唯は混濁する意識のなかで、なにかを聞いた気がした
(なんて言ってるのかな?ta.....na....?)
( ダメだ良く聞こえないや)
唯の意識は黒く塗りつぶされてにいった
チュンチュン
「........い......!........ゆ........い........!」
誰かの声がきこえる
唯「ん.....う...うん、今日は日曜日だよ~」
律「唯!唯!いつまで寝てるんだよ!」
聞き憶えのある声に私は飛び起きる
唯「ハッ、りっちゃん!みんなは?」
そう尋ねて、周りを見渡すと自分が大木の根元に寝そべっていたことがわかった
唯「あら?」
うえには抜けるような青空
そして他には、見渡す限りの草原と森しかなかった
太陽の光が触れそうなほど澄んだ空気だ
唯「いい天気~!…って、一体ここはどこなの?」
律「これがゲームの中らしいぞ」
唯「えっ!これがゲーム?うっそだ~、いくらなんでもリアルすぎるよ!」ケラケラ
律「嘘じゃないさ、その証拠にまず自分の服をみてみろよ」
そう言われて唯は自らの体に目を向ける
唯「なにこの服可愛い~!」
唯が身にまとっていたのは、麻と綿を主とした肌着に胸から腹部を覆う革製の鎧だった
律「可愛いのか、それ?」
唯「それより、りっちゃんこそ、その服面白いねぇ~」
律「ああ、これな」
律は比較的面積の広い赤くカラーリングされた金属製の鎧を身につけている
律「まあ、この服のことも含めてムギが説明してくれるだろ」
唯「あ!そうだよ!みんなは?」
律「唯がなかなか起きなかったから、みんなで水をくみに行ってるんだ」
とその時、
澪「おーい律ー!」フリフリ
澪が遠くで手をふっている
近くに梓とムギもいる
どうやら水汲みが終わったらしい
律「澪ー!」フリフリ
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合流
梓「あ!唯先輩!目が覚めたんですね」
両手に革袋を持った梓が近づいてくる
唯「うん!うわぁ!あずにゃんの服も可愛いね~」ダキッ
梓「先輩!やめてください!水がこぼれちゃいます!」
梓の服は薄い黄色を主体とした"ツナギ"のような服だったが、上半身ははだけていて、その下には革製のブラのような物がしかつけていなかった
紬「あらあらあらあら」ウフフ
律「ムギ!壊れてないで、水はどうだったんだ?」
紬「ええ、綺麗な水だったわ、これでしばらくは持ちそうね」
そういって、両手に下げた6つの革袋を上げてみせる
そういう紬の服装はと言うと、
全体的にはゆったりとしたローブのような服だが、上着の裾が長いためスカートをはいているように見えるが、下半身はスカートではなくズボンになっている
律「おー、お疲れさん、ところで、澪ちゃんは革袋一つだけですか~」ヤレヤレ
澪「しょうがないだろ!私は非力なんだ」
澪は薄い紫のローブにつばの広い帽子をかぶっている
唯「あはは、澪ちゃんとんがり帽子だ!」ケラケラ
澪「わーらーうーなー!」マッカ
紬、澪、梓が木の根元に革袋を置いていく
唯「ねえねえ、そのたくさん置いてある物は何なの?」
みると、地面に大小様々な道具が転がっている
紬「ああ、今からそのことについて説明するわ、少し長くなるけど我慢してね?」
唯「うん!」
紬「それじゃあ、まずこの世界の事なんだけど、
この世界はいわゆる仮想現実空間で、本当の世界では無いわ、だから私達の身体は実際ここには無くて、私の家にあるのよ、今ここにいる私達は精神だけの存在なの
続けて、このゲームについて説明するわね、
まずこのゲームは剣と魔法の世界の物語なの、それで、この世界には、大きくわけて2種類の生き物が存在するわ、
一つは魔導生物と呼ばれるもの、
ほとんどの生き物はこの魔導生物なの、人間もそうよ、魔導生物は体外と体内の魔力を使役する事ができるの、もちろん、種族ごとに能力差はあるけど
あ、もちろん、モンスターも魔導生物よ
そして、もう一つが固有種と呼ばれるもの
これは本当にごく一部の限られたモンスターや精霊にしかいないわ
固有種は魔導生物とは比べ物にならない魔力を持ち神に匹敵する力を持つと言われているの
実際この世界には、古に存在した固有種を崇める宗教がたくさんあるわ」
紬「魔導生物と固有種の違いだけど、最も大きな違いは、
固有種は繁殖する事ができないの、だから数も余り増えない、けれど、固有種には寿命がなくて長く生きれば生きるほど、魔翌力を蓄え強力になっていくそうよ
逆に魔導生物には寿命があって、繁殖する事ができるんだけど、種族ごとにけっこう差があるわ
例えば、エルフなんかは何百年も生きるけど、人間は生きても百年くらいっていう風に
ほかにも、魔導生物は固有種になる事も出来るわ
例えば、仙人と呼ばれる人達がいるけど、彼らは厳しい修行の果てに"人間"という魔導生物から"仙人"という固有種になった
という設定よ♪」
唯「よくわかんないけど、とにかく凄いんだね!」
律「凄い設定だな、このゲーム…とゆうか、ムギは良くそんな長ったらしい設定覚えてるな」
紬「ご都合主義よ、りっちゃん♪」
澪「は、はは、繁殖……」プルプル
梓「どこに反応してるんですか」
紬「じゃあ、続けるわね?」
もの珍しさに目を輝かせて話をきいていた唯だったが、
急に深刻そうな顔になると口を開いた
唯「ねえねえ、ずっっっと気になってたんだけど、憂と和ちゃんはどこ?」
梓「そういえば、そうですね、澪先輩は1番最初に目が覚めてましたよね」
澪「う~ん、私が目覚めた時からいなかったぞ」
律「あの慌てようじゃ居ても気づいたかどうか怪しいもんだぜ、だって澪ってば
『りつぅ~、早く起きてくれ~死んじゃやだ~』グスグス
とかいってたんだから」ヤレヤレ
澪「だ、だってみんな死んでるみたいに眠ってたんだもん!揺すっても目覚めないし、本当に心配したんだぞ!」プクー
澪はそういって、頬をふくらませた
可愛い
紬「憂ちゃん達ならきっと大丈夫よ、多分機械の座標指定が誤作動しただけよ、まだテスト段階だからこうゆうこともあるわ」
梓「誤作動って、そんな軽く……このゲームってモンスターとか出るんですよね?危険じゃ無いんですか?」
紬「大丈夫よ、斎藤たちがプログラムを作動させるまでモンスターは出現しないわ、それにあくまで誤作動だから近くにいるはずよ」
梓「そうですか、それをきいて安心しました、唯先輩!大丈夫っぽいですよ」
唯「う......うん、そうだよね!ゲームだもんね、これ」
ガシャガシャ
一同が音のするほうに目を向けると律が荷物を漁っている
律「なあ、ムギ、この剣とかが私たちの武器なのか?」ヒョイ
そういって、地面に落ちていた剣を拾い上げる
律「って、軽っ!これ本当に金属なのか?」
そういって、ひゅんひゅんと剣を振りまわす律、確かに刃渡りが自分の腕ほどもある剣なのに全く重さを感じさせない動きだ
澪「おい、律!危ないぞ!やめろ!」
梓「本当ですか?」
そういって、梓は足下のハンマーを拾おうとした
梓「って重!めちゃくちゃ重いですよ!」
梓はハンマーを両手で抱えよろよろしている
可愛い
紬「そうよ、ここにあるのが私達の装備、
武器も防具もあるわ」
紬「ここにある、武器は"職業"によって使えるものが限られているわ」
唯「職業って私たち全員学生だよ~」ケラケラ
紬「そうゆう職業じゃなくて、このゲーム内で能力を決めるものの事よ、例えば、私の場合はこれ」
そうゆうと紬は梓に近づいて、梓の抱えているハンマーを軽々と持ち上げる
梓「えっ、そんなに重いものよく持てますね」
唯「ムギちゃん力持ち!」
紬「私はプリースト、武器はこのハンマーよ♪」
澪「プリーストなのに、ハンマーって…」
紬「このゲームには、プリーストにもいくつか流派があるの、
その中の一つに"戦の女神"を信仰する流派があるわ、そこに所属する私たちは、プリーストでありながら、剣や鎚なんかの武器を持って戦うのよ、素敵でしょ?」
澪「素敵でしょって……」
唯「ねえ澪ちゃん!私澪ちゃんの職業わかるよ!魔法使いでしょ!武器はきっとこれだよ!」
そういって唯が手渡してきたのは、一本の杖だった、木製の飾り気の無いシンプルな作りだが先端に金属の輪がついていて、そこに赤みがかった透明の石が埋め込まれている
澪「確かにしっくりくるけど、なんだか恥ずかしいな」
ガチャガチャ
唯「あと残ってるのは、剣と斧と短剣だよ」
律「斧っ!?斧があるのか!」
唯「う、うん、これだよ、はい」
律「うわぁ!本物の斧だかっこ良い!
この曲線!、重厚感!かっこよすぎる!
決めた!私の武器はこれな!」
律は目をキラキラさせている
梓「かっこいいですかね……?」
澪「よくわからん……」
梓(なんか羨ましくなってきた、剣と短剣私のはどっちなんでしょうか)
ガチャガチャ
剣と短剣を見比べる梓
その時、梓は確かに短剣と目があった気がした
梓と短剣の間にだけあるなにかがみえた気がした
梓「私のはこれですね」
梓はそういって、短剣を手に取る
果たしてそれは手に吸い付くようにピッタリと馴染んだのだった
唯「私のは剣か~、よーしがんばるぞ!」フンス
紬「さっきもいったけど、職業によって装備できるものはちがうの、装備できない道具はさっきの梓ちゃんみたいに、重くて使えなかったりするわ」
紬「あと職業によって身体能力もいろいろ変わっているから、試してみると面白いわよ、
おそらく皆の職業は唯ちゃんが騎士、澪ちゃんが魔法使い、りっちゃんが戦士
梓ちゃんは盗賊ね」
ドォン バリバリバリ
律「お~本当だ、パンチで木の幹が手形にへこんだ!」
唯「すごーいりっちゃん!って、あずにゃん、いつのまに木の上に!?」
梓「見てください!ジャンプで木に飛び乗れました!凄いですよ!」
ワイワイキャッキャ
はしゃいでいる三人を横目に澪は紬に問いかける
澪「なあ、格好は魔法使いでも私は魔法なんて使えないぞ」
紬「ああ、それならこれよ、はい」
紬が手渡してきたのは一冊の本だ
澪「見た事も無い言葉……あ、読める」
記号の羅列にしかみえないが、不思議と内容が頭に入ってくる
澪「うーん、えっと、タイトルは"サルでもわかる黒魔術"!」
澪「……」
紬「……」
紬「あっ、そ、そうそう私の本もあるのよ」
そういって紬が本を見せてきた
澪「どんな本なんだ?」
紬「タイトルは"殴りと癒し"よ♪」
澪「……」
紬「と、ともかく、その本に呪文が書いてあると思うわ」
紬「澪ちゃんちょっと読んでみて」
澪「ああ」ペラ
澪「えーと、なになに、はしがき?」
~サルでもわかる黒魔術~
本編の前に言っておきたい事がある!
この本を読んでいる君は、サル並にバカでどうしょうもない社会の底辺だ!魔術の才能なんて皆無に違いない!
君は落ちこぼれで、クズで使いものになr…
パタン
澪は本を閉じた
澪「……」
紬「そ、そこは飛ばしていいから、続きを読んでみて」
澪「ああ、えーと」ペラ
本には読める部分と読めない部分があった
澪(同じ文字で書かれているのになんで
だ?)
澪「なになに、"炎の呪文"?」
~初級火炎呪文~
小さな火の玉を発生させ、操る
澪「やってみよ、えーと"初級火炎呪文"!」
右手を前にだし、唱える
ボウ
澪「うわ!」
メラメラ
澪の手のひらに小さな火の玉が浮かんでいる
澪「本当にでた…!熱くないし、不思議なもんだな」
澪はその後、3つの魔法を習得した
ふと地面をみると、本がまだ3冊残っている
澪「本も全員分あるのか?」
紬「そうみたいね、りっちゃん達に渡してくるわ」
紬は律達の方へ本を渡しに行ってしまった
サァァァァ
時折ふく風が、草の匂いを運んでくる
澪にはそれが作り物の空気だとはとても思えなかった
澪(ここは本当にゲームの中なんだろうか)
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太陽がちょうど真上にきた頃
律「なあ、ムギ、ずっとここにいてもしょうがないし、そろそろ出発しないか?」
紬「ええ、そのつもりなんだけど、斎藤からの連絡が無いのよ、本当はついてすぐに連絡がくるはずだったんだけど……」
梓「また、システムのバグじゃないですか?」
唯「そだよ~、早く憂と和ちゃんに会いたいし出発しようよ!」
紬はしばらく考え込んでいたが、顔をあげて答えた
紬「そうね……行きましょうか」
テクテクテクテク
一同は草原のなかにある整備された道を歩いていた
紬「この道を北に行けば街に着くはずよ」
律「街道ってやつだな!」
梓「ムギ先輩はずいぶんと詳しいですね」
澪「確かにいくら開発元だとしても詳しいよな」
紬「実は私、このゲーム何回かプレイしてるのよ、これから行く街も何回か訪れた事があるわ」
梓「そうだったんですか、どうりでk」
梓の声を律が遮る
律「なあ、ムギ、このゲームでは斎藤さんが許可するまでモンスターはでないんだよな?」
紬「?ええ、そうよ?」
律「じゃあ、あれは一体なんなんだ?」
律の指差す先には青くて半透明のクラゲのような物体が3つ蠢いていた
見た事も無い物体だったが、澪の頭に一つの言葉が浮かび上がってきた
それは目の前の物体を形容するのにぴったりで思わず呟く
澪「スライム…?」
最終更新:2011年03月17日 02:14