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青年母「さあさあ、皆さんお茶が入りましたよ」

梓「あ、ありがとうございます」

青年の家に招かれた三人は部屋の中央に据えられたテーブルについてお茶をご馳走になっていた

コトッ

青年母「この度は息子を助けて頂いたそうで、本当にありがとうございました」

そういって青年母は深々と頭を下げた

紬「あ、あの頭を上げてください!」

律「そうですよ!当然の事をしたまでです」

青年「お、おい、母さん、皆さんが困ってるじゃないか」

青年母「いえいえ、そうは言っても助けて頂いた事には変わりはありません」

青年「やれやれ…」

青年母「見ての通り私たちは貧しい農民です、畑の作物がやられたら冬を越すこともできませんでした」

紬「そうだったんですか…」

青年「すいませんね、どうしても母が皆さんに礼をしなきゃ気がすまないって言うもんだから…」

青年母「はい、なにもできませんがせめて感謝の言葉ぐらいは…ごほっごほっ!」

青年「母さん!無理して話すから!」

背を曲げて咳き込む母に青年が湯のみを渡す

青年「ほら、薬を飲んで」

青年母「ああ、すまないね…ありがとう」


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青年の家を出た四人は簡素な家が立ち並ぶ間を歩いている

四人はしばし無言で歩いていたが、程なく青年が口を開いた


青年「なんかすいませんでしたね…」

梓「いえ、そんな事ないです!」

律「ああ、感謝されて悪い気はしないしな!」

青年「…君達にそう言って貰えると気が休まるよ」

紬「あの、失礼ですけど、お母様は…」

青年「ああ…うちは早いうちに父を無くしてね…この村に鉱山があるのは知ってるだろ?」

律「ああ」

青年「母は女手一つで僕を育てるためにずっとそこで働いてたんだけど…その時に喉をやられてしまったんだ」

梓「そんな事が…」

青年「僕も本当は鉱山で働いた方が生活は楽になるんだ、けど母がそれを許してくれない」

律「そりゃあなー…」

青年「ああ、だから僕も母と同じぐらい君達に感謝してるんだ」

律「へ!またあいつ等が来たらすぐに退治してやるぜ!」

青年「ははっ、君達は本当に頼もしいな!」


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青年「ここがこの村の鉱山さ、主に取れるのは石炭だけどね」

四人の前には炭鉱の入り口が大きく口を開けている

律「へぇー、結構大きいな」

梓「それにしても全然人が見当たりませんね」キョロキョロ

青年「まあ、今は魔物騒ぎがあってから村の人間は殆ど立ち入ってないからね」

紬「でもそれだと仕事の方は…」

青年「ああ、全くお手上げ状態さ、本当に畑も炭鉱もこのままダメになってしまったらこの村はお終いだよ」

タタタッ!

キャッキャ!

律「お、おい、中から声が聞こえるぞ!?」

梓「本当です!これが魔物ですか!?」

青年「い、いや、こんな音じゃないと思うんだけど…第一こんな入り口近くに…」

四人が警戒して様子を伺っていると音はどんどんと近づいてきた

紬「くるわ!気を付けて!」

三人がそれぞれ武器を構えて前方を見据える

キャッキャ!

バタバタ!

青年「お、お前ら!」

律「こ、子供!?」

炭鉱の入り口から姿を現したのは、幼い子供達だった

男の子1「あ、青年兄ちゃんだ!」

女の子「あ、ほんとうだ!」

青年「こんな所で何やってるんだ!?ここは今立ち入り禁止なのは知っているだろ!?」

男の子1「うわ、しまった!そうだった!」

青年「しまったじゃないぞ!さあ、早く村まで戻れ!」

男の子2「ほら、やっぱり…怒られるからやめた方が良いって言ったのに…」

男の子1「なんだよー!お前だって楽しんでただろ!」

ギャーギャー!

梓「なんと言うか…」

律「はぁ、ほっとしたよ…」

青年「ほら、喧嘩はやめろ」

青年が騒いでいる子供達の間に仲裁に入る

紬「うふふ、元気ね……ん?」クイックイッ

紬の服の裾を女の子が引っ張っている

女の子「ねーねー、お姉ちゃんはぼうけんしゃさんなの?」

紬「そうよ、違う街からきたの」

女の子「じゃあ、このまえのまものをやっつけてくれたのもお姉ちゃんたちなんだね!」

紬「ええ、そうだけど…」

梓「よく知ってるんだね?」

女の子「うん!お父さんとお母さんがはなしてたの!」

男の子1「あー!それ俺も聞いたぜ!なんかすっげー強くて魔物をあっという間の倒しちゃったんだろ!?」

律「へへ!その通りだ!あたし等にかかれば魔物なんてへでも無いぜ!」シャキーン!

女の子「おおー!」

男の子1「すげー!」

梓「また調子にのって…」

女の子「ねーねー、じゃあお姉ちゃんたちはまおうもやっつけられるの?」

梓「魔王?」

女の子「うん!うみのむこうのくににはまおうがいて、わるいことばっかりしてるんだって!」

律「へー?魔王ねえ…」

男の子2「そんなの作り話だろ!魔王なんているわけ無いよ!」

女の子「むっ、そんなことないよ!おばあちゃんがいるってゆってたもん!」

ギャーギャー!

青年「ほらほら!落ち着けよ、全く…」

男の子1「なあ、お前どのくらい強いんだ?」

梓「お、お前…!?」

青年「おい!そんな口を聞くもんじゃ無いぞ!」

男の子1「だってこの人ちっちゃくて弱そうなんだもん」

梓「な、な、な……!」ワナワナ

律「あ、梓!?子供の言うことだぞ!」アタフタ

紬「そ、そうよ!梓ちゃん?気にする事じゃ無いわ!」アタフタ

男の子1「なあなあ、どうなんだよー?」

青年「この人たちはお前の百倍は強いよ」

男の子1「百倍ってどれくらいだ?凄く強いのか?」

青年「ほら!いつまでもくだらない事言ってないでお前らは早く村に帰るんだ!」

男の子1「ちぇー…」

女の子「ばいばーい!」

紬「うふふ♪」フリフリ

青年に促され渋々と言った様子で子供達は村へと引き返して行った

梓「…やっぱり、小さいのがダメなんですか?」ドヨドヨ

律「そ、そんな事ないぞ!なあ、ムギ?」

紬「そ、そうよ?梓ちゃんは…その、とっても可愛いし!」

律「そうそう、可愛いよな!」

梓「はぁ……」ドヨドヨ

青年「そ、それじゃそろそろ戻ろうか?」


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村に戻り青年と別れた三人は唯と澪の待つ家まで戻ってきた

ドア「ガチャ」

律「ただいまー…っと、まだ二人とも寝てるのか?」

梓「でもそろそろ起こしたほうが良いんじゃないですか?」

紬「私、様子をみてくるわ」

律「おう、頼んだ~」

ドア「ガチャ」

律「んじゃ、あたし等は荷物の整理でもしときますか」

梓「そうですね、色々使いましたし」

律と梓はカバンをあけ、中から次々と荷物を取り出して行く

梓「律先輩、これは洗って干したほうが良いですよね?」

梓が外套を手に持って律に問いかけた

律「そうだな~、明日下着と一緒に洗っちゃうか」

梓「はい、そうしましょう」

二人は取り出した荷物で整備や補充が必要の無いものを再度カバンに詰めなおしていく

律「これでよしっと…ついでに澪達のもやっちゃうか」

梓「え、勝手にやっちゃって良いんですか?」

律「ん?大丈夫だろ?あいつ等そんな事気にしないって」

梓「はぁ、そうですか」

ドア「ガチャ」

唯「ふぁ~、おはよう~」

梓「あ、唯先輩!やっと起きたんですか」

唯「うん~、よく寝たよ」

寝室からは唯に続き澪と紬も出てきた

澪「……」ボケボケ…

律「お、澪もおはよう」

澪「…」ボケボケ…

律「澪?」

梓「どうしたんですか?澪先輩」

紬「なんか澪ちゃんまだ寝ぼけてるみたいなの」

律「はは、なんだそりゃ、まあ良いや、あたしは荷物の整備を…」

バッ!

律「あっ!」

澪「いい…自分でやる…」

律「ああ…そうか…」

梓「こ、これはどう言う事なんでしょうか?」

紬「さ、さあ?私にもわからないわ…」

座ってごそごそとカバンをあさり出した澪だが、時々頭がゆらゆらと船を漕いでいる

律「本当に大丈夫かよ…」

梓「あー!唯先輩!私の荷物の上で寝ないでください!」

唯「ふぇ…?」

梓「うわ、こんなによだれが…うぅ…」

紬「あらあら」

律「こいつら寝起き悪すぎだろ…」


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辺りが薄暗くなる頃、村長の家には明かりが灯され村人全員が集まっての大宴会が開かれていた

家に入り切らない村人達は外に幕を張り、各々で楽しんでいるようだ

ワイワイガヤガヤ

村長「さあさあ皆さんもっと召し上がって下され」

澪「あ、はい、頂いてます」

澪のセリフとは裏腹に目の前に置かれた皿の料理はあまり減っていない

律「どうしたんだ?…あ!まさかここまで来てダイエットか~?」ニヤニヤ

澪「違う!!」///

律「あはは、ごめんごめん」

紬「じゃあ、どうしたの?あまり箸が進んで無いみたいだけど…」

澪「いや、本当にお腹いっぱいなんだ、さっきから食べても食べても皿に次の料理が盛られて…」

律「まあ、確かにやたらとサービスいいよな」

おじさん1「やあやあ、やっとるかね!はっはっは!」

梓「あ、はい、どうもです」ペコリ

おじさん2「君達が魔物を追い払ってくれたお陰で酒も飲めるし、良い事尽くめだよ!」

おばさん「畑も無事だったし、あんた達には感謝しきれないよ、明日も頑張っておくれ!」

紬「ええ、勿論です」ニコ

律「へへ、明日も頑張んなきゃ!」

梓「そうですね!」

澪「ああ、この村に人達のためにもな」

唯「このパイ?みたいな奴美味しいね!」バクバク!

梓「あ、ほら、唯先輩!ボロボロ食べこぼさないで下さい!」

唯「えへへ、悪いねあずにゃん」

律「よくそんなに食べられるな~」

唯「まあね!私、食べても太らないし!」フンス!

澪「いや、そんな事は聞いてないし言ってない」

青年「やあ、みんな楽しんでくれてるかい?」

梓「あ!えーと…」

紬「そう言えばお名前をまだ…」

青年「ああ!!そう言えばまだ名乗ってなかったね」

律「そういやーそうだな、なんか今更って感じもするけど」アハハ

青年「はは、それでは改めまして、僕はアッシュ、アッシュ・クリアだ」

その後HTTの面々も簡単な自己紹介を済ませた

アッシュ「あ、そうそうこれ、ウチの畑で取れた大根で作ったんだ、良かったら君達に食べて貰おうと思って」

紬「まあ!ありがとうございます」

唯「食べる食べる!」


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宴も終盤に差し掛かり、集まっていた村人達が次第に座を後にしていく中、五人は人も疎らになった村長の家で食後のお茶を頂いていた

唯「ふ~、美味しかったね~」

梓「唯先輩は本当に良く食べてましたね…」

律「てか、唯ってそんなに食べる方だっけ?」

唯「う~ん…わかんないけど、なんかお腹が減るんだよね」

澪「そんなもんなのか…?」

律「それにしても今日だけで色んな人からすげー感謝されたな」

紬「そうね、こんなに盛大な会も開いてもらっちゃったし」

村長「ほっほっほ、それだけ皆がお前さん達に感謝しておるという事じゃよ」

梓「村長さん!」

五人が話していると村長がお茶の入ったやかんを持ってやって来た

村長「この村には滅多に旅人も来ないからの、わざわざ街から来て頂いて本当に感謝しておるんじゃ」

律「へへ、まあ感謝されるのは悪く無いよな!」

村長「なにしろ貧しい村ですからのう、この季節にしっかり収穫ができないと死活問題なんじゃ」

紬「村長さん!その事で少しお話があるんです!」

村長「?、なんですかな?」

紬「少し耳を貸してもらえますか?」

ゴニョゴニョ

村長「ほうほう…なんと!そんな事が!」

ゴニョゴニョ

村長「なるほど…それは良いですな!」

紬「どうですか?お役にたてると思うのですけど」

村長「ふむ、それでは早速明日にでも…」

唯「ムギちゃん、なんの話だったの?」

紬「ううん、大した事じゃないの」

律「なんだよ~いきなり内緒噺なんて」ニヤニヤ

紬「うふふ♪」

澪&梓


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