澪「ちょっ……ちょっと待ってよ……!」ガタッ

紬「梓ちゃん……!どうしてぇ……」

梓「……どうして?……そんなこと、そこの人が一番知ってるんじゃないですか?」

唯「!……」ビクッ

紬「まっ……待ってよ……梓ちゃん……考えなおしてぇっ……」ポロ…

澪「あずさぁ……お前がいなぐなっだらぁ……グスッ……放課後ティータイムは……どうなるんだよ゛ぉ……」ボロボロ

梓「……ごめんなさい。澪先輩、ムギ先輩。……でも、もう嫌なんです」

梓「……私のこと嫌いな人と、私が嫌いな人が一緒に音楽やってるなんて……耐えられないんです」

唯「……」

律「……梓、もう書けたぞ」ピラッ

澪「りつぅ!お前……!」

律「……仕方ないだろ、梓が辞めたいって言ってきてるんだから」

律「……無理に引き止めることなんてできないよ……」

梓「……ありがとうございます。律先輩。あとはこれをさわ子先生に渡すだけです」

澪「そんな……あずさぁ……う゛え゛っ……ひっぐ……やだあ゛……」ボロ…ボロ…


唯(……)

唯(ダメ、わたしも、なきそう)

唯(でも、ダメ、わたしに、そんなしかくない)

唯(ここは、ひどい、こと、いわなきゃ)


唯「……さよなら……だね」ボソッ

梓「……」

澪「……ゆいぃ……グスッ……あずさはぁ……お゛まえ゛のごと……」

律「澪!」バンッ

澪「ひっ!……」ビクッ

梓「……そうですね、平沢先輩。でも、その前に……」

梓「……二人とも、入ってきて」

ガチャッ

憂純「……失礼します」

紬「……憂ちゃん、純ちゃん……」

律「……どうして、二人を?」

梓「……手伝ってほしいことがあったんです」

唯(……)

梓「……みなさんにお願いがあるんです」

律「……言ってみ」

梓「……この部室にある、私がいた形跡を全部処分させてください」

紬「そんな……そこまで……」

律「……わかった、もってけ」

紬「ちょっと!りっちゃん!」

唯(……)

律「……唯、いいんだよな」

唯(いやだ、いやだ)

唯「……好きにすればいいんじゃない?私だってそんなのいらないよ……」

紬「ゆっ……!」

律「……」

梓「ありがとうございます。憂、純。ちょっと手伝ってくれる?」

憂「……うん」

純「梓……」

梓「ええと……はい、まずはこのアルバム。このアルバムから私が写ってる写真を全部抜いて」

憂「梓ちゃん……」

……


梓「……これで大体そろったかな。」

純「写真にDVD……それに楽譜やら何やら……」

憂「結構な量あるね……」

梓「……マグカップはムギ先輩にお返します」

紬「……」

純「……さっ、じゃあこれを鞄に詰めて……」

梓「……何言ってるの?」ガサゴソ

純「……え?」

紬「……ゴミ、袋?」

梓「……」ガシッ……

ビリッ!ビリリッ!ビリッ!ガサッ

憂純「あっ!」

律澪紬「!?」

唯「……!」

紬「なん、で……」

梓「……どうせ捨てるんです」

ビリリ! ビリッ

澪「やめ……やめでよお゛……あ゛ずさぁ……」ボロボロ

唯(みおちゃん、なみだとはなみず、で、かお、ぐしゃぐしゃにしてる)

ビリリッ! ガサッ

紬「な……んでぇ……どお゛じでぇ……」

唯(むぎちゃん、かおに、てあてて、ないてる)

バキッ!グシャッ!ガサッ

律「……」カタカタ

唯(りっちゃん、むひょうじょう、でも、て、かたかたふるえて、めに、なみだ、たまってる)

ビリリッ ビリリ

純「梓……」

憂「……」

唯(うい、と、じゅんちゃん、なきそうな、かお、してる)

ビリリッ ビリッ

梓「……っ」

唯(あずにゃん、つらそうな、かお、してる、ほんとはこんなこと、したく、ないって)


唯(わたし……)

唯(わたし、はどんなかお、してる)

唯(あずにゃんを、ここまで、おいつめて)

唯(みんなを、ここまで、きずつけて)

唯(わたしは)


唯(だめ)

唯(ここで泣いちゃ、だめ)

唯(泣いたら、止められなく、なる)


梓「……これで終わりました」

澪「うう゛っ゛……グスッ」ボロボロ

紬「おねがい……やめでぇ……グスッ」ボロボロ

律「……」

梓「じゃあ、この退部届け提出して帰りますね」

梓「……今までお世話になりました。じゃあ行こっ。憂、純」

純「えっ……うん」


唯(やだ、あずにゃん、でてっちゃう、いなくなっちゃう)

唯(やだ、やだやだやだやだやだ)

律「梓」

ピタッ

梓「……はい?」

唯(りっちゃん……止めてくれた?)

律「……鞄のそれ、いいのか?」

梓「えっ……?」

唯「あっ……」

唯(あれは……)


…………

『はい、あずにゃん♪』

『「ぶ」?……お土産ですか?』

『そう!私がこれ!「ん」!』

『……?』

『『『『せーのっ』』』』

カタッ

『あっ……これって……』

『……クスッ』

『「おけぶいん」!桶を愛する部員のことだ!』

『違うだろ!』

『「ぶいおんけ」! 東北地方に生息する妖怪の名前だぁーっ!』

『おおーっ!』

『それも違う!』

『なにいっ!じゃあ次は……』

『「けいおんぶ」……』

『んっ?』

『……えへへへへ』

『せいかーい』

…………

唯(あっ……あ、あ、あ、)

梓「……でもこれは、みなさんに貰ったものですし……」

律「全部、捨てるんだろ?」

唯(やだ、やめて、おねがい)

梓「……そうですね、じゃあ」ガサガサ

唯(おねがいだから、とらないで)

梓「……」

唯(……)



すてないで


ガシッ


梓「っ!」

律「!……」

澪「!……グスッ」

紬「え……?」

純「あっ……」

憂「……お姉ちゃん」


唯「え……あっ……」

梓「……なにするんですか」

唯「っ!……それはこっちのセリフだよ。さっきから黙って見てたら……」

梓「……あなたには関係ないでしょ」

唯「っ……関係なくないよ、捨てるぐらいならこっちに返してよ」

梓「……嫌いな私の使ってた物なんていらないでしょ」

唯「……そういう問題じゃないよ。とにかく返しなさい」

梓「嫌です!これは私が軽音部を辞めるっていうけじめなんです!」

唯「勝手に辞めておいて何がけじめよ!」

梓「その辞めるきっかけを作ったのは誰よ!唯先輩でしょ!」

唯「っ!……とにかく……ダメぇっ!」バッ

梓「あっ……か、返してください!」

唯「やだ!いやだいやだいやだぁっ!」

梓「私は軽音部を辞めるんです!それはもう必要ないんです!」

唯「やめちゃやだぁ!」

梓「ふざけんなあっ!」

唯「……わかったよ」

梓「えっ……?」

唯「あずにゃんがやめるくらいなら……私が軽音部辞めるよ……」



澪「ええっ!?」

紬「えっ、ちょっと」

憂「お姉ちゃん……!」




梓「……そんなことしろなんて誰も言ってないでしょ!何のつもりですか!」

唯「そうだよ……最初からこうしとけば良かったんだよ……ばかだなぁ……私……」

梓「待ってください!話は終わってません!」

唯「ちょっと待っててよ、今から退部届け貰ってくるから」

梓「まって……待ってください!」


バタン!


「!……」


さわ子「はい、それまでよ」

律「さわちゃん……」

さわ子「……まず唯ちゃん、あなたが退部届けを申請したとしても許可しません。だからあげれませーん」

唯「えっ……」

さわ子「次に梓ちゃん、退部届けを顧問に請求せずに勝手に持ってちゃダメでしょ」

梓「……」

さわ子「……まぁ、それはそうと、アンタたちいつまでケンカしてんのよ」

唯「……さわちゃん。これはケンカじゃないよ。だってケンカは仲の良い人同士でするものでしょ?」

さわ子「……唯ちゃん」

唯「大嫌いなんだ……中野さんも私のこと……私も中野さんのこと……」

さわ子「……いつまで自分を傷つけるつもりなの?」

唯「……え」

さわ子「……唯ちゃん、ひとつ謝っておくわね」

唯「……」

さわ子「唯ちゃんがあの日話してくれたでしょ。それで私、絶対口外はしないって言ったでしょ?」

唯「うん……」

さわ子「……ごめんね。約束破っちゃった」

唯「……え?」

さわ子「……ここにいるみんなに、まぁムギちゃんはともかく……話しちゃった」

唯「なっ……」

さわ子「りっちゃんや澪ちゃん、あと憂ちゃんに真鍋さん、鈴木さんにも話したわね?」

純「……はい」

律澪「……」

憂「お姉ちゃん……黙っててごめんね」



唯「先生……どうして……」

さわ子「でもね……一人にだけは話してないの」

唯「ひとり……まさか」

梓「……」

さわ子「さっ、唯ちゃん。これで恥ずかしがることはないわ。みんな知ってるもの」

さわ子「……梓ちゃんに、自分の気持ち、ちゃんと伝えなさい」

唯「やっ……やだ……」

さわ子「どうして?」

唯「気持ち悪いって、思われちゃう」

さわ子「……別に良いんじゃない?だって梓ちゃんとはさよならするんでしょ?」

唯「そっ……そんなの」


唯「……も、もういいよ!わたし今日帰る!」


ドタドタ ガチャ


和「……行かせないわよ。唯」

唯「のっ……のどかちゃ……」

和「……ここまでみんなに気を使わせたのよ。あんた一人だけ逃げちゃダメ」

唯「な……なんで……なんでみんな……」

和「……」キィ…

ガチャ


さわ子「……それに嫌いな相手に気持ち悪がられて、何が問題あるの?顔も合わせないし話しもしないでしょ」

唯「ちっ……違うもん!あの時話したのは……嘘だよ!全部、全部嘘だったんだよ!」


紬「もうやめてよお!唯ちゃん!」

唯「……!」ビクッ

紬「これ以上……自分を……傷つけないでぇっ……!」

律「ムギ……」

憂「お姉ちゃん……私たちは誰も……」

純「憂、待って……」

憂「純ちゃん……」


さわ子「……嘘?」

唯「……」

さわ子「あの時の気持ちを、言葉を、嘘だって、言うの?」

唯「そう、だよ……」

さわ子「そう……」


さわ子「じゃあ、あんたの手でけじめをつけなさい」

唯「えっ……」

さわ子「あんたが手に持っている、梓ちゃんの軽音部の部員としての証」

さわ子「それを今すぐに、あそこのゴミ袋に入れなさい」

唯「!……」

さわ子「あんた自身の手で!梓ちゃんの軽音部を終わらせなさい!」

唯「そっ……そんな……」

さわ子「さあ!はやく捨てなさい!」


さわちゃんに迫られて。、手に持っている「ぶ」を握りしめながら、私は振り返り、あずにゃんの横に置かれてるゴミ袋を見ました。

その時、見つけてしまいました。

ゴミ袋から透けて見える破れた写真。ビリビリに破れた多くの写真の欠片の中で、

私とあずにゃんが、隣り合って笑っている写真を。


唯「あっ……」

その瞬間、心に大きな揺れが起こるのがわかりました。そして思い出しました。

その写真の周りにあるのが、あずにゃんが入部してからの軽音部の思い出だと。

あずにゃんと、出会って

私たちの傍にあずにゃんがずっといて、

あずにゃんと私たちは一緒に笑って、


そんな軌跡が、ひとつになって、私とあずにゃんを包み込みこんでくれていました。



唯「あっ……あ……ああ……」ポロ…

もう、限界でした。

心から溢る感情が目を熱くし、やがてこぼれてくる音が聞こえてくるようでした。

唯「あ゛あっ……あああっ……」ボロ…ボロ…

やがて、私はひざをついて、今までやってきたことを思い出しました。

あずにゃんに対して放った言葉を、行動を。

唯「あ゛あああああああっ、うわあ゛ああっ」ボロ…ボロ…

ごめんなさい、ごめんなさいと伝えたいのに、

私の口から溢れるのは嗚咽ばかりでした。

唯「うわあ゛あっ……あ゛あああああああん!」


3