律「マジかよ……じゃあ唯のギターも」

紬「半ば脅し取ったようなものかしら」

唯「……だから私達にどうしろって?
学校をやめれば満足?」

紬「……いいえ。ただね、唯ちゃん。現実はあんな簡単で何でも上手く行くものじゃないの。
極道何てものは他の組を落とす為になんだってやるわ。
…ただ約束して欲しいの。二度と暴力は振るわないって」

律「……」

澪「……」

唯「どうするの?」

紬「あっちの条件を飲むつもりよ。お父様に頼み込んでそうしてもらうようにしたから」

唯「条件って……」

紬「その先は知る必要はないわ。ただ唯ちゃん……暴力は何も生まないの。
ううん、生むとしてもそれは悲しいことだけだから……」

そう言って彼女は去って行く。

律「……」

澪「……もうあんなのには関わらないとこう。な? あの時だってちょっと黙ってたら問題なかったろうし…」

唯「……」

律「条件ってなんだったんだろうな……」

唯「やっぱり気になるよね」

律「ああ……私らのせいでムギの父さんに迷惑かけちまったのがどうしてもな…」

唯「悪いの私だよ。一番最初に手を出したのは事実だから。」

それがカッコいいことだと思ってたから……。

澪「そう言えばムギ……どこ行ったんだろ」

律「家がヤクザって言っちゃったから気まずいんじゃね?」

澪「そんなもの気にしないのに」

唯「うん……」

嫌な予感はした。

副担任のさわ子先生が入ってくる。ホームルームがまさに始まろうかと言うのに彼女の席は未だ空席だった。

さわ子「皆さんに悲しいお知らせがあります…」

唯「えっ……」ドキッ

さわ子「琴吹紬さんは昨日をもって他の学校へ転校しました。
お父様の仕事の都合で本当に急遽決まったそうです」

律「嘘だろ……」

ダッ!!!

さわ子「平沢さん!?」

ガラララ……

唯「ムギ!!!!」

久しぶりに呼んだその呼び捨て名も、今はただ廊下に響いて消えるだけだった。


放課後

律「ムギが転校だなんて……朝はいたのに」

澪「最後に言いに来たんだろ……あの事を」

唯「ムギちゃん……私のせいで」

律「そもそも私があんなやつら無視してたら…」

澪「もう言っても仕方ないだろ……。ただ最後にムギが言ったこと……守れよ」

律「暴力は振るわないってやつ…?」

澪「ああ……喧嘩なんかしてもいいことないよ…ほんとに」

律「そうだな……約束するよ、ムギ」

唯「……」

本当に、このままで終わりなのだろうか。
このままムギちゃんが転校し、私達はただ悪いやつの餌食になっただけで……。
私にはもう……どうしたらいいのかわからなかった。


平沢家

唯「ただいま…」

憂「おかえりお姉ちゃん。あれ? 元気ないよ? どうかしたの?」

唯「ちょっとね……。少し寝るからご飯出来たら起こして…」

今は妹の顔でさえまともに見れなかった。

憂「うん……元気だしてねお姉ちゃん」


唯「はあ……」

ベッドにうつ伏せで倒れ込む。

唯「どうしたらいいんだろ……」

学校からそればかり考えている。
こんな時三ちゃんならどうするだろう。

唯「そもそも三ちゃんのせいでこうなったんじゃない!」

本棚にしまってある今日から俺は!! を引っ張り出し、三ちゃんがいる適当なページに合わせてひたすら文句を垂れる。

唯「三ちゃんが悪いんだ! こんな強いから!」

違う。

唯「三ちゃんが悪いんだ! そんな卑怯だから!」

違う。

唯「三ちゃんが悪いんだ! そんなズル賢いから!」

違う。

唯「三ちゃんが悪いんだ……憧れるような生き方するから……」

違う、悪いのは私だ。
強さを吐き違えた……私なんだ。

気づけば本にポツポツと涙の跡が出来ていた。
もう買い取りなんかに出すつもりはないが、このページは……読みづらくなる……だ…ろう……。

~~~

三橋「あっ、伊藤ッ、ツバ飛ばすなよバッチーなー」

伊藤「オメーがあんな真似してまでチャーシュー麺食いたいって言うからわざわざよォ……」

三橋「キャーイトウさーん! ちゃんと約束守るなんてステキー」

伊藤「はいはい……」

唯「ほえ? なんで二人が……」

三橋「あ?」

伊藤「ん?」

三橋「おい伊藤、マビー子がこっち見てんぞ」

伊藤「オォ……京ちゃんには負けるがな」

三橋「メンマアタック」ペチッ

伊藤「あっ! テメー! 食べ物粗末にすんじゃね……あつぁっ!」

唯「あ、あの……」

伊藤「どうした? 俺らに何か用か?」

唯「伊藤ちゃん……だよね?」

伊藤「俺のこと知ってんの?」

三橋「ふんッ!」チャーシューアタック

伊藤「あぢゃっッッ! 三橋テメェ!!!」

三橋「チャーシューを一枚お裾分けしただけだ。ありがたく食えよ伊藤」

伊藤「お前ってやつもっと素直にお裾分け出来ないかね」

三橋「なら返せ」ヒョイッ

伊藤「いらないとは言ってないだろ」ヒョイッ

三橋「伊藤は欲張りだな……」ヒョイッヒョイッ

伊藤「と言いつつ二枚重ねてとりやがったな!」

唯「ほんとに三ちゃんと伊藤ちゃんだ……あきれるぐらい」

三橋「三ちゃん?」

唯「そう! 正義の味方ミツハーシー!」

三橋「オォ……」ズズイ

唯「?」

三橋「伊藤から勝ち取ったチャーシューをやろう」

伊藤「俺からのかよ。ま、いいけどさ。で、何か俺らに用?」

唯「用っていうか……相談があるのです」

伊藤「相談、か」

三橋「うむ、何でも言ってみなさい。このミツハーシーが答えてしんぜよう」

……

唯「……ってことなんだぁ」

伊藤「難しいなそりゃ……しっかしそんなことするなんざ相良ぐらいなもんだと思ってたわ俺よォ」

唯「私どうしたらいいのかわからなくて……伊藤ちゃんならどうする?」

伊藤「そうだな……そのボコった連中に頭下げに行くかな。
ハメられたっつっても自分からやっちまってそうなったんなら謝るしかねぇ。
許してもらえるかどうかはわからないけどさ」

唯「伊藤ちゃんらしいね……」

伊藤「そのムギって子との約束守りたいならそうするしかねぇよ。
そいつら多分何回でもお前ら狙いに来るぞ。次は他のダチがやられるかもしれねぇしな…」

唯「うん……そうだね」

三橋「アホか」チョイ!

伊藤「あん? じゃあ他にいい手あんのかよ?」

三橋「まずビデオを撮ったやつと喧嘩ふっかけてきたやつはグルだろうからそいつらをまたボコしてビデオを撮ったやつを見つける」

伊藤「おま、約束は」

三橋「なもん知ったこっちゃねぇ」

伊藤「でもバックにやーさんがいるんだぞ?」

三橋「やーさんが出張る前に叩けばいい。マスターテープさえ回収すりゃ後はどうとでもなる」

伊藤「そりゃそうだがよ……」

三橋「もしやーさんが出てきても俺なら負けん。何故なら俺は宇宙一強いからだ」

伊藤「お前ならな」

唯「……凄いね三ちゃんは」

三橋「何言ってんだよ。お前だって金髪じゃねぇか」

唯「えっ」

三橋「俺を目指してその頭にしたんじゃねぇのか?」

伊藤「おいおい金髪にしたらみんなお前目指してるみたいな言い方やめろよな」

唯「ううん、ほんとにそうだから……三ちゃんに憧れて……姿だけは似せてみたんだけどね。
三ちゃん達みたいにツッパれなかったよ……」

伊藤「ツッパりってのはなんて言うかな……こう心にある曲げたくねぇって想いを貫き通すことだと思うんだよ」

唯「心にある曲げたくない気持ち……」

伊藤「それが曲がってない限りまだまだツッパりじゃないか?
いや何言ってるか自分でもわからなくなってきたが」

三橋「伊藤のバカがごちゃごちゃ言ってたからわかりやすく一つだけ言っとこう」

唯「なに?」

三橋「金髪のツッパリは負けねぇ。何故なら大宇宙一強いからだ」

唯「うんっ、そうだね」

気持ちを曲げない、そして金髪のツッパリは負けない。

心の中で考えがまとまって行く。

唯「ありがとう二人とも! 私……もう迷わないから」

伊藤「オォ」

三橋「起きたらちゃんとよだれふけよテメー」

唯「えっ?」

暗転─────


~~~


唯「ふあ……ん?」

気づいたら寝てたみたい……。

唯「なんだ夢かぁ……」

唯「ぉぅ……私のバイブルが涙とよだれでぐちょぐちょ……」フキフキ

確かにあれは夢かもしれないけど……でも。

唯「ムギちゃんを戻すにはこれしかないよね…」

その代わりに私がどうなっても構わない…!
約束破ることになってごめんねムギちゃん……。
けどね……悪者が勝つのが正しい現実って言うなら、私はそんな現実いらないんだ。

唯「行ってくるね、三ちゃん、伊藤ちゃん」

表紙の三橋と伊藤が、おぅ、と言ったした。


夜の街、車のライトが当たる度に金髪が歪に輝く。

唯「あのさぁ…そっちから怒らしたんだよね?」

不良女C「すいませんすいません……」

ガスッ! ズガァッ!

不良女C「ぐえっ」

唯「すいませんじゃ何も解決しないよ?
初めはあんたらに謝ってマスター返してもらおうとか思ってたけどさ、絶対返さないよね?」

不良女C「その……ほんとに私知らなくて…」

ガスッ!ガスッ!ゴスッ!

唯「じゃあ次行くからここで野宿でもしてろや…」

不良女C「ふぅぐ……」


不良女Bもほんとに知らないようだったし…元締めはあいつらのメンバーじゃないのかな?

そうだとしても名前ぐらい知ってる筈。次のやつはリーダー格っぽかったしね……。

そのリーダー格の家を聞き出し、向かう途中だった。

「だからさ~ちょっと遊ぶだけでいいんだって」

「そうそう。飯も奢るし?」

「そんな暇ないんでいいですよ。というか私まだ中学生なんですけど。
お二人はロリコンなんですね」

「あ~そうなんだ。まあ俺は守備範囲広いからさ~イチロー並みに?」

「パフェも奢るからよぉ……こいって」グイッ

「やめてください」

「いいことしようぜ~」

視界に入るだけでイライラする…。

「さっさとこいや!」

「はあ……仕方ないです」

「あ? ようやく来る気に(ry」
「やってやるで……あれ」

ズォォォォッ!!! バギャンッ!!! ズサーーーー……。

加速をつけた飛び蹴りがこれでもかと言うほど綺麗に入り、男は私に気づく間もなく気絶した。

「な、なんだテメー!」

唯「こっちは機嫌が悪いのに目の前でうろちょろするから悪いんだよ…」

「はあ? 別にテメーになんか迷惑かけたかよ?
……つかよく見たらマビーじゃん。両手に花と行きますか」ガシッ

唯「触んな」

シュッ……バシャァッ!!!

「ぐえらぼっ」

「オォ……早いです」


唯「おいテメー」

「私ですか?」

唯「こんな夜遅くにチュウボーが出歩くんじゃねーよ。補導されんぞ」

「…すみません」

唯「ちっ、じゃあな」

「あ、あの! 名前……教えてください」

唯「……金髪の悪魔。じゃあね」

「ちょっと…!」


ついつい助けて道草を食ってしまった。
まあああいうのはほっとけないよねやっぱり。
さて、早くリーダー格の家に行かないと。



「金髪の悪魔…まさか……」

「ふふふ……アドレナリンがヤバいことになりそうです」



不良女「ふぁ~……サンデーつまんね」

「不良子~友達来てるわよ~」

不良女「あ? あーはいはい」

不良女「誰だよ全くこんな夜遅くに……」

ガチャリ

不良女「どちらさんΣ(ry」

不良女「がっ……」

ドアから顔を出した瞬間にドアを蹴り飛ばし顔を挟み込む。

唯「あ~ろは~ろは~」

不良女「ぐっ……テメー」

唯「ちょっとこいよ。久しぶりにキレちゃったよ」

不良女「あ゛ぁ゛?」

唯「あ?」ギロッ

不良女「うっ……(こええ……」


唯「で、元締めの家はこっちであってんの?」

不良女「はい……(くっ……なんでこんなつええんだよこいつ……)」

唯「嘘ついたら目にビー玉入れちゃうから」

不良女「は、はぁ……(オォ……おっかねぇ……」

「ギャハハハハ」

「いやマジだってwww ほんとにwww」

「信じられっかよそんな話www」

不良女「この声は……!」ダッ

唯「あ、テメー逃げんな!」

不良女「族子さーーん!」

族子「あれ? 不良女じゃん。相変わらずソバカスつけてんなお前www」

不良女「助けてくださいッスよ! むちゃくちゃなやつに追い込みかけられてて……」

おいおい……こりゃちょっと聞いてないよ。


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