翌朝!

 ガチャ

憂「お姉ちゃーん、憂だよー? あ、間違えた」

憂「お姉ちゃーん、朝だよー?」

唯「zzz」

憂「お姉ちゃん? お休みだからって、いつまでも寝てちゃ駄目だよー?」

唯「ぅ?ぃぅう~ん……zz……z」

憂「もう~早くしないと朝ごはん四散しちゃうよー?」

唯「ぅ……? ぇえ?? しさん? どんなメニューなの……?」ビクッ

憂「フフフ冗談だよ! お姉ちゃん? 早く降りてきてね!」トタタ

唯「はぁ~~い……ふぁ~ぁ」ムクリ


唯「いたらきまぁ~す」モシャリ

憂「お姉ちゃん昨日、寝言が凄かったよー?」

唯「んぇ?」モッチャ モッチャ

憂「やめてよ! まだ食べられるよ! ……とか」

憂「そんな所にそれを置いちゃ駄目だよ! ……とか」

憂「表面張力っていっても限界があるよ! ……とか」

唯(夢の中で何かにツッコんでる……あずにゃんが出てきたんだ……絶対そうだ……)

憂「ゴミ問題を考えダストきりが無いよね! なんてね! てへっ! ……とか」

唯(ホントに言ったの!? 恥ずかしっ!)

憂「PSPなんてやりたくないよぉぉ! ……とか」

唯(!!)ドキ

唯「ご、ごちそうさま!」トタタタ

憂「え? もういいの? お姉ちゃーん?」

憂「?」


 ガチャ バタン

唯「危ないところだった……」

唯「なぜ私がこそこそしないといけないのだろうか……」

唯「……あ、そういえばあずにゃん、電話するって言ってたけど」チラッ

携帯『ピロリン♪ピロリン♪プリッ♪ ---着信 あずにゃん---』

唯「ヒィッ!?」ビクッ

唯「あり得ないタイミングだよぉ……ピッ、もしもし……?」

梓『あ、唯先輩おはようございます』メェ~

唯「お、おはよう」

梓『先輩が起きてるなんて想定外です(笑)』メェ~~

唯「どういう意味かな? あずにゃん?」

梓『いえ別に。メェ~それより、昨日途中だった、ムギ先輩ストーキングミッションの話ですがメェ~』メェ~メェ~

唯「……さっきからメェーメェーうるさいんだけど何の音?」

梓『すみません。ペットの羊が暴れてて……』メェ~

唯(羊飼ってるんだ……)

梓『こらっ! ジュン! 走り回っちゃ駄目でしょ?』

ジュン『メェ~』

唯「……」

梓『で、詳しく話すので私の家に来てもらっていいですか? 今日は親がいないので都合がいいんですよ』メェ~

唯「……そうなんだ、わかった。行くよ」

梓『はい、待ってますねー。ふぅ、ご馳走様っと』メェ~

唯「ん? 何か食べてたの? 朝ご飯?」

梓『あ、食事しながらですみません』メェ~

唯「いや……いいけどさ」

梓『ちょっとお会計してきますね』メェ~

唯「店内!!? 羊とか連れて行っちゃ迷惑でしょ!?」ガーン

梓『え……い、いやジンギスカン屋だからいいかな~って……』

唯「よかないよ!! 余計駄目だよ!! ていうか朝からジンギスカン食べてたの!?」

梓『……あれ? ジュン? げ! やばっ!』

ジュン『メェ~~!』

店員『え!? う、うわ! うわぁぁ!』

梓『やめてあげてっ! ジュン! 言うこと聞いてっ!』

唯「……」

梓『ごめんなさいっ! 一回切ります! 唯先輩! とにかくそういう事でっ!』

梓『あ! 憂には私の家に来ること言わないで下さいねっ! 怪しまれますから!』メェ~!!

梓『もし、「どこ行くの?」って聞かれたら

  「アレをナニしてハアハアするお店に行くんだモジャ!」

  って言って誤魔化してくださいっ! でないと大変な事になります! それじゃ!』

唯「!!? はあ!? 嫌だよ! 言わないからね!?」

唯「大変な事ってどうなるの!? ちょっとぉぉ!?」

携帯『ニゲルヨ! ジュン! プッ……ツーーーツーーーツーーー』

唯「…………」


玄関!

唯(……)

 どこ行くのって聞かれたら……

 アレをナニしてハアハアするお店に行くんだモジャ!……

 大変な事になります……

唯(憂に会わなかったら言わなくてもいいよね……!)ソロリ

唯(そもそも私返事してなかったし! 言う必要ないよ!)ソロリ

唯(無効だよ! 無効! 無効!)

憂「お姉ちゃん?」

唯(ムコぉーーー!!?)ドキ!

憂「お姉ちゃん、どこ行k

唯「どこも行かない! どこも行かないよぉ!?」

唯(何も聞かないで何も聞かないで何も聞かないで……)

憂「靴履いてるでしょー? 変なお姉ちゃん!」クスッ

唯「は……ははは……はは」

憂「今から買い物に行くんだけど、お姉ちゃんも一緒に行く?」

唯(チャンス! 憂が出掛けてくれれば、その隙に外に出れる!)

唯「行かない! 絶対に行かないっ……!!」

憂「ええっ!?」ガーン

憂「な、なんでそんなに必死に拒むの? お姉ちゃんさっきから変だよ……?」ウルッ

唯「なんにも変じゃないよぉ……! 憂だけで行ってきなよぉ……!」

憂「ほ、ほら、軽音部の合宿も近いでしょ? 必要な物とか買いに行こうよ……?」

唯「必要な物なんて無いよぉ……! 単身潜入・現地調達が軽音部スタイルだよぉ……!」

憂「そんなわけないでしょ!?」

憂「こ、今年も行くんでしょ!? 今年はどこ行くの!?」ウルルッ

唯(言った……!)

唯(……どこ行くのって……文脈が違うけど……この場合どうしたらっっ……!)

唯(………………くそぅ!)

憂「聞いてるの!? 今年の合宿どこ行くのって、言ってるんだよ!?」グスッ

唯「……あ、アレをナニして……ハアハアするお店に行くんだモジャ!」モジャーン

憂「……」

唯「……」

唯「………くッッ!」

 ガチャリッ

憂「お姉ちゃん!? 待って! モジャってなに!? 純ちゃんの頭に付いてるアレの事!?」

憂「待ってよ! お姉ーちゃーーん!!」


ややお昼

中野家!

唯「逃げてきちゃった……帰ったら誤解を解かないと……」

 ピーンポーン

梓「はーい」

 ガチャ

梓「先輩、遅いモジャ! ……って、歩いて来たモジャ?」

唯「モジャモジャやかましいよっ!」

梓「も~、じゃあ言いませんよ……私だって子どもじゃ無いですからね。取りあえず中に入って下さい」

唯「お邪魔するよ……」

 バタン

唯「まったく……あずにゃんがおかしいから、平沢さんちの姉妹の仲はギスギスですよ!」プンプン

梓「な……!? おかしいとは何ですか! 私はただ……」

梓「ムギ先輩を尾行して監視して心の奥底まで探ろうとしてるだけです!」

唯「それがおかしいって言ってるの!!」ガーン

梓「うぅ……全部、全部、軽音部のためなのに……」

梓「ムギ先輩……若干距離を感じるし……」

梓「実家も見せてくれないから、私生活が全然わかんないし……」

梓「もしかしたら、私達に言いにくい悩みを抱えてるかも知れない」

梓「私、心配で……」

唯(あずにゃん……)

梓「だから、もっとムギ先輩を知らなきゃ駄目なんだよ!」

唯(あずにゃん、遠くの世界にイっちゃったと思ったけど……)

唯(こんな風に考えてたなんて……)

唯(私、ちょっと誤解してたのかも……)

唯(……よしっ!)スッ…

唯「あ~ずにゃん!」ダキッ

梓「ンニャ!?」

唯「良かったぁ……あずにゃんは、あずにゃんのまんまだったよぉ」

梓「唯……? よくわからないよ……」

唯「……ストーキング行為を認めるわけじゃないけど」

唯「あずにゃんの優しい気持ち……何となく、わかったよ!」

唯「だから……今回だけ、協力するよ!!」

梓「ゆ、ゆゆ、唯ぃ~~!!」

唯「一緒にムギちゃんを付け回そう!」

梓「うん! 付け回そう!」

唯「ムギちゃんを引ん剥いちゃ グゥゥ~~~~(お腹の音)」

唯「ありゃ?」

梓「アハハ! 唯ったら! お腹鳴り過ぎ!」

唯「そういや朝ほとんど食べてなかったぁ~!」

梓「何か食べる? ちょっと待ってて! 冷蔵庫見てくる!」

唯「はぁ~い!」

唯(……)ニコニコ

唯(さっきから一つ引っかかるけど、何だか幸せだなぁ~)ニコニコ

唯(おかしくないあずにゃんと、お話してるみたいだよぉ)ニコニコ

唯(日常ってこんな感じだったなぁ。うぅ、幸せ過ぎて涙出てきた……グスッ)ニコニコ

唯(引っかかる事があっても、突っ込んだらいけない気がするなぁ)ニコニコ

梓「ゆ~い! こんなのあった!」

唯「わぁ~い! 何かなぁ?」

梓「イ~カ~め~し~!」ジャーン

唯「おいしそー!」パチパチ

梓「続いて~、イカリング~!」ジャーン

唯「わぁーーー!」パチパチ

梓「まだまだ~、イカそ~め~ん!」ジャーン

唯「や、やった~!」パチパチ

梓「お次は~、するめイカ~!」ジャーン

唯「う、うれし、いな~!」パチパチ…

唯(突っ込まない……突っ込まないぞぉ……)

梓「なぜかお風呂場で死んでたイカ~!」ジャーン

唯(!?)

唯「ハァハァ……う、うれし、いか……?」パチ…

唯(突っ込んだら……終わっちゃう……普通の日常が……終わっちゃう!)

梓「いよいよラストのぉ~」

梓「スイカ!」ジャーン

唯「…………」

唯「何で最後ダジャレなのぉーーーー!!!」バリバリッバッツーン!!!

梓「だ!? えっ!? どうしたの唯!?」

唯「どうせなら全部イカにしなよ!!! ていうか! そうじゃなくてもイカ率高すぎだよ!!!」

梓「だって! 私のお母さんは基本、冷蔵庫にイカしか入れないタイプだから仕方ないでしょ!?」

唯「聞いたこと無いよそんなタイプ!!! 最悪の栄養バランスだよ!!!」

梓「イカしてるでしょ♪フフフ」

唯「イカレてるよ!!! なに落ち着いてるの!!?」

梓「んも~唯も落ち着きなよ?」

唯「……い、つ、ま、で……タメ口なのぉぉ!!?」

ドガッシャーン……
ユイ!ヤメテ!……
ヤメテッテバ!…
バリーン!…
ガシャン…
……

梓「お、落ち着きました?」

唯「うん……ごめんね……私ちょっと変な境地に達してたよ……」

梓「私も……呼び捨てにしちゃってすみません。やんちゃ過ぎました」

唯「ホントだよ……空気的に言い出せなかったよ……」

梓「でも唯先輩がやる気になってくれて嬉しいです!」

唯「デヘヘ~」

梓「ハアハア……、一緒にぃぃ! ハア……ムギたぁんをぉ! あふぅ! 付け回そうよぉぉ……って台詞に感動しました!」

唯「そんなんじゃなかったでしょ!?」

梓「あ、間違えました。舐め回そうでしたね」

唯「違うよ……違う所が違うよ……もういいよ」

梓「アハハすみません。さて、そろそろ行きましょうか」

唯「へあ?どこに?」

梓「いや、どこにって……ムギ先輩をストーキングしにですよ」

唯「え? 今日!? 今から行くの!?」

梓「早くして下さい? ほら! 行きますよ!」シュタタ

唯「ちょ、ま、待って! いつの間に靴履いたの!?」

唯「待ってぇ! 鍵しなくていいの!? あずにゃ~~ん!」ドタドタ


お昼

駅前!

唯(駅前に着いたけど……)

唯「電車乗るの?」

梓「いえ、ここで張り込みます」

唯「お?」

梓「この辺りでムギ先輩を目撃したというタレこみがありました」

唯(タレこみ……)

梓「大量の豚足を購入していたとの噂も」

唯「そんな女子高生おかしいでしょ……」

唯「張り込みなんてしなくても、下校途中のムギちゃんを尾行すればいいんじゃないの?」

梓「それは、ですね……ムギ先輩って電車通学でしょう……?」

唯「うん?」

梓「私、電車に乗ってる学生グループのテンションがどうにも苦手で……」

唯(そんな理由なの……!? ていうか、あずにゃんも学生だよ……)


唯「ま、まあ……そういうことなら……トラウマは人それぞれだよね。何か、ごめんね……」

梓「いえ……」



張り込み開始!



5分後!

ミーンミンミンミン…

梓「暑~~……」



10分後!

ジーワジーワジーワ…

梓「あっついな~もう……サハラ砂漠並だよ……」

唯(……)



15分後

ミーンジーワミーンジーワ…

梓「……うるっさいぞアブラゼミが! あぶら取りシートで巻くぞこの野郎!」

唯「うるさいよ……あずにゃん……何で他のセミは無罪なの……」

梓「あ! そうだ! 忘れてた! ムギ先輩、コンビニに現れるんだった!」

梓「唯先輩! コンビニ!コンビニで張り込みましょう!」

唯「絶対嘘だ……それ今考えた奴でしょ……」

唯「でも……もう……私も限界……コンビニ……行こっか」


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