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チュンチュン…

まだ朝日が昇ったばかりでもやの立ち込める村の道を紬は一人歩いている

紬「……」テクテクテク…

ドア「ガチャ」

自分達が泊まっている家の扉を開け中へと入った紬はそのまま寝室へと続く扉を開ける

ドア「ガチャ」

六つあるベッドのうち一つは布団がはだけており、四つにはそれぞれHTTのメンバーが収まっている

まだ朝も早いせいか全員が熟睡しているようだ

紬「うふふ♪」

微かに息遣いの聞こえる室内で紬は皆の寝顔を見ながら軽く微笑む

テクテク…

紬は一つのベッドに近づくとおもむろに声をかけた

紬「澪ちゃん、起きて」ユサユサ

澪「うむぅ…ん…」

紬「澪ちゃん、もう朝よ」ユサユサ

澪「んぁ…」パチッ

紬「澪ちゃんおはよう」ニコ

澪「ああ…ムギ、おはよう…」

澪は目を覚ますと体を起こし、大きく伸びをした

バサッ

澪「ふわぁ…ムギ起きるの早いな…」

紬「うふふ、なんだか早く目が覚めちゃって♪」

澪「そっか…私、外で顔洗ってくるよ」

紬「じゃあ…はい!これ、タオル」

澪「ありがと…」

テクテク…

ドア「ガチャ」


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ドア「ガチャ」

澪「ふぅ…」

唯「あ、澪ちゃんおかえり~」

澪「唯、起きたのか」

ドア「ガチャ」

律「ふわぁ~あ…おはよう、澪」

梓「おはようございます、澪先輩」

澪「おはよう」

紬「さあ皆、朝ごはんにしましょう」


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唯「は~お腹いっぱいだよ~」グダー

律「そりゃそうだろ」

梓「見ていて気持ち良いくらい食べてましたもんね」

澪「ところで、今日は炭鉱に行くんだろ?」

律「ああ、もう少ししたら出発しようと思うんだけど、それでいいよな?」

唯「うん、全然おっけーだよ~」

梓「一応村長さんのとこにも報告してから行ったほうが良いですよね?」

律「そうだな」

紬「それじゃ、片付け終わったら出発しましょうか」


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五人は必要な荷物を持つと村長の家へと向かった

コンコン

律「すいませーん」

ドア「ガチャ」

村長「これはこれは皆さん、おはようございます」

梓「おはようございます」

澪「今から炭鉱の調査に向かおうと思います」

村長「そうですか…おお、ちょっと待って下され」

律「?、なんだ?」

ゴソゴソ

村長「ほっほ、昨日渡そうと思ってたんじゃがすっかり忘れてしまってのう」

村長が手に持っていたのは古くなった巻物と布が巻きつけてある木の棒だった

唯「これなんですか?」

村長「炭鉱の地図と松明じゃ」

紬「わあ、ありがとうございます」

村長「見方はわかるかの、坑道にある目印とこの地図の印が一致しておる」

村長が地図上に記された記号を指で指し示す

澪「なるほど…」

村長「気をつけて下されよ、何があるかわかりませんからの」

律「へへ、ちゃちゃっと解決してくるぜ!」

唯「そうそう、心配無用だよ!」フンス

村長「ほっほ、頼もしいのう」

紬「戻ったらまた報告に参ります」

村長「うむ、そうしてもらえるとありがたいのう」

澪「それでは行ってきます」

唯「行ってきまーす!」フリフリ

村長「ほっほっほ」フリフリ

五人は村長の家を出て炭鉱へと向かった


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五人の前には炭鉱の入り口がぽっかりと口を開けている

律「よーっし!突入だー!」

ガシッ

澪「ちょっとまて!」

進み出そうとする律の襟首を澪が掴んで引き留める

律「うぐっ…なんだよ、早く入ろうぜ~」

澪「入る前にちゃんとルートを確認して置かないとまずいだろ」

律「おお!そうか!」

唯「澪ちゃんは頭が良いね~」

梓「常識ですよ!」

澪「はぁ…」

バサッ

澪はため息をつきながら持っていた地図を広げると、五人が一様にそれを覗き込む

梓「結構広いですね…」

律「そうだな~、こりゃあ迷わないようにしないと」

紬「でもほら、色んな所に印があるからこまめに確認しながら行けば大丈夫よ」

澪「うん、それは大丈夫そうだ、問題はどうやって回るかだけど…」

律「ん~、ここをこうして回るってのはどうだ?」

律が地図に指を滑らせながら話す

梓「そうするとここが通れますから…」

唯「あ、ここも通れるみたいだよ!」

澪「そうだな…それで行こう」

紬「ルートは決まったわね」

律「そんじゃ今度こそ突入だ!」

唯「おー!」


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カツカツカツ…

暗い坑道の中に五人分の足音が響く

先頭を行く律が持つ松明の炎が周囲をぼんやりと照らしている

唯「なんだか探検隊みたいだね!」ワクワク

梓「なんですかそれ…」

律「謎の洞窟に挑む探検隊!この先に待ち受けているものは…!!」

唯「りっちゃん隊員の運命はいかに…!!」

唯と律がわざとらしい動きと芝居がかった口調で演じて見せる

梓「ぷっ…」クスクス

紬「…ふふっ…あはは!」

澪「ふふ、全くお前らはいつも通りだな」


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カツカツカツ…ピタッ

T字路に差し掛かった五人は足を止めた

律「澪、ここはどっちに行けば良いんだ?」

澪「たぶんこの辺に目印があるはずだからちょっと壁の印を照らしてみてくれないか?」

律「おっけー」

律が松明を掲げて壁にある目印を探し始める

松明のゆらゆらと揺れる炎の動きに合わせて五人の影も揺らいだ

律「お、あったあった、澪、ここだぜ」

澪が目印と地図を照らし合わせるために壁に近づく

澪「えーと、今いるのはここだから……右だ、右に行けばいい」

律「よっし、右だな」


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カツカツカツ…

梓「だいぶ奥まで来ましたね」

紬「そうね、何回か行き止まりもあったし」


唯「澪ちゃん、あとどのくらい残ってるの?」

澪「うーん、たぶんそろそろ大きな空洞に出ると思うからそこまでで折り返しだな」

唯「そっか、もうひと頑張りだね!」

律「なあ、大きな空洞ってなんなんだ?」

澪「私もよくわからないけど、地図上ではそういう風に描かれてるんだ」

律「ふーん…」

梓「それにしてもここまで異常なしなんてなんだか拍子抜けしちゃいますね」

律「そうだよな~、本当に魔物騒ぎなんてあったのかよって感じだしな」

澪「なにも無いに越したことはないだろ」

律「そりゃあそうだけどさ~」

梓「まあ元々、魔物が出たって訳じゃないですしね」

紬「…考えてみれば変な話しよね、この炭鉱で実際に魔物がでたわけじゃないのに依頼を出すなんて」

唯「そう言えばそうだね」

律「でも気持ちも解らなくもないな、誰だってこんな暗闇の中で何かあったら不安になるに決まってる」

梓「実際ここはあんまり長居はしたく無いですよね」

唯「…あずにゃんの後ろに、人影が!!」バッ!

梓「うひゃあ!…ってちょっと唯先輩!」

唯「えへへ、つい…」

梓「全く…こういう事すると私よりも澪先輩が…」

澪「」

律「おーい、澪ー」

梓「ほら…」

唯「固まってるねー!」ツンツン

澪「」

紬「澪ちゃん…」


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カツカツカツ…

さらに五人が進んで行くと、突然周囲の壁が途切れ何もない空間にでた

律「うお…!これか空洞ってのは…」

そういった律の声が周りに反響して何重にも重なって聞こえる

唯「うわ、すごいね!」

澪「見えないけどな」

梓「相当広いですね、天井も高いみたいですし」

律「ああ、天井まで光が届かないからよくわからないけど」

紬「これは人間技じゃ無いわね…」

澪「うん、これは自然にできたものだと思うな」

梓「でもこのままじゃ身動きが取れないですね」

律「そうだな…澪、魔法でどうにかできないか?」

澪「ああ、やってみるよ」

澪は杖を取り出し頭上に掲げた

澪「……」

澪が無言で念じると杖の先が段々と光を帯びていく

パチパチパチパチ…

先端の宝石に紫電が纏わり付いたかと思うと、杖は一気に発光しはじめた

…パァァァァ!

紬「きゃっ!」

律「うおっ!」

唯「うわっ、眩しっ!」

思わず全員が強烈過ぎる光から目をそらす

梓「澪先輩!ちょっと明る過ぎます!」

澪「ご、ごめん!今調節するから!」

シュウゥゥゥ…

澪が慌てて念じると杖は段々とその光量を落としていった

澪「こ、この位でいいかな?」

杖の光はだいぶ弱くなり、天井の岩盤がぼんやりと視認できるくらいの明るさとなった

律「ああ、それくらいなら大丈夫だ」

唯「ふぅ、びっくりした」

澪「ごめんごめん、まだ上手く調節できないんだ」

梓「そんな事ないですよ、十分すごいです!」

律「さて、これでやっとどうにかなるな」

律はそう言って周りを見渡した

律「それにしても広いな~」

空洞は丁度円を半分に切ったような綺麗なドーム状に広がっているようだ

梓「本当ですね、体育館ぐらいあるんじゃないですか?」

澪「いや、流石にそれは言い過ぎじゃないか?」

律「それじゃ、一番奥まで確認しておきますか」

紬「そうね、あんまり長くなると澪ちゃんも大変そうだし」

カツカツカツ…

律を先頭に五人は壁伝いに空洞を一周する事にした

唯「ここが終わったら後は帰るだけだね」

律「なんだか梓じゃないけど暗い所にいすぎるのも良いもんじゃないな、早く帰りたいぜ」

キリ…キリ…

梓「」ピタッ

突然梓が足を止めた

紬「どうしたの梓ちゃん?」

梓「今、変な音しませんでしたか?」

律「いや、なにも聞こえなかったけど? 唯は?」

唯「ううん、私も何も聞こえなかったよ」

澪「お、おい梓!変な冗談はやめろよ!」ガクガク

律「梓もついに澪を脅かす楽しさに気づいたのか…成長したな」ウンウン

梓「違います!…絶対何か音が聞こえたんですよ」

律「気のせいじゃないのか?」

梓「うーん、そうですかね…」

澪「そ、そうだ!気のせいに決まってる、はは!」カクカク


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律「だいたいここで半周か…」

律が壁に手を触れながら呟いた

紬「入り口から見た時は結構綺麗な円になっていると思ったけど、近づいてみると結構岩が出てるのね」

律「そうだな、ここなんてもっと奥まで行けそうだけどな…」

五人のいる場所より更に奥まで空間は広がっているが、背丈より高い岩が進路を阻みそれ以上進む事は難しいようだ

澪「こんなに大きな岩があったんじゃ無理だな」

唯「そうだね~」ペタペタ


キリ…キリ…


梓「」ビクン

唯「あずにゃん…?」

梓「ほら!今!音がしましたよ!聞こえませんでしたか?」

澪「あ、梓!もうわかったから!な!」ガクガク

紬「う~ん、なにも聞こえなかったわ」

律「梓、もう勘弁しといてやれよ」

梓「もう…冗談じゃないのに…」


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