律「仕方ない、みんなでバイトする?」

唯「喫茶店で!?」

澪「喫茶店か…接客業はちょっと…」

唯「じゃあ軽井沢で!?」

律「なんで軽井沢なんだよ」

紬「あの~」

澪「ん?」

紬「ここ私のお父様の会社の系列だから…もしかしたら安くなるかもしれないわ」

唯「ほんとにっ!?」

律「系列って……凄いな」

紬「ちょっと行ってくるわね」

唯「頼んだよ舎弟1号!」


紬「このギターみかじめ料としてよこせや」

店員「そ、その眉毛は極道組の親分の!」
店員「は、はいっ! 持って行って構いませんっ!」
紬「すまんのボーズ」


……

紬「もらって来たわ!」

唯「よくやった! 誉めて遣わす!」

律「マジで!?」

澪「ほんとにもらえるもんなんだ…」

紬「はい唯ちゃん」

唯「平沢……、ありがとう、ムギちゃん」

紬「うふふ」

唯「えへへ」

それから私達は学園祭に向けてひたすら練習した。
ギターの扱いにも慣れ、みんなとも次第と仲良くなり、私は普通の金髪の女子高生になりかけていた……。

それもそうだ。この世界には喧嘩どころか言い争いすらないのだ。
女子校と言う隔離された空間の中で喧嘩なんていうものは起きようがない。

あの世界とここはもう違うのだ。
時代、世代、年代……様々ものが人を変える。

今では不良と言えば音楽、と言うほど根が張り合ってるらしい。

私の中で金髪の悪魔は、消えかけていた…。


そんなある日、私達は喫茶店に来ていた。
新しく出来たところにりっちゃん、りっちゃんというのは茶髪で明るい田井中律のニックネームだ。
そのりっちゃんが行こうと言い出してここに来ている。

唯「りっちゃんそれ一口ちょうだ~い」

律「唯のもくれたらな~」

半年前では考えられない光景だろう。ツッパリの私に見られたらちょーぱんかな、なんて。

澪「ふわふわタイムにふでペンボールペンだろ……ああ~曲順迷う!」

唯「ふわふわは最後でいいんじゃない?」

澪「かなぁ……」

律「ってことはカレーが先頭か~」

紬「……」

唯「ムギちゃん?」

律「どうしたんだよムギ。ぼーっとして」

紬「……うん、ちょっと色々あってね。……私先帰るね。
帰ってやらなきゃいけないことあるから」

唯「えっ…そっか。またねムギちゃん」

律「またな~ムギ」

澪「じゃあな、ムギ」

紬「…また明日」

カランカラン…

律「ムギのやつどうしたんだろうな」

澪「なんか朝から元気なかったよな」

唯「何かあったのかな?」

律「舎弟1号なんだからちゃんと気を遣ってやれよ?」

唯「ムギちゃんと私は友達だよ!」フンス!

澪「すっかり垢抜けたな唯も」

……

五十嵐「ありがとうございました~」

律「ふ~食った食った」

唯「りっちゃんおっさんくさい」

律「なんだとーっ!?」

澪「これからどうする?」

律「あ~ちょっとコンビニ寄ってかない? 買いたいものあるんだ」
唯「私はいいよー」
澪「じゃあいこっか」

唯「西森先生の作品が読めるサンデーはやっぱり面白いね!」

澪「そう? 私はコナンしか読んでないけど」

唯「澪ちゃん! それはサンデーに対する冒涜だよ!」

律「な~にやってんだよ」

唯「りっちゃん聞いてよ! 澪ちゃんがサンデーはコナンしか読まないって…」

その時だった、

「オラ、どけや」

唯「ふ?」

不良女「どけっつってんの」
不良女B「聞こえなかったのかかっぺが」
不良女C「まぶったろかこら」

律「(これまた…なんというか)」

澪「(怖いよぉ……)」

お~見事なザ・不良って感じだね!
こんな長いスカートまだあったんだね!

不良女「ここ私らのスペースだからさ~マジで邪魔」

律「……澪、唯行くぞ」

澪「う、うん」
唯「……」

不良女B「さっさとどきゃあいいんだよデコ」

不良女C「ストレートに言っちゃ可哀想だべwww」

律「」イラッ

律「他人の迷惑も考えないアホはほっといてさっさと帰ろうぜ二人とも」

あちゃー……。

不良女「あ? テメー今なんつった?」

律「アホがいるから帰ろうって言っただけだけど?」

不良女B「んだとテメー殺すぞ」

律「いるいる何かと殺すだの何だの言うだけのやつ。何? 不良マニュアルにでも書いてんの?」

不良女C「テメェ……ちょい外出ろや」

澪「りりりつう!」

律「上等だよ!!!」

まあこうなるよね……喧嘩したがりに理由与えたら。

ピックにカットパンに……目潰しは……あっ、これまだ入ってたんだ。
答辞の紙。

目潰しないや……どうしよう。


りっちゃんがやる気満々なのでどうしようもなく、ただ彼女達についていくこと数分。

不良女「ここなら誰も邪魔入らねぇよ」

不良女B「ちょうど3対3だしな」

不良女C「まあまずはデコからだな」

澪「(律!! 謝ったらまだ許してくれるかもしれないぞ! 謝ろう? な?」

律「(大丈夫だよ……こっちには元だけどツッパリだった唯もいるんだ。
私もドラムやってるから腕力じゃ負けないしさ」

澪「(そういう問題じゃなくて!」

律「(澪は後ろで隠れて見てろ。ムカつくんだよ…こういう自分が特別で偉いみたいな顔してるやつは!」

澪「(律……」

不良女「じゃあ初めますか~」

不良女B「ぶっ殺す!」

不良女C「ひへへっ!」

唯「……」

澪ちゃんは戦えないだろうし……先に一人潰しとこうかな。

唯「あの~」

不良女「あ?」

唯「お金あげるので見逃してくれませんか?」

不良女B「あぁん? 今更…」

不良女C「まあまあ、額だけ聞いとこうよ」私バック欲しいし

律「唯……お前」

唯「(私が動いたらりっちゃんも…」

律「……!」

不良女C「で、いくらくれんの?」

不良女「5万以上じゃないとボコ確定だから」

不良女B「あるわけねぇだろこんなトッポイやつにwww」

唯「5万円かぁ……あ、あれ足したらいけるかな?」

不良女C「あれ?」

唯「はい。売ったら高くなると思うんですけど…」ゴソゴソ

不良女C「さっさと見せろ(ry」

ズガァッ!

不良女C「ゴハッ!」

唯「だから高いって言ったのに。喧嘩売ったら鉄拳ぐらい飛んでくるもんだよね」

不良女「て、てめぇ!!!!」

律「私もいるの忘れんなよ!」

ガスッ ゴアッ! ブンッ!

不良女B「ちぃっ! こいつら……!」

唯「よっと」

放置されているバケツを頭に被せてやる。

不良女B「な、なんじゃこりゃ! ぐっ! このっ!」

唯「ほいっ」

視界を確保する前に蹴り込む。
思いきり倒れ込んだが幸いバケツプラスチックなのでクッションにはなっただろう。

不良女「テメェら……!」

苦虫を潰しながら懐から取り出したのはバタフライナイフ。
ジャキン、と嫌な音を立てて反り立つ。

律「ナイフって……おいマジかよ」

不良女「マジもクソもあるか!!!テメェは最初に殺すっつったろ!!!!」

不良女がりっちゃん目掛けて走り出す。
律「おい……待、、、」
律Σ不良女「しねぇ!!!」

ザクッ……

唯「りっちゃん!!!」
律「こいつ……マジで刺しやがった……」

お腹を抑えながら倒れ込む。

唯「りっちゃんっ! りっちゃんっ!」
律「げほっ……ぐほっ……」

不良女「はは……ハハハ……やってやった! アハハハハハハ」

ドンッ!!!

不良女「な……が……」ドサッ

澪「はぁ……はぁ……はぁ……律!!!」

律「み……お……」

澪「なんで……なんでこんなことに……早く救急車呼ばないと!」

携帯で必死に番号を押そうとする澪ちゃんの手をりっちゃんが止める。

律「いいよ……自分の体のことは自分が一番わかるから」

澪「そんな……嘘だろ?」

唯「……りっちぁゃん」スンスン

律「ごめんな……ライブやれなくて……」

澪「そんなのはいい! いいから……生きてよ……律」

律「……ごめんな」

澪「りつうっ!」

律「気がかりなのはさっき喫茶店で借りた500円……それが返せないことだ」

澪「そんなのいいから!」

律「……ほんとか?」

澪「死ぬ間際にお金のことなんてどうでもいいだろ……それより早く病院に!」

律「もっと気がかりなのは借りてたノートにうっかりジュース溢してしまったことだ……ごめんな」

澪「そんなものどうでもいいからっ!」

律「……ほんと?」

澪「当たり前だろ……!」

唯「りっちゃん…」プスプスプス

律「澪……」

澪「ん……?」

律「最後にチャーシュー麺食べたい……もし私が生きれたら……おごってくれる?」

澪「ああ……何杯でもおごってやる。だから……いきてよ……りつ……」

唯「ぷはっはっはっもうだめ! ひい~お腹痛い~」

律「あっ! 唯もうちょい我慢しろよ! 後ケーキもたかろうとしたのにぃ!」

澪「えっ……えっ……?」

唯「澪ちゃんはさっきの謝らないとね」

澪「??? 何がなんだか……」

律「私もサンデー派ってことだ」

りっちゃんが懐から取り出したのはサンデー。真ん中には刺したような後がある。

唯「サンデーはナイフより強いってね」


律「澪のゲンコツで死んでしまいそうだから唯、チャーシュー麺おごって……」

唯「それはこっちも同じ気持ちだよ……」

澪「なんだよ二人して私をからかってさ!」

律「ごめんごめん。でも実際喧嘩前に唯がこれお腹に入れとけって言われてなかったらほんとに血がドバァーってなってたよ!」

澪「ひいっ!」

唯「本当は笑えるシチュエーションじゃなかったんだけどね。
あるシーンに余りにも酷似してたからつい」

律「今日俺だろ? さとしが持ってて全巻読んだよ」

唯「まさかりっちゃんも読んでるなんて思わなかったよぉ」

澪「何かよくわかんないけど二人が無事で良かった…」

唯「弟さとしって言うの?」

律「そうそう。一時期剃り込み入れて……「俺は開久の番だぞ」とか言ってたっけ」

唯「なにそれカッコいい」

律「まああんなゴツいやつじゃないけどな」

唯「さとしでかいもんね~」

律「ね~」

澪「(話に全くついていけない…私もサンデー読もうかな)」


こうしてこの日は何事もなく終わった、ように見えた……。

これが抗争の火蓋を切って落すきっかけになることを……私達はまだ知らなかった。


「あ~あ~こんな綺麗にやられちゃって」

不良女「うぐ……」

「駄目じゃないのちゃんとやらなきゃ」ドスッ!ドスッ!ドスッ!

不良女「がっ! ごほっ! たすけ…」

「まあいいか……これで桜ヶ丘潰すいいきっかけになったし。
バックの皆さんもここらでやりやすくなるでしょ……極道組の娘さんの友達が傷害事件とあっちゃね……」ニヤリ


次の日!

唯「やっぱり一番いいシーンはこう三ちゃんと伊藤ちゃんがお互いを信じて勝ちを譲ろうとするシーンだよね!」

律「あ~それもいいけど私は……」

澪「まだ言ってる……」

紬「ねぇ、ちょっといい?」

律「お~ムギおはよ」

唯「どしたの?」

紬「昨日あの後何かあった…?」

律「えっ!」

紬「……あったのね?」

澪「あれはあっちがその……悪くて」

唯「りっちゃんは悪くないよ。やったのは大体私だし、それでそれがどうかしたの?」

紬「っ……。唯ちゃん、昔言った筈よね、暴力だけが強さじゃないって」

唯「言ったね」

紬「暴力を振るうとどんなことが返って来るか……想像したことある?」

唯「昨日のは仕方ないんだよ。りっちゃんも危なかったし、澪ちゃんだって……」

紬「それであなた達退学……もしくはそれ以上のことが降りかかるってわかってやったの?」

律「たいが……」

澪「そんな……なんで……」

紬「澪ちゃんは映ってなかったから大丈夫だと思うけど……唯ちゃんとりっちゃんはバッチリ映ってたわ」

律「映ってたって……」

紬「カメラよ。予めあそこに仕掛けられてたね。
ハメられたのよ二人は……。あの女の子達は地獄組って組が囲ってる当たり屋なのよ」

律「当たり屋……?」

唯「くっ……!」

紬「先に手を出したのは、どっち?」

唯「私だよ……私から殴った」

紬「そう……」

律「でもあいつらナイフとか出してきて」

紬「これにはそんなもの映ってなかったわ。
音声もないからただ一方に唯ちゃん達が彼女達を殴っているようにしか見えない」

乾いた音を立てて机に置かれたのは一本のビデオテープ。
恐らくこれに紬が言った内容が録画されてるのだろう。

紬「正直言うわね。これでうちの組は揺すられてるわ」

澪「組……?」

紬「私の家は極道組……ヤクザよ」


4