梓「あ!先輩!待ってください!」

紬「私たちも行きましょうか」

梓達が唯を追って行くと、唯は一つの露店の前で立ち止まっていた

律「唯、どうしたんだ?」

唯「みてみて~、りっちゃん、これだよ、甘い匂い!おいしそうだよぉ~」キラキラ

澪「これはなんだ?」

その露店では竹串の先になにやら琥珀色の塊のついたものが売られていた

露天商「おう、お嬢ちゃん方!これはこの辺では珍しい麦から作った麦芽飴だよ、美味しいから買ってきな!」

唯「美味しそうだねっ!」キラキラ

澪(超欲しそうだな……)

梓「ちょっと唯先輩!無駄遣いはできないんですよ!」

唯「」ガーン

唯「そうだよね……わかってるよ、あずにゃん……」ウルウル

紬「まあまあ、梓ちゃん、いいじゃない、飴くらい」

唯「本当っ!?」キラキラ

紬「本当よ♪……それで、おいくらかしら?」

露天商「ああ、一つ銅貨一枚だ」

律「安っ!」


----------
------
---

一行は冒険者ギルドへ向けて歩いている

テクテク

律「なあ、もしかして今の私達って結構お金持ち状態?」ペロペロ

澪「そうみたいだな、さっきみたら腕くらい大きな魚が銅貨4枚だったし」ペロペロ

紬「そうはいっても、早くお金稼がなきゃ」ペロペロ

梓「まったく!ムギ先輩は唯先輩を甘やかしすぎです!」ペロペロ

唯「むっ、あずにゃんだって食べてるでしょー」ペロペロ

梓「これはっ……ムギ先輩が買っちゃったからしかたなく……」アタフタ

律「本当は食べたかったくせに~」ニヤニヤ

梓「うっ」(否定できない……)

一行は結局あの後、飴を五本購入したのだった

律「そうこうしてるうちに着いたな」

一行はこの辺りでもひときわ大きな建物の前にいた

唯「ここ~?」

澪「これだけ大きな看板出してるんだから間違いないだろ」

梓「入りましょう!」

ドア「ガチャ」

梓がドアを開けると、薄暗い室内に光が射し込んだ

ガヤガヤ ガヤガヤ

律「なんかガヤガヤしてるなー」

室内には多くのテーブルがおかれ、人々が酒を呑んだり、煙草をくゆらせながら雑談に興じていた

また多くの人が各々武器を持っており、鎧姿の者や傷のある者、その外見から危険な冒険を生業としているのがみて取れる

ギルド受付嬢「あら?あなた達お客さん?」

みんな「っっ!?」

突然に背後から声をかけられ驚く一同

澪「びっくりした~」ドキドキ

ギルド受付嬢「あら、ごめんなさい、あなた達ここに用事かしら?」

紬「はい、あのー少しお話を伺いたくて……」

ギルド受付嬢「お話?いいわよ、まあとりあえず、中に入って?」

受付嬢に促され一行は室内に通された

ギルド受付嬢「カウンターでいいわよね?」

一行がカウンター席に座ると受付嬢は口を開いた

ギルド受付嬢「それで、話ってなんの話かしら?」

澪「ええと、少しギルドの事とか聞きたくて、冒険者ギルドってことはここにいるのはみんな冒険者なんですか?」

ギルド受付嬢「ええそうよ、人は多いけど、なにしろ冒険者ギルドは世界中にあるから、いろんな地域の冒険者が旅の拠点にしてるのよ」

紬「拠点てどういうことですか?」

ギルド受付嬢「冒険者ギルドは宿泊施設も兼ねてるのよ、ギルド所属者は格安で泊まれるの」

律「世界中から人が来てるって事は、沢山情報が集まるってことだよな?」

ギルド受付嬢「ええ、まあそうよ」

紬「じゃあ、あの、ギルドに魔術に詳しいかたっていらっしゃるでしょうか?」

ギルド受付嬢「う~ん、それならここより王都の魔術ギルドのほうがいいわよ?」

澪「魔術ギルド?」

ギルド受付嬢「そうよ、この国の王都にある魔術学校併設の国立魔術ギルド」

律「へぇ~、そんなのもあるんだな」

ギルド受付嬢「というか、あなた、魔術師みたいな格好してるのに魔術ギルド知らないの?」

澪「いや、えっと、異国から来たものですからっ」アタフタ

受付嬢「ふーん、そうなの」

梓「あの、冒険者ギルドって世界中にあるんですよね?」

ギルド受付嬢「ええ、この大陸だけでも30箇所以上あるわよ、だからギルド所属者なら世界中旅できるわ、西の3国は戦争中だから危険だけど」

客「おーい、ねえちゃん!酒のおかわり持って来てくれーい!」

ギルド受付嬢「あ、かしこまりました!ごめんなさい、あなた達、今日はちょっと忙しいから仕事に戻らなくちゃいけないわ」

紬「いえ、こちらこそありがとうございました」ペコリ

ギルド受付嬢「それじゃ、今度はお客さんで来てね」ニコ


---------
------
---

冒険者ギルドを後にした一行はまた大通りを歩いていた

テクテク

律「あんまり話聞けなかったな」

澪「そうだな」

梓「しょうがないですよ、向こうも忙しいみたいですから」

律「やっぱり世界中回ったほうが元の世界に帰る方法も、憂ちゃんと和の行方も早く見つかるよなあ」

澪「魔術ギルドって所も気になるしな」


テクテク

ピタッ


紬「ねえ、みんな……」


律「んー?どしたんだ?」



紬「私達……冒険者になりましょうよ」


突然の発言に全員が思わず立ち止まる



真っ先に反応したのは澪だった



澪「で、でも冒険者って危険なんだぞ!私たちにできるわけないよ!」


唯「できるよ~、大丈夫だよ~」ニヘラ

澪「そんな無責任な!」


梓「澪先輩!……やりましょうよ、冒険者、きっと大丈夫ですよ」

紬「そうよ、澪ちゃん大丈夫よ」


澪「梓まで……ガーン


律は全員を見回していった


律「決まり、かな?」

律「そうと決まればもう一回ギルドに行こうぜ」

紬「まって、りっちゃん、一回宿に戻ってさわこ先生に報告しに行きましょ?」

唯「冒険♪冒険♪」ウンタン♪ウンタン♪


梓「それにしても唯先輩の自信はいったいどこからくるんですか」

唯「世界中の旅なんて素敵だね~」キラキラ

澪「冒険……怖い……」ブルブル

律「澪~いつまで怖がってるんだよ」

澪「怖い……死んじゃう……」ガクガク

律「しょうがないな……」

テクテク

ギュ

澪「!?律!」

律は澪に歩み寄るとそっと抱きしめた

紬「!?」ムギュゥゥゥゥゥ!

律「澪、お前の事は私が絶対守ってやるから安心しろ、澪を危険な目にはあわせない」イケメン

澪「り、律……ありがとう、私も頑張る」ウルウル

ギュッ

更にきつく抱き合う二人

律「澪……」

澪「律……」

紬「っ!っ!!」ガクガク プシャー


梓「はいはーい、そこまでにしてください、二人とも、はい離れて離れて」ハイハイ

紬「チッ」

梓「白昼堂々と往来でなにしてるんですか!やめてください!」

律「なんだよー邪魔するなよー」

澪「はっ!わ、私はなんて事を……は、恥ずかしい!」マッカ

澪「と、とにかくさっさと宿まで戻るぞ!」

紬「澪ちゃん、ちょっとまって!」

唯「ムギちゃんどうしたの?」キョトン

紬「宿に戻る前にもう一カ所寄りたい所があるんだけど……良いかしら?」

律「そりゃあ、構わないけど?」

紬「じゃあ、悪いけどちょっとつきあって?」


----------
------
---

その数刻あと、一行は大通りからは少し離れた住宅街を歩いていた

紬「へんねぇ、この辺りのはずなんだけど……」

キョロキョロ

唯「さっきのおじさんの道案内、わかりにく過ぎだよぉ~」

梓「しょうがないですよ、もうちょっと探しましょう」

テクテク

律「あ!あの建物じゃ無いのか!?」

律が指差す方角に全員が注目する

唯「どれどれー!?」

律「ほら!あれだよ、あそこ!」

そこには、周りの住宅とは異なる造りの建物があった

縦に長い石造りの建物で脇には尖塔も建てられており、律達に向かって正面の窓には、大きなステンドグラスがはめ込まれている

紬「ここでいいみたいね」

澪「これが……教会……」

梓「大きい建物ですねー」

唯「んー?ねえねえ、なんで二つも同じ建物が並んでるの?」

確かに唯の言う通り、そこには全く同じ建物が二つ並んでいた

紬「んー、なんでかしら?わからないわ」

梓「尖塔の位置から窓の位置まで全く同じですね」

律「まあ、とにかくはいってみよーぜー!」

澪「そうだな……でもどっちに入ればいいんだ?」

紬「そうねえ……あ!きっと右の教会よ!」

律「ムギ、なんでわかるんだ?」

紬「見て!右の教会の入口のところ!」

右の教会の入口にはドアのうえに大きな金属製の紋章がおかれている

律「なんだ、あのマーク?ハンマーと草?」

紬「そうよ!このキーチェーンと同じ紋章!」

ジャラ

紬は自分のハンマーを手に取り、柄につけられているキーチェーンを示す

澪「本当だ……じゃあ、右側に入ろうか」


---------
------
---

ドア「ガチャ」

律「ごめんくださーい」

唯「うわぁ、きれい~」キラキラ

教会内部ではステンドグラスから取り入れられた光が柔らかい帯となって部屋中に降り注いでいる


紬「すごい……さながら聖歌が聞こえてきそうね」

澪「なんだか落ち着くな……」

また室内には、多くの長椅子が並び入口正面には鎧姿で鎚と剣を構える女神像があった

梓「なんていうか……勇ましいですね」

一行がその光景に見惚れていると奥の扉が突然開いた

ドア「ギィ」

ガタガタ

シスター「どなたかいらっしゃったんですか?」

律「うわっ、びっくりした!」

紬「あ、すいませんお邪魔しています」

シスターは優しい笑顔を浮かべている

シスター「いえいえ、かまわないわ、皆さんお祈りして行かれたらいいですわ」ニコ

唯「綺麗な人だねぇ~」コショコショ

梓「あの人が女神みたいですね」コショコショ

紬「いえ、あのー実は少しお話をうかがいたくて……この教会の事とか」

シスター「もちろん構いませんが……見たところ貴女もこの教会のシスターでしょう?神学校で習った事ばかりですが、構いませんか?」

紬「あ、あの私、異国の出身であまりこの辺りのことよく知らなくて!」

シスター「まあ!異国で神学を!?それは素晴らしいことですわ!貴女のその熱心な信仰を女神様もきっと見ていてくださる事でしょう、"貴女に戦いの加護がありますように"」

唯「戦いの加護?」

シスター「私達、"戦の女神の教会"の祈りの言葉です、私達は人々が人生という戦いに負けないように日々祈っているのです」

梓(い、勇ましい……)

シスター「それで、この教会の事でしたよね?なにをお話したら良いのでしょう」

澪「えーととりあえず、この教会の隣の建物はなんなんですか?」

シスター「ああ、それでしたら隣は"歌の女神の教会"ですわ」

律「隣も教会なのか!?」

シスター「はい、教会では病や怪我の治療も行っているのですが、実は私達"戦の女神"は怪我の治療は得意なのですが、病の治療は不得手なのです、ですから病の治療が得意な"歌の女神"方達と協力して治療を行っているのですよ」

唯「??どういうことなの?」コショコショ

律「現代で言う、外科と内科みたいなもんだろ」コショコショ

澪「へぇ~、違う宗派なのに仲が良いんですね?」

シスター「それはもともと私たちの信仰している戦の女神と歌の女神は姉妹同士であったという伝説があるからです、仲の良い姉妹であった二人はやはり互いに分担して怪我人や病人を癒していたと文献にありますから」

紬「あの、神学校ではなにを学んでいるのですか?」

シスター「まず私達はシスター見習いとして神学校に入り、教会武術と治癒の魔法、それから聖書の勉強をするの」

澪「武術!?」

シスター「ええ、そうよ、私たちは戦争時や魔物の襲撃時には前線で戦うのよ」

唯「シスターさんもなにかできるんですか?」

シスター「私は剣術を学びましたわ、この教会では鎚を扱う人が多いのだけれどね」

梓(虫も殺さないような顔してるのに……)

キョロキョロ

唯「あの~?」

シスター「なんですか?」ニコ

唯「それで、"冒険の書"はどこにあるんですか?」

澪&律「!!」

シスター「?冒険?の……」

唯「えっとね~、"冒険の書"っていうのは~ギュム……」

律「あー!いえなんでもありません!」アタフタ

澪「そうそう!なんでもないです!気にしないでください!」アタフタ

律「あっ!もうこんな時間だ!そろそろ宿に戻らないと!」

澪「そうだな!すいません、お邪魔しました!」

シスター「あら?もうお帰りに?もっとゆっくりしていっても……」

律「いえいえ!これ以上お邪魔させてもらうわけには行きませんから!」

澪「よし!それじゃみんな行こうか!」

シスター「それでは、気をつけてお帰りになってくださいね……」

律「はい!お邪魔しましたー!」

ドア「ガチャバタン!」


---------
-----
---

律「はあ~焦った~」グッタリ

澪「勘弁してくれよ、唯~」グッタリ

唯「?なんで~?」

律「なんでって、ここはゲームじゃ無いんだから、"冒険の書"なんかあるわけないだろ」

唯「あ、そうだった~」テヘヘ

澪「おいおい、忘れてたのか……」

梓「でも別にそんなに慌てなくてもいいんじゃないですか?」

律「あのシスターになんて説明するんだよ?私たちが違う世界からきたことばらす気か?」

澪「あの人が興味持ったら、つじつまのあう言い訳考えるの難しいだろ」

梓「あ、そう言うことですか」

紬「なんだか疲れちゃったわね」

律「とにかく一回宿に戻ろうぜ」

澪「そうだな」


8