123. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:16:52.86 ID:ejMwY/co
「もう帰ってくんなよ」

律はそういって私を追い出した。
律はやっぱり優しい。
私を怒るふりをしてちゃんと答えを導いてくれる。
今だってそう。
私を追い出すことで『行動せざるをえない』状況を作ってくれた。


ありがとう、律。
やっぱりお前は最高の親友だよ。


そして、唯。
今度こそ、ちゃんと向き合うから。
124. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:17:53.20 ID:ejMwY/co
「みお、ちゃん」

私が出て行ったときのまま、唯はいた。

「え?  うそ!?  どうして」

唯の言葉を無視して私は唯に近づいていく。

「止めて!
お願い!  来ないで!!」

唯は叫ぶ。
だけど耳を貸さない。
唯の手首を掴む。

「嫌!  離して」

離さない。
唯が私の手から逃れようと暴れる。
だけど、絶対に離さない。

唯の手はひどく冷たかった。
こんなになるまでにしたのは、私のせい。
だから、もう離さない。

「なんで?  もういいじゃん!
りっちゃんは帰ってきた!
だったら澪ちゃんももう帰りなよ!」

嫌だ。

はっきりそう告げる。
唯が何かを叫ぶが、もう無視する。

唯を無理矢理押し倒す。
その目は、赤く、充血していた。
125. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:18:46.08 ID:ejMwY/co
ごめん、唯。私のせいだよな。

「違う、これは私の罰だよ」

違わない。

「違うよ、澪ちゃんは何も悪くないんだよ」

なあ唯、今だけは自惚れさせてくれ。
唯を泣かせたのは私だって。
全部私が悪いんだって。

「違う!違うーーーーんー」




唯の唇を塞ぐ。

ごめんな、唯。
私が馬鹿なせいでずっと傷つけて。
我慢させて。
126. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:19:44.30 ID:ejMwY/co
「……だめだよ、澪ちゃん。
キスは、好きな人じゃなくちゃしちゃいけないんだよ」

今更なにを――――――――――――――

マテ、
なにか、大事なものを見落としている、そんな直感。

キスは、好きなひととだけ。

なら、なんで

考えろ、
考えろ。

なぜ今それを言うのか。
ならなんで唯は―――――――――









ああ、
そういうこと、なのか
127. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:20:30.29 ID:ejMwY/co
解った。
まるでパズルのように、ピースがはまっていく。
次々と、全ての事がはまっていく。

そして、それが意味すること。
確信に変わる。

だから、私はいう。


ねぇ、唯。
キスをしよう。
128. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:21:43.52 ID:ejMwY/co
「だから、キスは好きな人にじゃないとしちゃダメなんだってば」

うん、だから、しよう。
いや、これではダメなんだ。

私が、私の意思で、唯にキスを。


「――――――――――

  ……ねぇ、なんでこんなことするの?」

唯。

好きだよ。

「うそ」

嘘じゃない。

私は唯と、キスをする。
唯にだけ、する。

だって、好きな人だから。
ううん、これじゃダメなんだよね。
唯が、世界で誰よりも好き。
だから、私がキスをするのは唯だけ。

「うそ」

嘘じゃない

「うそ」

嘘じゃない

「……嘘だよ」
129. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:22:28.56 ID:ejMwY/co
「嘘だよ。
だって。どんなときでも澪ちゃんの中にはりっちゃんがいたもん。
最初から一番はりっちゃんだったんだもん。

解ってたんだ、最初から一番になんてなれないって。
だから、二番目でも良かった。
澪ちゃんが求めてくれるなら、一瞬でも私で独占できるならいいと思ってた。


でも、だめだった。
りっちゃんと笑ってるのを見るだけで我慢できなかった!
たった少しの間でも!私が独占出来たことなんてなかった!
ずっと!ずっとずっとずっと!
りっちゃん!  りっちゃん!!  りっちゃん!!!
私を見てくれた事なんて一度だって……」

唯の叫びが急に止む。
そして、真っ青になり、震え出す。

「ごめんなさい。
お願いだから忘れて。

もうわがまま言わないから
もう一番になりたいなんて言わないから
もう泣かないから
明日には都合のいい唯にもどるから

おねがい、だから……
おねがい……」


お願いだから、捨てないで
130. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:23:25.83 ID:ejMwY/co
今になって、事の重大さに私は押し潰されそうになった。

ずっと唯はこんな気持ちだったのか。

私が自分勝手に体を重ねたときも、自分勝手に泣いてすがったときも。

ずっと都合のいい唯でいなくてはと。
自分の気持ちを押し殺して、私にとって都合のいい唯でありつづけるようにと。

私が唯に感じていた、違和感。
その正体。
ずっと壊れそうな感情を押し殺して演じつづけた、私にとって都合のいい唯。

望んだのは、唯。
甘えたのは、私。
続けさせたのも、私。
そして、唯に今も尚続けさせようとしているのも、私。

望んだのが唯だとしても、結果傷つけたのは私だ。

だからもう終わりしによう。

これ以上、唯が傷付くのなんて我慢できない。



だから、キスをする。
私の気持ちが届くように。
唯が、私の好きを受け入れてくれるまで。
131. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:24:44.98 ID:ejMwY/co
ごめんな、唯。
これからは、ずっと唯を見ているから。
だから、もう我慢しないで。
泣きたいときは泣いてくれ。

ずっと、離さないから。
ずっとずっと、一番そばにいるから。



そうして、『やっと』唯は泣き出した。



ずっと、我慢させていたんだろう。
全部吐き出してくれ。
今までの分を全部。

そうしたら、今度は謝らせてくれ。
今までの分全部。

そして、始めよう。
これからの私たちの関係を。
132. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:25:53.33 ID:ejMwY/co
「ねえ、澪ちゃん。
もう一回、好きだって言って。
好きって言って、キスして欲しい」

一度なんて言わせたくない。
何度だってしてやる。
私はキスをする。
私の好きな人に。
私の好きが伝わるように。

唯が笑う。
それが酷く久しぶりな気がする。
これからは、私がこの笑顔を作ってやる。
そう決めた。

だから、唯。
私と付き合ってください。

そういうと唯はまた泣き出してしまった。





「ごめんね、これは違うの。






嬉しすぎて、わけわかんないの」





133. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:26:25.93 ID:ejMwY/co
これからはずっと唯の近くにいよう。
唯が唯でいられるように。
私の好きを伝えていこう。
もう不安になんてさせないように。


今、ここから始めよう。
私たちの新しい関係を。
恋人としての、私たちを。
134. 澪唯 ◆8Mj6VMVRzQ 2010/10/27(水) 22:29:21.25 ID:ejMwY/co
澪唯終わり
携帯で書いたので文章のずれや推敲の足りなさはご勘弁を



最終更新:2011年03月11日 00:00