律の部屋

律「なんていうかさ、付き合う前から親公認ってすごいと思わないか?」

梓「通常ありえない展開ですよね」

律「なあ、私も梓のご両親に挨拶したほうがいいのか?」

梓「あ、是非やめてください」

律「『是非』って言っておいて、やめてとかっ」

梓「だって私の両親は律先輩には会わせにくいです」

律「へ?なんで?」

梓「絶対律先輩が常識のない行動を取って印象悪くしますもん」

律「・・・」

梓「じょ、冗談ですよっ」

律「お、おう。ちょっと本気で考えたじゃないか」

梓「本当は・・・」

律「本当は・・・?」

梓「私の両親はほとんど家にいないんです」

律「旅行か」

梓「それは唯先輩でしょうが」

律「仕事か?」

梓「そうです。地方公演が多いんですよ、私の両親は」

律「でも音楽に携わってるんだもんなー、すごいよな!」

梓「はい、そうですね」

律「なんか冷めてんなー」

梓「へ?そんなことないですよ」

律「嘘付け、じゃあなんか上の空だな?」

梓「先輩」

律「なんだよ」

梓「取って」

律「い・や・だ」

梓「なんで」

律「なんで」

梓「ケチ。死ね」

律「ケチじゃないし死なないし」

梓「じゃあ帰ってください」

律「ここ私の家だから」

梓「じゃあ還って」

律「漢字変換がまた酷いぞ。土に還れってか」

梓「わかってるじゃないですか」

律「だから、それはこの間約束しただろ?」

梓「交換条件ってやつですか?」

律「そうそう。な?」

梓「それは・・・お断りします」

律「え、なんで」

梓「だって・・・」

律「うん?」

梓「あの・・・私、髪ほどいたら少し澪先輩に似てません?」

律「・・・」

梓「先輩?」

律「お前ってナルシストだな!」

梓「なんで!?」

律「だって『梓は澪が好きだった→だって澪が綺麗だから→髪ほどいたら梓は澪に似てる(?)→梓は綺麗』ってなるじゃないか」

梓「そういう意味で言ったんじゃないですっ!」

律「ほう?」

梓「だから、律先輩はどう思いますか?」

律「いや、そんな遠回しに言わなくても、梓は可愛いよ」

梓「そっちじゃねー!」

律「ひゃう」ビクッ

梓「だから、髪をほどいた私と澪先輩、似てると思いません?」

律「うーん、言われてみればちょっと似てるかもなー」

梓「やっぱり」

律「なんだよ」

梓「律先輩って、本当に澪先輩のこと好きだったことないんですか?」

律「なんだよ、信じろよ」

梓「だって・・・」

律「え、もしかして髪をほどいた梓と澪を重ねてるとか思ってるの?」

梓「うぅ・・・」コクッ

律「アホかー!!澪と梓は全然別人だろ!それともなんだ!梓は澪の妹か何かか!?」

梓「違いますけど・・・」グスン

律「なんだよ、泣くなよ・・・」

梓「だって、律先輩の傍にはずっとあんなに綺麗な人がいたんですよ・・・?」グスッグスッ

律「おい、梓ってば」

梓「気にするなっていう方が無理ですよ・・・」スンッスン

律「あーもう!」ギュッ

梓「!?///」

律「私は梓が好きなんだよ。梓と澪を天秤に掛ける様な真似は今までしたことないし、これからもするつもりはない!」

梓「先輩・・・!」

律「梓・・・」

梓「ってい!」ファサ

律「って、あー!私のカチューシャ!」

梓「ほっ」ポーイ

律「投げんなー!」


梓「へっへっへ、泣き落としには相変わらず弱いですね、先輩」

律「お前・・・」

梓「やっぱり前髪下ろしたほうがいいですよ、うん」

律「騙したなー!」

梓「騙される方が悪いです」ヘヘン

律「このっ・・・!」

梓「えへへー律?」

律「なななんだよ///っていうかなんで呼び捨てなんだよ///」

梓「私、決めたんだ」

律「なにがだよ///(何この呼び捨ての破壊力///)」

梓「律がカチューシャ外してるときは敬語使わないって」

律「へ、へ?///」

梓「あれ、駄目だった?」

律「だだだ駄目じゃないけど(やばい、普段とのギャップがすごい・・・///)」

梓「よかった」

律「なあ」

梓「ん?」

律「(『ん?』とか言うなよ、可愛いな畜生っ!)さっきの、本音だろ?」

梓「さっきのって?」

律「澪の話」

梓「!?な、なんでですか、あんなの嘘ですよっ」

律「(敬語になってるぞー?)だって、目がマジだったもん」

梓「うぅー・・・」

律「そんで恥ずかしくなって誤魔化そうとしたんだろ?」

梓「ちょっと違います」

律「違うんですか」

梓「はずかしくなったんじゃありません。その・・・」

律「ん?なんだ?」

梓「居たたまれなくなったっていうか、情けなくなったっていうか・・・」

律「へ?梓が?」

梓「はい・・・。なんでこんな小さなことで駄々こねて先輩を困らせてるんだろう、って思って・・・」

律「(うわやばい可愛い)」

梓「ちょっと、先輩。何か言ってくださいよ」

律「じゃあ一言言わせてもらう」

梓「あ、はい。どうぞ」

律「敬語に戻ってるぞ?」

梓「あ!」

律「やっぱり慣れないのか?」

梓「そりゃ、慣れませんよ」

律「カチューシャ取ったときはタメ口でいくんだろー?頑張れっ」

梓「う、うん」

律「っていうか、なんでカチューシャ取ったときだよ」

梓「だって律、あんまり人前でそれ外さないじゃん」

律「まあ、基本的につけたり外したり忙しくするもんじゃないしな?」

梓「それでね、律がそれ取るときって、二人きりのときがほとんどでしょ?」

律「まあ、そうなるな」

梓「だから、他の人に聞かれてないならいいかなーって」

律「なるほど」

梓「『二人でいるときは敬語使わない』なんて言っても、結構難しかったりするでしょ?」

律「確かになー、みんなといるときにぽろっと言っちゃったりしそうだな」

梓「だからカチューシャを目印にしたの」

律「よく考えたな」

梓「あと、もう一つ理由があってね?」

律「ん?」

梓「律ってなれなれしいでしょ?」

律「いや、のっけから酷いな」

梓「だから、人からもフレンドリーに接せられる方が好きなのかなーって思って」

律「スルーかよ。でも、それは当たってるかも。あまり他人行儀なのは嫌だな」

梓「でしょ?だから、カチューシャを外してくれたときは律へのご褒美として敬語やめてあげるの」

律「結局そんな言い方に落ち着くんですか、あなたは」

梓「ん。だから感謝してね」

律「はいはい」

梓「もー何その言い方」

律「それはこっちのセリフだっつーの」ガシッ

梓「きゃ!?」

律「恋人に抱きつかれて『きゃ!?』はひどいなー?」スルスル

梓「ちょ、何してるの」

律「わかるだろー?」スルスル


梓「あー・・・」

律「ほい、できた!」

梓「いきなり髪ほどかないでよー」

律「いいじゃんいいじゃん。可愛いよ」

梓「そ、そう///・・・って、あ」

律「な、なに?」

梓「律が強引に髪ほどくから・・・」

律「え、え?何?私そんなにまずいことしたか?」

梓「ほら、見て。結ってたゴムに髪の毛が」

律「へ?あ、ああ。ついてるな、2本くらい」

梓「無理矢理取るから抜けたんだ・・・」

律「ええー!そんな乱暴にしてないぞ!?」

梓「・・・慰謝料」

律「なんでやねん」

梓「髪の毛1本につき、100万円を請求します」

律「お前の髪の毛どんだけだ」

梓「髪は女の命なのに・・・」

律「私が取る前から、抜けてた髪かもしれないだろー?」

梓「いいえ、ブチってなりました。ヴチって」

律「いや、なんでウに濁点つけるんだよ。っていうか、それを言ったらさっき梓が私のカチューシャとった時だって髪の毛抜けたと思うんだけど」

梓「・・・」

律「なあ?」

梓「はい、この話はおしまい」

律「都合が悪くなると逃げる癖があるな?」

梓「いいから」

律「全く、私のお姫様はわがままだなー」

梓「ひ、姫///」

律「あ、そうだ」

梓「なに?」

律「梓の真似をしよう」

梓「は?」

律「梓さん、喉渇きませんか?オレンジジュースがあるんですけど、飲みませんか?」

梓「へ?うん、ありがとう」

律「今お持ちしますね!」トントントン


……

……

律「お待たせしましたっ!」

梓「ありがとう」

律「おいしいですか?」

梓「へ?うん、おいしいよ」ナデナデ

律「えへへーなでなでだぁー」デレー

律「って、おーい!!」

梓「ななんですか」ビク

律「つっこめ!」

梓「え、えーと、なんでやねん?」

律「そうじゃない!『なんで律が敬語使ってるの!』ってつっこめ!的確に!」

梓「ナンデリツガケイゴツカッテルノ」

律「棒読みぃぃぃ!」

梓「律は忙しそうだね」

律「最初は『あれ?つっこまれない?』って思ったけど、『きっとノリつっこみなんだな、うん』って考えたんだよ!」

梓「あ、うん」

律「なのに梓は乗りっぱなしじゃないか!」

梓「えーと、ごめん」

律「なんで私が敬語使い出したことに対してスルーしたんだ」

梓「だって、なんか可愛かったんだもん」

律「///」

梓「律は、照れることに対しての沸点が割と低いよね」

律「うううるさい」

梓「私を見習って」


律「梓、大好きだ」ズイッ

梓「///」

律「お前も人のこと言えないじゃん」

梓「うるさい」

律「よし、とりあえず落ち着こうぜ」

梓「そうだね」


……

……

律「なあ」

梓「んー?」

律「ちゅーしていい?」

梓「うーん、駄目」

律「なんで!?」

梓「へ?なんで律にそんなことさせてあげなくちゃいけないの?」

律「いや、寧ろ私以外の誰とするんだよっ」

梓「そういう問題じゃないの。絶対駄目」

律「えーケチー」

梓「(言えない、恥ずかしいからだなんて言えない)」

律「私じゃ、駄目なのか?」ションボリ

梓「(律、顔近いって・・・!)」

律「梓が嫌ならしないよ」シュン

梓「・・・」

律「・・・梓のばーか」

梓「馬鹿じゃないもん」

律「ばーかばーか」

梓「馬鹿じゃないって」

律「ばーか」

梓「馬鹿じゃないってーの!」パコン



最終更新:2010年01月15日 01:56