恵「何にもないならそろそろ私は行かせてもらうけど……」

梓「あ、あの!」

恵「?」

梓「私たちここまでバスで来たんですけど」

梓「このままだと夜までに家に帰れそうにないんで、先輩の車に乗せてもらえませんか?」

恵「え、えぇ。別にいいけど……」

梓「ありがとうございます!」

唯「あずにゃん」ヒソヒソ

梓「何ですか?」ヒソヒソ

唯「卵の在処はもうわかったんだし、私たちはチェスターで迎えに来てもらって」ヒソヒソ

唯「あとからまた、みんなで先輩のとこに行けばいいんじゃない?」ヒソヒソ

唯「その方が、先輩も澪ちゃんに会えて喜ぶと思うんだけど……」ヒソヒソ

梓「ダメですよ、それじゃ」ヒソヒソ

唯「なんで?」ヒソヒソ

梓「あの先輩は嘘をついてます」ヒソヒソ

唯「嘘?」ヒソヒソ

梓「はい」ヒソヒソ

梓「あの人はここに卵があることを知ってて、卵を回収しに来たんです」ヒソヒソ

梓「だいたいさっきの説明だって胡散臭すぎますし」ヒソヒソ

梓「そうでもなければ、女子大生が軽トラなんて使うわけありませんよ」ヒソヒソ

唯「でも、先輩が軽トラ好きの女子大生なのかもしれないよ?」ヒソヒソ

梓「そんなの女子大生じゃありません。女子大生の皮を被った変人です」ヒソヒソ

唯「なるほどー」ヒソヒソ

恵「どうかした?」

唯梓「い、いえ別に!」

恵「?」

恵「じゃあ早速乗ってもらおうかしら」

恵「あいにく座席が1つしかないから1人は荷台に……」

唯「はいっ! 乗ります! 私、乗りたいです!!」

恵「そ、そう? じゃあ荷台に」

恵「あ。危ないから、立ち上がったり……」

恵「その石に触ったりは、しないでね?」

唯「はーい」

梓「……」

恵「それじゃあ中野さんは助手席に……」

梓「あ、すいません」

梓「一応、家に連絡入れときたいんでちょっと待っててもらえますか?」

恵「ええ。どうぞ」

恵「でも、こんな山の中じゃ携帯も圏外なんじゃない?」

梓「いえ、大丈夫です」

梓「私の携帯、……すっごく電波いいんですよ」

―――――――――――――――――――――

澪「はぁ……はぁ……」

律「おい大丈夫か?」

澪「……こんなに走ったんだ。きっと体重も…………ふへへへへ」

律(ダイエットへの執着はこうも人を変えるのか……)

律「と、とにかくさっさとチェスターに乗り込もう」

律「私たちは空から調査だ」

紬「おーっ!」




澪「ふふふふふふ……」

律「怖いから早く乗れって!」


バシュ―――――――ン

律「んー……」

紬「むー……」

澪「うー……」




律「異常なし、だな」

紬「そうね」

律「……」

紬「……?」

律「……緊張感が足りない」

紬「え?」

律「……こちらスネーク! 今の所こちらに異常はない! オーバー」

紬「!」

紬「了解スネーク、こちらも異常はないわ! オーバー」



澪(なにやってんだか……)

澪「……ん?」


澪「おい、律」

律「んー?」

澪「ほら。3時の方向、なんか地面が陥没してないか?」

律「どれどれ~ ……お。ホントだ」

澪「あれ、怪獣の通り道なんじゃないかな?」

律「んー? でも怪獣の出現報告はなかったしなぁ」

澪「それはそうなんだけど……」

澪「でもやっぱり人間の仕業とは思えないよ」

律「そう言われてもなぁ」


シュワシュワー シュワシュワー ナナイロー モーニンシャワー♪


律「お。電話だ」


とはいえこれは電話ではない
HTT専用 超高性能小型通信機 HTTセルフォン である
形状を一般の携帯電話に酷似させることでカモフラージュしているのだ
その高性能たるや、地球上なら圏外の地点など存在せず、通信も迅速、しかも軽い
さらにおサイフケータイ機能も完備。とても便利な逸品だ
当然HTT全員が所持、使用している


ピッ

律「もしもーし」

梓『もしもし。私です』

律「梓か。なんか進展あった?」

梓『はい。探してた卵、見つかりました』

律「へぇー ……ってマジで!?」

梓『マジです』


梓『かくかく!』

律「しかじか!」

梓『まるまる!』

律「うまうま!」

梓『そして、これこれこういうわけなんです』

律「なるほどなるほど」



律「まさかあの曽我部先輩が犯人だったとは……」

律「今から先輩の軽トラに乗るんだよな?」

梓『はい』

律「じゃあそのまま先輩に同行してくれ」

律「なんかまたおかしな事があったりしたら連絡よろしくな」

梓『りょーかいです』


ピッ

梓(早くたい焼き食べたいのに面倒なことになっちゃったな……)



梓「お待たせしました」

恵「終わった? じゃあ助手席にどうぞ」

梓「はーい」

ガチャ バタン

梓「……」

梓(……シートが固い!)

恵「シートベルト締めた?」

梓「あ、はい」

恵「それじゃ、しゅっぱーつ♪」

ブロロロロ…… ブゥ―――――――ン





唯「ドナ ドナ ドナ ドナ~♪」

梓「荷台でそんな歌歌わないでください!」


ブゥ―――――――ン

恵「それで」

恵「大学でホリイ博士がタンゴ博士を説教し始めちゃってね~」

梓「へぇー」

恵「……あ。この先に道の駅があるみたいだけど、ちょっと休憩する?」

梓「はい。お願いします」

恵「それじゃ。あと600m、私のおしゃべりに付き合ってね」

梓「はーい」




梓(……)

梓(……どうして)

梓(どうしてこんないい先輩が怪獣の卵なんて拾ったんだろう)

梓(それに、怪獣の卵なんかで一体何を……)

梓(うーん……)

ピーッ ピーッ

恵「……」ソローリソローリ

梓「……」

ピーッ ピーッ

恵「……ゴクッ」ソローリソローリ

梓「……」

恵「……ふぅ」

梓「……バック苦手なんですか?」

恵「あ、あはははは。お恥ずかしい」



恵「なにともあれ道の駅よ」

梓「ちっちゃい建物ですね」

恵「田舎だからね」


恵「とりあえずトイレ休憩にしましょ」

唯「はーい」

恵「15分後にまたここに集合してね」

梓「わかりました」

恵「じゃあ、解散!」


―――――――――――――――――――――

唯「あーずにゃーん!」

梓「あ。唯先輩」

唯「曽我部先輩は?」

梓「まだ来てません。5分しか経ってませんからね」




梓「そんなことより唯先輩」

唯「どうしたんだい梓後輩」

梓「まるまる1時間、あの卵と一緒に荷台にいたわけですけど」

梓「何かわかったこととかありましたか?」

唯「えっとねー」

唯「あの卵、もうすぐ生まれると思うよ」

梓「へぇー ……ってホントに!?」

唯「ホントだよ」

唯「1時間ずーっと卵がカタカタ震えてたからね」

唯「まず間違いないよ」

梓「そ、そんな……」

梓「あれが孵化したら、か、怪獣が生まれちゃうのに……」

梓「このまま市街地に運んじゃったら、街は大惨事ですよ!」

恵「何が大惨事なの?」

梓「ひゃあっ!」

唯「曽我部先輩!」

恵「あなたたち早かったみたいね」

唯「あ、はい……」

恵「それで、何の話してたのかな?」

梓「べ、別にたわいのない話してただけですよ」

恵「ふーん」

恵「でも、怪獣、とか聞こえたような気がしたんだけどなぁ」

恵「……怪獣の話ってホントにたわいもないの?」

唯梓「!」

唯「き、気のせいですよ気のせい!」

梓「そうですよ! ホントに普通の話しかしてませんから!」

恵「ホントに?」

唯「は、はい!」

梓「ホントです!」

恵「ふーん……」

唯「……」

梓「……」

恵「……」

唯「……」

梓「……」

恵「……ぷっ」

恵「あははははは!」

唯梓「!」

梓「え……?」

恵「あはははは!」

恵「ごめんね。いじわる言って」

唯「あ……」

恵「ちょっと悪ノリが過ぎたかしら?」

梓「い、いえそんな」

恵「ふふっ、そう? じゃあそろそろ戻りましょうか」

恵「ふふっ。それにしても」

恵「ずいぶんおもしろい顔してたわよ。あなたたち」

唯「いやぁ」

梓「あはは……」

恵「ホーント阿呆みたいに顔ゆるめちゃって」

恵「……ウルトラマンのくせしてね」

唯梓「!?」

恵「あの怪獣の卵、気になるんでしょ?」

唯梓「!!?」

梓「せ、先輩……? 今なんて?」

恵「あはははハハハハハハハハハ!」

恵「そう、その顔! そノ顔よ!!」

恵「その間抜ケな顔ガ見たかっタの! あはハハハ!!」

唯「……え?……へ!?」

梓「そ、曽我部先輩……?」

恵「……先輩ィ~? ノンノンノン」

恵「私は、……私ハぁ」



恵「宇宙の帝王バド星人よ!!」ババーン


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最終更新:2011年03月13日 00:10