スライムたちがあらわれた!▼


紬「?おかしいわね、モンスターが出るなんて」

唯「あ、あれ可愛いかも~」トテテ

唯がスライム達の方へ近づいていく

梓「ちょっと危ないですよ!唯先輩!」

紬「大丈夫よ梓ちゃん、ここでは傷を負っても痛みは感じないし、現実にも影響しないわ」

唯「そうだよ~、これはゲームなんd」
律「唯危ない!」

ドン!

ザクッ!

唯「うわぁ!」

いきなり突き飛ばされた唯は地面に転がった

唯「もーりっちゃん、いきなりなにするの!」

唯は起き上がって律のほうに目を向ける


鮮やかな赤が目に飛び込んできた


唯「え?え?りっちゃんなにそれ?え?」

律の膝から足首にかけて細長い傷が走り、血と肉がみえている

唯は頭が真っ白になった

澪「り、りつ……ち、血が……」フラ

バタン

澪は気を失った

梓「澪先輩!ム、ムギ先輩!これは一体どうゆうことですか!な、なんで、律先輩が!」

紬「わ、私にもわからないわ!これはどういう…!」

梓と紬は気が動転している

紬(おかしいわ!どうしてりっちゃんが傷をっ!?そうよ!ここはゲームのなかなんだから!)

紬「大丈夫よ!たいしたことじゃないわ!き、きっと大丈夫!」

梓「なに言ってるんですか!どう考えても大丈夫じゃないですよ!!」



律「お、おい!澪!」

律は自分でも意外なほど冷静だった

傷を負うとすぐにどの程度の傷なのかを頭が勝手に分析し始める

律(傷は大きいけど、浅いし、痛みも出血もほとんど無い!よし!これならいける!)

こんな大怪我をしたのは生涯初めてだが、不思議と体が動く

横をみると、一匹のスライムの体が刃状に変化している

どうやらあれで斬りつけられたらしい

律(ここにいたらまずいな)

ササッ

律は素早くスライムたちから距離を取った

律「ムギ!梓!しっかりしろ!私は大丈夫だ!」

その声で紬と梓は律のほうへ駆け寄る

梓「律先輩!大丈夫なんですか!?」

律「梓、少し落ち着け!」

紬「り、りっちゃん!とりあえず回復を!」

紬が律の傷に手を添える

紬「光の力よ!"癒しの手"!」

パァァ

紬の手が光輝き律の傷がみるみるふさがっていく

紬「応急処置だけど、我慢して!」

動くようになった足を確認しつつ、律が答える

律「十分だ!ムギ!梓!私たちであれをなんとかするぞ!」

律「見たところ動きは鈍そうだ、一人一体ずついけるな?」

梓「は、はい!やってやるです!」

紬「大丈夫、いけるわ」

二人は青ざめているが、しっかりとうなずいた

律「よし!あいつらの斬撃には気をつけろよ!」
ダッ

言うやいなや律はスライム達の方へ駆け出していく

紬「梓ちゃん!私たちも!」

梓「はい!」

紬と梓も律の後に続く

律(一発で決める!)

律「やぁぁぁ!」

ブン

素早くスライムの前に回り込んだ律が勢いをつけて斧を振り下ろす

ダァン!ビチャビチャ!


斧の直撃を受けたスライムは一撃で四散し動かなくなった

律(よし!)



梓は一体のスライムの頭上を飛び越え、後ろに回り込むと短剣で斬りつけた


ザシュ

梓(くっ!柔らかくて刃が!でも!)

ザシュザシュザシュ

手応えは余り感じられなかったが、何度も斬りつけているとスライムは細かくなり、地面に吸い込まれてしまった

梓「やりました!」

紬(動きが鈍いから当てられるはず!)

ブゥン

ドン!

ハンマーを上から振り下ろす、

が、スライムはその一撃をかわした

紬(避けられた!?)

スライムが対峙している紬に向かって飛びかかってくる

シュッ

紬(っく!)

ブォン

紬は飛びかかってくるスライムに合わせて、横なぎにハンマーをふり抜いた

バァン
ビチャビチャ

軽い手応えと共にスライムは空中で飛び散り、落下していく

紬「ハァハァ」

律「大丈夫だったか、ムギ!」

梓「なんだかあっけなかったですね」

紬「私達の運動能力が上がっているからよ……」

律「それよりも早くここを離れよう、日が暮れたら移動できなくなるし、ムギ、この先に街があるんだよな?」

紬は律の質問に確信をもってイエスと言えなかった
なぜなら、ここは本当は自分の知る場所では無いかもしれない、自分は今まで大きな勘違いをしていたのかもしれない、と思い始めていたからだ

しかし、今はこれ以上にみんなを不安にさせる事はできない、紬は暗い憶測を胸にしまった

紬「ええ、ここからならすぐよ」

律「わかった、梓、唯を頼む、私は澪を運ぶから」

律は未だ気を失ったままの澪の方へ足を向ける

梓「わかりました」

タタッ

梓「唯先輩、大丈夫ですか?」

唯は青い顔で震えている、ずっと放心状態だったようだ

唯「あ、あずにゃん、あずにゃん!」ガシッ

ギュッ

よっぷど怖かったのか梓にしがみつく様に抱きつく唯

プルプル

梓も震える唯をみながら、今回ばかりは嫌がるそぶりはみせなかった

梓「唯先輩、行きましょう、ここは危険です」

唯「う、うん」


それから5人は無事に街までたどり着き、所持金で宿を取った


初めての戦闘に疲れきっていた一同はそのまま倒れこむ様に眠った


お互い不安を抱えて、疑問も尽きなかったが、これからの話は明日にまわす事になったのだ


第一章 完




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チュンチュン

眩しい


パチッ

目を開けると、剥き出しの木の梁と白い漆喰で塗り固められた天井がみえる

どう考えても、自分の家ではない


唯「う、う~ん」ガバッ

唯は身を起こし、大きく伸びをした

窓から射し込んだ朝日が顔の上に光の帯をつくっている

ここはどこ?という安直な台詞が頭に浮かんだが、すぐにそれを自分で打ち消す



唯(憶えてるよ、全部、昨日の事も)

唯「はぁ~」

爽やかで申し分ない朝だったが、昨日の事を思い出すとどうしても気が滅入る


唯(全部、夢だったらよかったのに)

律「う、う~ん…くっ」ガタガタ

隣をみると、律がうなされている
汗も酷くかいているようだ

唯「り、りっちゃん!」

タタッ
駆け寄って様子をみる

唯(すごい熱だよ!どうしよう……)

なにか無いかと周りを見渡すと、5つのベッドが目に入る

そのうち1つは自分が寝ていたもの

その他に3つには使用した形跡があった

唯(そうだ!澪ちゃんたちは!?)

唯がそんな事を考えていると、突然ドアが開いた

ドア「ガチャ」

澪「お、唯、目がさめたのか」

唯「澪ちゃん、ムギちゃん、あずにゃん!大変だよ!、りっちゃんが凄い熱で!」

澪「ああ、だから、薬をわけて貰ってきたんだ」

そう言って澪は小さな巾着袋をかかげて見せた

唯「でも、なんでりっちゃんは熱がでちゃったの?」

紬「昨日の傷のせいよ、昨日は応急処置しかできなかったから、熱がでちゃったのよ」

三人は、それぞれ自分のベッドに腰掛けた

梓「唯先輩、先に顔を洗って、髪を整えてきてください、爆発してますよ、タオルは貸しますから」

そう言われ、髪に手を伸ばす唯

唯「うわ!本当だ、私行ってくるよ!」

ドア「ガチャバタン」

梓「あ!洗面所は部屋でて左のつきあたりです!」

唯「ありがと~あずにゃ~ん」

声がだんだん遠ざかっていく

澪「よし、じゃあ私は律に薬を飲ませなくちゃ」


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ドア「ガチャ」

唯「ふい~、さっぱりすっきりだよ~」ホクホク

唯が部屋に戻ると紬が律の足に手を当て、なにやらブツブツと呟いている

澪と梓もその周りを真剣そうな面持ちで囲んでいる

紬「ブツブツブツブツ」

唯「ムギちゃん、何やってるの?」

澪「しっ!今、律の傷の手当てをしてるんだ」

唯「手当てってもう傷は塞がってるよ?」

唯が怪訝そうな顔をしていると紬の手元が光を帯びてきた

パァァァァ

シュゥゥゥゥン

5秒ほどで光は収束し、元に戻った

紬「ふぅ、これで一安心ね」

紬は額の汗を拭いながら、嘆息した

唯「ねえ、傷が塞がってるのに手当てってどういうこと?」

紬「昨日のはただ傷を塞いだだけの応急手当てにすぎないわ、今やったのは切れた筋肉の繊維と血管を繋ぎ合わせる術よ、これをしないと、後で足が動かせなくなってしまうの」

唯「ほえ~、ムギちゃんすごぉい」カンシン

律「すぅ…すぅ…」

寝息が先ほどよりも穏やかになっている
確かに律の容態は安定してきているようだ

澪「律のほうはこれでいいな」

澪は紬に向き直る

澪「さあ、ムギ、昨日のことも含めて説明してもらうぞ!」

紬「ええ、わかってるわ……」


そうだ

唯も梓もずっと気になっていた
でも、聞くのは何となくはばかられて、遠回しにしていた事


皆自然とベッドに腰を降ろす

澪「それで、ここは一体どこでこのゲームはどうやって終わらせられるんだ?」


紬は少し俯きながらぽつりと呟いた

紬「それは…わから…ないわ」


一瞬の静寂


梓「わからないってどういう事ですか!ムギ先輩が私達をここへ連れてきたんですよ!」

その言葉にますます下を向いてしまう紬

澪「律をあんな危険な目にあわせておいてよくそんな事を!」

梓「いいから、早く私達をここから返してください!」

紬「私だって!私にだってわからない事ぐらいあるわよ!!」


紬の叫び声に思わず言葉を失う澪と梓

紬は顔を真っ赤にしている

紬「私だってここに来てからわからない事だらけなの!前は危険な事なんて無かったのに!」


澪「……」

梓「……」

紬「これを見て……」

そう言って紬が取り出したのは小さい無線機のようなものだ

紬「ここに着いたらすぐに斉藤から連絡が入るはずだったわ」

紬「でも未だに連絡は無いし、今、現実世界がどうなっているのかもわからない……どうしようもないのよ」


澪「……」

梓「……」

唯「……」

紬「ほ、本当に……ごめんなさい」

頭を下げる紬

紬「私はただ、皆と楽しく過ごしたくて、ただそれだけだったのに…み、みんなを…グスッ…こ、こんな目に…あ、あわせてしまう…な、なんて」ポロポロ


紬は泣き出してしまった


スッ

ギュッ

紬に抱きつく唯

唯「大丈夫だよ、ムギちゃんはなにも悪くないよ」

紬「ゆ、唯ちゃん……」

唯「誰もムギちゃんを責めたりしないよ、だから、安心して」

紬「ゆ、ゆいちゃ……」ウワァーン


その後は言葉にならなかった



紬は唯の胸に顔を埋め、泣いた



しばらくの間、誰も口を開かなかった



部屋には紬の泣き声だけが響いていた


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紬「グスッグスッ」

唯「ムギちゃん落ち着いた?」

紬「え、ええ、もう大丈夫よ」

澪と梓が申し訳なさそうに口を開く

澪「ムギ、ごめんな、さっきは言いすぎた、ムギの気持ちも考えないで」

梓「ムギ先輩ごめんなさい」


紬「いいのよ、私も取り乱したりしてごめんなさい」



唯「これで仲直りだね!」


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