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梓は紬に促されるまま椅子に座り暖炉で温められたお餅を食べ、紬が淹れてくれたお茶を飲んだ

梓「ふぅ…ふぅ…」ズズッ

紬「おちついたかしら?」ニコニコ

梓「あ、はい、やっと一息つけました」

紬「ふふ、良かったわ梓のぶんとって置いて」ニコニコ

梓「……」カチャ

梓はティーカップをおき、急に俯いてしまった

紬「どうしたの、梓ちゃん?具合悪い?」オロオロ

梓「いえ…グスッ…ちょっと…なんでもないです」

紬「梓

紬「どうしたの、梓ちゃん?具合悪い?」オロオロ

梓「いえ…グスッ…ちょっと…なんでもないです」

紬「梓ちゃん?」

梓「グスッ…ふふ、変ですね、なんにも悲しくないのに…」

ポタ…ポタ…

梓のティーカップに涙の雫が落ちる

ギュッ

紬は梓の頭を包み込むように抱きしめた

梓「ムギ先輩…」

ギュウッ

梓も紬の背中に手を回し抱きしめ返す

紬「なんにも変なことじゃないわ…」

梓(ムギ先輩温かいな…凄く)

紬「いろいろあったのね…今日はもう休んだほうがいいわ」

梓「……」

紬「梓ちゃん?」

梓「……」スゥ…スゥ…

紬「あらあら、眠っちゃったのね♪」

ヒョイッ

紬は眠ってしまった梓を軽々と抱きかかえてベッドへ運ぶ

紬(これがお姫様抱っこね!一度やってみたかったの♪)

トサッ

梓「ん……」

紬「おやすみなさい、梓ちゃん」


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紬「……」ギッギッギッ…

朝日が射し込む宿の中庭で、紬は井戸の水を汲み上げている

バシャバシャバシャ

紬「ふぅ…」ゴシゴシ

ドア「ガチャ」

梓「あ、ムギ先輩、おはようございます」

ドアが開き姿を現した梓が紬に呼びかける

紬「おはよう梓ちゃん、昨日はよく眠れた?」

紬は顔をあげ、梓に視線を合わせるとにっこりと微笑んだ

紬の長い金髪が朝日を反射して柔らかく光っている

梓「…」ボー

紬「梓ちゃん?」

梓「あっ、はいぃ!おかげさまで!」ビクッ

梓の慌てぶりに紬は口元を押さえて笑った

紬「どうしたの、梓ちゃんたら」クスクス

梓「な、なんでもないです」アセアセ

梓(言えない…ムギ先輩に見惚れてたなんて!)

ギッギッギッ…バシャア

梓も紬の様に釣瓶を使い井戸から水を汲み上げる

紬「そう…あ、唯ちゃん達は起きた?」

梓「あ、はい、来る前に起こして来ました」バシャバシャバシャ

紬「梓ちゃん、はい!タオル」

梓「あ、ありがとうございます」ゴシゴシ

梓は紬が差し出したタオルを受け取り顔を拭いた

紬「それじゃ行きましょ、昨日の話も聞きたいし」

梓「そうですね、でもその前に律先輩と唯先輩をもう一度起こさないと…」

紬「?梓ちゃんが起こしたんじゃないの?」

梓「あの二人が一度起こしたくらいで目が覚めると思いますか?」

紬「ふふ、それもそうね、もう一度起こさないと」クスクス


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空になった食器とマグカップを前にしてけいおん部の一同は食堂に会している

律「あーまだ頭がクラクラするー…」

テーブルに突っ伏したまま律がつぶやく

唯「私もだよぉ…もうー、あずにゃん酷いよ~」プンプン!

梓「だって先輩達がいくら起こしても起きないんですもん」

律「それにしたって、耳元でフライパン叩いて起こすことないだろー」

澪「自業自得だ」

律「酷すぎる~」グデー…

唯「でも、あのフライパンどこから持ってきたの?」

紬「私が厨房から借りてきたの~♪」

律「ムギかよ~」

唯「もう!本当にびっくりしたんだからね!」プンプン

梓「まあ、確かに少しやり過ぎでしたか…」

紬「うふふ、ごめんなさい♪」

律「全然反省してないだろ…」

澪「はぁ…そんなことより梓、昨日の話をしてくれよ」

梓「あ、そうですね」

唯「うんうん、私も早く聴きたいよ!」

律「そうだぞ、どうだったんだ?上手くいったのか?」

梓「まあ、色々あったんですけど……」

梓(ペロペロされた話はしないでおこう…)

梓は昨日の事を適度に省いて律たちに伝えた


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唯「へ~、地下にそんなものがあるなんて凄いね!」キラキラ

律「なるほどな、探し回っても見つからないわけだ」

紬「それで、盗賊団の手がかりはなにか見つかった?」

梓「はい、最近ギルドに入った人達が使ってる部屋で常に見張りがついてる部屋がありました」

澪「そこが怪しいってわけか……」

梓「はい、その人達は他の盗賊にはあまりよく思われていないらしくて、楽に情報を聞き出せました」

律「見張りがいるって話だけど、そいつらは何人くらい仲間がいるんだ?」

梓「正確な人数はちょっとわかりませんでしたが、やっぱり魔術師らしき仲間がいるようです」

唯「他の魔術師の人ってどんな魔法使ってくるんだろうね?」

律「う~ん、わからないけど、油断は禁物だな」

紬「そうね、あんまり強くないといいんだけど…」

律「そうだな、澪くらいヘタレだと楽なんだけど…」ニヤニヤ

澪「う、うるさい!」///

ゴチンッ!

律「痛ったー…くない、あ、そっか!痛くないぞ!」

澪「くっ……!」

律「残念だったな~、もう澪の拳骨なんて怖くないぜ!イェーイ!」ニヤニヤ

澪「……」ピキピキ…

澪はライトニングを唱えた!▼

バチッ!

律「はわぁあっ!!」ビクッ

澪「」プー!クスクス

唯「りっちゃん、"はわぁあっ!"だって!変な声!」ケラケラ

律「澪!卑怯だぞ!」

澪「~♪」←ドヤガオ

梓「うわ~、なんて大人げない人達なんだろう……」

紬「うふふ、梓ちゃん口に出てるわよ♪」

梓「え?ああ!?」アタフタ

律「あ~ず~さ~…」

何時の間にか律が梓に迫っている

梓「ちょ!?待ってくださいよ!」

律「問答無用だ!」

キャーキャー…ダダダッ…

カツカツカツ

ダンッ

突如テーブルに大きな荷物が置かれた

さわこ「……なによもう、朝から騒がしいわね」

唯「あ、さわちゃんおはよう」

律「おーさわちゃん!どこ行ってたんだよ、こんな朝から」

律が梓に掴みかかった体勢のままさわこに話しかける

梓「ちょ!律先輩、離してください!」ジタバタ

さわこ「離してあげなさいよ…」

律「ああ、悪り」パッ

トサッ

梓「ハァハァ…死ぬかと思った…」

澪「それでどうしたんですか、この荷物?」

さわこ「ああ、旅用の色々よ、すぐに出発するから」

紬「先生もう行っちゃうんですか?」

さわこ「ええ、出発の前にみんなに挨拶に来たのよ」

唯「さわちゃーん、行かないでー!」ヒシッ

さわこ「ふふ、心配しなくてもまたすぐに会えるわよ」ナデナデ

梓「え?なんなんですか、これ?」

澪「そっか、梓は昨日いなかったもんな」

律「実はカクカクシカジカ…ってわけなんだ」

梓「そうだったんですか…」

紬「くれぐれも気をつけてくださいね」

さわこ「ええ、あなた達もね、無理はしちゃだめよ」

律「本当に行っちゃうんだな…」

さわこ「なによ、しんみりした顔しちゃって」

律「だって…」

さわこ「はぁ…」ナデナデ

律「ちょ!さわちゃん恥ずかしいよ!」

さわこ「まあまあ、たまには大人しく撫でられなさい」ナデナデ

澪「借りてきた猫みたいだな」

律「うるさい!」///

さわこ「さて、それじゃあそろそろ行くわね」

さわこは立ち上がり荷物を担ぐ

ドア「ギィ…」

唯「さわちゃん!」

さわこ「ふふ、みんなまたね」ヒラヒラ

ドア「バタン」


梓「行っちゃいましたね…」

澪「先生も色々考えてるんだな…」

律「よし、私達もいまできることを頑張ろうぜ!」

唯「そうだね!絶対クエスト成功させようね!」

紬「おー♪」

律澪梓唯「「おー!」」


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テクテクテク

暗い夜道を五人影が静かに移動して行く

クルリ

梓「というわけで夜になった今、私達は盗賊ギルドへ向かって歩いています」

律「梓~?、誰と喋ってんだ?」

梓「あ、いえ大したことじゃないです」

澪「う~、この辺りは人通り少ないし街灯もないから真っ暗だな…」キョロキョロ

律「なんだ、澪ちゃん怖いのか~?」ニヤニヤ

澪「ぜ、全然怖くなんかないぞ!」

紬「」ソロリ…ソロリ…

紬がそっと澪の背後に回りこみタイミングをはかっている

紬「わっ!!」

澪「わぁあああああああ!!!」バッ

静かな路地に澪の叫び声が響き渡った

律「おいおい、あたしの後ろに隠れるなよ…」

澪は震えて律の背中にしがみついている

澪「ひぃぃぃぃぃぃ!!」ガクガク

紬「み、澪ちゃんごめんなさい!こんなに怖がるなんて思わなくて…」

律「あームギ、大丈夫大丈夫、すぐもとに戻るから」

澪「り、律!なんにもいない?お化けとかいない?」ガクガク

律「あー全然いないよー、ばっちり」

澪「ほ、本当か…?」

澪が周りの様子を伺いながら律の背後から顔をだす

澪「よ、よし!さあ!みんな行くぞ!」

律「な?」

紬「澪ちゃん…」


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唯「ねえねえあずにゃん、どうしてわざわざ夜になってからにしたの?」

唯が一行を先導する梓に問いかけた

梓「だって逃げる時に楽じゃないですか、それに今ギルド内は人でいっぱいですからね、潜入してもばれにくいんです」

梓は立ち止まらずに返事を返す

唯「なんかかっこいいね!あずにゃん!」

梓「えへへ、そうですか?」///

律「へへ、なんかルパン三世みたいだな!闇に紛れてお宝をいただくなんて」

紬「あ、私それ知ってるわ!……待て~!ルパ~ン!」

唯「あはは、ムギちゃん似てる似てる!」キャッキャ

ふざけあっている二人を横目に不安そうな面持ちの澪が梓に話しかける

澪「な、なあ梓、本当に大丈夫なのか?」

梓「?なにがですか?」

澪「本当に私たちみたいなのが勝手に入り込めるものなのか?警備とか厳しいんじゃ…」

梓「ああ、それなら心配ないですよ、
入り口には見張り一人いませんでしたから」

澪「ほ、本当か?」

梓「はい、本当ですよ、どうかしたんですか?」

澪「あ、いや、なんでもない……」

澪(おかしくないか…?仮にも非公認ギルドなのに警備すらしないなんて……)

梓「さあ、つきましたよ、ここからは慎重に行きましょう」

一行は梓を筆頭に物陰からギルドの入り口の様子を伺う

唯「あれかー」ワクワク

律「よーし!このりっちゃんがパパッと解決してやるぜ!」

紬「よっ!大統領~!」

澪「なんて緊張感のない…」ハァ

梓「静かにって言ってるのに…」ハァ


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ワイワイガヤガヤ

一行は地下へと降り、梓を先頭にギルド内を進みはじめた

通路の所々に設けられた机や小部屋などでは多くの盗賊たちが酒を片手に騒ぎ、男達は粗野な歓声を、女達は黄色い嬌声をあげている


唯「うわ~、結構たくさん人がいるね」

梓「はい、ここって夜になると一気に人が増えるみたいなんです、昼間はガラガラなんですけど」

一行は時折きこえる怒号や罵声、媚びた誘いをかいくぐるようにして進んで行く

澪「な、なんか恐そうな人ばっかだな…」ビクビク

梓「澪先輩、堂々としててくださいよ、そうすれば誰も怪しみませんから」

澪「ああ、わかったよ…」

律「しっかし複雑な造りだな~、迷路みたいだぜ」

紬「本当、迷っちゃいそうね」

梓「迷わないでくださいよ、迷ったら死ぬらしいですから」

澪「死…」ガタガタ

律「はぁ…」

ギュッ

澪「律!?」

律「ほら、これで怖くないだろ」

澪「あ、うん……ありがと」

梓「多分もうすぐですから気をつけてくださいね」

一行はそれからさらに幾つかの角を曲がり通路を抜けて行った

そうして次の曲がり角に差し掛かると梓が足を止めた

梓「この先です、ちょっと私が様子を見てきます」

唯「あずにゃん気を付けて」

ソ~…

梓が曲がり角から様子を伺うと

一行のいる場所からは十メートルほど前方に扉があり、その前では無精髭を生やした男が詰まらなそうに一人で杯をあおっている

律「梓、どうだった?」

梓「やっぱり見張りがいます、剣で武装してますね」

澪「だ、大丈夫なのか?」

梓「相手は一人ですしやる気なさそうなのでいけると思います」

律「よし、それじゃあ早速…」

梓「あ、ちょっと待ってください、ここは澪先輩に…」

澪「え?私!?」


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