音楽室!

バタバタバタッ

ガチャ

梓「遅れてすみません! ・・・って、あれ?」

紬「あら、梓ちゃん。いらっしゃい」ニコッ

梓「あれ・・・? ムギ先輩、他の先輩たちはどうされたんですか?」

紬「ついさっきさわ子先生と一緒に、軽音部で使う備品を買いに行ったわよ」

梓「え、じゃあムギ先輩は行かなくて良かったんですか?」

紬「行こうと思ったんだけど梓ちゃんが来てなかったでしょう。
  寂しいだろうし誰か一人はお留守番しようってことで、私が引き受けたの」

梓「ぁぅ・・・すみません、HRがなかなか終わらなくて」

紬「気にしないでー、お留守番って一度やってみたかったの♪」

梓「は、はぁ・・・」

紬「なんかね、かなり沢山買うものがあるから、帰りは遅くなるそうよ」

梓「そうですか・・・じゃあ今日も練習は無理そうですね」シュン

紬「とりあえず、お茶にしましょ。ね?」

梓「・・・そうですね、また明日練習すればいいわけですし」

紬「それじゃあ私は、お茶淹れてくるわねー」

梓「あ、ありがとうございます」

梓(・・・考えてみたら、ムギ先輩と二人っきりって初めてかも)

梓(普段はムギ先輩と話すこと、意外と少なかったしね。ムギ先輩の色んな一面を知るいい機会かも)

紬「♪~♪~」

梓(凄く活き活きしてる、元々綺麗な人だからお茶淹れてるだけでも絵になるなあ)

梓「・・・・・」ボーッ

紬「・・・? 梓ちゃん?」

梓「・・・ふぇ?」

紬「私の顔、何かついてるかしら?」

梓「あ、い、いえ! 何でもないですよなんでも!」

梓(見とれてたのがバレちゃった・・・恥ずかしいよぉ)

梓(でも本当、綺麗な人だなあ。お人形さんみたい)

紬「はい、どうぞ」

梓「ありがとうございます。う~ん・・・いい香りですね」

紬「今日のはね、私のお気に入りのを持ってきたのよ♪」ニコニコ

梓「へー、ムギ先輩のお気に入りですかぁ。では早速・・・いただきます」

紬「召し上がれ♪」

コクッ

紬「どうかしら? お口にあうと良いのだけれど・・・」

梓「とんでもない! すっごく美味しいです! 口当たりもいいし後を引かない甘み、とっても美味しいですよ!」

紬「そう、気に入ってもらえてよかったわ」ニコッ

梓(うわ~・・・ムギ先輩可愛すぎるよぉ・・・)

紬「お菓子はマドレーヌにしてみたの。みんなの分は別に取っておいてるから、遠慮なく食べてね」

梓「はい! いつもありがとうございます」

梓(ムギ先輩は凄く気配りが上手で、まるで心の中を読まれてるみたい)

梓(物腰もとっても柔らかいし、私が男の子だったら絶対一目惚れしちゃいそう・・・)

紬「・・・ねぇ、梓ちゃん」

梓「はい?」

紬「正直に答えて欲しいの」

梓「・・・? なんでしょう」

梓(ムギ先輩にしては珍しく真面目な雰囲気だ。なんだか緊張するなー・・・)

紬「えっとね・・・」

紬「軽音部、入って良かった?」

梓「・・・ほぇ?」

紬「ち、違うの変な意味はないの! ただ・・・」

紬「私たち、いつもお茶飲んでお喋りしてばかりでしょ? 梓ちゃん本当は退屈なんじゃ・・・って思って・・・」モジモジ

梓「・・・・・」

梓「・・・・・プッ」

紬「あ、梓ちゃん?」

梓「ご、ごめんなさいムギ先輩・・・ただ、真面目なトーンで何を言うのかと思ったら・・・アハハッ」

紬「むーっ・・・梓ちゃんのいじわる」

梓「アッハハ・・・ごめんなさい。でも、私は軽音部大好きですよ」

梓「確かに練習したいなーって思うときは沢山あります。でも、それ以上に先輩たちが大好きですから」

梓「おっちょこちょいで不器用で、そそっかしくて目が離せないけど、演奏している姿は誰よりも輝いてる唯先輩も」

梓「クールで格好良くて憧れだけど、意外と怖がりで女の子らしい澪先輩も」

梓「騒がしくてがさつで、無鉄砲だけど誰よりも仲間を大事にしてくれる律先輩も」

梓「私は、みなさん大好きです」

梓「だから、軽音部に入ったことは一切後悔してません」

梓「むしろ、こんな素敵な先輩たちと知り合えた軽音部に感謝したいぐらいですよ!」フンス

紬「梓ちゃん・・・」

梓「まあ・・・始めはかなり不安でした。音楽の腕前も素人、唯先輩に至ってはギターの扱いさえままなってませんでしたし」

梓「私、小さい頃から両親の影響で音楽が大好きで、高校に入ったらブラスバンドか軽音部に入るのが夢だったんです」

梓「そして、この高校に入学して、軽音部の存在を知って、凄く嬉しくて。
  早速入部届を出しにいった矢先から、随分と苦労させられましたけどね」

紬「澪ちゃんや私はともかく、唯ちゃんはギター初心者だものね」

梓「でも、唯先輩は凄いスピードで上達していってますね」

紬「そうね、唯ちゃんのギターへの情熱は本当凄いと思う」

梓「私もコード覚えるの大分苦労したのに、唯先輩は軽々とマスターしていきましたしね」

紬「唯ちゃんは本当、誰よりも純粋に音楽を楽しんでるわよね」

梓「それは間違いないですね、ギー太を弾いてるときの唯先輩は正に別人のようです」

紬「ギターを買ったその日から、毎日欠かさず練習してたわね。すごく楽しそうだったわー」

梓「想像できますね、唯先輩ならきっと休むのも忘れて弾いてそうです」

梓「まあ、そんなまっすぐな先輩だからこそ、時々キツいことを言ってでも応援したくなるんですよね」

紬「大丈夫よ、唯ちゃんもきっと分かってるはずよ」

梓「だと嬉しいですね・・・何だかんだで憧れの先輩ですし」

紬「あらあら、梓ちゃんの憧れは澪ちゃんじゃなかったかしら?」

梓「ああ、もちろん澪先輩も憧れてますよ。性格は・・・まあ置いといて、ベースの実力は確かにありますしね」

梓「澪先輩は凄く綺麗な方ですし、歌も上手で、憧れない要素がありません」

紬「澪ちゃん自身は、あまり歌いたくないみたいだけどねー」

梓「まあ、人前に出て歌うのは緊張しますしね。私も気持ちはよくわかります」

梓「でも、澪先輩も放課後ティータイムの大事なボーカルですし、もう少しその自覚が欲しいところです」

紬「うふふ、厳しいのね」

梓「澪先輩は恥ずかしがり屋な性格が邪魔をして、伸ばせるはずの才能を活かしきれてない感じですしね」

梓「羞恥心は大切ですが、澪先輩はもう少し唯先輩のように度胸をもって欲しいです」

紬「でも、ベースってとっても大切な役割よね」

梓「そうですね、ドラムと共に曲の土台部分になりますからね。
  澪先輩のように不器用ながらも仲間を思いやれる、そんな優しい人には最適なパートだと思います」

紬「ドラムといえば、りっちゃんはどうかしら?」

梓「律先輩はもう少し真面目になってもらいたいです」

紬「あらあら、りっちゃんにも厳しいのね」フフフ

梓「唯先輩と同じく、目を離すとすぐ練習サボったりしますからね・・・」

紬「でも、本当は誰よりも仲間を大事にしてるわよね」

梓「はい、私も律先輩の細かな気配りはしっかり気づいてます」

梓「本人に言うときっと照れて本音は言わないと思うので黙ってますけどね」クスクス

紬「そうねー、りっちゃんは女の子な部分が多いのに、余り見せたがらないものね」

梓「律先輩も本当は可愛いのに、やや無理してる感じがたまに伝わってきますね」

梓「自己犠牲がちょっと過剰な人なので、唯先輩とは違った意味で心配になります」

紬「よく見てるのね」フフフ

梓「そりゃ、私も軽音部の一員ですから」フンス

紬「じゃあ・・・私はどうかしら?」

梓「ムギ先輩・・・ですか」

紬「私は印象薄い・・・?」ウルウル

梓「い、いえ! そんなことないですよ!」

梓「ムギ先輩は・・・なんていうか・・・その・・・」

紬「やっぱり私って印象薄いのね・・・」シクシク

梓「いやいやいや! これから言いますから!」

梓「ムギ先輩は、なんだか『お母さん』って感じですね」

紬「お母さん?」

梓「はい、いつも穏やかに私たちを見守ってくれていて、でも特別距離や壁があるわけでもないですし」

梓「なんていうか・・・傍にいると凄く、安心します」

紬「梓ちゃん・・・」

梓「ムギ先輩のパートからも、そういった影からのサポートっていう安心感が伝わってきて、
  私だけじゃなく他の先輩たちもきっと安心して演奏できると思うんです」

梓「・・・ムギ先輩は見た目も凄く大人っぽくて、とってもいい匂いがして・・・」

梓「私、ムギ先輩にはつい甘えたくなっちゃうんです・・・」

紬「・・・・・」

梓「・・・・・」

梓「・・・ご、ごめんなさい! 変な意味じゃなくてですね! え、えーっとその・・・」

紬「梓ちゃん」

梓「は、はい!」

ガタッ

梓「む、ムギ・・・先輩・・・?」

紬「こうすると、どうかしら?」

ギュッ

梓「ふゎ・・・」

紬「うふふ、いいこいいこ」ナデナデ

梓「え、えと・・・は、恥ずかしい・・・です・・・」カァァァァッ

紬「梓ちゃん、そんなに頑張って背伸びしなくてもいいのよ」

梓「・・・!」

紬「梓ちゃんだってまだまだ年相応の女の子なんだから、無理に背伸びなんてしなくてもいいの」

紬「人はたくさんの経験を重ねて、ゆっくりと大人になっていくの。焦っちゃダメ」

紬「貴女は貴女のままでいいのよ、みんなありのままの梓ちゃんが好きなんだから」

紬「だからもし、悩みがあったらお話して。辛いことがあったら吐き出しちゃって。
  みんな、みんなみんな、梓ちゃんの味方だからね」

梓「先輩・・・」

紬「私でよかったら、甘えてくれると嬉しいかな」ウフフ

梓「・・・はい」

紬「よしよし、素直でいい子ね」

梓「・・・先輩」

紬「なぁに?」

梓「他の先輩たちが帰ってくるまで・・・もう少しだけ、このままで・・・」

紬「ふふ、甘えん坊さんね」ナデナデ

梓「にゃ~・・・♪」

梓「ムギ先輩・・・温かい」

紬「うふふ、梓ちゃん子供みたいね」クスクス

梓「私・・・凄い勢いで成長していく唯先輩を見ていて、つい自分も感化されちゃって」

梓「もっと私も頑張らなきゃ、もっともっと練習しなきゃって、いつも思ってて」

紬「うん」

梓「学校でも家でも、最近は時間さえあればとにかく一人でも練習してました」

紬「そうね、梓ちゃんとっても一生懸命だったものね」

梓「・・・見られてたんですね、恥ずかしいです」

梓「でも、たくさん練習しても全然うまくならなくて、気持ちばかり焦っちゃって・・・」

梓「・・・だから、つい唯先輩や律先輩にキツく当たったりしちゃって・・・」グスッ

梓「本当は・・・私・・・いっつも怒ってばかりだから・・・愛想尽かされるんじゃないかって・・・ずっと心配で・・・」

紬「うん」

梓「今日、部室にムギ先輩しかいなかったから・・・本当はすっごく不安でした・・・」

紬「唯ちゃんたちに嫌われたんじゃないかって?」

梓(・・・コクリ)

紬「大丈夫よ、みんな梓ちゃん大好きだもの」ニコッ

梓「でも・・・」

ギュッ

紬「大丈夫、怖くないわ。貴女は一人じゃないんだから」

紬「それに、梓ちゃんが軽音部に入ってくれて、初めてようやくバンドらしくなれたしね」クスクス

梓「先輩・・・」ギュッ

紬「焦らなくていいのよ。唯ちゃんだって梓ちゃんがいるから上達しているんだし」

紬「梓ちゃんは、私たちにとって大切な後輩であり、仲間なんだから・・・ね」

梓「・・・・・はい」グスッ

紬「あらあら、お鼻出ちゃってるわね。ちょっと待ってね」

ガサゴソ

紬「はい、チーンできる?」

梓「せ、先輩・・・子供じゃないんですから・・・」

紬「さっき梓ちゃんが言ってくれたじゃない。私はお母さんみたいって」

梓「それは・・・言いましたけど・・・」テレテレ

紬「私の前では遠慮せず、お母さんだと思って甘えてくれていいのよ」

梓「そんな・・・急に言われても・・・」モジモジ

紬「とにかく、今はお鼻をどうにかしましょうね。はい、チーン」

梓「・・・チーン」グスッ

紬「はい、よくできました♪」ナデナデ

梓「・・・・・///」

紬「梓ちゃん、こっちにいらっしゃい」

梓「はい・・・?」

ポンポンッ

梓「え、それって・・・」

紬「うん、膝枕♪」

梓「さすがに恥ずかしいんですけど・・・///」

紬「大丈夫、今なら私しか見てないわ」

梓「で、でも・・・」

紬(ニコニコ)

梓「・・・・・はぁ、わかりました。それでは遠慮なく」

紬「はい、どうぞ♪」

梓「ふわ~・・・ムギ先輩の太もも柔らかい・・・」

紬「・・・やん、くすぐったいわ///」

梓「あ、ご、ごめんなさい!」

紬「うふふ、いいのよー。それよりこのまま少し仮眠でも取る?」

梓「でもまだ部活中・・・」

紬「唯ちゃんたちならまだしばらくは帰らないと思うし、梓ちゃんも疲れてるでしょ」

梓「ま、まぁ・・・ここ何日か睡眠も削って練習してました」

紬「ダメよ、睡眠はしっかり取らないと。丁度今なら仮眠くらいは取れると思うから、休むといいわ」

梓「・・・分かりました、ムギ先輩は頑固ですしね。ここは大人しく仮眠取らせて頂きます」クスクス

紬「あ~っ、私頑固なんかじゃないもん」プンスカ

梓「えへへ、冗談ですよ。それじゃお言葉に甘えて・・・」

紬「うん、おやすみ」ナデナデ

梓「おやすみ・・・なさい・・・」

梓(Zzz...)

紬「ふふ、可愛い寝顔。本当に子供みたいね・・・♪」


A
B 別エンド