~とある喫茶店内にて~

今まで起きたことを掻い摘んでむぎに話した
言葉に詰まりながらも、なんとか話すことができた

途中ニコニコと笑っていたのが少し気になるが…。


紬「つまり…澪ちゃんはりっちゃんのことが好きなのね」

澪「うん…やっぱり、おかしいよな…女の子が女の子を好きになるなんて…」

紬「ううん!そんなことないわ!人を好きになるってとっても素敵なことよ!」

なんでそんなに目がキラキラ輝いているんだ、むぎ…

澪「そう…なのかな…」

紬「ただ好きになった人が同姓だったってだけでしょ?ね?」

澪「むぎ…」

紬「…それで…澪ちゃんはりっちゃんとどうしたいの?」

澪「どうすれば…いいんだろう…」

私は律と、どうすればいいんだろう

紬「やっぱりりっちゃんに好きになってもらいたいでしょ?」

澪「まぁ…そうだけど…」

紬「だったらもう真正面からいくしかないわ!」

澪「で…でも、もし、律に、き…嫌われたら…」

紬「澪ちゃん」

むぎはティーカップをソーサーにおいて両手を組み
今まで以上に真剣な瞳を向けて私にいった

紬「嫌われるの前提で離していたら何もかもうまくいかないと、私思うの」
澪「…っ確かにそうだな」

紬「それにもし嫌われたとしても大丈夫よ」

紬「ちょっと派手な戦があって返り血を浴びただけなんだから、…あ、これ例えだからね」

澪(例えがこわすぎだろ、むぎ…)

紬「それにりっちゃんなら受け入れてくれると私、思うの」

紬「澪ちゃんとりっちゃんって、二人が思っている以上に似ていると思うの」

澪「私と律が…?」

紬「だから、頑張ってみて?」

澪「…」

紬『澪ちゃんとりっちゃんって、二人が思っている以上に似ていると思うの』

似ている?
なら、律も、同じ気持ちなんだろうか?

ううん、この際
同じ気持ちじゃなくてもいい


私は今、水面を歩いていて、波紋を立てている
それは誰でもあることで
律も今、水面を歩いていて、波紋を立てている

私と律の波紋はお互いの波に押されて

決して ひとつにはなれない


だけど、もっと多くの波紋を出せば

その壁を越えて 届くんじゃないだろうか


同じ気持ちじゃないとしても
この気持ちが、届くんじゃないだろうか

…律の元に


決心した私はバッグをもって席を立った

澪「ありがとうむぎ、…私」

紬「ほら、お勘定は後で私が払うから早くりっちゃんにメール!」

澪「うん、むぎ…本当にありがとう」

澪「私…がんばるよ!」

むぎが何か言おうとしたけれど今は1分1秒が惜しくなって
たまらず駆け出してしまった

私は走った

水面は激しく揺れ、波紋は広がっていった


言おう、律に

好きだって

愛してるって

伝えるんだ
澪「私の言葉で、ちゃんと言うんだ」


信号が赤になった
私はこの瞬間に手早く律へメールを送った


To 田井中律
Sub Re:
---

今すぐ話したい
お前は今どこにいるんだ?



人ごみの中を全力で走った

ぶつかってくる私を周りの人は怪訝そうに見た
普段の私なら怯んで走りをとめてしまうだろう

だけど今はそんなこと、構わなかった

普段の私は無茶はしない主義だけど

律の事なら、どんな無茶でもしてもいい

会いたい

もう、耐えられないんだ


今、どこにいる?




~平沢宅~

律「うわああああぁあぁ!!!!」
唯「あわわわわわぁぁ~~」
梓「うわああああああん!!!」

憂「やった♪また私の勝ちだね♪」

律「くっそぅ!何でこんなにスマブラ強いんだ憂ちゃん!?」
梓「こっちのストック50にして憂はストック1なのになんでそんなに強いの!?」
唯「あれ?知らなかったっけ?憂ってゲームの大会で優勝したことがあるんだよ?」

律&梓「ええええええ!!!!?」

憂「あ、でもそんな強いわけじゃないですよ。葛飾区の両津さんにはさすがに負けましたし…」

律「そうと聞いちゃぁ尚のこと引き下がれないぜ!!いくぞ!梓!」

梓「はい!律先輩!憂!もう一回勝負しようよ!」

唯「もう、皆意地っ張りなんだね」
唯「あ、憂ー、アイス食べていいー?」

憂「今日はもう11個目だよお姉ちゃん」

律&梓「うぉぉおおぉおおぉぉおおお!!!!!」


なんかお尻の辺りで携帯がうなってたけど
アタシは構わずコントローラーを再度握り締め

キャラクターをピカチュウに決定した

澪(もう30分もたってる…)

さっきから何通もメールを送っているのに
律からの返信はまだなかった


もちろん律の家にはいった
けれど聡の話だとまだ帰ってきていない様子だった

澪「どこいるんだよ…律…」

先ほど足取りとは異なり、私はもう、走られず、歩いていた
一歩、また一歩と歩くごとに不安が背中にはりついてくる

(もしかして、私の気持ちがバレちゃったのかな…)
(嫌われちゃったのかな…)
(友達で…なくなっちゃうのかな)

澪「怖い…怖いよ…っ」

俺「みんな、今日は集まってくれてありがとー!」
澪「!?」

私の不安を掻き消したのは路上ライブ中の俺の声だった

俺「今日集まってもらったのは他でもありません」

俺は堂々と、目を輝かせて言った

俺「俺、結婚します」

どうやらこの前いっていた重大発表とは俺が結婚するという告白だった

今、華々しい舞台に立っている者がなぜ路上ライブなんて…て思ったけど
どうやら結婚を機に一度原点回帰をするためらしい

俺が大きく深呼吸した

俺は耳が張り裂けそうな声を出して言った

俺「お前らも!好きな奴に躊躇しないで!!当たっていけ!!!」
俺「どんなに返事がこなくたって!誰も見ていなかったとしてもだ!!」
俺「俺が見てる!俺が聴いてる!!俺が!!!ここに!!!いる!!!!」

ウォオォオオォオレサイコォオォオオ!!

俺「それじゃあ今日もいくぞぉおー!!!」

俺のライヴは盛り上がった
その時の俺はとても輝いていた

俺の言葉を聞いて私は、勇気がでた

紬『嫌われるの前提で離していたら何もかもうまくいかないと思うの』

そうだ、自己嫌悪なんてしてる場合じゃないんだ

…絶対に伝えるんだ


今日、伝えなきゃ、もう二度と言えない気がするんだ



……

アタシのピカチュウと梓のオリマーは憂のスネークによって簡単に場外へ出されてしまった

律&梓「うぉぉおおぉおああぁあああああぁあ!!!!!」
憂「♪」

律&梓「ま…参りました…」

唯「二人ともあんまりうまくないね♪」

梓(バッサリだーっ!!)
律「お前がいえるのか!お前が!!」

唯「そういえばりっちゃん、さっきから携帯光ってるよ?」
律「へ?…ああメールか、どれどれ…」

律「澪からだ…」

心臓が高鳴った
うわ…アタシ…澪からのメールを無視ってたんだ…


To  秋山澪
Sub ごめん
---


メールに気づかなかった
今からそっちに行く
澪は今どこにいるんだ?




律「ごめん、アタシ用事思い出したわ、先帰るね」
唯「ふぇ?帰っちゃうの?」
梓「あ、じゃあ私も帰ります。途中まで一緒に行きましょう」
律「ん、おう!」

あらかたお菓子を片付けてから私と律先輩は平沢家を後にした

道中、律先輩はずっと携帯を閉じたり開いたりしてた

澪先輩と何かあったのかな…

梓「……」
梓「…律先輩って澪先輩のこと、どう思ってます?」

律「へ?」

律「どう、っていうかなんとも。アタシの傍にいるのが普通って感じかな」
梓「それって、大切って意味ですか?」
律「んー…どうなんだろう。正直アタシ自身よくわかってないからさぁ」
梓「何なんですか、その曖昧さ加減は」

私は肩をすくめてため息をついた

せっかく先輩の意見を参考にして唯先輩の事を考えようと思っていたのに

…てあれ?何?私…なんで、唯先輩だなんて…

混乱している私の横で律先輩は手を頭の後ろで組んだ

律「でも、今日は」

律「今日はさ、なんとなく出掛けたのも、澪に会いたかったからなんだ」

律「もちろん!梓や唯達とも遊べて楽しかったんだけどさ」

そういって律先輩は照れくさそうな顔をして私の頭をなでた

それ、私もだ

憂と遊ぶのはもちろん楽しい
憂は気遣いができて、優しくて、なんでもできちゃうすごい子だ

だけど、憂と遊ぶっていう事で
唯先輩と一緒にいれるというきっかけがほしかったのも事実なんだ

人気の少ないバス停沿いで私は携帯を取り出して


見慣れた番号へ電話をかけた

澪(大丈夫、大丈夫)
澪(きっと、律はすぐでるさ)

だから変な杞憂は捨てるんだ 秋山澪

プルルルルル…

その後、律先輩はこう続けていった

その人の一番じゃなくてもいい
ただ、傍にいさせてほしい
話さなくたっていい
一緒にいてくれれば、それでいい

それを話しているとき
律先輩は手の中にある携帯をずっと見つめていた

梓「それって…」

梓「それって、す、好きって事じゃないんですか?」

律「え?」
梓が顔を赤らめて言った

え?
好き?
誰が?
誰を?

梓「澪先輩の事が…好きって事なんですよね?」

うん、そうだよ
アタシは澪のことが好き
でもそれは誰にも言ってはならない

だって話してしまえば、肯定してしまったら

澪が離れていってしまいそうだから

だから、この想いは誰にも話さない
そう、決めたはずなのになぁ…

律「好きだよ、澪のこと」

どこからこの自信が湧いてくるのだろうか
今のアタシは何もかもが怖くなくなっていた

道の分かれ道でアタシは止まった

律「確かに、アタシは澪の事が好きだ」
梓「っ…じゃあ!告白とかはするんですか!?」
律「…アタシは、この想いを告げるつもりはないよ」

梓「え…?」

なんで?どうして?

そんなこと言いたげな梓の顔をみて私は笑う

律「アタシはね、皆が思ってるほど、強いわけじゃないんだよ」

アタシの気持ちがバレたらどうしよう
嫌われたらどうしよう
友達でなくなったらどうしよう

律「そんな『らしくない』事ばかりグルグルしちゃうんだ」

アタシはもう一度手の中にある携帯を見る

律「アイツの幸せをずっと見守ってようってさ」

アタシは澪の楽園には入ることはできない
ずっと、ずっとその楽園を見守ろう
そう、きっと、アタシには
見守ることしか できないんだ

梓(なんで?どうして?)
梓(律先輩の性格なら玉砕覚悟でいくと思うのに…)


律「…『らしくない』事ばかりグルグルしちゃうんだ」
らしくない?て何?
律先輩のらしくないって何なの?

それもひっくるめて律先輩じゃないの?

律「アイツの幸せをずっと見守ってようってさ」

澪先輩の楽園には入れない?て事?
何それ
澪先輩はそんなこと思ってなんかないよ

だって合宿のとき、私は散々みてたよ

澪先輩をからかう律先輩のことも
律先輩に説教してる澪先輩のことも

すごくいい感じだったもん

それに私見ちゃったから知ってるんだ

なんでそんなに澪先輩が律先輩の事が好きだって

確信めいて言えることがある

合宿最終日、朝食ができたので

律先輩と律先輩を起こしにいった澪先輩を呼びに

私は相部屋の寝室に行った

そこで見たんだ

澪先輩は口では律先輩に文句を言っているのに


すごく優しい瞳で律先輩に向けていたから

梓「だからそんな馬鹿みたいなこといわないでください!!」
梓「まだチャンスはあるんですよ!!?」
口を大きく開けて梓が叫んだ

その拍子でアタシの思考は停止した
しかし5秒ほどたってすぐに復旧したが混乱はしていた

律(澪が?アタシを?)

その時、手の中にあった携帯が鳴り出す
聞き慣れたメロディが流れ出す
澪専用の曲だった

梓「ほら!!私のことはもういいですから!!!」
梓「先輩は早く電話にでて澪先輩に会って下さい!!!」

律「お…おう!」

梓に背中をバン!押されアタシは携帯を耳にあてて駆け出した

全力でどこかへ走りながらアタシは澪の電話に答えた

律「……もしもし?」
澪「…律か?」

心なしか、澪の声はいつもより堅く聞こえた

律「うん、アタシだよ」
澪「…」
律「何?」
澪「…今、暇か?」
律「うん」
澪「今、どこにいる?」
律「S交差点前の本屋前にいる」
澪「わかった」
澪「言いたいことがある、そこにいて、律」

鼓動が波打つ
期待するな、期待するなアタシ

律「わかった」

アタシは電話を切ろうとしたけど

受話器から何か言おうとして口ごもっている澪の声が聞こえた

律「何?どうした?」

澪「…ぅ……………」

交差点の前にいるからか、何をいってるのか聞きづらい

もう一度耳を澄まして聞いてみることにした

…泣いてる澪の、声だった

律「…馬鹿澪」
澪「…ぅう…馬鹿、律…」

いてもたってもいられなくなった

律「今どこにいるんだ?」
澪「…Y交差点前の公園…」

昔、小さい頃よく遊んだあの場所か
昨日、あの黒猫と出会った場所

アタシは信号が青信号になるかなるまいかというぐらいで
勢いよく走り出した


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