堀込「えーつまり、光源氏はやり手のイケイケだったわけで……」

澪「……」カキカキ

風子「秋山さん秋山さん」

澪「ん、なに?」

風子「これ、手紙」

澪「あ、ありがとう」ペラペラ

澪「なになに……『秋山さんのことが好きです!ハートマーク』……ってなにぃっ!?」ガタッ

堀込「うわっ! どうした秋山」

澪「あ、ああ、いや別に何もないです……///」

 クスクス アキヤマサン クスクス ミオタン

澪(だ、誰だ……? いったい誰がこんなことを……)キョロキョロ

律「プククッ……」

澪(律かーーーっ!!)

澪「おい律! なんだこれは! ふざけるな!」

律「私は何も知りません」

澪「とぼけるな! 今笑ってただろ!」

律「わ、笑ってなんか……、ブッ」

澪「笑うな!」ボカン

律「ほんぎゃ!」

堀込「あの、授業中……」


……

ガヤガヤ ワイワイ

唯「いやー、やっぱ澪ちゃんとりっちゃんは鉄板だね~」

唯「ねー和ちゃん」

和「……」ポケー

唯「の、和ちゃん……?」

和「……」ポケー

唯「の、の、和ちゃんが……ボーっとしているだとぉ……?」

姫子「どうしたの、唯」

唯「た、大変だよ姫ちゃん! 和ちゃんがボケっとしてるの!」

姫子「それがどうしたの」

唯「どうしたもこうしたもないよ! あの和ちゃんがアホ面でボケっとしてるんだよ! これは何かの天変地異の前触れだよ!」

姫子「そ、そうなの」

唯「恐ろしい……まったくもって恐ろしいよ……」

唯「姫ちゃんも気をつけてね。何が起こるかわからないよ……」

姫子「うん、そうしとく」チラッ

和「……」ボケー

澪「りつー!」

律「おやめになってぇ!」

姫子(ボケっとしてるんじゃなくて、秋山さんのことを見てるんじゃないの……?)

和「……」ボケー

……

――軽音部部室

唯「よーし、あずにゃんそのまま、そのままだよ」

梓「あの……なんなんすかこれ……?」

唯「あずにゃんスケッチだよ!」

梓「今それをやる意味が分からないんですけど」

律「だって最後に来たからな。罰ゲームじゃん」

梓「ふざけた罰ゲームですね。律先輩はもっと頭を使った方がいいなじゃないんですか」

律「なかのぉっ! 先輩に対してその口は何だー!」

澪「いい加減にしろ!」ガスン

律「ほぎっ!? 何で私だけ?」

澪「後輩に対して何してるんだ! 唯もくだらないことやるな!」

唯「ほーい。でもうまくかけたよ!」

澪「梓、大丈夫か?」

梓「ありがとうございます澪先輩」

律「あーあー、澪先輩は優しいでございますわね」

澪「うるさいな」

澪「ところで律、あれ出したか?」

律「ん? あれって?」

澪「いやだから、活動報告書。和が『提出しなさい』ってこの前来てただろ」

律「ふえっ?」

澪「どうした?」

律「あ、あ~、そ、そんなこともありましたね~。あは、あははは」

澪「……出してないのか?」

律「いやー出すつもりだったんだけども……」

唯「だけども?」

律「紙、無くしちゃった」

澪「はあ、律はほんとに馬鹿律だな」

律「いやー、すまないすまない」

梓「あれ? 律先輩、そのスケッチの紙がそれなんじゃないですか?」

律「えっ? ……あっほんとだ」

澪「……律」

唯「りっちゃん……」

梓「無くしたあげくにその紙を無駄な遊びで使う……これは擁護のしようがありません」

律「あーこりゃまいったな! ははは! いやーでも見つかってよかっ……」

澪「ふんっ!」

バキン!

律「たじぇんっ!?」

唯「うおっ! これまたいい音が出ましたな」

律「くおおおっ、叩いたところをまた叩くのは痛いんだぞぉ」サスサス

梓「自業自得ですね。でも、叩かれたおかげで少しは頭がよくなったんじゃないですか?」プッ

律「てめこらなかのぉ! お前ちょっとこっちこいやぁ!」

澪「まったくしょうがないな……。私が出してくるよ」

梓「あっ私が行ってきますよ」

澪「いやいいんだよ。それじゃ行ってくる」

唯「いってらっしゃ~い」

紬「……」フリフリ

紬(案外、私がしゃべらなくても話は進むのね~)

……

――生徒会室

和「……」

和「……はあ」

和(最近の私は何かおかしい)

和(ふと気付いたら、ずっと……澪のことを目で追っていた)

和(それに、澪のことを意識して見だすと、なぜだか緊張してしまう。別にやましいことなんてないのに)

和(もしかして……これは……)

和「病気……?」

和「……ふふっ、そんなはずあるわけないのにね」

ガチャ

澪「失礼します」

和「ひゃっ!!」ドキン

澪「うわっ! ど、どどうした和!?」

和「み、澪!?」

澪「そうだけど……?」

和(うぅ、まさか来るなんて想定してなかったわ……。いや慌てるな、落ち着け私……!)

和(冷静で、クールで、落ち着きツッコミキャラが私のキャラなんだから……!)キリッ

澪「あのー和さん?」

和「え、ええと何の用事なの?」

澪「ああこれ、活動報告書。律のやつが忘れててさ。遅れちゃってごめん」

和「あ、ああはいはい活動報告書ね。いいのよ別に遅れても、軽音部なんだし」

澪「そ、そうか……」

和「あ、いや違うの! 今のは言葉のあやで」

澪「ううん、3年になってもこうやって和に迷惑かけちゃダメだよな」

和「いいのよ、本当に」

澪「そういうわけにもいかないよ。今度からはちゃんと言い聞かせるから」

和「う、うん……」

和(はあ、やってしまった……。やっぱり緊張しちゃうと何かしらが狂っちゃうわね)

澪「あれ? そういえば今日は和ひとりなのか?」

和「ええ、他の子たちは先に帰ったわ」

澪「それで和ひとりで残業か。和はやっぱり偉いなぁ」

和「お、お世辞を言われても嬉しくなんてないわよっ」クネクネ

澪(めっちゃ嬉しそうな顔して、腰クネクネさせてるんだけど……)

和(澪ってば、そんなストレートに褒められたらうれしくなっちゃうじゃない)

澪「それじゃ、私部活に戻るな」

和「あっ……」

澪「ん? まだ何かあったっけ」

和「えっと……その……」

澪「その……何?」

和(ちょうどいい機会だわ……澪に対して起こるこの緊張……。いったい何なのか確かめてみる必要がありそうね)

澪「そっか。じゃあ後で連絡するから」

和「わかった。それじゃ部活がんばってね」

澪「ああ」

バタン

和「……ふうっ」

和(まずいわ……このままじゃ澪のことを意識しすぎて友好関係にひびが入ってしまいそう……)

和(そうなる前に早く原因を突き止めなきゃ……)

……

――校門前

和「……」パカッ カチッ

和(遅いわ……)

和(まったく、レディを待たせるなんて。澪は将来どうなるのかしら)

和(って澪は女の子じゃない。私は何を考えてるの……?)

澪「おーい、和~!」

和「!」

澪「遅れてごめんな? 律のやつがいろいろと面倒くさいことをしてきたもんだから」

和「う、ううん! 別に待ってなんかないわよ!」

澪「そうか? あっちからこっちに来るまで、携帯見ながらずっと待ってるオーラが出てるの見えたから」

和「あぅ……///」

澪「のどか?」

和「そうなんだ。じゃあ、私生徒会室に行くね」スタスタ

澪「ええっ!? ちょっ、どこ行くんだ!?」

……

澪「それで律が『宿題忘れたから澪も手伝って』って言いだすもんだからさ。大変だったんだ」

和「そうなの」

澪「でも、律も進学に決めてくれてよかったよ」

和「そうなの」

和(あー律の話なんか聞いてもそうなのって感想しか出ないわ)

澪「……」

和「……あっ! へ、へ~! 律も進学するなんてよかったじゃない」

和(適当に頷いちゃダメなタイプなのね、澪は)

澪「だ、だろ? 幼馴染として心配してたけど、これで一安心だよ」

和「そうね」

澪「……」

和「い、いやー一安心一安心! 大団円ね!」

澪「まだ受験も始まってないし、希望校も決まってないぞ」

和「あ、そうね! あっははははは……」

澪「……なあ和」

和「な、なに?」

澪「今日の和、何か変だな」クスッ

和「っ! そ、そそそうかしら!?」

和(慌てる必要何か無いのに、なんで慌てているのかしら私は……)

澪「……そういえば、今日は何か相談事があるんだっけ」

和「えっ!? あーそう言えばそんなこと言ってたわね」

澪「おいおい、和が相談したいって言っきたんだぞ」

和「そ、そうだった」

澪「で? 相談って何だ? 私のできる範囲で聞くよ」

和「あ、その……」

和(うっ……勢いで相談したいって言ってしまったけど、どうやってこのことを伝えればいいのか、わかんないわ……)

澪「……」

和「えっとね、その……何というか……あのー……」

澪「のどか……」ジー

和(案の定へんな眼で見られてるし……これはまずいわ……)

澪「大丈夫だよ」

和「へ?」

澪「受験勉強でストレスが溜まってたんだろ? だから今日はおかしかったんだよな」

和「い、いやーちがっ……あ、いやそうなのかもしれないけど」

澪「そういうときは私に何でも言っていいぞ。愚痴でも何でも聞くからさ」

和「澪……」

澪「だって私たち、友達だろ?」

和「そ、そうね……」

……

――和の家

和「y=3x-2と……。ふう、ようやく終わった」

和「……はあ」

ストン

和「あー、机に頭乗っけるのって結構気持ちいいのね。唯が居眠りするのもわかる気がする」

和「……」

和(結局、澪と一緒にいると緊張する謎の病気の正体はつかめなかった)

和(……友達、か……)

和(どういうわけだか胸の奥辺りがモヤモヤするわ……)

和(はあ……もうわけわかんなくなっちゃった。本当に受験勉強で頭やられちゃったのかしら)

和(それとも、澪のせい……?)

和(……もう考えるのはよそう。だけど、明日はまたいつもどおりに戻ってるといいけどな)

和「ん……ふわ~~っ……」ノビー

和「早く寝よ……」

和「目覚ましセットよし。明日の準備よし。戸締りよし。メガネテイクオフ。電気消灯。」

和「ではおやすみなさーい」

……

――3年2組

唯「おべんとうタイムだよー!」

律「叫ばなくてもわかるっつーの」

唯「いやいや、ここは気合い入れて行かないとだよ! りっちゃん隊員!」

律「はっはっは、唯隊員は元気だな」

唯「ぶー、冷たい。りっちゃんのデーコ」

紬「デーコデーコ!」

律「はいはい、私はデコです。デーコ。さて、おべんと食べよーっと」

唯「つまんないー!」

紬(無視された……)ショボーン

和「律ってば今日はどうしてあんなに冷たいのかしら」

澪「あー、今日はアレなんじゃないかな」

和「あーアレ」

律「おい、何サラッと言ってんだ」

和「ふふふ、大変よねアレは」

律「違うし! 全然違うし!」

澪「あはは、照れなくてもいいんだぞ律。アレは誰だってあるんだからな」

律「だから違うっつーの! もうすぐテストだから落ち込んでるだけだし!」

和「いつもは落ち込まないのに?」

律「私だって落ち込むわい!」

紬「……」ショボーン

律「なあムギ! ムギは私のこと信じてくれるよな!」ガシッ

紬「ひゃっ!? も、もちのロンよ!」(今日初めての会話! ありがとりっちゃん!)

律「さすがムギ! 心の友よ~」

紬(ああ……一度は言われたかった心の友……! またひとつ夢が叶っちゃった……)ポワー


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最終更新:2011年03月04日 02:21