夏休みのちょっと前!

今日は軽音部の活動日……なのですが、部室には私とあずにゃんしかいません

もうどれだけ待ったことやら……みんなたるんでるよ!

唯「あ~つ~い~よぉ~」グッタリ…

梓「蒸発した汗を体の周りに定着させて、薄い水のバリアを張ると結構涼しいですよ」モワンモワン

唯「うわぁ……どうなってんのそれ……」ガーン

唯「……あ~それにしても暇だなぁ~2人じゃ練習する気も起きないよぉ~」

梓「そ、そうですね……」

唯「りっちゃんなんてさ! 部長なのにさ! なにやってんの!」

梓「ぶ、部長だから忙しいんですよ……ほら、そんなにアレだったら唯先輩が……ね?」

唯「え? 私が? なにを? ……あ! そうか! そうだよ!」

唯「私が部長やったほうがいいよ! まったく!」

梓「でこ助、ですね……」ボソッ

唯「でこすけ? あ~、確かにそうだね! でこ助だよ! りっちゃんは!」

梓「ハハハ……」

唯「はぁ~もう~……みんな来ないのかなぁ~」

梓「…………まあ、今日は皆さん欠席ですけどね!」

唯「ええぇ!?」

梓「すみません……だいぶ前に連絡がありました……」ププ

唯「言ってよぉ!?」

梓「駄目じゃないですか唯先輩! 悪口ばっか言って……陰湿ですよ!」プスス

唯「あずにゃんの方が性格悪いでしょ! 何か誘導してたじゃん! もう!!」プンプン

梓「アハハ! ちがっ、違うんです! やんちゃしたかっただけなんです! ごめんなさいっ! アハハハハハッ!」ゲラゲラ!

唯「笑い過ぎだよ……も~」

梓「……ふう、でも確かに暇ですね~。あ、そうだ!」

梓「唯先輩、一緒にPSPしませんか?」

唯「へ? ぴーえすぴー……あ! ゲーム?」

梓「はい、PSP……」

唯「私DSしか持ってないよ?」

梓「PSP……PSP……」ボソボソ

唯「あ! でもりっちゃんが持ってるから、りっちゃんに借りればいいか~」

梓「プロストーキングプレイ……」ボソッ

唯「えっ!?」ビクッ

梓「いえ何も」

唯「でも今なにか……ストーキングって……」

梓「違います、ロープ・ストッキング・レイプって言ったんです」

唯「ええ? 何それ!? よくわかんないけど、ヤラしいよ……!」

唯「違うでしょ? 何かプロ何とかって言ったじゃん! 私、意外と聞いてるよ! 誤魔化されないよ!」

梓「しっかり聞かれてましたか……」

梓「そうです。PSPと言っても、ゲームの方ではありません」

梓「というわけで今日はPSP(プロ・ストーキング・プレイ)について解説したいと思います!」

唯「え? あぁ~……うん。え??」

梓「PSPってのは、まあストーキング行為の一種なんですが」

梓「一般的なストーキングとは全然違う、良いストーキングの事なんです!」

唯(語りだした……)

梓「わかりやすく言うとですね、良好な人間関係を作るために行うストーキングのことなんですよ!!」

唯(やけにテンション高くて怖いよ……)

梓「ストーキングして、相手が悩みや問題を抱えていないかチェックするんです!」

唯(……)

梓「また、ストーキング行為を相手に気づかれてはいけません!」

梓「相手に迷惑をかけてはいけません! 気まずくなりますからね!」

唯(今、気まずいよ……)

梓「相手の情報を言いふらすのも駄目です! 凄い秘密を知っても、心の中に留めておきましょう」

唯(……)

梓「もしも相手が問題を抱えていたら、そっと影から手助けするんです!」

梓「つまり! プロ・ストーキング・プレイは紳士のスポーツなんです!」

梓「変態欲求を満たすための行為では無いんですよ!!」

唯(……)

梓「……ふぅ、こんなところですかね! PSPの素晴らしさをわかって貰えたと思います!!」

唯(ストーカーが素晴らしいなんて……たぶんあずにゃんは悪い宗教的な何かに影響されてるんだ……)

唯「あ、あずにゃんはその……ストーカーなの??」

梓「いえ、プロ・ストーキング・プレイヤー、です」

唯「そういう感じの呼び方なんだ……」

唯「そんなカミングアウトされてもね……私はどうしたら……」

梓「最初に言いましたが、唯先輩も一緒にPSPしましょう!」

唯「え? えぇ!? いやだよ!」

梓「ぇえぇええぇぇ!!?」ガーン

唯「意外そうなリアクションしないでよ!」

唯「ストーカーだよ!? 犯罪だよ!? 悪いことしちゃ駄目でしょ!?」

梓「悪いことじゃないですよ!」

梓「覚えてるでしょう!? この前参加した、さわ子先生のお友達の結婚式!」※2期10話参照

梓「先生をストーキングしたから、いい感じに話がまとまったんじゃないですか!!」

梓「あの時、私はPSPの素晴らしさに気付いたんです!!」

梓「ストーキングは軽音部の平穏のためなんです!!」

梓「私達が影から軽音部を見守るんです!!」

梓「軽音部はストーキングで成り立っていると言ってもいいくらいです!!」

唯「気持ち悪いよそんな部活!! 何を熱弁してるの!?」

唯「それにあの時はそんな重いストーキングじゃなかったでしょ!?」

唯「犯罪と一緒にしないでよ!!」

梓「……」

唯「後輩がストーカーってだけでもショックなのに……私はやりたくないよ!」

梓「……」

唯「ちょっと聞いてるの!?」

梓「……」

唯「もう! 無視しないでよ!! ……え? なんか顔赤いよ!?」

梓「……」プルプル

唯「息止めてるの!? 何してるの!? ちょっと! やめなよ!」

梓「……」プルプルプル

唯「ごめんね! あずにゃん! 言い過ぎたよぉ! だからやめてよ!?」

梓「……」カキカキ

唯「え? 何書いてるの!? ゆ、い……って、ちょっと! ダイイングメッセージ残さないでよ!!」

梓「……」ピクピク

唯「わかった! するから! PSPするから! 呼吸してよ!」ユサユサ

梓「ッズハァ! ハァ! ハァ! ……アリ……ガトウ……ゼェ、ハァ、ゴザ……イマス……」

唯(こ、怖いよ……!)

あずにゃんの脅しに負けた私はプロ・ストーキング・プレイヤーになりました

ストーキングが軽音部のためになるとは思えないし、疑問や不満はあるけど

下校時間が過ぎていることもあり、取りあえず今日は解散することになりました


帰り道!

 ガヤガヤガヤ

梓(通話中)「もしもし! はい! そうです! はい! 唯先輩、それはもう自然な流れでPSPやるって!」

唯(誰と電話してんの……ていうか、いっこも自然じゃなかったよ……)

梓(通話中)「え? ブフッ! アハッハハハッ! カルボナーラと間違えて、嗅ぐおなーらって! どういうことですか!」ゲラゲラ

唯(こっちが聞きたいよ……どんな話してるの!?)

梓(通話中)「はい! では! おつかれさまでーす! ピッ……」

唯「……」

梓「ふぅ~……唯先輩! 今日は遅くまで付き合わせてすみません! でも……」

梓「これで唯先輩もプロ・ストーキング・プレイヤーですね!!」

 ザワザワ…

唯「さっきから声が大きいよ! PSPってバレちゃ駄目なんでしょ?」

梓「大丈夫ですよ。ターゲットに知られならなければ大丈夫です」

唯「そ、そうなんだ……」

唯(私に打ち明けたってことは、私はストーキングされて無かったんだよね……?)

唯「あ、あのさ……私をストーキングしてたりしないよね~? なんて……」

梓「……」

唯「あはは……そんな事あるわけないかー!」

梓「……」

唯「え……どうなの……?」

梓「違います、唯先輩」

唯「え?」

梓「……ほら私の親、ジャズバンドやってるって言ったじゃないですか」

唯「へ? う、うん……」

梓「だから家にレコードいっぱいあって、私、小さい頃それをフリスビーみたいにして遊んでたんです」

唯「う……ん?」

梓「で、この前なんですけど、冷蔵庫の調子がおかしいって事で、業者の人に引き取ってもらったんですよ」

唯「??」

梓「そしたら冷蔵庫と壁の隙間からレコードがドサーって出てきてですね」

梓「どうやら私が飛ばしてたレコードが原因で熱暴走してたらしくって」

梓「その後、親にレコードを粗末に扱ったことだけじゃなく、冷蔵庫を駄目にしたことまで怒られちゃいました……」

唯「……」

梓「……」

唯「……えっ!? なんの話!?」ガーン

唯「中野家の冷蔵庫事情はどうでもいいよ! ちゃんと説明してよ! ……え? ちょっと待って! どこ行くの!?」

梓「……」シュタタタタタ

唯「待ってよ! ねえ!? 全然誤魔化せてないよ!? ていうか速ッ!? あずにゃん! ねえってばーー!?」

唯「に、逃げられた……」ポツン

唯「帰ろう……」


平沢家!

唯「はあ……今日は疲れたなぁ」

唯「あずにゃんの概念が、くつがえされた1日だったよ……」ブツブツ

唯「日本あずにゃん学会・名誉会長もびっくりだね……」ブツブツ

唯(あずにゃんが……ストーカーだなんて……)

唯(まあ、悪意があるわけじゃ無さそうだけど……)

唯(ていうか、誰をストーキングするのだろうか……)

唯(憂に相談してみよう、かな……?)

唯「ただいまぁ~」

 ガチャリ

唯(梓)「う~~~い~~~、ねつさましーとないよぉ~?」

唯(梓)「あ、ぶたにくがあるぅ~~もうこれでいいやぁ~~はっちゃお~~」ペチャ

憂「もう~お姉ちゃんったら! それは牛肉でしょ!」

唯「……」

唯「何でいるの!?」ズバ!

唯「あと、人ん家のお肉をおでこに貼っちゃ駄目でしょ!?」ズババ!

唯「そして何より……私はそんなにキモく無いよ!!!」ズババーン!

憂「あれっ!? お姉ちゃんが2人!? イエスッ!!」

唯「なんで憂は騙されてんのーーー!?」ガーン

梓「唯先輩! 落ち着いて! これで熱を冷まして下さい!」ペチャ

唯「ぅおぉぉお肉を貼らないでよおぉーーー!!」

ギャーギャー……
ガシャーン……
ワーキャー……
………

梓「落ち着きました?」

憂「お、お姉ちゃん? 大丈夫?」

唯「うん……ごめんね……学校で……とある人物にツッコミ過ぎて変になっちゃってたよ……」

唯「澪ちゃんのポジションになった気分だ……」

憂「お姉ちゃん、澪さんは突っ込まれるほうだよぉ///」

唯「んぇ? なにが?」

梓「唯先輩がツッコミに回るとは……その美少女かなりの実力者ですね……」

唯(白々しいよ! あと、美少女は言ってないよ!)

唯「ていうか、あずにゃんは何でいるのさ!」

梓「いやぁ~唯先輩の物真似を憂に見てもらいたくて」

憂「そうだったんだ! でも梓ちゃん凄いね! 話し方が似てたから騙されちゃった!」

唯(え!?)グサッ

梓「エヘヘ……ありがと。1年の時から練習してたからね」

唯(胸クソ悪いよ!)

憂「そうなの!? そんな素振り全然無かったから気付かなかったよ~」

梓「ギターの練習もしなきゃだし大変だったかな。まあ全部嘘だけどね」

唯(しかも嘘なの!?)

憂「ギターと物真似の練習を両立するなんて……梓ちゃんは努力家だね!」

唯(憂! よく聞いて!)

梓「さて……目標達成できたし今日は帰るね」

憂「あれ? 帰っちゃうの? ついでにご飯食べていけば?」

梓「折角だけどごめん。帰ってカポエラの特訓しなきゃ。試合が近くてさ」

唯(知らないよ! 初耳だよ!)

憂「梓ちゃん、正しくはカポエイラだよ!」

唯(憂はさっきから何かズレてるよ!)

憂「それじゃまたね!」

梓「ばいばい憂。唯先輩もさようなら」

唯「……」


玄関!

唯「……ホントは何しに来たのさ」

唯「ま、まさか憂をストーキングしてたんじゃ……」

梓「違います」

唯「あずにゃんの『違います』は違わないんだよ……」

梓「本当に違います。私はただ……」

梓「唯先輩が他の先輩方や……憂にPSPの事を喋るんじゃないか」

唯(!)ドキッ

梓「と思ったんですが、それは無いですよねー!」

梓「私達PSP仲間ですもんね! 私の秘密は唯先輩の秘密でもありますからね! 言えるわけないですよね!」

唯(やり方が汚い……!)ズーン

梓「まあそれは置いといて……肝心な事を言い忘れてたので来ました」

梓「PSPのターゲットのことですが……」

唯「……」ゴキュ

梓「ムギ先輩をストーキングします!」

唯「ム、ムギちゃん……?」

梓「はい、ムギ先輩です。何度かストーキングしたんですが、うまくいかなくて……」

梓「そこで唯先輩に協力してほしいんです!」

唯「えぇー……既に餌食になってたんだ……ていうか、何でムギちゃんなの?」

梓「詳しくは……明日、場所を変えて話します。憂に聞かれるとアレですから」

梓「唯先輩は明日、何一つやることが無くて、怠惰に時間を浪費する予定ですから大丈夫ですよね?」

唯「言い過ぎじゃない!? ……まあ暇だけど」

梓「じゃあ今日は帰ります。また明日電話しますね。妙なタイミングで……ね……」フフフ

 ガチャリ
 バタン

唯(普通のタイミングで電話してよぉ……後味悪いよぉ……)

唯(……ムギちゃんをストーキングかぁ)

唯(罪悪感がハンパないよぉ……)

唯(私も犯罪に手を染めるのかなぁ……)

唯(い、いやだなぁ……)

唯(どうしよう……う~ん……う~ん)

憂「お姉ちゃーん? 何してるのー? ステーキ冷めちゃうよー?」

唯「あ、待って~すぐ行く~」タタタ

初めてのPSPに不安を覚える私ですが

晩御飯が好物ということもあり、取りあえず考えるのをやめました

その日はお風呂に入った後、特に何もすることなく寝てしまいました


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