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パチパチ…

焚き火がそれを囲む五人を明るく照らしている

辺りはすっかり暗くなり、音をたてるものは川のせせらぎと虫の声しかない

梓「はぁ、やっと落ち着きましたね…」

唯「お魚美味しかったね!」

梓「まあ、昼ご飯は携帯食料と水だけでしたからね」

唯「携帯食料って美味しくないよね…」

紬「ふふ、でもりっちゃんがお魚取ってきてくれたから良かったわ」

律「澪のおかげだよ、まさかあんなに簡単に取れるなんてな~」

澪「私も驚いたよ」

梓「…驚いたといえばあの魔物、アーヴァンク、とか言いましたか?」

律「ああ、びっくりしたな~、まさかあんなのがいるなんて!」

唯「そう言えば、ムギちゃんはなんであの魔物の名前がわかったの?」

紬「この前買った図鑑に載ってたの、川に潜んで旅人を襲うんだって」

澪「そうだったのか…私もこんど図鑑は良く読んでおこうかな…」

律「その方が良いかもな、出てきた魔物がなんだか分からないんじゃ戦い様も無いし…」

紬「でもおかしいのよね…」

梓「?、なにがですか?」

紬「こんなところにアーヴァンクが生息してるなんて、変じゃ無い?」

澪「言われてみれば…この辺りって魔物は少ないはずだよな」

律「……」

唯「でもやっつけられて本当に良かったよ~!」

紬「そうね、誰も怪我しなかったし」

律「まあ、あたし等にかかればこれくらい楽勝だよな!」

唯「そうだね!」

澪「調子に、のるな!」ボカッ

律「あはは、冗談だよ」

梓「はぁ、全くもう…」

パチパチ…

唯「ふぁ~、なんだか眠くなってきちゃった…」ムニャムニャ

澪「私もだ…今日は歩き通しだったし」

律「それじゃあ、明日も早いしそろそろ寝るか…」

梓「そうですね…ところで見張りとかした方が良いですよね?」

澪「さすがに全員寝ちゃうのはまずいよな…さっきみたいに突然魔物が現れるかもしれないし…」

律「そうだな…五人で交代しながらやれば良いだろ」

梓「でも時間とかどうするんですか?」

律「へへ、こんな時の為に…じゃーん!」

梓「あ、それ…砂時計ですか?」

律「その通り、これは一回で約三十分の砂時計だ」

梓「ずいぶん準備がいいですね」

澪「買い出しの時に買ったんだ、時間のわかるものがあった方が良いと思って」

紬「さすがりっちゃんね!」

律「えへへ、照れるぜ」

梓「それじゃあ、最初は誰にしますか?」

律「澪だな」

澪「ええ!?」

梓「そうですね、それが良いとおもいます」

澪「梓まで!?」

梓「澪先輩、こう言うのは最初が一番楽なんですよ」

律「そうそう、澪が一番体力が無いんだからこの方がいいんだよ」

澪「そ、そうなのか?」

律「そうなんだよ」

梓「それじゃあ、順番はどうします?」

律「そうだな…澪ムギあたし梓唯、でいいだろ?」

紬「わかったわ、りっちゃん」

律「大体一人当たりその砂時計で三回が目安だからな」

澪「わかった、三回だな」

紬「澪ちゃん、時間になったら起こしてね」

澪「うん、それじゃあみんなお休み」

律「おう、お休み~、火は絶やすなよ~」

梓「さてと……唯先輩!今までの話聞いてましたか!?」

ビクッ!

唯「ふぁ?聞いてたよ~…」ショボショボ

紬「あらあら、うふふ」

澪「はは、唯らしいな」

梓「本当に大丈夫かな~…」

律「まあ、たぶん大丈夫だろ」

澪「よし、それじゃああとは任せてみんな寝てくれ」

梓「わかりました、お休みなさい」

紬「お休みなさい」

律「お休み~」

バサッ

四人は外套を被ってそのまま横になった

澪「……」

パチパチ…

澪が木の枝で焚き火をかきまわすと火の粉が少し舞い飛んだ

澪「……静かだな」


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チュンチュン

律「ふぁ~あ、眠い~」

澪「川で顔洗ってこいよ、さっぱりするぞ」

律「ああそうする~」テクテク

梓「はぁ~、やっぱり疲れが取れませんね…」

唯「背中が痛いよ~」

澪「地面に直に寝たからしょうがないさ」

紬「それじゃ、りっちゃんが戻ってきたら朝ご飯にしましょ」

唯「わーい!ムギちゃん、朝ご飯はなに?」

紬「携帯食料とドライフルーツよ」

唯「また~…」

梓「まあ、ここは我慢しましょうよ」

唯「うん……村についたら絶対に沢山ご飯食べる!」

律「はは、あたしもそうしよう」ザッザッ

梓「あ、律先輩」

川から戻ってきた律に紬が朝食をわたす

紬「はい、これりっちゃんのぶんよ」

律「サンキュ」

五人は朝食をとり手早く片付けを済ませると目的地へと向けて出発した



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ザッザッザッザッ

唯「う~…暑いよ~…」

梓「まさか少し街道をそれただけでこんなに天気がかわるなんて…」

旅を始めてから三日目、五人は街道をはなれあまり整備されていないニギリ村へと続く道を進んでいた

太陽が真上から照りつけ、じりじりと地面を焼いている

今五人が歩いているのは緑豊かな草原から下草もあまり生えない乾いた平原となっていた

律「全くどうなってるんだ?」ブチブチ

澪「でも、この外套のおかげで砂埃とか日光は遮られてるし、そんなに大変じゃないだろ」

紬「それに昨日から魔物もでてないし」

律「そうだな、一日目に戦ってからは遭遇してないからな」

澪「それにもう少しで村に着くんだろ?」

律「ああ、うん、そろそろ着くはずだ…っと」

唯「あずにゃん、どうしたの?」

先を歩いていた梓が立ち止まって前方に目を凝らしている

梓「先輩、向こうに家みたいな建物がみえます」

律「お!本当か!?」

梓「はい、おそらくニギリ村だと思います」

澪「はぁ~、やっと着いた~…」

唯「やったー!ご飯♪ご飯♪」

紬「よかった、早くお風呂に入りたいわ♪」

律「よっしゃ、それじゃ気合入れて歩くぞっ!」

唯紬「おー!」

五人が更に歩を進めると、木でできた門の様な物とそれに連なって柵が張り巡らされているのが見えてきた

律「あれが村の入り口か」

その門の先には開墾された畑が並んでおり、農作業に従事するおそらくは村人だろう人間がちらほらと見える

唯「ふぇ~、畑がいっぱいだ」

紬「こんな乾燥していても、ちゃんと作物が育つのね」

梓「一体なにを育てているんでしょうか?」

律「さあな~、でも取れたての野菜は美味いと思うぞ」

グゥー…

梓「あうぅ…」///

律「あはは、早く行こうぜ!」

テクテクテクテク

五人が畑の中央の道を進んで行くと農作業をしていた青年が気づき話しかけてきた

青年「やあ、この村にくる人なんて珍しいね、なんの用だい?」

律「ああ、私達は…」

バサバサバサ!

突如羽音が聞こえ村の畑の向こうの空に幾つかの黒い影が見える

農夫「おーい!またあいつらが来たぞー!!逃げろー!」

ウワー!キャーキャー!ワー!

農夫の一人が叫ぶと辺りで農作業をしていた村人たちが一斉に逃げ出して行く

律「な、なんだぁ?」

青年「まずい!君たちも早く逃げるんだ!」

梓「い、一体これはなんなんですか!?」

青年「魔物だよ!山からこうやって畑を荒らしにくるんだ!」

澪「魔物!?」

青年「ああそうさ!さあ、早く君たちもこっちへくるんだ!」

律「なあ、あんたらこの魔物に迷惑してるんだろ?」

青年「はぁ?そりゃそうだが、今はそんな事話してる場合じゃない!さあ、早く!」

律「まあ、待てよ…この魔物、あたしらが退治してやってもいいぜ!」

澪「おい、律!」

梓「また勝手な…」

律「だって困ってる人達を見捨てられないだろ?」

青年「退治って…おいおい、君たち女の子だろ?」

律「へ!まあ、そこで見てな!」

唯「よーし!りっちゃん!私もやるよ!」フンス!

紬「私も頑張るわ!」

律「その意気だぜ!澪、梓!」

澪「はぁ、わかったよ」

梓「しかた無いですね」

律「よし!行くぞみんな!」

そうこうしているうちに、魔物の群れは畑のど真ん中に立つ五人の上空まで迫っていた

バサバサッ

ギャーギャーグェーグェー

鳥の姿をした魔物達は旋回しながら、警戒しているのかしきりに鳴き声をあげている

唯「なんだか黒くてカラスみたいな魔物だね」

律「ムギ!あの魔物のことわかるか!?」

紬「わ、わからないわ、図鑑にはこんなの載ってなかったの!」

梓「図鑑に載ってない魔物…新種ですかね?」シャリン

梓が短剣を抜き放ちながら呟いた

唯「あずにゃん余裕だね~」

梓「だって相手はただでっかいだけの鳥じゃないですか」

澪「そうだけど…」

律「そうだな!鳥如きに負けるはずがなーい!」

紬「でも、相手が飛んでいたら攻撃できないわ」

「ギェー!」シュッ

暫く空を飛び回っていた魔物達だが、五人が逃げ出す様子がないのを察知したのかそのうち一匹が梓めがけて急降下してきた

律「梓!」

梓「大丈夫です!」

サッ

梓は素早く魔物の攻撃を避け、すれ違い様に短剣を振り抜いた

シュバ!

「ギェー!」ドサッ

梓の攻撃を受けた魔物はそのまま地面に落下し動かなくなった

青年「お、お見事…」

今まで上空で飛び回っているだけだった魔物達が梓が仲間を斬り伏せるのをみて一斉に襲いかかってきた

ギェーグェーグェー!

バサッバサッ

律「澪は下がってろ!」

澪「う、うん!」

梓「こいつらあんまり硬くないみたいです!攻撃さえもらわなきゃ大丈夫です!」

唯「よーし!」シュ

「グェー!」

ガキッ!

バタバタ!

ザシュッ!

唯は向かってきた一匹の攻撃を盾で防ぎその隙にきり伏せた

梓「ふっ!」

タンッ!

ザシッザシッ

梓は低空にいる魔物に向けて跳躍し攻撃を与える

紬「やっ!」ブン!

ベキベキ!

ドサッ

律「はっ!」ブン!

ザクッ!ザクッ!

バサッ!バサッ!

四人は次々と向かってくる魔物達を斬り伏せていく

澪「み、みんな!ふせて!」

澪が振り上げた杖から電撃が迸る

バチバチバチバチ!

電撃が当たった魔物たちは次々と撃ち落とされていく

ギェーギェー!

バタバタバタバタ

律「よし!今だ!」

ザシュッザシュッザシュッザシュッ

律達は地面に落ちた魔物達に次々ととどめをさして行った

律「片付いたかな…」

唯「これでもう安全だね!」

澪「本当に疲れた…」グッタリ

紬「大丈夫、澪ちゃん?」

澪「あ、ああ…」

タタッ

青年「君達!」

先程の青年が駆け寄ってきた

唯「あ、さっきのお兄さんだ!」

青年「いやあ!助かったよ!君達一体何者なんだ?」

梓「私達はクエストを受けてきた冒険者で…」

青年「ああ…冒険者だったのか!通りで強いわけだ!」

唯律「「いやあ、それほどでも」」///

澪「そんなところでハモるな!」

青年「はは、それより君達、村長のところにいくんだろ?」

律「ああ、そのつもりだけど…」

青年「それじゃ僕が村長のところに案内するよ!さっきのお礼もしたいしね!」

紬「まあ、ありがとうございます」ニコ

青年「いえいえ…」///

五人は青年に連れられて村の村長の家へと向かった


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最終更新:2011年03月17日 05:30