憂「和ちゃん」


憂「今日はほんとによく遊んだね~」

梓「ほんと、すっかり遅くなっちゃった。」

純「結局クレーンゲームのあいつが取れなかった…」

憂「それはまた今度ね…」

純「うん、また今度頑張るよ…」

梓「それじゃあそろそろ…」

和「あら、あなた達は…」

憂「和…さん。」

梓「和先輩。こんばんは。」

純「先輩は何か用事でもあったんですか?」

和「生徒会の書類整理と、図書館でちょっと勉強。あなた達もそろそろ帰る時間でしょ?」

憂「はい、今帰る所です。」

純「やっぱり和先輩は真面目だな~」

純「生徒会長で受験生だし、当然か…じゃあ私はこの辺で。」

梓「憂、それじゃあまた明日。」

憂「純ちゃん、梓ちゃん。さよなら~」

梓・純「「バイバーイ。」」



和「それじゃあ、私たちも帰りましょ?」

憂「うん、和『ちゃん』!」


和『さん』。
中学校の頃から、世間体とかを気にして、人前では彼女をこう呼び始めた。
でもそれはまるで、「赤の他人」では無くても「ただの知り合い」のような呼び方。
私が彼女をそう呼ぶたびに、彼女と私の距離は離れていく。
そんな気がした。

「よくできた子」と人に言われる。
でも、私は一人っきりじゃ何もできない。
お姉ちゃんたち家族や友達、みんなが側にいてくれるからこそ頑張れるんだ。
そして私はたまにお姉ちゃんと、お姉ちゃんの幼馴染であり、私にとってはもう一人のお姉ちゃんのような存在である、和『ちゃん』に甘えたくなる時がある。


和ちゃんはお姉ちゃんの幼馴染。
そして私にとっても幼馴染。

憂「和ちゃん。」

和「なに、憂?」

憂「えへへ、何でもない。」

和「?」

私はこれからもみんなの前では彼女を和『さん』と呼ぶだろう。
でもお姉ちゃんと三人一緒の時や、二人きりの時には…

大人になっても、お母さんになっても、お婆ちゃんになっても。
一生、いつまでも彼女をこう呼んでいきたい。

和『ちゃん』と。

おわり



最終更新:2011年03月02日 22:18