キリ…キリ…


梓「ほら!また音がしました!」

律「おい梓、そろそろ…」

キリキリキリキリ…

律「!?、聞こえる…」

キリキリキリキリ…

唯「なに…この音…」

紬「なにか聞いたことがある…ネジを巻く音…?」

キリキリキリキリ…

梓「音が段々大きくなってます!」

律「近づいてきてるのか…?」

カチャ…カチャ…カチャ…カチャ…

唯「何か…いる…」

バッ!

律「みんな!岩を背にして立つんだ!」

梓「はい!」

唯「う、うん!」

律「武器を出して何時でも戦えるようにしろ!」

澪「う、うぅぅぅぅぅ!」バッ!

澪はその場にしゃがみこんでしまった

律「み、澪!落ち着け!」

澪「ひぃぃぃぃ!!」ガクガク

律「澪!澪!大丈夫だから!」

澪「うわあああああああ!!」

フッ

澪が叫ぶのと同時に杖から出ていた明かりが消えた

梓「明かりが!」

唯「な、何にも見えないよ」ビクビク

キリキリキリキリ

梓「う、うう…」ブルブル

律「くそっ!ムギ!予備の松明に火をつけてくれ!」

紬「う、うん!わかった!」

律「背を合わせて全員固まれ!」

ザッ!

五人は暗闇の中で紬と澪を中心にして背中合わせでどうにか陣形を組む



キリキリキリキリ…

梓「ムギ先輩!火はまだつかないんですか!?」

紬「い、今やってるわ!」

カチッカチッ

紬(て、手が震えて…!)ブルブル

カチッカチッ…ボッ!

紬「ついた!」

紬が松明を掲げると五人周りが明るく照らされる

梓「ひっ!」

唯「なに…これ…」

律「こいつらは…」

カチャンカチャンカチャンカチャン

律「なんだこいつら…人間、なのか?」

頼りない松明の灯りで人の形をしたシルエットが朧げに浮かび上がる

梓「違います!」

キリキリキリキリ

光の元に現れたその姿は形こそ人間のようだが全く異形のものだった

その表面はなにか硬質なもので覆われていて顔には髪や口といった物は見当たらず球状の関節で二本の腕と四本の足を繋いでいる

それは一体だけでは無いようで暗がりの中に幾つもの影が見えた

唯「ロ、ロボット…?」

ロボ?「キリキリキリキリ…」

先程から聞こえていた音はどうやらこのロボットが動く時に出ているらしい

律「こいつら一体なんなんだ…モンスターなのか?」

紬「わからないわ…でも友好的じゃないのは確かみたい、ほら」

紬の言葉通り、その両手にはおお振りな剣と盾が装備されている

梓「…動きませんね」

律「油断できないぞ、こんな物騒見た目だし…」

唯「でもこのまま睨みあっててもしょうがないよ」

律「ちょっと反応をみてみるか…」

紬「どうするの?」

律「ちょっと石を投げてみよう」

ロボ?「キリキリキリキリ…」シュバッ

ガキィィィン!

律「うわっ!」

梓「律先輩!」

律が足元の小石を拾おうとしゃがみこむのと同時にロボットが突然動き出し律に向かって剣を振り下ろした

唯「りっちゃん大丈夫!?」

律「ああ、大丈夫だ」

ロボ?「……」

剣を振り下ろした後、ロボットはまた動きを止めている

梓「一体なんなんですか!」

紬「これじゃあ本当に身動き取れないわ」

唯「…わかった!」

律「?、なにがわかったんだ?」

唯「ちょっと皆見てて」

そう言うと唯は盾を持った方の腕を振り回した

ロボ?「キリキリキリキリ…」シュバッ

ガキッ!

唯「っ!」

ロボットの攻撃は盾に当たり唯の腕を大きく弾いた

律「おい!唯!なにやってんだ!」

唯「いつつ…りっちゃん今のでわかったでしょ?」

律「はあ?そりゃ動き回れば攻撃されるに決まってる…」

梓「あ!」

律「そうか!動くと攻撃されるんだ!」

唯「ね!そういうことなんだよ!」

紬「だからこっちが動かなければ攻撃してこないのね」

梓「けど、結局それがわかってもどうにもなりませんよね…」

律「…残るは強行突破か」

紬「でもこの数相手にそれは危険過ぎるわ」

澪「わ、私が!」

律「ん?澪、復活したのか?」

澪「あ、当たり前だ!全然怖くなんかないぞ!」

律「説得力ねーな…」

澪「とにかく!動くのがダメなら私が魔法で攻撃してみるよ」

紬「そうね、それが一番安全かもしれないわ」

梓「思いっきりやっちゃってくださいね!」

澪「ああ…」

澪が杖に念を込める

澪「…!」ボウ!

頭上に現れた火球がロボットに向かって飛んでいく

ボウ!ゴァァァァ!

火球が直撃したロボットの上半身が激しく燃え上がる

律「やったか!?」

ロボ「……」プスプスプス…

梓「そ、そんな…全然効いてない…」

火球が命中したロボットは煙をあげているものの、魔法は全く効いていないようだ

澪「それなら!」バチバチバチ!

澪の杖から紫電が迸り、前方のロボットに直撃した

バリバリバリ!

ロボ「……」バチ…バチ…

澪「だ、だめだ…」ハァハァ…

唯「どうしよう…」

律「やっぱり強行突破するしかないか…」

紬「そうね、魔法も効かないみたいだし」

澪「うぅ…なんでこんな危ない橋を渡る羽目に…」

律「落ち込んでもしょうがないだろ、今はここから脱出しないと」

唯「澪ちゃん、きっと大丈夫だよ!」

澪「う、うん…そうだな」

律「よっし、そんじゃ作戦会議だ」

梓「そうですね、こっちが動かない限り相手も動きませんしじっくり考えましょう」

律「澪!まだ魔法は使えるか?」

澪「うん、まだ大丈夫」


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律「よし、澪、頼む」

澪「う、うん」

キィィィン…

パキパキパキ…ズシャァァァ!

澪が放った魔法で氷柱が発生し、ロボット達の体勢を崩す

律「今だ!」

ダダッ

五人はその隙に一斉に駆け出した

律「でえぇい!」ブン!

ガキィィン!

紬「はぁ!」ブン!

ガァァァン!

先をゆく紬と律が残ったロボットに一撃を加え道をつくっていく

唯「はぁはぁ、もう大丈夫かな?」

五人はなんとか通路付近までたどり着いた

カチャンカチャンカチャン

体勢を立て直したロボット達が通路へと向かって歩きだしている

梓「速度は遅いですけど、追ってきてますね」

紬「このまま外に出たら村が大変な事になってしまうわ」

律「ここで倒すしかない、か…」

唯「でも剣も魔法も効かないし、どうやって倒すの?」

律「澪、天井に向かって魔法を打ってくれ」

澪「いいけど、それでどうするんだ?」

律「天井を崩すんだよ、あいつ等を瓦礫で押しつぶすんだ」

梓「なるほど!」

紬「でもそれだけで倒せるかしら?」

律「動きさえ止めてしまえばいいんだ、後はあたし等の攻撃でどうにかなるさ」

梓「ところで澪先輩の魔法で天井を崩せるようなのありましたっけ?」

律「う、そう言えばそうだな…」

澪「大丈夫、やってみるよ」

澪(炎や雷じゃダメだ…まだ使ったこと無いけど…)

カチャンカチャンカチャン

梓「近づいてきましたね…」

律「澪、頼む!」

澪「うん…」シュィィン…

澪の杖が輝きはじめ光球が形作られていく

澪「えい!」

澪が杖を振ると光球が天井へ一直線に向かっていく

ズガァァァン!…パラパラ

梓「ダ、ダメです!」

澪「はあはあ…」

紬「そんな…」

律「それなら…」

ザリッ

律「これでどうだぁぁぁ!」ブン!

律は大きく振りかぶって自身の斧を天井へ向けて投げつけた

ガキン…ズガァァァン!

律の放った一撃で天井が崩れ、下のロボット達を押しつぶした

律「よっしゃあ!」

唯「りっちゃん凄い!」

律「このまま近づいて様子をみよう」

梓「完全に倒し切らなきゃ意味ないですからね」

パッ

律「な、なんだ!?」

五人が通路から空洞に足を踏み入れると突然周りが明るくなった

梓「いきなりなんなんですか!?」

唯「あ!みんな上を見て!」

澪「上って……これは!」

キラキラキラキラ

律「すっげー!」

梓「綺麗…」

巨大な紫の宝石のようなものが先ほど天井が崩れた所から見えている

澪「松明の灯りがこれに反射して明るくなったのか…」

唯「凄いね~!これ、宝石かな?」

紬「たぶんだけど、これは紫水晶だと思うわ」

澪「水晶か…」

水晶内部ではキラキラと光が反射して天然のシャンデリアの様に空洞の中を淡く照らしている

律「っておい、見惚れるのはいいけど、先にこっちを片付けてからにしようぜ」

律が瓦礫の下のロボット達を指差す

梓「そうですね、ちゃっちゃとやっちゃいましょう」

唯「あ、忘れてた~」

澪「おいおい…」


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律「ふぅ、これでもう大丈夫かな」

梓「案外早く終わりましたね」

律「ああ、首の関節を切ったら動かなくなったからな」

梓「弱点なんですかね?」

律「たぶんな」

唯「ねえ、全部終ったんだしそろそろ戻ろうよ」

律「そうだな、いつまでもここに居てもしょうがないしな」

紬「あ、ちょっと待って!」

梓「ま、まだ何かあるんですか?」

紬は瓦礫のほうに近づいていく

ガラガラ

紬「よいしょっと…」ズルズル

紬は瓦礫の中からロボットの残骸を引っ張り出してきた

梓「それ、どうするんですか…?」

紬「持って帰るのよ」

唯「ええ~、いらないよそんなの」

紬「うふふ、私達が貰うわけじゃないの、村の人にも説明しなきゃならないし」

唯「あ、そっか…」

律「そういうことなら…」

紬「え?」

律が紬からロボットの残骸を奪い背中にしょった

律「へへ、力仕事は任せとけって!」

紬「まあ!りっちゃんありがとう!」

梓&澪「…」

律「そんじゃ出発だ!」

五人は外へと向かって歩きだした

コツン…

澪「あっ」ズデッ

唯「み、澪ちゃん大丈夫!?」

律「澪!」

澪「いだい…鼻打った…」

紬「大丈夫?」

紬が澪に手をかして起き上がらせた

澪「うん、ありがとムギ」

梓「小石にでも躓いたんですか?」

澪「ああ、そうみたいだ」

そう言って澪は足元を見た

キラッ

澪「ん?」

澪が足元の小石を拾い上げる

律「どうしたんだ?石ころなんてみて」

澪「これ、水晶だ…」

梓「本当ですか!?」

澪「うん、ほら片側は普通の石が覆ってるけどそれ以外は全部水晶だ」

律「へー、ラッキーだな、貰っちゃえよ」

澪「うん、そうする」

紬「うふふ、転んでも良い事あるのね」

澪「はは、そうだな」



未完結



最終更新:2011年03月17日 05:34