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一行は気づかれないように露店横のスペースまで移動した

唯「ここまで近づけば聞こえるかな?」コソコソ

律「しっ!客が来たぞ!」コソコソ

露天商「~!」

客「~、~~?」

梓「……だめですね」

聞き耳を立てていた梓が首を横にふる

律「全然聞こえないな」ハァ

澪「うん、周りがうるさすぎて聞き取れないな」

一同「……」

一同は思わず顔を見合わせる

唯「えー、それじゃあどうしたらいいの?」

澪「いい作戦だと思ったんだけど……」

律「考えなおしかー」

一同「」ウーン

紬「そ、そうよ!」

一同は不意に声をあげた紬の方を一斉にみた

梓「突然どうしたんですか?」

紬「私、良いこと思いついちゃったわ~」ウフフ

澪「本当か!?」

紬「ええ♪」

律「それで、どういう方法なんだ?」

紬「ふっふっふ、これを使うのよ!」シャキーン!

律「こ、これは!」

唯「猫耳だぁ!」

紬は鞄の中から猫耳を取り出す

紬「ミシャの耳飾りよ、これを梓ちゃんの頭に装着すれば!」

澪「そ、そうか!」

律「でもそんな猫耳、役にたつのか?」

澪「ばか!宿屋の主人が説明してくれただろ、それには聴力アップの効果があるって!」

律「あー……聞いたような、聞いてないような?」

唯「ダメだよりっちゃん、人の話はちゃんと聞かなきゃ」ヤレヤレ

律「おい、唯だってすっかり忘れてただろ!」

唯「~♪」ソラシ←

律「ごまかすなよ」

梓「あのー……盛り上がってるところ悪いんですけど、私の拒否権は……」

律「ナシ!」

唯「ないよ~」

紬「ないわ♪」

梓「うぅ、澪先輩……」ウルウル

澪「……ないな」

梓「」ガクー

律「まあまあ、気を落とすなよ」

ポンッ

律は意気消沈している梓の肩に手を置いた

唯「そうだよ!私達の中ではあずにゃんが一番猫耳が似合うんだから!」

紬「そうよ!梓ちゃんが一番猫っぽいわ♪」

梓「みなさん……」

梓(どうしよう、ちっとも嬉しくない……)

律「まあ、とにかくつけてみろって!」ヒョイッ

律が梓の頭に猫耳つけようとする

梓「あ、ちょっと!律先輩!」ワタワタ!

カポッ

梓「あっ!」

律「へへ、装着完了!」

澪「梓、どうだ?聞こえるか?」

梓「はあ、ちょっと待って下さい……」ムーン

梓は目をつぶって耳をすましている

……キィィィィン!

梓「うわっ!」ガバッ!

勢いよく梓が頭から猫耳をはずした

梓「」ハァハァ

唯「ど、どうしたの、あずにゃん!?」

梓「な、なにか急に音が沢山頭の中に響いて……」ハァハァ

紬「梓ちゃん!大丈夫!?」

梓「は、はい、大丈夫です、ただ……」

律「ただ?」

梓「これ、物凄くうるさいです!」

紬「やっぱりダメかしら……」

澪「梓にも無理はさせられないしな」

梓「あ、いえ、私やります!さっき一瞬会話が聞き取れたんです、もう一回やってみればできそうです!」

澪「梓……」

唯「あずにゃん、がんばって!」

梓「はい!」

カポッ

梓(全部の音を聞こうとしちゃダメなんだろうな……)

梓はまた目を閉じて周囲の音に集中しはじめる

梓(一つの音に絞れば……)

キィィィィン

梓「!」

律「どうだ?なにか聞こえたか?」

梓「はい!聞こえます!」

唯「どんな話が聞こえるの?」

梓「あ、えっと、あそこの露店商さん、昨日奥さんとケンカしたらしいです!」

律「いや、その情報は……」

澪「ま、まあ、テストはOKだな」

律「この調子で人の集まるところに行ってみようぜ!」

紬「そうね、通りを歩いてみましょうか」


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}

一行はそのまま大通りへと足を運んだ

ガヤガヤガヤガヤ

律「相変わらずの人通りだな」テクテク

梓「」ムーン

澪「梓、なにか手がかりになるような話は聞こえるか?」テクテク

梓「う~ん、あんまり有用な情報は聞けませんね、小麦が値上りしたとか、税金が高いとか、そんな話ばっかりです」

紬「それにしても梓ちゃんは本当に猫耳が似合うわね、とっても可愛いわ♪」

梓「ちょ、ムギ先輩!?なに言い出すんですか、いきなり!」///

律「おい梓、顔真っ赤だぞ」ニシシ

梓「そ、そんなことないです」///

紬「照れてる梓ちゃんも可愛い♪」

梓「~!うわー!もう!」///

顔を真っ赤にした梓は手で顔を覆ったままうつむいてしまった

唯(あれ?私の時と反応が違う……)ガーン


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その後一行は情報を集めるために幾つかの通りを歩き周った

梓「ダメです、あんまり役立ちそうな話は聞こえてきませんね」

律「う~ん、このまま歩いていてもなー」ハァ

律は後頭部で腕を組んでつぶやいた

澪「確かに、いくら梓が情報集められてもこれじゃ効率が悪すぎるな」

唯「それじゃあ、ご飯にしようよ!」ニッコリ

澪「なんでそうなる!」

梓「まったく、唯先輩は……」ハァー

紬「私も唯ちゃんの意見に賛成かな」

梓「ム、ムギ先輩!?」

紬「歩き回ってたらなんだかお腹空いちゃって……」テヘ♪

梓(か、可愛い……)

澪(可愛い……)

唯(あれ?私の時と反応が違う……)ガーン

律「よし、それじゃあご飯食べにいくぞー!」

唯「おー!」

澪「結局こうなるのか……」


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ガヤガヤガヤガヤ

適当な飲食店を見繕い中に入り、一行が席に腰を降ろすとすぐに料理が運ばれてきた

一同「いただきまーす!」

律「うめー!」ガツガツ

唯「やっぱり食べてる時が一番幸せだよ~」モグモグ

律と唯はすぐに目の前の料理に取りかかっている

梓「」モクモク

澪「はぁ……」モグモグ

澪は炒め物に箸でつついてため息をこぼした

紬「澪ちゃん、どうしたの?あんまり箸が進んで無いようだけど」

澪「いや、この後の事を考えるとね、なんの手がかりもないし……」

紬「ふふ、心配なのはわかるけど、無い物ねだりしてもしょうが無いわ、食べれる時は食べて英気を養うのよ」

澪「……そうだな」フッ

紬「ほら、このお肉もとっても美味しいわよ?」

澪「ああ、ありがとう」

梓「」モクモク

律「なあ、梓」

梓「」モクモク

律「さっきからずっと黙って食べてるけど、そんなにお腹が空いてたのか?」ニシシ

梓「」モクモク

律「いやいや、無視はひどいと思うなー」

梓「ちょっと黙っててください」

律「」ガーン!

澪「梓もついに律に愛想がつきたか……」

唯「あずにゃんがグレた!?」ガーン!

律「ヒドイ……こんな扱い!私はこんな子に育てた憶えはありません!」シクシク

紬「梓ちゃん、どうしたの?」

梓「……」キィィィィン

梓「……あそこの壁際の二人、なんだか妙な会話をしてます」

澪「壁際?」

そう言われ澪達は壁際に目を向ける
そこには商人風の男が二人、食べながら談笑している

紬「普通の商人さんに見えるけど……」

梓「いえ、あんな目つきの人間が商人なわけないです」

律「いくらなんでも、目つきだけで怪しいなんて早合点じゃないか?」

澪「そうだぞ、第一その妙な会話っていうのを教えてくれなくちゃ判断できないだろ」

梓「それもそうですね、あの人達、新しいアジトは住みにくいって話してます」

律「アジトって、もしかして……」

梓「はい、おそらくあの人達は変装した盗賊……」

澪「じゃあ、後をつけて行けば!」

紬「盗賊ギルドの場所がわかるのね!」

澪「でもあの人達全然怪しそうには見えないのにな」

律「まあ、盗賊なんだし身を隠すのは得意なんじゃねーの?」

紬「梓ちゃん、よくみつけたわね」

梓「なんとなく感じたんです、普通じゃ無いような……」

律「なるほどね、同業者のカンってやつか?」

梓「なっ、失礼ですね!あんな奴らと一緒にしないでください!」

律「あ、いや、ごめんごめん……」

梓の思わぬ剣幕に押され律は素直に謝った

澪「でも同じ盗賊なんだろ?」

梓「そりゃあ、そうですけど……」

唯「ねえ、さっきから皆でなんの話してるの?」モグモグ

唯の間のぬけた声に他のメンバーは顔を見合わせる

澪「話に加わってこないと思ったら……」ハァ

梓「も、もしかして、今までの話全部聞いてなかったんですか?」

唯「いや~、食べるのに夢中で……」

律「どんだけ、食意地張ってるんだよ!」アハハ

紬「唯ちゃんらしいわね」ウフフ

なにもわかっていないらしい唯に律と梓がかいつまんで説明する

唯「お~、わかりました!りっちゃん隊員!」ビシッ!

梓「はあ……本当ですか?」

唯「うん、この後あの人達を追いかけるんだよね?」

律「よしよし、本当にわかってるみたいだな」ヤレヤレ

唯「も~!馬鹿にしないでよね、それぐらいわかるんだから!」プンプン!

梓「しっ、あいつら動き出すみたいです」

確かに男達の食事も終わりそろそろ店を出そうに見える

律「よし、それじゃあたし等も……」

梓「ちょっと待ってください!」

梓の制止に立ち上がりかけていた律達は動きを止めた

澪「なんだ?梓、早くしないと見失っちゃうぞ?」

梓「尾行は私一人でやります、先輩方は先に宿まで戻っていてください」

律「なっ、後輩一人にそんな事させるわけには……」

梓「いえ、こういうのは多人数よりも一人の方が動きやすいんです」

澪「そうは言っても……」

梓「それに、もし見つかっても同業者だから怪しまれにくいはずです」

唯「あずにゃん……」

梓「心配しないでください!ばっちりアジトを突き止めてみせます!」

そう言い切った梓の小さな瞳は使命感に強く輝いているようだった

紬「……わかったわ、ねえ、みんな、ここは梓ちゃんに任せましょうよ?」

澪「ムギ!だけど……」

律「そうだな!ここは梓に任せよう!」

澪「律……」

唯「あずにゃん、気をつけてね……」

梓「これくらい軽くやってやるです!」フンス

律「でもな、危なそうだったら無理はしないで戻ってこいよ?」

梓「はい!わかりました」

律「ん、あいつ等動き出したぞ」

男達は席を立ち店の入り口へと歩を進めはじめたようだ

澪「とりあえず、あいつ等より先に外にでよう」

律「そうだな」

一行は男達よりも先に店の外へ出て、物陰に入った

ガヤガヤガヤガヤ

紬「じゃあ、私達は先に宿に戻るわ」

梓「はい、遅くとも夜中までには戻ります」

唯「あずにゃん、本当に気をつけてね?」

唯は唇を弾き結び梓の顔を見つめている

梓「はい!」

律「じゃあ、また後でな!」

雑踏の中を進む律達の背中が段々と小さくなっていき、すぐに人波に隠れ見えなくなった

ドア「ギィ……バタン」

梓の耳にドアの軋む音と、雑談に興じる声が聞こえてくる

どうやら、先ほどの男達が店を出たようだ

梓「ふぅ……」

梓は小さく息を吐くと小さな手のひらの汗を服で拭った

男達は梓のいる物陰とは反対方向に通りを並んで進みはじめた

梓「やってやるです……」

梓(見つからないように慎重に……)

梓は通りをゆく男たちの後ろを見つからない程度の距離を空けて尾行して行った

男達は買出しに来ていたようで、いくつかの店を周り品物を買い集めている

梓(うぅ~、中々アジトに戻らない……これは時間かかるかも)


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梓(い、いったいいつまで歩き続ける気なの……)ハァハァ

すでに一日で一番気温の高くなる時間をすぎ、長時間の不慣れな尾行を続けた梓にも疲労の色が見えはじめていた

見つからないように常に気を張りつめていなければならないという状況が、確実に梓から集中力をうばっていく

男1「」キョロキョロ…… コクリ

男2「」ササッ

梓(あ、見失っちゃう!)

男達は周りに素早く注意を巡らすと、突然人気のない細い路地に入りこんだ

梓(追わなきゃ!)ハァハァ

梓もすぐさま男達が消えた路地に飛び込んんだ

梓「!!」ガシッ!

物陰に入ると横から腕が伸びてきて梓は自由を奪われて仕舞う

梓(待ち伏せ!?)ハッ

ババッ!

梓は素早く身を捻り、腕を封じている相手に足払いをかける

男1「おっとお嬢ちゃん、諦めな!」ググッ

男2「やれやれ、ずっとつけてくるからどんな奴かと思ったら……」カツカツ

梓(前からも……!)ググッ!

男1「だから抵抗はよしなさいって、手荒な真似はあんまりしたくないんだ、俺たち紳士だからさ」

男2「さてお嬢ちゃん、一体なんの用かな?」ニヤリ

梓(ああ、しくじった……)ガクリ


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