それから私はツッパリにツッパリを重ねた。

立ち読みは当たり前、自動販売機の釣り銭を漁ったり駄菓子屋で500円ものお菓子を買い込んでは我が物顔で食べ尽くす。
学校では一人で飯を食い休み時間もずっと一人!

唯「ロンリーウルフってやつかな……ふふふ」

でもそろそろ伊藤ちゃんみたいな相棒が欲しいところ……。
和ちゃんじゃハッタリが弱いから他の子がいいなぁ……。

青緑赤髪「」

唯「……他のクラスで探そう……」

どいつもこいつもとっぽいな~もっと気合いの入ったやついないの~?

唯「あ、あれは!」

紬「」

あの時のクリーム色!一年だったのか!
ウニ頭はいないみたいだから彼女と組もうかな。W金髪悪魔。かっくい~。

クラスメート「琴吹さ~んちょっといい?」

紬「ええ」

クラスメート「」

紬「」

クラスメート「」


あいつ……もうこのクラスしめてるよ!
みんなにさん付けさせるなんて徹底してるよ……私なんて唯ちゃんなのに……。

唯「気が変わった……やっぱりシメよう」


唯「コンコン」

クラスメート「?」

唯「あのさ~琴吹呼んでくれない?」

クラスメート「琴吹さん? ちょっと待っててね」

唯「けっ」


クラスメート「琴吹さ~ん誰か呼んでるよ~」

紬「あら? どちら様かしら」

クラスメート「あ、あの子答辞の子じゃん。金髪だけど琴吹さんと一緒で地毛なのかな?」

紬「ちょっと行ってくるね」

クラスメート「行ってらっしゃ~い」



紬「何かご用意かしら?」

唯「たいまんだ。体育館裏こいや。ついてきな……」

紬「たいまん?(あんまんの仲間かしら)」

唯「いいから来な……!」



体育館裏

本当に呼びつけちゃったよどうしよどうしよ!
これから私喧嘩するの?
待って待ってちょっと心の準備が……。

唯「」アセアセ

紬「(どうかしたのかしらこの子……さっきから落ち着きがないわ)」

三ちゃんの必殺道具目潰しは持って来てる……最初にこれを決めたらあそこの竹箒で叩きまくって……。

唯「」アセアセ

紬「(あら? あの白い紙みたいなもの何かしら……)」

目潰しだと思ってたら答辞の紙だったよ!
入れっぱなしだったよ! 私ツッパってるう!

紬「……(はっ!)」

紬「(もしかしてラブレターかしら……! 告白するためにこんなところに……)」

ここまで来たら目潰しがなくてもやるしかないよ!
ツッパるって決めたんだ……喧嘩しなきゃ……!

唯「……う、ぅぅああああらぁっ」

紬「ごめんなさい!」

唯「……へっ?」

紬「気持ちは嬉しいんだけど私達会ってまだ間もないし……」

あっちが謝ったってことは……勝ったの?

紬「だからやっぱりいきなり付き合うとかは無理だと思うの……」

初勝利……初勝利だよ!

紬「だから……まずはお友達から初めましょう?」

唯「あ、あーうん」生返事

三ちゃん私勝ったよおおおおおおおおおおおおおおお!

紬「えっと……確か平沢唯さん……よね?」

唯「えっ!? 何で知ってるの?」

紬「平沢さん有名だもの」

唯「まいったな~」ニヘラ

初勝利の噂がもう広まってるのかな?
全く喧嘩の勝敗情報は伝わるの早いね~。

紬「それでね、平沢さんのこと唯ちゃんって呼んでいいかしら?」

負けたくせに何ふかしてんだこいつは。ああさっき何か言ってたっけ……。
何て言ってたっけ……まあ多分舎弟になりたいとかそういうのでしょう。
じゃあキッチリ階級差教えとかないとね!

唯「ダメ! 平沢さんって呼びな!」

紬「そ、そう……(告白してくれたのに冷たい……))」ションボリ

やったよ! 舎弟が増えたよ!

舎弟も出来たし一年はこれで完璧しめたかな?
凄い進歩だよ私! ツッパってるよ!

唯「」ズンズンズンズン
紬「(唯ちゃんの外股歩き可愛いい)」

さわ子「平沢さんちょっといいかしら」

唯「あーん?」

さわ子「あ? 」ギロッ

唯「」ビクッ

唯「な、なんですか先生……」

さわ子「平沢さんって部活入ってるの?」

唯「いえ……帰宅部ですけど」

さわ子「ならちょうどよかった。軽音楽って興味ない?」

唯「傾怨樂?」

どっかのチームだろうか?
私の妹はいんきだむしのヘッドだぞこらー!

さわ子「興味があったら入ってみない? 今部員が二人しかいなくて廃部のピンチなのよ。
そっちの子もどう?」

紬「私は合唱部に入ろうかと思ってて…」

さわ子「そう…残念ね」

さわ子「まあ見学だけでもしてみて。あの子達毎日練習してるから」

唯「傾怨樂……」

群れるのは好きじゃないけど開久とやり合うには人数も必要か……。

唯「琴吹」

紬「ムギでいいわよ唯ちゃん」

唯「平沢さん!」

紬「もぅ~。平沢さん」

唯「ムギ、傾怨樂入ろう。そんで頭潰して乗っ取ろう!」

紬「頭潰す??」

唯「ふふふ……傾怨樂かぁ~楽しめそう」



放課後!

律「今日も待ぁつ!」

澪「待つんだ…」

律「まぁつ!!!」

澪「もうずっと待ってるよ、律。明後日までに集まらなかったら廃部だよ」

律「……」

澪「だから文芸部に行こうって言ったのに……」



唯「ここが傾怨樂疾か……」

中にはしんなーとかあんぱんとかもったやつらがうじゃうじゃいるんだろうな……。

唯「ムギ……覚悟は出来てるか?」

紬「唯ちゃんが軽音部に入るなら私も軽音部に入るわ」

唯「ひ~ら~さ~わ~さんっ!」
紬「はいはい♪」
唯「全くもぅ」

舎弟のくせに生意気だぞ!


「あの時の約束は嘘だったのか!!!!」

唯「なに…?」

紬「なにかしら?」

不疾の中から何やら言い争いが聞こえてくる。

「お前が邊ー守で……私が怒羅無で……一緒に坂東殺ろって……」

唯「これは……!」

三ちゃんと伊藤ちゃんが裏番とやり合った時のシチュエーションと似てる……!
気がする……!

唯「行くよ、ムギ」

紬「えっ、ちょっと唯ちゃ」

ガチャリ

律「えっ」
澪「ん?」

唯「その喧嘩……私も混ぜろよ」ニヤリッ

律「もしかして……入部希望者!?」

唯「坂東ってやつ殺るんでしょ?」

まあこの口振りからすると相手は三年か……さすがに三年を私達二人じゃキツいからね。
三年をシメるまでは手を貸してやろうか。

澪「バンド一緒にやってくれるの!?」

唯「三年(シメる)までね」

律「三年までって気が早いな! でも嬉しいよ! もしかしてそっちの子も?」

紬「唯ちゃ」

唯「」ジロ

紬「平沢さんが入るなら私も入ろうかしら」

澪「ほんとっ!? ありがとう!」

律「一気に集まるなんて夢にも思わなかった! やったな澪!」

澪「ああ! これでバンドやれるよ!」

唯「坂東……」ギリッ

覚悟しときなよ!


それからというもの不疾に溜まってはムギの持って来たお菓子を食べるという毎日が続いた。

律「いや~まさかあの時の子が入ってくれるなんてな~」

澪「わからないよなほんと」

あれから一週間経った、しかし坂東が殴り込んで来るわけでもなくこっちから殴り込むわけでもなく……。

唯「ねぇ、坂東殺らないの?」

澪「……確かに……軽音部なのにずっとムギのお茶飲んで話してばっかりだな私達。
そろそろ本格的にバンドしないと…な」

律「……そうだな。ムギはキーボードだよな?」

紬「ええ」

律「唯……」

唯「」アアン?

律「平沢さん……楽器は?」

唯「目潰し」

律「そんな楽器ないから!」

唯「ビー玉にヨーヨーに花火に爆竹煙玉ボンドコショウ輪ゴムサンデー後は……」

律「うん……もういいから……それしまって」

澪「(ずっとこの調子だよ……ほんとに入部するつもりあるのかな?」

律「(だがこれを逃がせば廃部確定……我慢するしかない」

紬「唯ちゃんおかわりどうぞ」

唯「平沢さんっ!」

紬「ひらちゃんおかわりどうぞ」

唯「ひぃ~らぁ~さぁ~わぁ~さん!」

律「平沢さんギターとかやってみない?」

唯「義太ー?」

澪「そうそう。バンドの中心だしカッコいいよ?」

坂東戦で中心に暴れまくるための武器か何かかな?
ったくすっかり舎弟になりきってやがるこいつら。

唯「仕方ないな~」

律「ほんとに!? じゃあ帰りに見に行こう!」

澪「レフティフェアやってるかな…」

紬「(唯ちゃんと進展ないわ~……)」


楽器ショップ。

唯「なんだこりゃ」

律「なんだこりゃって……ギターだけど」

唯「そのぐらい知ってるよ! 楽器屋じゃんここ!」

澪「うん……楽器屋だけど」

唯「武器買うんじゃないの?!」

律「武器?」

唯「ほ、ほら! 三年の坂東シメるための武器……」

律「三年の坂東? 誰それ。澪知ってる?」

澪「知らないけど…」

唯「……は?」

律「だから今日はバンドする為にギター見に来たんだろ?」

唯「バンド……バンド……あ」

唯「音楽でてっぺん取るとか言ってたやつじゃねぇか!」

律「今頃?」

唯「じゃあバンドやるって……」

律「言葉通りの意味だけど……」

澪「?」

唯「////」カァァァ

唯「帰る」

律「待ってええええ!!! 何かよくわからないけど帰らないでえええ!!!」

唯「私はツッパるので忙しいの! バンドなんて子供みたいなことやってられないの!」

澪「バンドが子供みたいなこと……?」

唯「な、なに? 何か文句あるの?」

澪「バンドのこと何も知らない平沢さんにそんなこと言われたくない」

唯「ふ、ふんっ。音楽なんて興味ないし!」

澪「っ…! 律、あっちでベース見に行こう!」

律「おい澪! ちょっと待てよ!」

唯「……何がバンドだよ。くだらない……」

紬「本当にそうかしら?」

唯「ムギまで私に文句あるの?」

紬「唯ちゃんが……例えばツッパリのことバカにされたらどう思う?」

唯「ぶん殴る」

紬「そう……。でもね唯ちゃん、これだけは言っておくわ。
暴力だけが強さじゃないわ」

唯「……伊藤ちゃんみたいなこと言うんだね」

紬「?」

駄目だよ……バンドなんかやってたら弱くなっちゃう。
それじゃ駄目なんだよ……私は三ちゃんみたいに強くなりたいのに!

律「あっ平沢さん! 良かった~まだ居てくれた」

唯「ん?」

律「これちょっと弾いてみてよ!」

唯「これ……ギター?」

律「そうそう」

澪「……」

律「ほーら」

澪「……平沢さんが気に入りそうなカッコいいやつ持って来たから……弾いてみて」

唯「……」

私は……。

紬「唯ちゃん」

そうだね……三ちゃんにもいっぱい仲間がいたもんね。だからちょっとぐらい……いいよね。
抱えるものが増えたって。

唯「」ボロン
唯「おぉ……」

いい音色しやがる。

律「気に入った?」

唯「おぉ……こりゃスゲェ……」

澪「でも…それ値段がちょっとね」

唯「一…十…百…いくらだろう」

紬「25万円ね」

唯「二十五万!? というと福沢のおっさんが25人ってこと!?」

律「やっぱちょっと高いか。あっちに3万ぐらいのあるからそっちにする?」

唯「これがいい…」キラキラキラ
澪「でも…お金ある?」

唯「」チラッ
財布 50円。

唯「ちょっと待っててね」
澪「ん?」

   ドンッ
通行人Σ唯「」

唯「って~な! どこ見て歩いとんじゃ慰謝料出さんかい!」

通行人「ひいいいい」
律「やめんか」


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