした

唯と和は仮想デートを繰り返す

澪と梓と紬は謎の密会

律は鏡の前でおかしーしと叫び続ける

そして日曜日が来るのであった



らへんの裏側



~~初デートの前夜~~

律「うう…カチューシャ外していくべきか…?」

プルルル

律「カズくんじゃん!」

律「も、もしもし」

和「和だけど」

律「え?!ちょ、なんで和がこの番号からかけてくるんだよ!」

和「カズは私、あの手紙を書いたのは私じゃないけどね」

律「ほぇ…?じゃああれは」

和「悪戯ね」

律「…」

律「…あと誰が絡んでるんだよ…」ショボーン

和「唯だけよ」

律「唯か…意外だな」

和「怒んないの?」

律「怒るっていうかさ」

律「私バカみたいじゃん…またはしゃいで。恥ずかしいぜ…」

律「澪に知られたら…」

和「いい案があるわよ。他のみんなには内緒で、騙されたふりして男装した私とデートするの」

和「しばらくカップルごっこして、みんなを騙すの」

和「そうすれば、騙されたのは律じゃなくて、みんなじゃない?」

律「なるほど。悪くない…」

律「あいつらなら、明日のデート尾行しかねないからな…」

律「羨ましがる澪を尻目にデートか。面白いかもな!」

和「偽ラブレターを唯が知らないふりしてるのは本当に怒らないの?」

律「んー、別に怒ってはないな。恥ずかしいからやめろ!とは言いたい」

律「てか和はなんでこんな悪趣味な遊びしてんだよ」

和「私も唯を騙したいの」


律「なんで?」

和「今月末、唯の誕生日じゃない?」

律「あ~、そうだな」

律「去年は軽音部メンバーは誕生日知らなくて、当日まで唯が言わないから、なーんにも用意できなかったんだよな」

和「今年はサプライズにしようと思うの」

和「唯には可哀そうだけど、私と一緒に律を騙した気になってもらおう?」

和「途中で律がカズの正体を見抜いて、唯に怒る芝居をするの」

和「そして、部室から何日か締め出す」

和「その間に、飾りつけたり、準備をするの」

律「ず、ずいぶん手の込んだサプライズだな…」

和「唯は毎年誕生日絡みにだけは鋭いのよ。これくらいやらないとバレるわ」


律「う~ん、でも前半のは面白そうだけど、後半のは唯にイジメみたいなことするんだよな」

律「気が引けるな…」

和「ならいいわ。澪にあのラブレターのことを話してドヤ顔されるのね」

律「わ、わかった!やるってば!」





律(昨日は色々髪型とか服とか考えてみたけど、結局いつもと変わらないな…)

律(人間そんなに急には変われないって!)

和「田井中さん?」

律「!」

和「待たせてゴメン。先に着いてたんだけど、…緊張して中々声かけられなかったんだ」

律(うわ///カッコよすぎだろ!)



~~~~~~

澪(まぁお約束通り尾行してる訳だが)

梓(カズくん超カッコいい件)

ドカッ

紬(また木を殴ってしまったわ…)

唯(いいよ和ちゃん、台本完璧だよっ)




らへんの裏側


~~一回目のデートの日~~

律(あいつら本当に来てる…あれで隠れてるつもりかよ…バカだ…)

律(和が見当たらないけど、まだ来てないのか?)

律(本物っぽく見せるデートで男が遅刻はマズイだろ…いや、漫画で見ただけだけどさ)

和「田井中さん?」

律「!」

律(え?な、ナンパ?!いや、これが和か!?)

律(うわ、カッコよすぎるだろ!)

和「何から乗ろうか」

律「えぇぇぇと///」

和(ちょっと律、いくら唯たちが見てるからって、キャラ作りすぎよ)ヒソヒソ

律(うわっ!あ、あんま顔近づけるな!ドキドキするだろ!)

和(そんなんじゃ逆に疑われるわよ、もっと自然体でいてよ)

律(わざとじゃねーし!)


観覧車

和「ふぅ…疲れるわ」

和「あの子たち、あれで隠れてるつもりなのかしら。乗ってるの隣のゴンドラじゃない…」

律「…なぁ。まだデート中だろ。男口調で喋ってくれよ」

和「今は聞こえてないからいいじゃない」

律「で、デート中なんだからダメだ!最後まで気を抜かないと危ないだろ!?」

律「私も、女モードに戻るから!和も戻ってくれよ」

和「…あんたのデートしてる女のイメージ絶対間違ってるわ…」


律家前

律(送ってくれてありがとな…あいつらも最後までついてきたな)ヒソヒソ

和(じゃあね律)


律(はぁ…なんか夢みたいだったし、私も私じゃないみたいな感覚だったな)

律(すっごくドキドキした)

律(でも和…なんだよな。てかそもそもデートのフリなんだし)

律(和は冷静だったな…経験豊富なのかな)

律(唯の誕生日まで、あと2回しか日曜日はない)

律(あと多くて2回か…いや土曜日も入れれば4回…平日だって部活サボって)

律(って、何考えてんだ私は!)






次の日

部活


ヴィーン

律「」ポチポチポチポチ


澪梓紬「…」


ヴィーン

律「」カチカチカチカチ

澪梓紬「…」


唯「りっちゃん、昨日デートだったんでしょ。どうだった~?」



らへんの裏側



~~~二回目のデートまで~~~

律(デートのことから頭が離れない…)

澪「なぁ律…」

律「ウザい」

澪「…」

律(そうだ…メールしよう)

律(これは芝居なんだもんな、女の子っぽく…小文字を使って…)

律(よし…)


ピピピピ

律(え、和から電話!?)

律「か、カズくんだ!」

ガラッ

律「び、びっくりしたぁ。なんだよ」

和「驚いたのはこっちよ。なにあのメール。もしかして誰かにバレたの!?」

律「な!?正真正銘私が出したメールだ!」

和「この女の子女の子したメールは何よ…」

律「別にいいだろ!メールも気を抜いたらダメだぞ!」

律「もし誰かにメール見られた時の、対策にもなるし!」

和「…とりあえず、あんたの女のメールのイメージが変ってることはわかったわ」



……

唯「それで~次は水族館デートで~」

和(さっきからメールの頻度が凄くて疲れる…)

唯「メール見せてっ」

和「あっ…ちょ…」

唯「りっちゃん恋する女になりきってるね~」

和(危なかった…確かに対策にはなったわね)


唯「それでね、りっちゃんをこっぴどくフッて、男恐怖症にして…」

和(この子…)

唯「そうすればりっちゃんは私と仲良しうんたん♪」

和(律への嫉妬で完全にネジ狂っちゃってるわ)

和(律の相手も疲れるし、次で最後にした方が良さそう)

和(それに、この唯には少しキツいおしおきが必要ね)

唯「さ、メールして」



……

律「お、メール」

和(日曜に水族館デート。それで最後)

律「えっ…最後?もう?」

律「…」

律「は!?なに落ち込んでるんだよ私は!芝居だぞ!これはフリだぞ!」

律「と、とりあえずお弁当作るって約束したし、憂ちゃんに料理でも習うか~!ははは」

律(くそっ、どうしちゃったんだ私は)


唯「りっちゃんどうしたの?私いま和ちゃんといるんだ」

律「えっ?」

律(あ…そっか、和は唯とデートのこと考えてるんだもんな)

唯「憂に料理を?そんなのりっちゃんのキャラじゃ…」

律(和は唯の誕生日のために私とデートしてるんだ)

律「なんだよ~いいだろ」

律(幼馴染だもんな…)






そして次の日曜日に二週続けてのデート!


律「水族館なんて小学校以来///楽しみ///」

和「…良かった。子供っぽいって思われないか、心配してたんだ」

律(今日もカッコいいな///スタジャン似合ってる///)

和「なんか律ちゃんの服、先週とはちょっとイメージ違うね」

律「変かな…?」ショボーン

和「可愛いよ。俺は好きだな」

律「///」




らへんの裏側



~~~デート二回目~~~

律(やっぱカッコいいな…普通にモテそうな男の子に見える…)

律(今日はちょっと服装いつもと変えてみたけど気付いてくれるかな)

和「律ちゃんの服、先週とはちょっとイメージ違うね。可愛いよ。俺は好きだな」

律「///」

律(ヤバい。素で嬉しい…)

律(は、待て待て。これはあいつらが尾行してるから聞こえるように言ってるだけなんだよな)

律(でも、私の変化に気づいてくれた事には違いないよな…)


和「けっこう中暗いね…混んでるし。離れないようにね」

律「こうしよーよ///」

ギュッ

和(ちょっと、何してんのよ)ヒソヒソ

律(いいじゃん、自然体じゃん)

和(はぁ…まぁいいけど)

律「はい、あ~ん」

和「あ、あ~ん」パクッ

和(ちょっと!)

律(いいじゃんいいじゃん)

和(澪暴れてるわよ…)チラッ

律(あいつら、あれはあれで楽しそうじゃん)

律(…ねぇ、なんで今日で最後なの?)

律(まだ唯の誕生日までけっこうあるじゃん)

律「まだもう一回ぐらいやってもよくね?」

和(ちょ!声デカイわよ!)

和(ほら、唯首傾げてるじゃない)

律(唯唯ってさ、なんで?)

律(今デートしてる相手は私じゃん)

律(私とはデートしてて楽しくないの?)

和(ちょっと…言ってる意味がわからないんだけど)

和(私は唯の誕生日のためにこうしてるし)

和(律は澪たちに見栄を張るためにこうしてるんでしょ)

律(じゃあそれだけ?目的のためだけ?)

和(…もう行きましょう。唯たちが聞き耳立ててくるから)


和「今日はどうだった?」

律「楽しかった///」

律(あの、さっきはごめんな!)

律(あのっ…あれは冗談だから!困らせようとしたんだ~ははは)

律(あんまりにも和がポーカーフェイスだから、からかいたくなっちゃってさ~)

和(…来週も続けるかだけど、一応検討してくわ)

律(!)

律「ほ、ほんとはもっと面白い子だから、嫌いにならないでくれぇ!」

律「じゃあまた!」

ダッ

律(…今の本気で言ってたかも、私)


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最終更新:2010年01月26日 01:56