唯「ふー、寒い寒いー」

唯「早くアパート帰ってあったまろー」

「にゃあ」

唯「ん?」

「にゃー……」

唯「お、子猫ちゃん。どうしたのー。捨てられちゃったの?」

唯「カワイソウに、寒いでしょ? おいで」

「にゃー……」

唯「首輪ついてる……えっと、【梓】か」

梓「……」

唯「うちにおいでー? あったかいミルクをあげよう」

梓「にゃー……」

唯「可愛いねぇ」

梓「……」



アパート


唯「さぁあがってあがって」

梓「……」プルプル

唯「怖がらなくていいよ?」

梓「……」

唯「あずにゃんはラッキーだねー。ほらー優しいお姉さんに拾われてー」

梓「……にゃ?」

唯「あっ、あずにゃんってのはニックネームね! 梓だからあずにゃん!」

梓「……にゃー」

唯「お風呂にはいろうか! あったまるよー」

梓「にゃあ……」

唯「ほら服ぬがなきゃ」

梓「……にゃっ」

唯「おや? あずにゃん、ポケットの中に何か……」ゴソゴソ

唯「紙?」

 【誰か拾って可愛がってください】

唯「……」

唯「前の飼い主さんかな……ひどいなぁ」

唯「こんな可愛いあずにゃんを寒空の下捨てて……人まかせなんて」

唯「あずにゃんかわいそう」

梓「……」

唯「でも大丈夫。私が拾った以上面倒みてあげる!」

唯「あ、そういえばこのアパートはペット禁止だった……」

梓「……にゃあ」

唯「し、しんぱいしないで! ちゃんとなんとかするから!」

梓「……」





唯「それにしても、この街も野良人猫増えたよね……」

唯「あずにゃんも危うく野良になるか、凍え死ぬところだったよ」

梓「……にゃあ」

唯「ほら、もっとこっちおいで。ぎゅうってしてあげる」

唯「一緒にあったかあったかして寝ようねー」ギュー

梓「うにゃ……」

唯「あずにゃんは飼い人猫なのにしゃべれないんだねー珍しいねー」

梓「うにゃ……ちょっ、と、だけ、で、す」

唯「明日から教えてあげるね」

梓「にゃー」

唯「おやすみー」

梓「おあ、う、み」

唯「おやすみ、だよ。あずにゃん」



唯「あずにゃ~ん、朝ごはんだよー」

梓「あ、さ、ごは!」

唯「ミルクとー、パンとー、あとソーセージ焼いちゃおっかなー」

梓「にゃあ!」

唯「嬉しい? ソーセージ好き?」

梓「にゃあ」

唯「にゃあ、じゃなくて『はい』だよ。これから言葉をびしびし教えていきます」

梓「はい!」

唯「うんうん、可愛いねーあずにゃん」

梓「はい!」

唯「きっと世界一可愛いねー」

梓「はい!」

唯「……ふふ、うっふふ。はいしか言わなくなっちゃった」

梓「はい!」

唯「これから私たちの生活がはじまるんだよー?」

梓「はい」

唯「きっと楽しくなるよ」

梓「はい!」

唯「私はちゃんとお世話してあげるからね……捨てたりしないよ、ちゃんと言葉も家事も色々教えてあげる」

唯「ごはんもあげるよ。だってあずにゃんがこれ以上痩細って弱るところなんて絶対みたくないもん」

梓「……」

唯「大事にしてあげる。もう私の飼い猫さんだから」

梓「……はい」

唯「じゃあそろそろ時間だからいってくるね」

梓「?」

唯「お仕事……行かなきゃ。ちゃんとおとなしくお留守番してるんだよ?」ナデナデ

梓「にゃ!? にゃー!!」

唯「だめだよぅ……あずにゃん連れてお仕事いけないよ」

梓「うにゃああ!! にゃああ!!」


唯「あずにゃん……いい子だから……ね?」

梓「うにゃああああ!!」ギュウウ

唯「……うーん、困ったなー」

梓「にゃー! にゃー! や、だ!」

唯「なるべく早く帰ってくるよー」

梓「にゃああ……」

唯「ごめんね? ひとりっきりは寂しいよね?」

唯「せめてテレビつけていってあげる」

唯「ごはんも置いてるからね? 好きなときに食べるんだよ?」

梓「にゃああああ……にゃああああ!」ポロポロ

唯「泣かないで……」

梓「や、だ……やだあああ!!」

唯「あ、バス間に合わなくなっちゃう……」

梓「うにゃあああ!!」

唯「お勉強してまっててね? 帰ったらいっぱいいっぱい遊んであげるから……それじゃ、いってきます」


ガチャン バタン


梓「にゃ……」

梓「うにゃああああ!!!」

梓「ゆいー! ゆいー! にゃあああ!!」ガリガリ

梓「うう……」ガリガリ

梓「にゃあぁぁ……」

梓「……」

梓「……にゃふ」

梓「あっ。ご、はん……にゃあ」

梓「……もぐもぐ」

梓「もぐもぐもぐもぐ」

梓「もぐもぐもぐもぐもぐもぐ」

梓「にゃ~ん♪」

梓「にゃふ~~」

梓「……ふぁ」

梓「……にゃー」

梓「てれび」

梓「……」ジー

梓「…………ふぁ」


コンコン

梓「!」

コンコン

梓「にゃっ!?」キョロキョロ


「こっちこっち、窓あけてよ」


梓「……?」


「いーからあけなって。そう、そのレバーをそうそう」

ガチャ

「ふー、さんきゅー」

梓「……誰」

「あんた飼猫?」

梓「一応そうだけど……」

「ぷっ、飼猫のくせにろくに留守番もできないんだね」

梓「え?」

「ずっとご飯食べてるから同業者かと思っちゃった」

梓「な、なに? だれなの?」

純「私は純犬。空き巣だよ。わざわざ窓開けて迎え入れてくれるなんてありがと」

梓「あきす……?」

純「ふふふ、馬鹿な猫を飼ったが運の尽きだね平沢唯」

梓「にゃ!? にゃ!?」

純「しかも動物言葉しかしゃべれないときたもんだ。おっかしーアハハハ」

梓「うぅ……だってぇ」

純「とりあえずお腹すいたしなんか食べ物を勝手にいただこうそうしよう」

純「冷蔵庫冷蔵庫ー」ガチャ

純「おっ、ドーナツあるんじゃん!」

梓「あ、あの……勝手に」

純「あんたも食べる? んまいよ」

梓「え?」

純「ほれほれー」

梓「……じゅるり」

純「たべちゃえ。共犯になろ? どうせまだ飼われて一日もたってないんでしょ?」

純「逃げるなら今がチャンス!」

純「私と一緒に野良になろうよ。こんなせまっ苦しい家にいるよりずっと楽しいよ」

梓「で、でも……」

純「ご主人だってあんたのことほったらかしでどっか行ったじゃん」

梓「おしごとって言ってた……」

純「おしごとなのに連れてってもらえなかったの? はぁ~なんのための人猫なんだか」

純「それ、きっとあんたみたいな出来の悪い人猫を連れまわすのが恥ずかしかったんだよ」


梓「そ、そんなこと……」

純「嫌われてるんだよ。そりゃ役にたたない人猫なんてだれも好きにならないよね」

梓「うぅ……」

純「あたしもそう。一回ヘマやっただけで捨てられてこのザマだよ」

梓「……純」

純「ほら、似たもの同士! 仲間じゃん! だから一緒に空き巣野良やろうよ!」

梓「でも……唯は……」

純「……はぁ~、しかたないなー。ほんと優柔不断は嫌われるよ?」

純「んじゃ、また今度来るからそんときまでに決めといて」

純「虐待されたらすぐにでも逃げな。首輪に鎖つけられそうになったら抵抗するんだよ?」

梓「う……うん」

純「人間なんて信じちゃだめ。どいつもこいつも私らのことなんて便利な機械程度にしか思ってないんだから」

梓「……そう、かもね」

純「心配だなぁ……ま、知ったこっちゃ無いけどね」

梓「……」

純「そんじゃあね。ごちそうさん」

梓「……」

純「なにその顔。あんたも共犯でしょ」

純「あ、もしかしてこんだけ食べ散らかしたらご主人に怒られるかもって? あははは」

純「そうなりゃ捨てられてあんたも野良だよ。やったね!」

梓「……むぅ」

純「まぁ安心しなって。そんときゃこの純様の手下にしてやるから!」

梓「しっしっ!」

純「つれないなぁ……ま、怒られないように片付けくらいはしといたら? お馬鹿な飼猫さん」

純「ばいびー!」


梓「……」

梓「……うにゃああああああああ!!」

梓「……うにゃおおおおおお!!!!」

梓「……にゃふ」


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