放課後

澪「今日帰りに楽器屋行かない?ベースをメンテナンス出したいんだけど」

律「ごめん、今日両親出かけるから私が夕飯作らなくちゃ行けないんだよ」

澪「そっか」

唯「私大丈夫だよ」

紬「ごめんなさい、私もちょっと用事あって」

律「梓は?」

梓「あ、私大丈夫ですけど」

澪「じゃ、私と唯と梓と3人だな」

楽器屋へ向かう途中、唯の携帯が鳴る

唯「あ、憂からだ」

唯『もしもし』

憂『あ、お姉ちゃん?今日お父さんとお母さん帰って来るから、なるべく早く帰って来てね』

唯『そうなんだ、うん分かった』

唯「ごめん、私も用事出来ちゃった」

澪「そうか」

残された澪と梓

澪(梓と二人きりか、1年の頃は私を慕ってくれてたみたいだけど)

澪(最近じゃ梓は唯と絡んでばっかりで二人で話す事もほとんど無くなったな)

澪(これも梓と二人で話す良い機会だな)

梓(澪先輩と二人きり…)

梓(二人きり何ていつ以来だろう?)

梓(私が澪先輩と二人で話さなくなったのは…)

澪「どうしたんだ梓?」

梓の顔を覗き込む澪。

梓「な、何でもないです」

澪「じゃ、行こっか梓」

梓「は、はい」

歩き出す二人。


楽器屋

澪「すいませーん。ベースのメンテナンスお願いします」

店員「今、ちょっと込んでまして2時間近く掛かってしまいますけど」

澪「2時間か、明日の部活までには使いたいし、どうしよう。一回帰るのも」

梓「2時間くらいなら、待ってましょうよ」

澪「そうか、じゃあお願いします」

店員「かしこまりました」

澪(エリザベス、良い子にしてるんだぞ…)

澪「付き合わせちゃって悪いな、梓」

梓「いえ」

澪「でも2時間、店内で暇潰すのもな」

梓「楽器見たりとかしてます?」

澪「先週、律とここ来たばっかりなんだよ」

梓「そうなんですか……」

澪「そうだ。じゃあさ、待つ間デートしない?」

澪がそう尋ねると、梓の顔はみるみる真っ赤になる。

梓「デ、デートって///」

澪「あ、デートって言っても周りの店覗いたり、カフェでお茶したりとかだけど。イヤ?」

梓「そ、そんなことは……」

澪「じゃあ、行こっか」

梓「は、はい」

澪が梓の手を取ると、梓はちょっぴり動揺しながらも、嬉しそうに澪の手を握り返す。


澪「さ、行こう」

私達は歩き出す。手を繋いだまま。

梓「澪先輩……、ちょっと恥ずかしい///」

澪「でも、こうしていると梓の温もりが気持ちいいから……」

梓「は、はい……」

梓は小さく頷くと、照れくさそうな笑顔で私に微笑んでくれた。

ふふ、今だったら唯の気持ちも分かるな……

可愛い梓を抱きしめたいって気持ち……


本屋

澪「あ、そういえばこの雑誌発売日だったんだっけ」

梓「あれ?澪先輩もこの雑誌読んでたんですか?」

澪「ああ、梓も?」

梓「はい、音楽特集とか読みやすくて好きなんです」

澪「そうなんだよな」

楽しそうに語る澪。

ぎゅうっ

その顔を見ると梓の胸が苦しくなる。

澪先輩は律先輩が好きなんだ。

そんな事は分かっている。

澪先輩には律先輩が居る。

私じゃない。

私が澪先輩とあまり話さなくなったのは…

私が澪先輩を好きって気付かれたら困るから。

あなたには律先輩がいるから。


CDショップ

澪「このバンド新譜出すんだよな、予約しなくちゃ」

梓「澪先輩、結構色んなの聴きますね」

澪「詩とか参考になるしな」

梓「あ、そうですよね」

澪「格好良い歌詞とか書いてみたいけど中々…」

梓「澪先輩の歌詞、私好きですよ」

澪「ありがとう」

澪「いつか、HTTのCDもここに並べられると良いな」

梓「そうですね」

やっぱり音楽の事を語る澪先輩は格好良い。

思わず見とれてしまう。

ぎゅうっ

梓の胸がまた苦しくなる。


カフェ

澪「私のおごりだから、好きなの注文して」

梓「良いんですか?」

澪「私の用事に付き合わせちゃったからな」

カフェでは梓と色んな事を話した。

軽音部の事、音楽の事、2年生達の事。

梓は実に楽しそうに話してくれた。

時間は瞬く間に過ぎていく。

気付けばもう、メンテが終わる時間になっていた。


楽器屋

店員「お待たせしました。こちらです」

澪「ありがとうございます」

澪「やっぱり、メンテ出すと違うな。頬ずりしたい」

梓「唯先輩みたいですね」

澪「ハッ!い、今のは聞かなかった事にしてくれ///」

梓「大丈夫ですよ。私もむったんに、たまにしてますから」

エリザベスを受け取り、店を出る二人。

澪「もうこんな時間だし、そろそろ帰ろうか」

そう言い、歩き始める澪の制服の裾を梓が掴んだ。

制服が引っ張られた感覚を感じて澪が立ち止まる。

そしてゆっくりと振り向くと

梓が少し悲しそうな表情でこちらを見上げていた。

澪「何?」

梓(今日一緒に居て、改めて自分の気持ちに気付いた)

梓(私は澪先輩が好きだ)

梓(今まで好きだって言えなかった)

梓(言う勇気もなかった)

梓(誰にも言わず、私は我慢してきた)

梓(私はずっと…ずっと)

梓(でも、もう我慢出来ない……)

梓「み、澪先輩に話したい事があって……」

澪「話?」

梓「澪先輩は軽音部に入ったばかりの私をずっと気に掛けてくれて」

梓「軽音部に馴染めなかった私に、色々気をつかってくれて」

梓「澪先輩が居なかったら私、軽音部を辞めてました」

澪「梓…」

梓「いつも澪先輩が隣で励ましてくれた。だから私は澪先輩に憧れてたんです」

梓「私も澪先輩みたいになりたいって」

梓「最初は、澪先輩と一緒に軽音部で活動できるだけで満足でした」

梓「でも、それがいつしか憧れから別の感情になって……」

梓「私、私っ……もう澪先輩への気持ちを抑える事が出来ません」

澪は黙って梓の告白を聴いている。

脚が震えている。顔が真っ赤になってるのが自分でも分かる。

気を抜いたら涙がこぼれ落ちそうだ。

とても澪を直視出来る状態では無い。

けれど、梓は緊張に押し潰されそうになりながらも、懸命に澪を見た。

梓「…………」

言葉にならない。伝えたいのに。

ずっとずっと我慢してきた気持ちを……

そんな梓を、澪はふわりと抱きしめた。

澪「ありがとう。梓の気持ち、ちゃんと伝わったよ……」

澪「大好きだよ、梓」

思わぬ言葉に、梓はすっかり固まっている。

澪「もう少しこのままで……」

澪の温もりを感じながら、梓は幸せに包まれていく。

そして、ずっと伝えたかった言葉を紡ぎ出した。

梓「私も…澪先輩が好きです。ずっとずっと前から大好きでした」

澪「梓…」

そっと梓の顔に手を掛け、澪はそのまま唇を重ねた。

しばらくして、唇が離れると澪はそっと梓の頭を撫でる。

すると梓は澪に甘えるのであった。

見上げてくる梓が、堪らなく愛しい。

そして、もう一度キスを交わす。

梓「てっきり澪先輩は律先輩の事が好きなんだと思ってました」

澪「り、律はただの親友だ。そんな風に思われてたのか///」

梓「誰だって思いますよ」

澪「梓だって、唯とべったりだったじゃないか」

梓「あ、あれは唯先輩が一方的に抱きついてくるだけで」

澪「そうだったのか。お互いすれ違いだったんだな」

梓「澪先輩と恋人になれたのが、未だに信じられないです……」

そう語る梓に、澪の胸はきゅん、ときめいてしまう。

梓「私、すごく嬉しいです……」

自分の心境を語る梓に澪は自然に笑みがこぼれる。

澪「私もだよ……」

恥ずかしいのを堪えつつ、澪も自分の気持ちを打ち明ける。

梓「澪先輩は私のどういう所が好きなんですか?」

澪「恥ずかしい事聞くなよ///」

思わぬ問いに、澪は真っ赤になってしまう。

梓「聞きたいです」

澪「……そうだな、何事にも一生懸命頑張る所とか、可愛い笑顔。それに……」

澪は自分の胸に梓を抱き寄せた。


澪「ほら、ドキドキしているだろ?梓を見てるとハートドキドキだよ」

梓はくすり、と笑った。

梓「私も、澪先輩と居るとドキドキしてます」

お返しにと、梓は澪の顔を自分の胸に抱き寄せた。

身長差のせいで澪は随分、前傾姿勢になってしまったが。

澪「本当だ、梓のハートがドキドキしてる」

澪は上目遣いに見つめてくる。

梓は微笑み、澪の顔をそっと抱き寄せキスをした。


お終い