唯「ムギちゃん今日のお菓子は~?」

紬「昨日は家に世界的に有名なパテシエの方がいらしたから
  その方が持ってきてくれた美味しいケーキよ」

唯「りっちゃん! 早く部室に行こうよ!」

律「よし! 唯隊員、私に続け~!!」ダダッ!

唯「おお~!」ダダッ!

和「ちょっと! 廊下は走っちゃだめでしょ!」

唯「あう~~。怒られた~……」

律「生徒会の回し者め~」

和「なんとでも言ってくれて結構よ」

律「いいじゃん、走るくらい~」

和「危ないって言ってるのよ」

律「そうか……。確かに私には澪みたいなエアバッグが胸にないから」

唯「誰かとぶつかったら大変だねっ!!」

澪「おい……」

律「あら、澪しゃん朝ぶり。寂しくなかった~?」

澪「もう二年になってずいぶんと経つんだから……」

律「そっか~。寂しくて泣いてるんじゃないかって心配してたの~」

澪「おべっか使ったってダメだ」ゴチン!

律「……痛い」ヒリヒリ

澪「和、ゴメンな。私からもきつく言っとくから」

和「いいのよ。お小言いうのも仕事のようなもんなんだから」

紬「今日も生徒会?」

和「ええ」

唯「頑張ってね、和ちゃん!」

和「唯たちも部活がんばるのよ。お菓子ばっかり食べてないでね」

唯「え、エヘヘ……」

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~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪

律「今日は練習が捗るな~」

唯「ムギちゃんの美味しいケーキ食べたおかげだね」

紬「そう? 嬉しいわ」

梓「確かに、いつもよりいい感じですね」

澪「これが続けばな~」

  ガチャ

和「ちょっといい?」

唯「あ、和ちゃん」

律「何か用?」

和「あなた達に対して苦情がきてるのよ」

澪「苦情?」

和「茶道部や囲碁部などなどから軽音部の演奏がうるさいって生徒会に苦情が上がってきててね」

梓「他の音楽系の部活もそうなんですか?」

和「合唱部や吹奏楽、ジャズ研にはないわね」

紬「なんで軽音部にだけ……」

和「あなた達、窓を開けっ放しで演奏してるでしょ?」

律「だって練習始めると暑くなるんだもん!」

和「気持ちはわからないでもないけど、ちょっとわきまえてほしいわね」

和「他の部はその辺協力的よ」

唯「でも、外でやってる運動部なんかには好評だよ! 元気を貰えるって!」

和「全部が全部動き回る部活じゃないのよ……」

澪「確かに、囲碁や将棋なんかは静かにやりたいだろうし」

紬「茶道だって心が乱れちゃ台無しよね……」

律「しゃ~ない、ここは生徒会様に従うしかないようだな」

唯「姉御! 下々の私たちにはどうすることもできないんでやんすね」

律「辛いだろうが……耐えてくれ!」

唯「ヘイッ!」

澪「何やってんだ……」

和「まだあるんだけど続けていいかしら?」

紬「うん。気にしないで続けて」

和「吹奏楽部からね。顧問の山中先生について。
  『最近指導にやる気が感じられない。
   これも、軽音部と顧問掛け持ちになったときからで
   恐らく軽音部にその原因があるのではないか』との苦情も」

律「それは、さわちゃんの責任で私たちには……」

澪「って言うか、さわ子先生ってちゃんと指導することあるんだな……」

梓「お茶飲んでるイメージしかありませんでした……」

和「そのさわ子先生からも苦情がきてるの」

律「えっ!?」

和「『最近、体重が増加傾向にある。きっとこれもムギちゃんのお菓子が美味しいせいだ』って」

紬「そんなっ!?」

唯「自業自得ってやつだよ!」

澪「なんで和もそんな苦情取り扱ってるんだよ!」

和「だって生徒会ですもの」

律「手広くカバーし過ぎだろ、生徒会……」

和「あと、ここの掃除担当の人たちからも苦情があるんだけど」

梓「まだ、あるんですか!?」

和「『食器がなんだか高級そうで割ったら怖いから安心して掃除ができない』って」

紬「まぁ、そんなこと気にしなくてもいいのに」

澪「実際高い物なんだろうな……」

和「さらに運動部からも『音楽準備室からいつも甘~い香りがしてきて練習に集中できない』って苦情もあるわね」

唯「そんなっ!? 運動部の皆は私たちの味方だって信じていたのにっ!!」

律「唯、所詮は人間の絆なんてそんなもんなのさ……」

唯「憎い……、あの人が憎いっ!!」

梓「何言ってるんですか……」

和「まだあるわよ。『ライブの時に秋山さんをもっと前面に押し出すべきだ』」

澪「……それは?」

和「……ごめんなさい。これはウチの会長の個人的な要望だったわ。どうやら紛れ込んでたみたいね。忘れて」

澪「……」

和「とにかく、今週中までにこの苦情の対策案を生徒会に示してちょうだいね」

律「え~~っ。めんどくさ~……」

和「駄目よ。下手したら活動停止になっちゃうかもしれないんだから」

唯「それは困るよ~。和ちゃんなんとかならない?」

和「こればっかしはなんともならないわね。あなた達で案を出してくれなきゃ……」

唯「そんな~……」

和(本当は何とかしてやりたいのは山々なんだけど)

和(自分たちで対処するのもこの先絶対に必要になってくるんだから……)

和「じゃあね。私も暇じゃないのよ」

  バタン

唯「ああ~ん、和ちゃ~ん……」








和「はぁ……。仕事とはいえ、嫌な役よね……」


澪「今週中までに……か」

律「和は血も涙も無い奴だ~!」

紬「でも、生徒会なんだから仕方ないわよりっちゃん」

梓「そうですよ。部活をやってるのは私たちだけじゃないんですし」

唯「……」

澪「どうした? 唯、元気ないな」

唯「う~ん……。和ちゃん、なんかお疲れ気味だった」

紬「きっと和ちゃんも駄目出ししたくてやってるわけじゃないのね」

梓「私たちみたいに、やりたいことだけやってるわけにはいきませんもんね……」

唯「和ちゃんのお仕事だもんね」

律「……そっか、それもそうだよな」

澪「和には甘えてばかりだったもんな」

律「そうだ! 良いこと思いついた!!」



雑貨屋

澪「で、解決案の相談もほっぽり出して、なんでこんな店に来たんだ?」

律「これだよ、これこれ!」

紬「メガネ? だけど変なものも付いてる」

唯「鼻メガネだよ、ムギちゃん」

紬「へ~、初めて見たわ!」

梓「この鼻メガネがどうかしたんですか?」

律「この鼻メガネを和にプレゼントするんだ!!」

梓「えっ……」

澪「さぁ、帰るか」

律「こらこら、そこっ! 話は最後まで聞く!!」

律「和はとにかく真面目すぎるんだよ」

澪「いいじゃないか、お前みたいにふざけた人間よりは立派に世の中の役に立つと思うぞ」

律「じゃ、なくて~。たまには息抜きもあった方がいいだろ?」

律「和にはそんな心の余裕も必要なんだよ」

澪「でも、鼻メガネって……」

律「これをどう使うかは和次第だ!!」

紬「どうするの?」

律「たま~に掛けてみて、自分の面白さに気づくとか」

梓「それでどうなるんですか?」

律「さぁ~?」

澪「お前が言い出したんだろっ!!」

梓「きっと対策案を相談するのがめんどくさくなって逃げたんですね」

律「ギクッ」

澪「はぁ~……」

律「で、でも鼻メガネを掛けて世の中を見てみるのも必要だって」

澪「そんなこと聞いたことない……」

唯「りっちゃん……」

律「うっ……。唯にまでそんなテンションで……」

唯「感動したっ!!」

律「へっ?」

唯「そうだよ! 和ちゃんに必要なのはコレだよコレ!!」

紬「唯ちゃん?」

唯「私、和ちゃんに足りないものは何かな~ってずっと考えていたんだよ」

唯「まさに、この鼻メガネこそが和ちゃんの最後のピースを埋めるアイテムだよっ!!」

律「そうか! やっぱり和の幼なじみの唯はわかってくれるか!!」

唯「うん! ありがとうりっちゃん!!」

梓「和先輩もこんな幼なじみを持って大変だなぁ……」

律「しかもこの鼻メガネ、そんじょそこらの鼻メガネとは訳が違う」

律「なんと、ちゃんと度が入ってるから目の悪い人も普段の生活で使うことができる優れもの!!」

唯「まぁ! でもお高いんでしょ?」

律「……うん。意外と……」

澪「高いのかよ……」

梓「本当ですね、結構な値段です」

律「でもこのフィット感も抜群で、鼻メガネを掛けてることさえ忘れる装着感なんだよ」

紬「私、今手持ちのお金が少なくて……。このお店カード使えるかしら……」

澪(女子高生がカード持ちか~……)

唯「よし! わかった! ここは私に任されよ!!」

律「ゆ、唯さん!?」

唯「最近お小遣い貰ったばかりだし、今の私なら買える!!」

澪「でも、これ買ったらもう無くなっちゃうんじゃ……」

唯「和ちゃんにはお世話になりっぱなしなのでっ!!」

唯「それに、和ちゃんには喫茶店なんかで奢ってもらった分もあるし」

唯「それも含めて、この鼻メガネでお返しさせて頂きます!!」

梓(絶対に普通に奢り返してもらった方が喜ばれると思うな~……)

紬「唯ちゃん偉いわ!!」

律「涙が止まりませんばい!!」

澪「まぁ、唯がそれで良いってなら……」

唯「じゃあ、買ってくるね~♪」


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