電車内!

 ガタタン…ゴトトン…

紬「暑かった~♪」ポタポタ

唯「……」コソリコソリ

唯(勢いで単独行動になっちゃったけど……)

唯(不安だよぉ……)

携帯『ヴーーヴーーヴーー ---着信 あずにゃん---』

唯(電話だ。あずにゃん、心配してくれてるのかなぁ?)

唯「(電車の中だけど……仕方ない!)ピッ はい、もしもし?」ヒソヒソ

梓『唯先輩! 聞いてください! ヤバくて! 大変なことになって!!』

唯(ええぇーーー!?)ガーン

唯「何でそっちがトラブルになってんの!? どうしたの!?」

梓『何かわかんないんですけど、大量の蟻が寄って来て、蟻に手足の自由を奪われそうなんですよぅ!』

唯(どんな状況!?)ガーン

梓『唯先輩! ど、どうしたらいいですか!? ああ!? やめて! 内側に入らないで! ああぁ!』

唯「ええぇー……わかんないよぉ……えーと、水に飛び込む、とか……?」

電話『タタタッ……ザッパーン! ドボン! ブクブクブク……プッ、ツーーーツーーーツーーー……』

 ピッ

唯「…………」

唯(よぉ~し……監視に戻るぞぉ……)

 ガタタンゴトトン…

それから監視を続けましたが、驚くほど何もありませんでした


しばらく後!

紬「着いた~♪」

紬「あ、融けてるわ~早く帰らないと~♪」ポタタッ

唯(あ! ムギちゃん降りた! 電話しないと!)

 ピポパ
 プルルルルル

梓『……はい、どうしました?』ポタポタ

唯「あ……さっき大丈夫だったの?」

梓『はい、何とか……豚足は沈んでしまいましたが』ポタポタ

唯「そうなんだ……あ、そうだ、ムギちゃん○△駅で降りたよ!」

梓『○△駅ですね!? わかりました! ヘイ! タクシー!』

運転手『はーい、どこま……でえぇ!? 何でキミずぶ濡れなの!?』

梓『いいから! ○△駅まで!』

運転手『いやいや、良くないよ……電車で行ったほうが早いでしょ?』

梓『違うんです! 先輩が豚足の塊で電車乗ったんですけど、学生グループのテンションが苦手で乗れなくて、

  二手に分かれたんですが蟻の大群に自由を奪われたから、タクシーで○△駅に行かないと駄目なんです!』

運転手『……! わかった、乗りな』

唯「……」

梓『じゃあ唯先輩! すぐに行きますんで尾行の続きお願いします!』

唯「うん……了解……」

 ピッ

唯(運転手さん……何がわかったというの……)

唯(世の中には私の知らないことがいっぱいあるんだなぁ……)

唯(不思議だなぁ……)ホゲ~

唯(まあ、友達を尾行してる私も十分不思議な存在だよね……)

唯(まあ最初は気乗りしなかったけど、実はムギちゃんの実家、気になってたんだよね~テヘヘ)

唯(もう近いのかなぁ~…………あれ……?)キョロキョロ

唯(あれ!? う、嘘……!?)キョロ!キョロロッ!

唯(……)

唯(見失っちゃった……)


しばらく後!

駅前!

 ブゥーン…キキッ
 ガチャ

梓「運転手さん、どーもです!」

梓「さてと……唯先輩どこにいるんだろ……」

梓「ちゃんと尾行できてるかな……電話してみよう」ピポ

唯「……あずにゃん」ヌウゥ

梓「あれ!? 唯先輩?」

唯「えとね、あの……ね」

梓「ムギ先輩、まだ駅にいるんですか? どのへんですか??」

唯「あの……その……」

梓「??」

唯「……見失っちゃった」ボソッ

梓「え……」

唯「……ごめんね!」

梓「……」

唯(あずにゃん怒るかなぁ……見失わないよぉとか言っちゃったしなぁ……)

梓「先輩……」

唯(ひぃぃぃ)

梓「もう~! だめじゃないですか!」ニコッ

梓「なに落ち込んでるんです? 唯先輩は初PSPだから仕方ないです!」

梓「まだ近くにいるかもです! 探しましょう!」

唯「あずにゃん……」グスッ

梓「それに、唯先輩がいたからここまで来れたんですよ! 私の方がミスしちゃってますからね…///」

唯「ハハハ……」

梓「コンビニで騒いじゃったり……」

唯「あれはびっくりだったよぉ」

梓「電車乗れなかったり……」

唯「あずにゃんは繊細だったんだねぇ」

梓「お寿司屋さんのいけすに飛び込んじゃったり……」

唯「あの時……かな? いけすに飛び込んだんだ……」

梓「唯先輩の名義であんな事しちゃったり……」

唯「え?」ピク

梓「タクシーの運転手さんと目を合わせて話せなかっ

唯「待って、あずにゃん……ちょっと待って……?」

梓「おじさんだったから、ちょっと怖くて……目見れなくて……」

唯「いやいいよ! それはいいよ! 何かどさくさでカミングアウトしてなかった……? 私の名義でどうとか……」

梓「……すみません……つい」

唯「え……!? 何やったの……?」

梓「すみません……グスッ……すみません……もうしませんから……」メソッ

唯「何泣いてんの……? 謝らないでよ……? ええぇーー? ちょっ」

唯「怖い怖い怖いっ! そういう反応が一番怖いよ! 何してくれちゃったの!?」ガーン

梓「……」

梓「そ、そうだ! アイス! 唯先輩! アイス食べましょう! ガリガリ君!」

唯「アイスを買いかぶり過ぎだよ! アイスって言えば私が何とかなると思ってるの!?」

唯「あと、ガリガリ君は売れ過ぎで販売停止中だよ!!」プンプン

梓(しまった……! スイカバーだったか……!)

梓(このピンチ……どう切り抜ければ……)

梓(……ん? あれって……もしかして!)

唯「聞いてんの!? 大体ね!? あずにゃんは昨日から頭がおかし

梓「唯先輩! あれ! 見てください!」

唯「ええ? 何?」

梓「水溜まりですよ! ほら!」

唯「だからなんなの!? 私があの水溜まり並って言いたいの!?」プンプン

梓「違います! ムギ先輩、見失ったけど……まだ大丈夫かもしれないんです!」

唯「??」

梓「物が動けば、そこに必ず跡が残ります……追跡(トラッキング)です!」

唯「トラ……え?」

梓「あの水溜まりは……たぶんムギ先輩が持ってた豚足の、保冷用の氷が融けたものだと思います!」

梓「ほらっ! 道みたいに続いてますよ! あの痕跡を追いましょう!」

唯「待ってよ! まだ話が終わってないでしょ!?」

 ジュワワ~

梓「あ!? 水溜まりが蒸発し始めた! 早く行きましょう! ほら!」タタタ

唯(押し切られた…)


それから……私達はムギちゃんが残したと思われる水溜まりを辿っていきました

途中、あずにゃんの前衛的なストーキングのせいで数々のピンチに見舞われましたが

ある建物に行き着くことができました

梓「……ここですよね?」

唯「うん……ここで水溜まりが途切れてたね……」

 『麺処 ことぶひ』

唯梓「……」

唯「ムギちゃんの実家かなぁ……?」

梓「うーん……系列店の1つなのかも……」

梓「もしくは……このお店に突然、相撲部の部員が大勢やって来た上に、

  全員とんこつラーメンを注文するもんだから、スープに使う豚足が足りなくなり、

  店主が困っていた所に、偶然大量の豚足を持ったムギ先輩が通りかかって、

  ムギ先輩は店主に豚足を差し上げたついでに、遅めのお昼を食べているだけ

  かもしれませんよ……」

唯「長いよ! そして違うよ! 私もわかんないよ? わかんないけど、あずにゃんの予想は違う気がするよ!」

唯梓「……」

梓「……取り合えず入りますか」

唯「え!? 入るの?」

梓「ここまで来たのに、入らなかったら意味ないですよ!」

唯「いや、でもぉ……流石にバレちゃうよ」

梓「たぶん大丈夫です! 相撲部の人の影に隠れていれば見つからないはず!」

唯「それあずにゃんの妄想の話でしょ!? たぶん相撲部いないよ! 来てないよ!」

梓「我は……確率を統べる者! 来たれ相撲部!!」

 ガラッ!

唯(気持ち悪い事言いながら扉開けたーー!!?)ガーン

 イラッシャイマセー

客A「……」ムシャムシャ

客B「……」ズルルルッ

客C「……」ガツガツガツ

梓「いない……?」

唯(相撲部いなかった! やっぱり! やっぱりね!)ガーン

梓「ゆゆゆ唯先輩!? どうしましょう!!?」アワワ

梓「そ、そうだ! 私が相撲部に入部すればいいんだ!」アワワワ

唯「ちょっと! あずにゃん落ち着きなよ!」


しばらく後!

取り合えず私達は店内に入り、座敷に座りました

梓「すみません、取り乱しました……」

唯「ホントだよ……かなりキテたよ……」ペラッ

梓「ていうか、ムギ先輩いませんね……ここは関係無かったんでしょうか……」

唯「どうだろう」ペラッ

梓「もう手掛かり無いですよ……どうしましょう……」

唯「うーん」ペラッ

梓「唯先輩聞いてますか!? なにメニュー見てるんですか!」

唯「入っちゃったんだから注文しないとおかしいでしょ!」

唯「あと、お腹空いてるんだよ! あの時のイカも結局グチャグチャになっちゃったし!」

唯「ラーメン食べたいよ!」グスッ

梓「泣かないで下さい……わかりました、休憩にしましょう!」

唯「わぁーい!」

唯「ど・れ・に~しようかなぁ」ペラッ

梓「とんこつが充実してますね」ペラッ

唯「あ、私これにする! とんこつラーメンと半チャンのやつ!」

梓「えーっと、トンチャンセットですね。私もそれにします」

唯「わかった!」

唯「すいませーーん! 注文いいですかーー?」

紬「はぁ~い♪」

唯梓(!?)ドキ!

唯「どどどどういうこと!? ムギちゃん厨房の中にいるよ!?」ヒソヒソ

梓「ま、まさか、中で働いてるとは……」ヒソヒソ

紬「あれ? 今の声……」

唯梓(ヤバイ……!)

唯「ムギちゃんこっち来るよ!? バレちゃうよ!?」ヒソヒソ

梓「取り合えず変装しましょう! ジュン(羊)の毛で作ったウィッグです! 被って下さい! カポッ(装着)」ヒソヒソ

唯「白いアフロ!? まあいいや! でも、声でバレちゃうでしょ!? カポッ(装着)」ヒソヒソ

梓「大丈夫です! こんな事態を想定して変声機を持ってきました! これを使ってください!」ヒソヒソ

唯「変声機って……何かおもちゃみたいだよ!? ロフトあたりで売ってそうだよ!? 大丈夫なの!?」ヒソヒソ

紬「唯ちゃんっぽい声だったような……」スタスタ

唯(……あーもう! やるしかない!)

唯「スイマセン! トンチャンセットヲ、フタツ、オネガイシマス!」ピーガー

唯(ほら高い! 声が高いよ! 宇宙人みたいになってるよ!!)ガーン

梓「ブフッ! クププッ! プスッ(笑)」ピクピク

唯(なに笑ってんのぉ……!)

紬「あ、あれ? ごめんなさい、知り合いの声に似ていたもので……」

紬「トンチャンセット2つですね♪かしこまりました♪」タタタ

唯梓「……」

梓「ふう~~……何とか回避したようですね……」

唯「ていうか、ムギちゃん働いてたよ!? どういう状況!?」

梓「わかりません……バイト、とかでしょうか……」

 ガチャ

斉藤「おや? 紬ちゃん、帰ってたのかい?」

紬「あ、ただいま~。お、お、お義父さ…………斉藤さん」

唯(何か訳ありっぽい……!)

斉藤「ふふ、無理しなくてもいいんだよ。それより、競売に行って疲れてるだろう? 休んでておくれ」

紬「ううん、いいの! このお店は……お父さんの……私のお店だから」

斉藤「紬ちゃん……」

唯「どういう事なの!? ここ実家っぽいよ?」ヒソヒソ

梓「うーん……豚足はラーメンのスープ用だったんでしょうか……」ヒソヒソ

唯「いや、豚足よりムギちゃんが気になるよ……ムギちゃんの実家ってお金持ちじゃなかったの?」ヒソヒソ

梓「セレブの振り、してたんでしょうか……」ヒソヒソ

斉藤「それと……紬ちゃん、アレ……まだ続けるのかい?」

紬「……お嬢様キャラ、の事かしら」

梓「あ! 都合良く話し出しましたよ!」ヒソヒソ

唯「……」

紬「……斉藤さんには、話しておくべきね」

紬「……そう、あれは……1年生の時……」

唯(語り出した……ラーメン作らなくていいの……?)

紬「私は軽音部に入部した当初、自分の実家がラーメン屋だと皆に言い出せなかったの……」

紬「あの時の私は、ラーメン屋も……お父さんも好きじゃなかったから……」

紬「小さい頃から修行修行の日々……普通の学生生活を送ることもできなかった……」

紬「あげく、お父さんは『金髪豚』を求めて家を出て行っちゃうし……」

紬「とにかく……私は、自分がラーメン屋の娘だと言いたく無かった、認めたく無かったの……」

紬「だから私は決意したの……自分はお嬢様って事にしようと!」

紬「お嬢様だったら世間知らずでも納得がいくでしょ? ラーメン屋をカモフラージュできると思ったの!」

唯(ムギちゃん……)

楽器屋店員「なるほど……あの時、何故ギターを値切る芝居をしてくれと頼まれたのか……やっと謎が解けました」ズルルッ

紬「あ、あなたは……! あの時の楽器屋さん……!」

唯(ギー太買った時の店員さん!?)


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